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そして一つの始まりへ

今週分の投稿です。

楽しんでいただけると幸いです。


友人のTさんがニーニャとレフィアの表情差分に色を入れてくれました。

凄く可愛いイラストなので、是非見ていただけると幸いです。


宜しくお願いします。

「さて、お昼ご飯も食べ終えたし、片付けの続きをしようか」

「そうね、そろそろ再開しましょっか」

空の弁当箱をカバンに入れながら、明人がそう言うと、瑞波も自分が空にした弁当箱を明人のカバンに入れつつ同意する。


「よっし、私の一段階進化したモップ捌きをここの床たちに見せつけてやるわ!」

「私もお昼をいただいたいので、真のメイド力を発揮させていただきます」

「……いや、メイド力って」

普段のレフィアでは言わないであろう言葉を口にした結果、少しの沈黙の後、ニーニャから容赦ないツッコミが入れられた。


「さて、拭き掃除の続きですね」

ニーニャのツッコミが恥ずかしかったのか、レフィアは頰を赤らめながら、バケツを手に取り、そそくさと手洗い場に向かった。


「さてと、それじゃあ僕も、不要物を運ぶとしますか」

そう言うと、空の弁当箱が入ったカバンを部室の脇に置き、廊下に置いてあったダンボールを持って、ゴミ捨て場に向かう。


「そだ、ニーニャちゃん、さっきモップ捌きって言ってたけど、こっちを手伝って欲しいんだ」

「わかったわ、ここの、ここの汚れを倒したら手伝うわね! あとちょっとで倒せそうだし!」

モップを手に持ち、床を掃除し始めていたニーニャは頑固な汚れという凶悪な敵を前に、持ち前の見事なモップ捌きでその敵を打ちのめそうとしていた。


「ありがと、じゃあ、終わったら手伝ってね。ふぅ、さて、やりますか!」

ニーニャにお願いしたのち、瑞波は立ち並ぶ本棚に入れられている本や冊子を見つめて力強く生きを吐く。


本棚に詰められている本を机の上に移動させていく。一つの本棚に入っている全ての本を机に移動した後、本棚の全体を戻ってきたレフィアに水拭きと乾拭きをしてもらう。


その間に瑞波は、机の上に平積みされた本を作者別で区分けし、区分けの終わった本をレフィアが本棚に戻していく。


「瑞波、やっと奴を倒したから私も手伝うわね!」

「ありがとう! ニーニャちゃん」

1個目の本棚の整理が終わった頃に、凶悪な敵に打ち勝ったニーニャが瑞波と合流し、作者別に区分けする作業を分担して始める。


順調に作業が進み、7個目の本棚の整理に差し掛かった。

「さて、ここからが鬼門ね……」

「瑞波……キモンってなに?」

「えっとね、鬼門っていうのは『鬼』の『門』って書いて鬼門って言うんだけど、その人にとってどうしてもうまくいかない事柄や場所のことを言うんだよ」


「へー、で、この本棚が瑞波にとって鬼門なの?」

「そうよ、去年もそうだったんだけど、この本棚を掃除した時に……悲しい出来事が起こってしまったのよ……」

瑞波は去年の掃除模様を思い出しながら、顔に暗い影を落としている。


「ゴクリ……いったい何があったのよ……」

「うん、あのね、ここにある本が面白すぎて、掃除を忘れて読みふけっちゃったのよ!」

力強く、本当に力強く瑞波が叫ぶと――

「お前、今年は絶対に読みふけるなよ!」

廊下から明人が瑞波にツッコミを入れる。


「ううう……」

「大丈夫よ、瑞波! 今回は私もレフィアもついてるわ!」

