幼馴染とお土産と
今週分の更新です。
楽しんでいただけると幸いです。
よろしくお願いします。
朝の喧騒を終えて、朝食を食べ終わった春奈は歯を磨いたのち、自室に戻り布団にダイブ。
ものの数秒で意識がなくなった。
明人とニーニャはいつものように朝食を後の片付けを行い、レフィアは第二陣の洗濯物を干していた。
「終わったあああ!」
「おつかれ、ニーニャ」
「朝のお仕事終了ね! じゃあ、今日はどこに連れて行ってくれるの!」
いつものようにキラキラと期待に満ちた眼差しでこちらを見てくるが、本日どこに行こうか明人は全然決めていなかったのだった。
ピンポーン――
どこに行こうか考えていると、チャイムの音が家の中に鳴り響く。
「お隣さんが回覧板でも持って来たのかな」
そう呟きながら明人は玄関に向かうと――
ガララララ――
明人が扉を開ける前に、外から扉が開けられた。
「やっほー、明人、春休み中私に会えずに悲しかったでしょ! 昨日の夜にこっちに帰って来たからお土産持って来たわよ」
「あのさ、家主が玄関の扉を開ける前に勝手に扉を開けるなよ。不法侵入だぞ」
左手で土産であろう箱を差し出している瑞波を見て、明人は呆れた声で注意する。
「まぁまぁ、そんな固いことは言わずにさ。とりあえず、これお土産」
「ありがと」
「いえいえ~、それじゃあお邪魔しまーす!」
明人が土産を受け取ると、瑞波はすぐさま靴を脱ぎ捨て、家の中に入って言った。
明人にとってもいつものことだったので、いつものように玄関に脱ぎ捨てられた靴を整えていると――
「明人、あきと、あきとー!!!」
大きな声で明人の名前を叫びながら、瑞波はリビングから怪訝そうな顔をして玄関に向かってくる。
そして、明人の肩を掴み、前後に激しく揺らし始めた。
「なに、なに、なに、あの童話に出て来そうな金髪の可愛い女の子は! 私がいない間に一体なにがあったのよ! いや、それよりも、あの女の子の名前は、どこ出身なの、好きな食べ物は、お姉様って呼ばせていい!」
「ちょっ、まっ、ちょっ……」
肩を掴まれ、それなりに激しく前後に揺らされているため、説明しようにもうまく言葉を発せられないため、少女の腕を3度叩く。
そうすると、前後の揺れが止まった。
「あー、ごめんごめん、確かにあの状態じゃ説明できないよね」
「はぁ、まっ、いつものことだしいいよ。とりあえず、リビングでお茶を飲みながら説明するから、一旦リビングに行こうか」
そう言って、明人はリビングに向かい、瑞波はその後ろを追いかけるようにリビングに戻った。
「はい、コーヒーでいいよね」
「うん、ありがとう」
お茶菓子として一口チョコレートの袋をテーブルの真ん中に起き、明人と瑞波はコーヒー、レフィアとニーニャには麦茶を入れる。
「さて、それじゃあ自己紹介タイムになるんだけど、まずはニーニャたちからでいいかな?」
「まかせて! 私の名前はニーニャ=ミルストリア。ミルストリア王国の……」
「私の名前はレフィアと申します。ニーニャ様のメイドをやっております。宜しくお願い致します」
ニーニャの自己紹介が終わる前にレフィアが自己紹介をかぶせて来たため、ニーニャの自己紹介が中途半端な形になってしまった。
「ちょっ、レフィア、私の自己紹介をまだ終わってなかったんだけど!?」
自己紹介を妨害したレフィアに対して抗議するニーニャに対して、レフィアが耳元で何かを説明すると、ニーニャは”なるほど”と一言発して、それ以上抗議をすることはなかった。
「えっと、自己紹介しても大丈夫?」
「あっ、ごめんなさい、もう大丈夫です。自己紹介をお願いします」
抗議の状況が中途半端だったため、自己紹介をしても良いのかわからなかった瑞波がレフィアとニーニャには確認すると、ニーニャが応じ、紹介をお願いするよう促した。
「でわでわ。私は木崎瑞波っていうの。明人とは小学校からの同じクラスなの。いわゆる幼馴染になるのかな。家はここから3つ隣の家に住んでるの。よろしくね!」
明るい笑顔をニーニャとレフィアに向け、そして両手を前に差し出した。
「「?」」
ニーニャとレフィアは首を傾げ、疑問符を頭の上に浮かべた。
「あれ、握手をしらない!?」
「握手ってなに?」
「じゃあさ、私の差し出している手を、ニーニャちゃんは左手で右手を、レフィアちゃんは右手で左手を握りかえしてくれるかな」
瑞波の説明を聞いたニーニャは、瑞波の左手を右手で握り、レフィアは水あの右手を左手で握った。
「こうやって手を握り返すのが握手だよ! 自己紹介をしあった後によくやるんだよね!」
