ホームルームとお手伝い
今週分の更新です。
楽しんでいただけると幸いです。
来週と再来週ですが、少し忙しくなりそうなので、更新が難しいかもしれません。
宜しくお願いします。
ニーニャの叫び声が教室内に響き渡った。
「ニーニャ様!」
ムニョン――
ニーニャの叫び声に反応し、レフィアが教室の扉を開けた瞬間、レフィアの胸のあたりにニーニャの頭が埋もれ、そして、ニーニャが教室内に押し戻され尻餅をついた。
トスン――
「れ、れふぃあ、早く逃げないと、お父様が……」
ニーニャの指差す方に視線を向け、レフィアの顔から血の気が引いた。
「そんな、なぜ、なぜ、この世界に国王様が……」
クラス内は騒然としていた。当然、明人もこの自体は予想していなかった。瑞波に至ってはニーニャのことも心配だが、指さされた先が己の兄であることに脳のキャパシティが限界を迎えかけていた。
「ねぇ、お兄様、これはどういうことなのかしら」
ゆらいゆらりと静かな怒りの炎を身にまといながら、瑞波は健人に近づく。
「いや、いや、いや、知らないよ、てかお前もしってんだろ、俺がロリに興味ないことくらい! いや、ちょっと、そのなんだ、瑞波さん、その拳ちょっと納めてくれな……いですか?」
「ストップ、瑞波ストップ! 健人を殴っても何も解決しないよ!」
この場で激しすぎる兄弟のスキンシップが始まりそうだったことに恐怖を覚えた明人が瑞波をホールドする。
ざわざわとクラス内がざわめき、HRどころではなくなりかけていた。
そんな中教壇に立っている緑が両手を構え、スゥっと一息吸ったのち――
パァーン!!
本日最も大きな音が鳴り響いた。
「え?」
その音を聞いたニーニャは小さく声を漏らしながら緑の方に視線を移す。
レフィアやクラスの全員も緑の方に視線を向けた。
「みなさん、静かに。色々と混乱しているようですから、ちゃんと事実確認と整理をしましょう。木崎さんも木崎くんも、それでいいですね」
「だ、大丈夫です……」
「わかりました。ごめんね明人、ちょっと暴走しちゃったわ」
「ああ、まぁこんなの慣れっこだよ。っていうか、僕も正直混乱してるから、ちゃんと話を聞こう」
瑞波をホールドしていた手を離し、明人は自分の席に着いた。
瑞波も自席に戻り、健人はホッと胸をなでおろした。
「ありがとよ、明人。流石にヤバかった」
「友人同士が殴り合いしようとしてんだ、止めるのは当たり前だよ。それより、本当にお前の隠し子とかじゃないよな」
「当たり前だろうが! 俺は緑先生か春奈さん以外に恋愛感情を抱くことはない!」
「そうだな……」
健人の思いが身内にも向いていることから相槌を打つことしかできない明人であった。
「さて、それじゃあ、状況を確認しましょうか」
全員が席に着いたのを確認した緑が話を切り出した。
「ニーニャさんに質問です。あそこに座っている木崎くんがニーニャさんのお父さんで間違いないの? 」
「はい、間違いないです。何処からどう見てもお父様です」
「えっと、レフィアさんから見ても、彼がニーニャさんのお父さんに見える?」
「はい、間違いなくニーニャ様のお父上です」
「……えっと、うーん、木崎くんに質問です。木崎くん、15年前くらいに女性とその……淫らな関係になったりしましたか?」
クラス全員が健人に視線を移す。
「先生、その質問自体が破綻してることに気づいてください……1歳の男の子がどうやって子供作るんですか!?」
どうやらそれ相応に緑も混乱していたらしい。
「……あっ、あぁ、それはそうよね。そう考えると、やはり木崎くんがお父さんってことはなさそうね。えっと、ニーニャさん、木崎くんとお父さん本当に違うところは何処もない?」
ニーニャとレフィアが健人の近くまで近づき、ジロジロと舐め回すように観察する。
ニーニャが健人の正面に立った時――
「あっ、お父様にあった右目下の2つのホクロが無いわ!」
その声を聞き、健人、明人、瑞波はホッと胸をなでおろした。
「はぁ、よかったわ。ということは木崎くんはニーニャさんのお父さんじゃない。ってことね」
「はい」
緑の言葉に相槌を打ってから――
「木崎くん、ごめんなさい。変な混乱を招きました」
