課題と散歩
読んでくださっている皆さま、2週間ぶりの更新です。
なんとか、仕事の方も落ち着き始め今週からは一旦週1ペースに戻せそうです。
更新が遅くなってしまい申し訳ありません。
楽しんでいただけると幸いです。
宜しくお願いします。
窓から陽気な風が吹き込む朝、明人が机に向かって頭を抱えている。
ニーニャの行方不明騒動から2日たった本日、明人は緑から言われていた春休みの宿題に手を出し始めたが、思うように進まず、絶賛机で頭を抱えている。
タタタタタッ――バンッ!
「明人! 外に、冒険に行きましょう!」
勢いよく扉を開けて部屋に入ってきたニーニャは開口一番に明人を外出に誘った。
「ごめん、今チョット立て込んでるから春奈さんにお願いしてくれないかな?」
「それは無理! 春奈はさっきどっかに出かけちゃったから今は明人にお願いするしかないの!」
ニーニャは行方不明になった罰として、2日間の謹慎と、当面は明人もしくは春奈と一緒でなければ外出をしないと約束をすることで、説教が終了したのだった。
「お願い、やっと謹慎も解けて今日から外出できるんだから、色々この家の周りとか見てみたいの」
両手を合わせて首を少しだけ傾け、テレビで知ったあざといお願いポーズで明人にお願いをするが、明人はそちらに見向きもせず、机に向かって課題を進めている。
「ごめん、今は部活動の課題をやってるから、外出には付き合えないよ」
「じゃあ、いつなら付き合えるの?」
「うーん、このままだと早くて今日の夕方、遅かったら明日以降になりそうだね」
机の上にある課題の進み具合を見ながら、どれくらいの時間で終わるのかを予測し、明人はニーニャに伝えたが――
「え~、そんなにかかるの… 待ってられない! 今すぐ行きたいの!」
「だから、今は無理だって」
「いこーよー」
そんなやりとりをしているうちに、ニーニャの後ろに静かに佇む影が出現した。
「ニーニャ様ぁ」
ビクッ――
「明人様にご迷惑をかけないように、と再三お伝えしましたよねぇ」
「えっと、いや、その、これは……そう、ずっと机に向かっているのもよくないから、リフレッシュのため明人を誘ってたのよ! ねっ、明人!」
ニーニャは明人の方を振り向き、何度もウィンクをして話を合わせてほしいと目で訴えかける。
また説教されて、謹慎が続いたりすると可哀想だと思った明人は――
「そうですね、ニーニャの心の中では、僕にリフレッシュしてほしいという気持ちがあって誘ってくれてたみたいなので、迷惑じゃないですよ」
「あっ、明人、その言い方じゃ……」
「ほほう、心の中で、つまり明確に明人様にリフレッシュしてほしいと誘ったわけではないのですね」
レフィアの圧を受け、頭を下げ、汗をタラタラと垂らしながら黙るニーニャを見て、さすがに明人も意地悪をしすぎたと思い――
「でも、誘ってくれたのは嬉しかったので、大丈夫ですよ。ただ、今の課題が終わるまでは待ってほしいですけどね」
「はぁ……わかりました。明人様がそうおっしゃるのなら、信じましょう」
明人の言葉を聞いたレフィアはため息を一つ吐き、圧を解き、明人の部屋から退室した。
「ふぅ、あぶなかった、また謹慎させられるところだった」
部屋から退室したレフィアを見て、ニーニャは額ににじむ汗を腕で拭いながら、少し小声で言葉を漏らしていた。
「ところで、明人がやってる課題ってどんなのなの?」
「えーっと、異世界物語の設定を考えるっていう課題なんだよね」
「明人……その課題、なんで私に相談してくれなかったのよ」
明人の机の周りに散乱しているクシャクシャの紙を手に取り、紙を伸ばすと、そこには没になった異世界設定が書かれていた。
「こんなに悩まなくても、私の知識と経験から設定を書けば直ぐに終わる課題じゃない。なんだったら、今からユグドについていろいろ教えてあげるわよ? いや、それよりも私がその課題を代わりにやってあげるわよ。そっちの方が早いだろうし、そうすれば、私も早く外出できるし!」
この課題を始めて直ぐ、明人はニーニャに相談することも考えていた。ただ、今回部活動で出された課題の正確な内容は、「自分が考えた異世界物語の設定」であり、ニーニャから話を聞いて書いたのでは、自分が考えたことにはならない。そう思った明人は、ニーニャに相談をしなかったのだ。
「ありがとう、ニーニャ、でも自分で考えるよ。この課題は自分が考えたってところが重要なんだろうし」
「いいじゃない、私の話を明人が考えたことにすれば」
「んー、じゃあさ、ニーニャが今書こうとしている小説を、僕が書いた方が効率がいいから僕が書くよ。その小説をニーニャが書いたことにすればいいよって言ったら、ニーニャはどうする?」
「そんなの、断るに決まってるじゃない! あっ……」
