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切符と電車と定期券

今週分の投稿です。

楽しんでいただけると幸いです。

宜しくお願いします。


※2017/10/1 キャラ名の間違い修正

ピロリロリロリン――

聞きなれたアラームの音が部屋の中に鳴り響く。

明人はいつものように目を覚まし、すぐさまベッドから降り、アラームを止めて伸びをする。


「んーっ……ふぅ。よし、着替えるか」

パジャマを脱ぎ、いつも通りの私服に着替えてから、キッチンへと向かう。

明人が自室の扉を開くのと時を同じくして、ニーニャの部屋の扉も開き、メイド服を着たレフィアと、眠気がしっかりと取れていないニーニャが姿を現した。


「おはようございます。明人様」

「おふぁよ、明人」

「おはよう、レフィアさん、ニーニャ」


朝の挨拶を済ませ、キッチンへ向かうと、レフィアと明人は朝食の準備に取り掛かる。

明人はベーコンエッグを人数分作り、レフィアは昨夜の作り置きしていた味噌汁を温め直し、サラダの準備を始める。

顔を洗い、しっかりと目覚ましたニーニャがキッチンに戻って来たため、明人は箸や皿をテーブルに運んでもらうよう指示を出す。


「ニーニャ、そこに置いてあるお箸とお皿をテーブルに運んでおいて」

「わかったわ。明人」


「明人様、サラダの準備が終わりましたので、テーブルに運びますね」

「お願いします!」

各々が自分の役割を果たし、朝食を食べ始めた頃に、春奈がリビングに入って来た。


「おふぁよう、みんな……ふわぁぁぁぁ」

「「おはようございます」」

「おはよう」

大きな欠伸をしながら、春奈も席に着き、朝食を食べ始める。


「春奈さん、今日は僕ら学校に行くんで、後片付けお願いしますね」

「ほいほい、了解。ニーニャちゃんもレフィアちゃんも行くんだよね?」

「そうですね」

「んじゃあ、洗濯物も干しとくわ」

「あっ、そうですね、お願いします」


その会話を聞いていたレフィアが、食事を中断し、春奈と明人に意見する。

「明人様、春奈様、洗濯物は私が干しますので、春奈様には食器洗いだけお願いすればよろしいのでは?」


「いやいや、時間的に難しいでしょ。ニーニャちゃんの髪の毛とかどうするのよ」

「いえ、しかし……」

「いいの、いいの、これは私の役割なんだから。レフィアちゃんの役割は明人と一緒に朝食を準備することなの」

そういうと春奈はお味噌汁をズズッと口に含んだ。


「わ、わかりました、では、よろしくお願いします」

春奈がコクリと頷くとレフィアも食事を再開した。


各自は朝食を終えたのち、学校へ行く準備を始める。

明人は私服から制服に着替え、ニーニャは髪の毛を整えてもらい、レフィアは外出用の服に着替える。

朝食の準備の時に一緒に用意していた弁当をリュックに入れ、3人は玄関に集合した。


「それじゃあ、学校に向かおうか」

「ええ!」

「はい!」



明人の家から学校までは約50分、明人の家から駅まで15分、学校の最寄り駅まで電車で20分、最寄り駅から学校までは15分。そんな道のりである。


「ところで、明人、瑞波とは駅で合流なの?」

「ん? いや、瑞波の家の前を通って駅に行くから、瑞波の家で合流だよ」

ニーニャの素朴な疑問に対して、前方を指差しながら明人は応えた。


明人が指を指している方に目を向けると、瑞波がこちらに向かって大きく手を振っている。

「おっはよう! 明人、ニーニャちゃん、レフィアちゃん」

「おはよう」

「おっはよー、瑞波」

「おはようございます。瑞波様」

挨拶が終わると瑞波がニーニャの方を見て――

「あっ、ニーニャちゃん、今日はアップ系の髪型なんだ。かわいい!」

「そうなのよ、今まではツインテールばっかりだったんだけど、レフィアが携帯電話で調べてやってくれたの!」

「そうなんだ、さすがレフィアちゃんだ……ん?」

「どうしたの?」

「ううん、何でもないよー」

瑞波は手をパタパタと揺らし、笑いながら応えた。


「少し余裕があるとはいえ、ここで話し続けてると電車に乗り遅れるから、続きは歩きながら話そう」

明人が瑞波とニーニャに提案すると、二人もその提案にコクリと頷き、駅に向かって歩き始める。


明人はふと前を歩いているニーニャを見たのち、隣を歩いているレフィアに目を向ける。

「どうされました? 明人様」

「あの、レフィアさんは死使の話ってニーニャから聞きました?」

「はい、その話については昨夜のうちに伺っております。実際に鐘の音を聞いたわけではありませんので、なんともいえませんが、極力何事もないように気をつけます」

「それならよかったです。ニーニャのことだから説明を忘れてるんじゃないかと思ったんですが、大丈夫そうですね」

「心配してくださってありがとうございます」

レフィアは明人に向かって首だけで礼をすると、口元に笑みを浮かべる。


その後も入れ替わり立ち代わりでたわいない話をしていると駅が見えて来る。

駅についたのは電車が来る5分前であった。


明人はニーニャとレフィアの分の切符を購入し、2人に渡す。

「はい、これ切符だよ。これを駅員さんに見せてホームに入れてもらうんだよ」

「ありがと、明人」


切符を受け取ったニーニャがマジマジと切符を眺め――

「こんな紙切れを見せるだけで、あの電車に乗ることができるのね」

そう言うと、今度は明人の方に目を向ける。


「私たちは切符を貰ったけど、明人と瑞波はどうするの?」

「僕らは定期券があるから、これを駅員さんに見せてホームに入れてもらうんだ」