「木崎さん、本当に申し訳ありませんでした。」
と頭を下げた。
「いや、いいよ、誤解が解けたんなら全然大丈夫だよ! それより、ニーニャちゃん、自己紹介が途中だったんじゃないの? もう1人の人は名前すらね」
その言葉を聞いたニーニャとレフィアが一度顔を見合わせ、緑に視線を向ける。
「ちょっとしたトラブルがあったけど、転校生の紹介に戻りましょうか」
2人の視線を受け、緑がHRの再開を宣言した。
その後も明人の家でホームステイしているなどの話の際に、クラスがざわついたが、お父さん事件の後だったため、それほどインパクトは強くなかったらしい。
自己紹介も終わり、ニーニャとレフィアは2年7組のクラスメイトとして迎え入れられると――
「そうでした、1つだけ。ニーニャさんとレフィアさんは文芸部に入部確定ですので、みなさん部活勧誘はしないでくださいね!」
「「「えーっ!!」」」
「緑先生、それは横暴じゃ無いですか!」
「いえ、ニーニャさんとレフィアさん立っての願いですから」
そう言うと、部活勧誘をしようとしていた生徒たちがニーニャとレフィアに交互に視線を向け――
「本当なの、ニーニャちゃん、レフィアちゃん」
と聞き始めた。
「ええ、部活は文芸部って決めてるの!」
「私はニーニャ様と同じ部活と決めていますので」
「そっかー、うー、残念。でも、よかったらまた見学しに来てね!」
そんな一幕もあったが、そのあとはHRでクラス委員や各委員会の担当者を決めてHRはつつがなく終わった。
キーンコーンカーンコーン――
チャイムが鳴りお昼休みになると、クラスの大半が購買部へ向かう。
明人は持参した弁当を何時ものメンバーである健人、瑞波、秋音にニーニャとレフィアを加えてクラス内で昼食を食べ始めた。
「明人、昼食を食べたあとは校内案内してくれるのよね!」
「それなんだけど、ちょっと今日は案内できそうにない……」
「えっ!? どうしてよ!」
「さっき、森山先生から手伝いを頼まれてね」
「うー、先生の頼みじゃ仕方ないわね……」
ぶすーっと頰を膨らませ我慢をするニーニャを見た瑞波が――
「じゃあ、私と秋音で案内してあげよっか?」
「えっ、いいの!?」
「いいよー。どうせ昼休み暇だし。秋音もいいよね?」
「うん、いいよ!」
秋音も二つ返事で了承し、女の子チームで学校案内で盛り上がったので、明人もホッとした。
「じゃあ、俺は明人と一緒に緑先生の手伝いをするかね」
「ありがと、健人。それじゃあごめんだけど、ニーニャとレフィアさんの案内をお願いするね」
「まかしといて、あきとん! 女子トイレとか女子更衣室とか、男のあきとんたちが入れないところまで案内してくるよ! ね、瑞波!」
「当然よ! 大切なところだしね!」
2人でガッツポーズを作りながら女子トイレや女子更衣室などと叫ぶものだからクラスに残っていた他のメンバーがこっちに視線を送って来た。
昼食を食べ終え、明人たちは職員室へと向かった。
ガララララ――
「「失礼します」」
職員室に入り、緑の席に向かうと――
「あれ、涼も呼ばれてたの?」
そこに立っていたのは、文芸部部長の相良涼だった。
「やぁ、明人、健人。そうなんだよ。何の用なんだろうね」
「って、あれ、緑先生のいないじゃん」
「さっき他の先生に聞いたら、購買に行ったんだってさ。だからここで待たせてもらってるんだ」
「そっか、じゃあ僕らもここで待とうか」
「そうだな」
そう言って、男3人緑の席の前で待つことになった。
「そういえば、部室の掃除ありがとうね。明人」
「いやいや、いいよ。ちょっとばかりメッセージを読み解くのが大変だったけど」
「ふふふ、明人もまだまだだね」
「いやいや、あれ読み解けるのは瑞波くらいだぞ」
「そうかなー?」
そんな話をしていると、3人の携帯電話に緑から『ヘルプ! 購買部まで来て』というメッセージが送られて来た。
メッセージの内容を涼と健人に伝え、3人で購買部に向かうと、緑の前にダンボールが4箱ほど積み上がっていた。
「ごめんなさい、お昼休みなのに」
「いえ、大丈夫ですよ。それよりも、これはなんですか?」
明人が積まれているダンボールを指差すと――