「そうだね、今回はニーニャちゃんもレフィアちゃんも手伝ってくれてるもんね! 今年はきっと大丈夫!」

そう言って瑞波はニーニャとレフィアに視線を送り、ニーニャとレフィアはその視線に同意するようにコクリと頷いた。


「よし! じゃあ、挑むわよ! この鬼門に!」



「瑞波、この漫画の続きどこにあるの?」

「んー? あー、その続きは今私が読んでるから、もうちょっと待ってて」

「えーっ、すっごく気になるのに、この続き……」

「少しの間別の漫画読んでてー」

「むーっ、何かあるかなー」


7個目の本棚の掃除を始めて数分後、瑞波の言った「この漫画面白いんだよねー」の一言から全てが瓦解した。

瑞波のその言葉を聞いたニーニャが、漫画を手に取り読み始め、瑞波も同じように読み始める。

2人が漫画を読み始めてもしばらくはレフィア1人で掃除をしていたのだが、掃除をしている間に鬼が主人公の漫画を見つけ、ついつい興味が引かれレフィアも漫画を読み始めたのであった。


「うーん、どうしよう」

本棚から出した本の山を見て、瑞波が読み終わるまでの繋ぎとして読むための漫画を探していたニーニャは、ふと8個目の本棚に目を向ける。

そこには、背表紙の色が異なった冊子が並べられていた。


「ねぇ、瑞波、そこの本棚にある本ってなんなの?」

「ん?んー、そこの本棚には……そうだ! ニーニャちゃん、この本読んで見てよ!」

瑞波が8個目の本棚から一冊の本を取り出し、ニーニャに差し出す。


「これって、漫画じゃないわよね? 普通の小説なの?」

「普通の小説とは少し違うかな。これはオムニバス小説なの」

「オムニバス小説?」

「うん、一つのテーマに沿っていろんな人が短編の小説を書いたものなの。この本はここでしか読めないだろうから、せっかくだし、一回読んでみてよ。全部読むのが大変だったら、これとこれとこれの3作品だけでいいし」

ニーニャに目次を開いてもらい、ピックアップした3作品を指差す。

「じゃあ、瑞波が読み終わるまでの暇つぶしに、そのオススメの3作品を読んでみるわ」


瑞波はニーニャに本を渡したのち、廊下の方に移動し不要物がどれくらい残っているのかを確認する。

「うん、こんだけあれば、もう少しかかりそう」

そう呟くと、部室に戻り、読みかけの漫画を元に戻し、整理の続きを始めた。


「瑞波様、すみません、ついこの漫画に集中してしまいました」

瑞波が整理を再開したのに気づいたレフィアはすぐに瑞波の手伝いをしようと整理を始める。

「レフィアちゃん、その漫画、まだ読み終わってないでしょ。整理の手伝いはその漫画を読み終わってからでいいよ! 私もその漫画を好きだし、その巻で続きが読めない辛さはよく知ってるから」

「しかし……」

「いいの! その漫画読んで、一緒にその漫画について語ろうよ! 今手伝ってもらうよりも、そっちの方が私は嬉しいな」

瑞波が笑顔でレフィアにそう言うと、レフィアがメイドのお辞儀をし――

「ありがとうございます」

感謝を表した後、漫画の続きを読み始めた。



7個目の本棚の整理が概ね終わった頃に、ニーニャが小説を読み終えた。

「瑞波! このオススメの2作品すっごく面白かったわ!」

「んふふー、そうでしょー!」

瑞波は鼻高々気に胸を張る。


「でも、最後の1作品は何て言うのかしら、凄く不思議な感じになったわ。文章は評価できるほどのモノでも無いし、内容もソコソコなんだけど、何故かしら、目が離せなかった! なんなのこの作品! 本当にいろんな意味ですごいわ。こんな感覚初めてよ! この作者の他の作品も読んでみたい!」

