いわゆる恋愛相談!?
今週分の更新です。
楽しんで頂けると幸いです。
よろしくお願いします。
※2017/12/17 誤字修正
新学期が始まってから2週間が経ち、クラス内で男子は男子どうしで、女子は女子同士でグループ形成が出来始めているなか、明人と健人は少々特殊な立ち位置に位置付けられていた。
「なぁ、明人」
「なんだよ、健人」
「俺たちさ、なんでクラスの男子から恨めしい眼差しを向けられているんだ?」
「あー……まぁ、なんだ……どう考えても今の状況が周りの男子から恨めしいからだろ」
そんな話をしながら昼食を食べている明人と健人の周りには、ニーニャ、レフィア、瑞波、秋音が陣取り、お弁当を広げながら話をしている。
「つまるところ、羨ましいってことか……」
「どう考えてもそういうことだろ……」
明人はそう言いながら弁当箱に入っていた最後のミートボールを口に入れ、ご馳走様と挨拶をし、弁当箱を片付け、カバンの中に戻した。
「いや、レフィアちゃんについては羨ましがられるのはわかるけど、他のメンツは羨ましがられるのは要素ゼロだと思うんだけど、明人はどう思うよ」
健人は緑のお仕置きを受けた後くらいからレフィアの事を気にし始めているらしい。明人も昨日の放課後に、健人からレフィアについて相談を受けていた。
■
昨日の放課後――
窓から夕日が差し込む教室の中、明人は部室に向かわず、自席に座って一枚の紙を見つめていた。
その紙には、"放課後、教室で待っててください"と書かれていた。
差出人の名前はない。ただ、可愛らしい丸文字で書かれているので、明人は女の子からの手紙であると信じ、放課後の教室で1人で待ち続けている。
「この手紙の感じ、どう考えても告白のためのものだよな……うわー、新学期早々にこんなことってあるのか……でも、正直気まずいな……」
なんて1人の教室で独り言を言いながら頭を抱え込む。
明人の中には誰から告白されようと、断る以外の選択肢は存在していなかった。今の明人はファンタジーの事を考えるので手一杯で、恋愛にうつつを抜かしている時間はない。
だからこそ、気まずさに頭を抱えることになってしまった。
色々と断り方を考えて少ししたところで、教室の扉が開かれた。
誰が来ようと気まずくなろうと、明人は断るつもりで覚悟を決めている。
開いた扉から教室に入ってきたのは――
「よう、明人、待ったか?」
隣の席の健人であった。
「あれ、えっ、健人どうして教室に? さっき先生の手伝いして部室に行くって言ってなかったけ?」
「あー、いや、そうなんだけどさ、あることを忘れてて、先生の手伝い中に思い出したから戻ってきたんだよ」
「へー、じゃあ、早くその用事を済ませたら?」
こんな状況で誰かが告白に来て、それを断るってなるのはあまりに気まずすぎると思った明人は、健人にさっさと用事を終わらせるように促せる。
「いや、用事っていうのはお前に話があるんだよ。てか、お前の机に手紙を入れておいたからそれに気づいて今まで待っててくれたんだろ」
「手紙って……もしかしてこれのこと?」
明人が手に持っていた手紙を健人に見せると――
「そうそう、これこれ。いやー、悪かったよすっかり忘れちまってて」
「そっかー、お前からの手紙だったのかー。はっはっはー」
ボゴッ――
明人は笑いながら健人に近づき、渾身の右に回転を加え健人の腹部を殴りつけた。
コフッ――
「ってぇな、明人ぉ、何すんだよ!」
床膝をついた健人がお腹をさすりながら明人に抗議する。
「そりゃこっちのセリフだ! せっかく少しは期待してたのに、なんのオチだよこれ!」
「何言ってんだよお前!」
「いやいや、そりゃ、机の中に見ず知らずの手紙が入ってて、放課後の教室だろ。イベントが起こるってかんがえるじゃねーかよ!」
「……」
明人の言葉を聞いた健人がしばし沈黙し――
「なぁ、明人、お前に告白する女子がいると思うか?」
その言葉を聞き、明人は健人の背中の方に回り込み、次の一撃のため右足を振り上げる。
「これから相談を聞いてもらう相手に、その言葉は適切だと思うか?」
「適切かどうかって言われると……最適かな!」
その瞬間、明人は右足を振り下ろした。明人の黄金の右は健人の背中にクリーンヒットした。
「ってー……けど、まだまだだね」
「ちっ、流石、だてに瑞波に鍛えられてないな」
「はっはっはー、そういうことだ! ってことで相談を聞いてもらうぞ」
「はぁー、仕方ないか」
明人は自席に座り、健人も明人の隣である自席に座った。
「で、相談ってなんだよ。森山先生のことか?」
「いや、実はレフィアちゃんのことについてなんだけどさ」
予想外の自分物の名前が健人の口から出て来たため、明人は驚きを隠すことができなかった。
「レフィアさん? まさか年上の女性にしか興味のないお前から、レフィアさんの名前が出てくるとは思わなかったよ」
「そうか? まぁそうだろうな。自分でも不思議に思ってるくらいだからな」
とはいえ、明人は以前ニーニャとレフィアからそれぞれの年齢を聞いたことがあり、その年齢を考えると、健人が興味を持つのも不思議ではないと思っていた。
「で、相談っていうのは?」
「まぁ、その、レフィアちゃんがどういう人なのか、同じ家で暮らしてる明人ならわかるだろ」
「あー、まった、先に1つ聞かせてくれないか。なんでレフィアさんにそんな感情を抱くようになったんだよ」
「……」