「これは、今朝家から運んで来た私の書籍コレクションよ。これを部室に運んで欲しいの」
「なるほど、そういうことですか……先生に、これ危うく涼と2人で運ぶことになってたんですか?」
「いやぁ、ダンボールの個数2つだと思ってたら、トランクにも2つ入ってたのよね。だから急遽木崎くんにもメッセージを送ったのよ」
「水臭いですよ緑先生! 俺、愛する先生のためなら馬車馬の如く働きますよ!」
「ありがとう。でも、それを言われるのが嫌だから森川くんと相良くんにお願いしたのよね」
健人の献身を見事に一刀両断した緑の言葉だったが――
「了解っす! 今後は気をつけます!」
健人がそのくらいでへこたれるわけがなかった。
「それじゃあ、1人の1つのダンボールを持てばいいね」
涼がそういうと、他よりも少し大きめなダンボールを手に取った。
明人と健人も一番小さいダンボールを残し、それぞれダンボールを手に取った。
「ありがとう。あと、1つだけ注意なんだけど、絶対に転ばないでね。転ぶ時はダンボールを地面にそっと置いてから転んでね」
「ダンボールをそっと置いてから転ぶとなると、故意に転ぶしかありませんね」
緑の注意を聞いた涼が静かにツッコムと――
「故意に転ぶなんてもってのほかよ!」
と緑からツッコミが入った。
とにかく、緑のコレクションなので丁重に扱うことというお達しであった。3人と緑は他の生徒とぶつからないように荷物を部室へと運ぶ。
途中何度か廊下を走る生徒とぶつかりそうになったが、緑が静かに怒りの声をあげ、走っている生徒を急停止させた。
普段の緑であれば、もう少し穏やかに律するが、今はそんな些細なことを気にしていられない。
そうして、部室にダンボールを運び終えた3人と緑は緊張から解放され、部室に置かれている椅子に座って一休みした。
「はぁ~。疲れましたぁ~」
「やっぱりこの作業は神経を使いますね」
「そりゃぁ~、そうですよぉ~。私の大切なコレクションなんですよぉ~」
神経を使ったかつ部室であることから緑がプライベートモードになっていた。
「でもぉ~、助かりましたぁ~」
「いえいえ、このコレクションは僕らもお世話になっていますから。いつも本当にありがとうございます」
「いえいえ~、好きでやっていますのでぇ~。そうでしたぁ~、相良くん。今日の部活に新入部員が2人来ますので、よろしくお願いしますね~。」
「そうなんですか!?」
部員勧誘をしていないこのタイミングで新入部員が入ることに涼は驚きを隠せなかったようだ。
「そうだ、伝え忘れてたね。いま僕の家でホームステイしているニーニャとレフィアさんっていうんだ。また後で紹介するから」
「外国人が来るのか。これはさらに驚きだな」
「さっきなんてHR中に健人が父親と勘違いされてさ」
「やめろよ、それは、命の危機だったんだぞ!」
「ほほう、その状況を詳しく説明してくれないか」
涼を含め3人でワイワイ話し、その話を椅子に座りながら緑が聞いている。
キーンコーンカーンコーン――
しまったと緑が時計に視線を向けると、昼休み終了の時間になっていた。
「あっ……」
「いそいで!」
緑が声を張り上げ、その声を聞いた3人が早歩きで教室へと戻る。
緑は部室に鍵をかけ、そのあとは職員室へと駆け足に近い早歩きで向かった。
明人たちが教室に戻ると、2人以外の生徒掃除のため、自分の席をクラスの後ろの方に運び始めていた。
「はぁはぁ……」
「なんとか……間に合った?」
「っていうか、今日はこんなのばっかりだな俺ら」
「そうだね……」
そういって、明人と健人も自分の席を運び始めた。
「明人、明人、この学校ってすごいわね! 私の知らないことがいっぱいだったわ!」
「よかったね!」
「秋音、瑞波ありがとう!」
「いいわよ、私たちも楽しかったし! ね、秋音」
「いやー、ニーニャちゃんにレフィアちゃんいいキャラしてるわー!」
「で、これから何が始まるの?」
「これから、掃除が始まるんだよ」
「掃除! 私モップがやりたいわ! 部室掃除の時に身につけたモップさばきで今日も汚れを滅殺するわ!」
そんな話をしていると、スピーカーから掃除の音楽が流れ始め、掃除の時間が始まったのであった。