「そういうこと。やっぱり、自分で成し遂げたいことってあるんだよね」
明人の言葉を聞いてニーニャは少ししょんぼりしながら――
「ごめん、明人。明人の言う通りだわ」
「いや、そこまでしょんぼりしなくても。まぁ、そういうわけだから頑張って自分で考えるよ」
そう言いながら机に向き直る明人を見てニーニャは一度明人の部屋から出て行き、少したってからノートとペンを持って戻ってきた。
「明人、私も今日までの経験や教えてもらったことをここでまとめさせてもらっていい?」
「いいよ。えっと、机使う?」
「テーブルを使わせて貰えればいいわよ」
カリカリカリカリ――
そして、静かな空間にシャーペンの音だけが鳴り響く。
■
日が落ち始め、少し涼しい風が窓から吹き込み始めたころ。
「んんー、やーっとおわったー!」
課題が終わったことを声にし、椅子の背もたれに体を預けつつ、明人が体を伸ばす。
「明人、課題終わったの?」
「うん、ニーニャの方はまとめどう?」
「私もさっき終わったわ!」
「そっか、じゃあ、今から少し家の周りをぶらつく?」
「えっ、いいの!」
日が落ち始めていたので、今日はもう外に行けないと思っていたニーニャは明人の思わぬ発言に目をキラキラさせて、まるでペットの犬が散歩に連れて行って貰えることを喜んでいるような、そんな空気をまとっている。
「うん、この時間まで待たしちゃってごめんね。夕食までは時間もあるし、今日はレフィアさんと春奈さんが準備をしてくれるみたいだから」
「やったー! それじゃあ早く行きましょう!」
そう言って、ニーニャは明人の部屋を飛び出し、玄関へと足を向ける。
明人も机の上に置いてある課題のノートと筆記用具を整理したのち、玄関へと向かった。
玄関にはレフィアが待機しており、ニーニャは玄関先に座りながら靴紐を結んでいた。
「レフィアさん、夕食まで戻りますが、ちょっと散歩してきますね」
「はい、その件につきましては、先ほどニーニャ様からお聞きしました。明人様が一緒なので、それほど心配はしておりませんが、くれぐれもお気をつけて」
「わかりました。ニーニャがはしゃぎすぎないよう見ていますよ」
「よし、靴紐結び終わった!」
そんなやり取りを横目にニーニャは靴ひもを結び終え立ち上がろうとしたタイミングで、レフィアがストップをかけた。
「お待ちくださいニーニャ様。そのままでは髪が地面についてしまいます」
そう言いながらポケットから眺めのリボンを取り出し、ニーニャの髪をツインテールにしてリボンを結んだ。
「これで大丈夫ですよ、ニーニャ様」
「うん、ありがとうレフィア!」
準備が整った二人は一緒に――
「「いってきまーす」」
といい、引き戸のドアを開ける。外から少し冷たい風が頬を撫でる。
「春っていっても日が落ちるとまだまだ寒いな~。ニーニャは寒くない?」
「私は大丈夫よ! むしろ興奮してて熱いくらい!」
「そっか、了解。それじゃあ今日は駅の方まで行こうと思うんだけど、それでいい?」
「そこは明人に任せるわ! そもそも駅が何なのかもわからないし」
「了解。それじゃあ駅まで歩いて行こうか。ここからだと歩いて15分くらいだし。そんなに遠くないからね。駅については歩きながら教えるよ」
と言いながら、二人は駅に向かって歩き始めた。
このあたりの街並みは木造とコンクリートの複合で建てられた家が多く立ち並んでいる。木造だけでない理由としては、海が近いからである。海風の湿気により木造だけだと木の中が腐ったりして危ないため、コンクリートなどで補強をしている。
「このあたりの街並みはユグドとは全然違うわね。ユグドだったらもっと道も広くて、地面は土と草でできているわ。こんな黒くて固い地面じゃないし」
「そうだね、日本の主要な道はアスファルトやコンクリートで固められているんだよ。このあたりも元々は土の地面だったんだと思うよ」
「へー。なんでそんなことするのかしら」
「それはちょっと僕にはわからないけど、たぶん、車とかを走らせるときの走行性を求めた結果、こういう風に固めたんじゃないかな。土とかだと凸凹したり、小さな石とかあって車のタイヤがパンクしやすくなっちゃうだろうし」
「ふーん、なるほどね。あの鉄の馬のためにこうやって固めているのね」
「だと思うよ」
「でも、これって、歩くには不向きじゃないの? 最初はいいけど、長い間歩いていると足の裏が痛くなりそうだし」
「うん、それは本当に痛くなるよ。最近学校でも一日かけて長い距離を歩くことがあるんだけど、終わった後は足の裏がすごく痛いんだよね」
そんな話をしながら、明人とニーニャは駅へと向かい、歩いていく。
その間ニーニャはショッピングの時には見れなかった風景をじっくりと楽しんでいたのであった。
※8/14 濁点の消去やカッコの足りない部分を追加しました。