ニーニャは今までに感じたことのない感覚に戸惑いつつも、興奮を隠し得ないようだ。


「そうだよね、やっぱりそう言う感想になるよね。私も最初読んだ時はそんな感じだった」

ニーニャから本を受け取り、本棚に戻しながら、瑞波も頷く。


「その作品を書いたの作者に一回会って見たいわね」

「この作者なんだけど……」

「おーい、瑞波、こっちの不用品は全部処理場に運び終わったよ! もう不用品はないよね?」

瑞波が作者のことを伝えようとした矢先に、明人が部室に戻ってきた。


「あっ、だっ、大丈夫だよ! こっちもあらかた本棚の整理は終わったよ」

「おっ、今回は大丈夫だったんだな……ってレフィアさんが漫画読んでるんですか!?」

明人の驚きに対して一切の反応をせず、レフィアは漫画に集中している。


「えっと、どうしてこうなったんだよ」

「ほら、その漫画って鬼が主人公だから、共感を覚えたんじゃないかな」

「なるほどね。まぁ、その本は面白いし、レフィアさんとその本について語ると面白そうだし、是非最後まで読んでもらおう。手付かずで残ってるのは最後の本棚のだけなの?」

レフィアが集中して漫画を読んでいることに納得した明人は、整理を手伝おうと、瑞波に残っている整理場所を確認する。


「うん、お願いできる?」

「いいよ。ニーニャもてつだ……」

「ニーニャちゃんにはこっちの残りをやってもらって、私と明人で最後の本棚の整理しちゃったほうがいいと思うんだけど。どうかな?」

「うーん、それもそっか、この本棚は僕と瑞波でやったほうがいいかもね」

「じゃあそうしよう! ニーニャちゃん、こっちの本の整理お願い!」

「わかったわ!」


そうして残りの整理を手分けして片付けたのであった。



「本当に申し訳ありませんでした」

「いやいや、いいですって、それよりも、あの本面白かったですか?」

「はい、とても面白かったです! 主人公にも共感できましたし」

掃除を終えた明人たちは、学校を後にし帰りの電車をホームで待っている。


先ほどレフィアが読んでいた漫画について明人がレフィア話しおり、そこから少しの離れたところでニーニャと瑞波が携帯電話で連絡先を交換しながら話していた。


「ニーニャちゃんが読んでた作品の作者なんだけど」

ニーニャが読んでいた本をカバンから取り出し、目次を見せる。

「えっ……、これ、本当なの?」

「うん。っていうか、ニーニャちゃん、今更だけど作品のところに作者名も書いてたはずなんだけど……」

「ごめん、読んでなかったわ……っていうか瑞波、その本持って帰ってきたの?」

「これは私の私物だよ」

「そうなんだ……ってことは……」

少し思案してニーニャは何度か頷き、そして瑞波にある確認をすると、瑞波はコクリと頷いた。


カーンカーンカーンカーン――

ビクッ――


やりとりの途中ではあったが、電車が踏切を渡る前の鐘がなり始めたので、ニーニャと瑞波は明人とレフィアの近くに戻り、電車に乗り帰路に着いた。



「それじゃ、また明日ね明人。明日から新学期だし、寝坊しないでよ!」

「するわけないよ」

「ニーニャちゃんとレフィアちゃんもまたね!」

「またね、瑞波。今度はいつ会えるかわからないし。また会える日を楽しみにしてるわ!」

「それでは瑞波様、またお会いできる日を心待ちにしております」


それぞれ挨拶を終え、家に帰り着き玄関を開けると、美味しそうな匂いがリビングから漂ってきている。

「「ただいま」」

「ただいま帰りました」

「おかえりー、夕食の準備はできてるから、手を洗ってリビングに入ってきてくれたらいいわよ」

春奈の指示に従い、明人たちは手を洗い、リビングに向かう。

リビングの扉を開けると、テーブルの上に夕食が準備されており、春奈が椅子に座っていた。


「おかえりー。みんな席について」

「ただいま、春奈。明人が帰りの連絡をしてたのはこのためだったのね!」

「そのとーり! 明人、ありがとね!」

「いえいえ、夕食の準備はありがとうございました」

「本日は本当にありがとうございます。春奈様」

各々が自分の席に着くと春奈が話を切り出した。


「明日から明人も新学期ね」

「そうですね。色々大変そうです」

「そうなのよね、明人が学校に行っちゃうってことは私の相手が出来なくなるってことよね。うーむ、外に出られないのは辛いわね。でも、勉強はしっかりしないとだしね。うん、また、学校終わってからでいいから、散歩とか付き合ってね! 絶対よ!」