「へ~、私たちの住んでたところだとこんなことしなかったわ! 握手。いいわね握手! 初めて聞いたけど、私、この握手って好きだわ!」
「えへへ、それは良かった! レフィアちゃんはどう?」
「はい、私も好ましく思います。不思議と心が暖かくなります」
「うん、やっぱり、自己紹介の後はこれだよね」
「ほんと初対面のやつと握手するの好きだよな」
「あったりまえじゃん、やっぱり握手は始まりだよ!」
明人の言葉に対して瑞波はハニカミながら応えた。
■
「さて、大まかに各々が聞きたいことも聞けたかな?」
「そうだね。いやぁ、しかし、ニーニャちゃんとレフィアちゃん、すごくかわいいよね!」
「えへへー」
瑞波の言葉に、ニーニャは恥ずかしそうに笑い、レフィアは首を左右に振っていた。
「でも、そういう意味では瑞波もかわいいと思うわよ。テレビに出てるアイドル?って人達よりもかわいいと思うわよ」
「そうですね。私もそう思います」
「あらら、2人ともお上手だねー」
ニーニャ、レフィアによる誉め殺しに普段はあまり照れない瑞波もほんの少し照れているようだった。
「そうだ、明人、ちょっと聞きたいんだけどさ」
「なに?」
「あのさ、旅行中に涼から連絡があったんだけどさ、明人のところには連絡きてる?」
「涼から? いや、連絡なんてきてないよ。どんな連絡だった?」
瑞波はスマホを取り出し、メッセージアプリのLAONを立ち上げ、メッセージの内容を確認する。
「緑ちゃんから新学期が始まるまでに、部室の掃除をするよう言われてたみたいなんだけど、家の用事で行けそうにないらしくて、私に代わりに行ってもらえないかって連絡が来たのよ」
「まぁ、部長の涼が行けないんなら、副部長であるおまえに連絡が行くのは当然だよね」
「そうなんだけどさ、その時になんか明人は強制的に連れてくつもりだったって言ってたんだけど」
「いやいや、そんな連絡が貰ってな……もしかしてアレか……」
明人は思い出したかのようにスマホをポケットから取り出し、涼から来ていたメッセージの過去ログを漁り、該当のメッセージらしきものを見つけた。
「あー、これかな。『春の兆し、新たなる旅立ちの宵闇が明ける前、混沌なるモノを打倒するため、我が身旗に集いたまえ、最強の戦士よ』」
「それよ! やっぱりその形で送られてたのね」
「なにそれ、なんか物騒な呪文ね」
明人が読み上げた招集メッセージを聞いたニーニャとレフィアは険しい顔をする。
「ああ、涼はね普段は普通にメッセージを送ってくるんだけど、たまーにこういう中二病的なメッセージを書いてくることがあるんだよね」
「普通の文章の中にたまにこんなのが入ってくるから、スルーするんだよね」
「でも、戦いなんて、ここではそういうことはないって聞いてたのだけど……」
「あー、えっとね、さっきのメッセージを要約するとね、『新学期が始まる前にみんなで部室の掃除をするから集まってね』ってなるの」
「???」
瑞波の説明を聞いたニーニャは頭の上に疑問符を3つ浮かべ、怪訝そうな顔をした。
「いや、そのメッセージの内容から、どうやったらそうなるのよ」
「んー、専門の翻訳技能を習得したらかな? あははー」
瑞波は頰に人差し指を当てながらニーニャの質問に応えた。
「…………」
瑞波の応えを聞いたニーニャは黙りこくって俯く。
「ニーニャちゃん?」
少しして瑞波が声をかけると、ニーニャは勢いよく顔を上げ、キラキラした目を明人に向ける。
「明人! 私、その人と会って話して見たい! すっごく面白そうだもの!」
「およ、ニーニャちゃんは涼に興味津々だね」
「ええ、そんな変わった文章を書くなんて、すごく興味があるわ! あと、瑞波、あなたにも凄く興味があるわ。あの文章を的確に翻訳するなんて、本当に凄いもの!」
「あははー、ありがとう! でも、慣れれば誰でもできるよ」
「本当に! じゃあ、私にも教えて!」
ニーニャがグイグイと瑞波に言いよる。
「よーし、じゃあ、また今度教えてあげるよ! 今日はこの後家の手伝いもあるし帰らないと行けないから無理だけど」
「そうの?……残念ね」
しょんぼりするニーニャを見て、瑞波は口元を抑える。
「うわぁ、しょんぼりするニーニャちゃんもかわいいね。大丈夫、今度絶対に教えるから!」
「約束したからには絶対に教えてね!」
「まっかせなさい! ってことで、明人、私は帰るけど、明後日部室の掃除があるから一緒にきてね」
「わかったよ。朝からでいいの?」
「うん、朝からにしよう。緑先生には私から連絡しとくわ」
そういって、瑞波は帰って行った。
「明人、お願いがあるんだけど」
瑞波が帰った後、ニーニャからとあるお願いを持ちかけられたのだった。