「健人?」
「引くなよ?」
「ああ」
「緑先生のお仕置きを受けて、恍惚な表情をしていた時に、唯一優しい言葉をかけてくれたからだよ」
恥ずかしそうに頰を掻き、明人から視線を逸らしてそう言った健人に対して――
「へー……気持ち悪いな」
「引くなって言ったじゃん!」
「いや、引いてはないよ。ただ気持ち悪いと思っただけで……」
「いやいや、優しい言葉をかけてくれた女性が気になるって普通のことだろ!」
「お前じゃなきゃ普通だと思うよ」
「そうなの? 健人の恋愛感情は普通じゃないの?」
「まぁ、こいつの場合はちょっと特殊だからな……ん?」
教室には明人と健人しかいないはずだったが、何処からともなく聞き慣れた女の子の声が耳に入ってきた。
健人はすでに声の聞こえた方に視線を移し、驚いた表情をしている。
明人も健人の視線の先にいるブロンド髪の少女に目を移し、はぁ、と1つため息をつく。
「ニーニャ、いるならいるって言ってよ」
「いやぁ、こんなところでネタに巡り会えるなんて思ってなかったから、気配を消して色々と観察させてもらってたのよ」
「にっ……ニーニャちゃん……えっと、その、えっ、どうしてここに?」
「いやぁ、最初は明人を呼びに来たんだけど、机で頭を抱えている明人を見て、何かな面白そうなことが始まると思ったから、気配を消してずっと観察してたのよ。まさかこんな展開になるとは予想していなかったけどね」
ニーニャはにこやかに笑いながらここで起こった出来事をプロット状にし、紙に素早く書き込んでいる。
「ってことは、最初から話を聞いてたんだ」
「そういうことになるわね。書き終わりっと」
そういうとニーニャは筆記用具とメモ帳をかばんにしまい、健人の方に向かう。
「いいネタを提供して貰ったし、何かするなら私も手伝うわよ」
「えっ、本当か! ニーニャちゃん」
「うん、おもし……レフィアもあんまり恋愛に興味ないから、やっぱり主人としては心配なのよね。だから、ちょうどいいと思うの」
その言葉を聞いた明人はニーニャに疑いの視線を送るが、健人は恋のキューピッドを見るような輝きに満ちた眼差しでニーニャを見つめていた。
「で、まだ相談の内容って話してないわよね。明人に相談しようとしてたことってなんなの?」
健人は真剣な表情になり――
「レフィアちゃんのことが気になってるんだけど、この気持ちが恋愛感情なのか分からないんだ。だから、この気持ちをどうにかして確かめたい。これが明人に相談しようとしてたことだ」
「また、難しい相談を……」
「そうね。なかなか難しい相談ね。どうなったら恋愛感情ってわかるの?」
「俺が、緑先生や春奈さんに恋焦がれた時は、こう、胸がドキドキしたんだよな。まぁ、今もあの2人を見るとドキドキするんだけど」
健人からの恋愛相談を受けるのはこれで3度目の明人であるが、毎度毎度、健人の言葉を聞くと気持ち悪さと恥ずかしさで自然と鳥肌が立ってしまう。
「あー、だから最近レフィアさんをジロジロ見てたのか」
「ああ、自分の気持ちを確かめるためにも……」
「ふむふむ、なるほどなるほど、それじゃあ、いろんなレフィアを見て、その結果、健人の気持ちが何なのかを考えればいいのよね」
ニーニャがニヤリと不吉な笑みを浮かべ、健人に確認をする。
「まぁ、そうなるかな」
「じゃあ、丁度いいわね。御誂え向きにも、明日は体力測定と健康診断があるじゃない」
「ニーニャ……もしかして……ゴクリ」
明人はニーニャが言おうとしていたことを想像し、唾を飲み込む。
「ええ、レフィアの生着替えを覗くわよ!」
親指を立てて、キメ顏をしながらニーニャはそう言った。
「はっ、はあああ、最高だ、それは最高じゃないか! ニーニャちゃん、いや、これからは師匠とお呼びします! 師匠!」
ニーニャの言葉を聞いた健人はニーニャの考えに大きく賛同した。
その光景を見た明人は――
「ちょっと待てえええええい!」
「なによ明人、いいところなのに」
ニーニャは呆れ顔で明人に視線を送る。
「いやいやいや、精々同じグループにしていろんなレフィアさんを見てもらおうって計画を立てると思ってたら、いきなり覗きってなんだよ!」
「当然、それもするわよ。でも、それだけじゃ物足りないでしょ。だから下着姿のレフィアも見て貰って、レフィアと健人がどんな反応をするのか観察するんじゃない」
「いや、ニーニャ、堂々と観察するって言ったよね、今、それもうニーニャのためだよね」
「何のことかしら」
ニーニャは肩をすくめ、明人がなにを言っているのか分からなと言わんばかりのポーズをとり――
「まぁ、そういうわけだから、明人も健人のために手伝ってね!」
「よろしくな、明人! 師匠と明人がいれば百人力だ!」
ニーニャからは満面の笑顔で、健人からは満面の笑顔でそう言われ、レフィアの着替えを覗き作戦に参加を余儀なくされたのであった。
■
昼食を食べ終えた明人と健人とニーニャはそれぞれの理由で、教室を出たのち、屋上への扉がある階段に集合し、本日の予定を再度確認した。
「よし、じゃあ手はずは任せました。師匠」
「なぁ、本当にやるのか?」
「当然でしょ! ここまできて、明人はなに言ってるのよ」
「はぁ、怒られても知らないからな」
「それじゃあ、行きましょうか。私たちの戦場へ!」
「はい、師匠!」
「はぁ……」
そして、健人とニーニャと明人の覗きの火蓋は切って落とされたのであった。