ニーニャは少し残念そうな表情をしたのち、真剣な眼差しで明人を見た。


「うん、そうよね、そう思うわよね。普通は」

春奈が意味深な言葉を言いながら、カバンから手のひら大の2冊の小冊子を取り出し――

「ニーニャちゃん、レフィアちゃん、これは私が勝手にやったことだから、嫌だったら断ってくれていいから」

「「?」」

唐突な春奈の言葉にニーニャとレフィアは疑問符を頭に浮かべる。


「2人にこれを――」

春奈がカバンから取り出した小冊子を1冊ずつニーニャとレフィアに渡し――

「明日から、ニーニャちゃんとレフィアちゃんには明人と同じ学校に通ってもらおうと思ってるの!」

「へ? え? えええええええええええええええ!! 通えるの、学校に!? 通っていいの!!」

「あ、あの、春奈様、それは、本当によろしいのでしょうか?」

春奈からの申し出に2人は信じられないことを聞いたとばかりに驚いている。


「うん、今、目の前にある小冊子が学生証よ」

ニーニャとレフィアが自分の学生証を春奈から受け取った。ニーニャは宝物でも手にしたかのように目を輝かせ、レフィアは自分が行っていいものかと、手にした学生証を困惑した表情で眺めている。


「本当に、私も行ってよろしいのでしょうか」

未だに困惑しているレフィアが春奈に再度確認する。

「レフィアちゃんが嫌じゃなかったらね!」

春奈がハニカミながらレフィアにそう答えると、レフィアが立ち上がり、深々と礼をする。

「ありがとうございます。是非お願いします。」

その礼に合わせて、ニーニャも立ち上がり礼をする。

「ありがとう、春奈!」


「どういたしまして! 制服についてはまだ出来上がっていないから、少しの間は私服で通ってね」

「わかったわ!」

「はい!」


「これからは学校でもよろしくね、ニーニャ、レフィアさん」

「はい、よろしくお願いいたします。明人様」

明人の言葉にレフィアがハニカミながら応える。


「明人!」

ニーニャの声がする方を向くと――

「私はニーニャ=ミルストリア、ミルストリア王国の第15王女。あなた方が言うところの異世界から来たエルフです。よろしくお願いします」

ニーニャが初めてあった頃の挨拶し、右手を明人に差し出す。

その意図を汲み取った明人は――

「僕は森川明人、今はこの家の家主代理をやってます。よろしくお願いします」

明人もニーニャと同じように、右手をニーニャの方に差し出す。


そして2人は満面の笑顔で、それぞれの右手を握り合い――

「よろしくね! 明人!」

「よろしく! ニーニャ!」


そして、新たなの学校生活が始まるのであった。



「そうそう、明人に言い忘れてたわ」

握手を終えて、自分の席に戻ったニーニャが明人を見据える。

「どうしたの?」

「私ね、あなたの事をライバル認定したわ! 」

「どういうこと?」

突然の宣言に明人は何が何だかわかっていなかったが、ニーニャの発した次の言葉を聞いて、すべてを悟った。


「今日ね、あなたの書いた小説を読んだの」

「えっ、ちょっ、読んだって、え?」

「文章はまだまだで、内容もソコソコだったけど、すごく心にくるものがあったわ。それは今の私に足りないもの! だから、私はあなたの書いた小説のように心にくる小説を書いてみせる!」

「……えーっと、つまり?」

「明人、一緒にライバル同士、競い合って自分の小説を高め合いましょ!」


”僕は一生忘れないだろう、背景に炎を燃やし、その中で輝くような笑顔を放っているニーニャの姿を。

そして、同時に考えた。新学期早々、どこで瑞波に説教するべきかと。”


次回より第2章が始まります。

1章以上に様々なキャラが登場します。

第2章までにはキャラクター紹介も更新できるよう頑張ります。

今後もよろしくお願いします。

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