「なにそれ! 切符とは違うものなの?」

貸してくれと言わんばかりに手を差し出して来るが、今は一旦ホームに入ってしまいたいと思った明人は――

「後で貸してあげるから、とりあえず、ホームに入ろうか」

と提案し、駅員の立つホームの入り口に向かう。

ニーニャとレフィアも明人について駅員の立つ入り口に向かい、駅員に切符を差し出す。

ニーニャとレフィアから切符を受け取った駅員は入場照明のハンコを押して切符を返却する。


ホームに入ると、目の前には線路が2本と対面のホームが見える。入り口にすぐのホームは学校とは逆の路線であるため、明人たちは跨線橋を渡り反対側のホームに移動する。


カーンカーンカーンカーン――


反対側のホームについたタイミングで電車が駅付近の踏切に近ずいてきたことを知らせる鐘の音が聞こえる。


ビクッ――

ビクッ――


「どうしたの? ニーニャちゃん、レフィアちゃん」

鐘の音を聞いたニーニャとレフィアは条件反射で体を強張らせており、表情も先ほどまでとは異なり、少し緊張したような表情になっていた。


「なんでもないわよ。ただ、この鐘の音が聞きなれなくてびっくりしちゃったの」

こわばった表情からなんとか笑顔を作り、ニーニャは応えた。


「そっか、ニーニャちゃんたちって海外の人だもんね。あんまりに日本語が上手だから忘れてたわ」

「日本に来るため必死に勉強した甲斐があったわね。ねっ、レフィア!」

「えっ……あっ、そうですね、ニーニャ様」

突然振られたレフィアも少し詰まりながらも応える。


踏切の鐘の音が聞こえてからしばらくすると、電車がホームに入って来る。

入ってきた電車は2車両編成で、明人たちは2両目の前方の扉から電車に乗り込む。


「うわぁ、これが電車の中なのね」

電車の中に入る頃には踏切の鐘の音も止まっていたため、いつも通りの調子を取り戻したニーニャが騒ぎ出す。


「ニーニャ、電車のなかでは静かにね。あんまり騒ぐと他のお客さんに迷惑がかかるからね」

「むぐっ」

ニーニャが自分の口を自分の手で塞ぎ、コクコクと頷く。


「いや、普通に喋るには大丈夫だから。あんまり騒ぎすぎちゃダメってだけだよ」

「そうなのね。よかったわ」

4人掛けの席が空いていたので、ニーニャとレフィアを窓側、明人と瑞波は通路側に座る。

座った後もニーニャはキョロキョロと車内を見回していたが、電車が出発すると、すぐに窓に目を向ける、移り変わる風景に目をキラキラさせている。


「うわぁ、車の窓から見た風景とはまた違う風景が見えるわ! すごいわね、レフィア」

「はい、車よりも風景が早く動いていますね」

そんなニーニャとレフィアを横目に、明人は瑞波と今日の予定を整理していた。


「それじゃあ、いらないものは私が整理するから、不要なものをゴミ置場に持っていく役割を明人にお願いしてもいいかな」

「それでいいよ、それが一番妥当だし。あと、整理中に重いものがあったら、レフィアさんに手伝ってもらうといいよ」

「レフィアちゃんに?」

「うん、メイドの教養として重いものを持つコツを知ってるんだって」

「そっか、メイドさんだもんね! わかったわ」

「それ以外の場合は、ニーニャもレフィアさんも拭き掃除、掃き掃除をお願いしたらいいよ」

明人の提案を聞き、それを携帯電話のメモ帳にメモしていく瑞波。


「おっけー、じゃあこの方針くわね!」

そう言うと瑞波はニーニャの方に視線を向ける。

「どうしたんだよ、瑞波、ニーニャの方をマジマジと見て」

「えっ、いや、綺麗な髪の色してるなーって」

あははーと何かを誤魔化しているのは明らかだったが、明人はあえて何も言わなかった。


「話は終わった? 明人」

「うん、終わったよニーニャ。今日はしっかりニーニャにも掃除を手伝ってもらうから覚悟してね」

「当たり前よ! それを条件に学校についていくんだから! 役割はしっかり果たすわよ!」

ニーニャがムンっと椅子の上で胸を張り、ポンと手のひらで胸をかるく叩く。


「そうだ、ねぇねぇ明人、さっきの定期券っていうカードを見せてよ!」

ニーニャは胸を叩いた手をこちらに差し出し、定期券を渡すよう要求して来たので、パスケースから定期券を抜き出し、その手の上におく。


「へー、これが定期券なのね、確かに私やレフィアが貰ったカードと全然違うわね」

「この定期券は、カードに書かれた乗車駅と下車駅の間を、指定した期間であれば切符を買うことなく電車で移動することができるんだよ」

「なるほどね、このカードに書かれた駅名が乗車駅と下車駅ってわけね」

ニーニャは明人の説明を聞きながら、ウンウンと頷きながらカードをマジマジと見つめる。


「この定期券って、切符とは入手方法が違うの?」

「そうだね、すごく簡単に説明すると、ニーニャに渡した切符を指定した期間分先に購入したって思えばいいよ」

「先にまとめてお金を払ってるってこと?」

「そうなるね」

「なるほどね、切符は一回限りの契約書、定期券は期間限定の契約書に近いものなのね」

ひとしきり定期券に書かれた内容を読み終え、ニーニャは明人に定期券を返した。


「そういえば、さっきのすごく簡単に説明するとって言ってたけど、他にも何か補足があるの?」

「うん、ただ、この話は色々難しいから、春奈さんを含めて話したいかな」

「わかったわ! そう言うことなら、また今度説明してね!」


そんなたわいもない話をしている間に電車は目的の駅に着いたので、明人たちは下車し、学校へと歩みを進めるのであった。

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