お叱り決定!!
今週の更新分です。
楽しんでいただけると幸いです。
8月中場から8月末までは忙しそうですので、週更新が続きそうです。
よろしくお願いします。
※一部の記号が異なっていたため修正しました。(7/10)
かたい床に腰を据わっているのがつらくなった明人は――
「ニーニャ、お尻が痛いから、一旦離れてくれる?」
それを聞いたニーニャは、ハッと我に返り、抱き着いていた明人から離れる。
「ごめん、明人、再開がうれしくってつい……勢い余って突撃しちゃったわ」
「大丈夫だよ。とりあえず、僕は春奈さんにニーニャが見つかったって連絡するよ」
左手でお尻をさすりながら立ち上がった明人はスマホを取り出し、春奈に電話を掛けるため交番の外に出た。
その間に明人の後ろにいたレフィアが――
「ニーニャ様、よくぞ、よくぞご無事で!」
と言いながらニーニャに抱き着いた。
「本当に、本当に心配致しました」
「心配をかけてごめんね、レフィア」
レフィアの瞳にはうっすらと涙が浮かんでおり、それに気づいたニーニャはレフィアの頭をなでながら、レフィアに謝罪した。
「森山さん、森山さん、あのメイド服を着た女性の方って本物のメイドなんですかね?」
「それは私も気になってたんですよ~。テレビで見たことのある本物のメイドさんっぽいんですが、こんな田舎にメイドさんを連れた女の子くるかな~って考えると、コスプレの可能性の方が高そうだなって思うんですよね~」
「外国人の女の子が可愛いからってメイド服を着てるってことですか?」
「そんな感じだと思いますよ~」
ニーニャとレフィアの感動の再開の後ろで警察官と緑は、レフィアが本物のメイドなのかを小声で話し合っていた。
■
ピロリロリロリン――
ピロリロリロリン――
スマホから着信音が流れているの気づいた春奈は、すぐさま電話に出た。
「もしもし、明人、どうだった?」
『もしもし、春奈さん、ニーニャ見つかりました』
「ほんとに!」
『はい、緑先生が交番に連れて行ってくれてた女の子がニーニャでした』
人通りのある道端だったが、ニーニャが見つかったことの安堵から、春奈はその場に座り込んだ。
「よかったぁ~」
通行人の人から変な目で見られている春奈だったが、その時だけはそんな視線が気にならず、ニーニャが見つかったことを本当に喜んでいた。
『本当に、見つかってよかったです』
「本当によかったわ。それじゃあ、私は近場の交番に出した捜索願を取り下げてから、デパートで車を回収して、明人たちがいる交番に向かうわね」
『わかりました』
明人とは逆方向を探し始めていた春奈は、デパート近くの交番に向かう。
「そういえば、明人がいる交番ってどこの交番なの?」
『えっと、東浜警察署ですね』
「あー、東浜警察署ね。って明人に行ってもらおうとした交番よりさらに遠いところじゃない。そんなところまで行ってたの!?」
『みたいですね。僕も少し驚きました』
デパートから徒歩で40分ほどかかる距離だったため、ニーニャの足でその付近まで移動していたことに春奈も驚いた。
「ちょっと驚いたけど、見つかったのならそれでいいわ。それじゃあもう少しかかるけど、東浜警察署で少し待たせて貰ってて。あと、先生も大丈夫だったら呼び止めておいて。私もお礼が言いたいし」
『わかりました』
明人との通話を切り、春奈は速足から駆け足に切り替え、デパート前の交番に向かった。
■
春奈との通話を終えた明人は、再び交番の中に入り警察官に話しかける――
「すみません、保護者代理のものがもう少ししたら迎えにきますので、もう少しの間こちらで待たせてもらってもよろしいでしょうか」
「全然かまいませんよ。ちょっと後ろから椅子持ってきますね」
と言いながら警察官はニーニャを連れてきた扉から裏手に入っていった。
「森山先生。ありがとうございました。おかげでニーニャと会えることが出来ました」
「いえいえ~、本当に森川君が探していた子かわからなかったから、探していた子でよかったよ~」
緑に頭を下げる明人の隣で、レフィアも丁寧なお辞儀をする。
「本当にありがとうございました。森山様のおかげで、ニーニャ様を見つけることが出来ました」
明人とレフィアの二人に頭を下げられ、緑は頭を上げて貰おうとあたふたとする。
「いやいや~、二人とも頭を上げてくださいよ~。私は迷子の女の子を交番に届けただけなんですから~。教師として当たり前のことをしただけですよ~」
そう言いながら、ふと、壁にかかった時計に目を向けると、時計の針が20時45分を指していた。
「ぬあぁぁぁぁ、やばい、やばいですよ! 本屋がもうすぐ閉まっちゃいます。早く戻って預けた本のお金払わないと!」
「あっ、先生、後でこの交番に戻ってきてもらえますか? 春奈さんもお礼を言いたいと言っていたので」
「わかりました、今は急ぎますので、本を買ったら、またここに戻ってきますよ」
と言いながら、普段の引きこもり教師にあるまじき速度で本屋に向かって走り出した。
「あれ、森山さんは?」
「森山先生なら、預けていた本のお金を払うため、全速力で本屋に向かいましたよ」
交番の裏からパイプ椅子を持って戻って来た警察官が緑の所在を聞き、苦笑いをしながら明人とレフィアとニーニャにパイプ椅子を渡し、腰掛けるように促した。
「「「ありがとうございます」」」
三人は警察官にお礼をいい、パイプ椅子に腰掛けた。
一息ついたところで、レフィアが口を開く。
「ところでニーニャ様、先程は無事で見つかったことを喜びましたが、家に帰ったらお説教を致しますので、ご覚悟ください。」
「え? ちょ……ちょっと待って、なんでお説教なの!?」
「当たり前です! 森川家の皆様や森山様、警察官の方にまでご迷惑をかけ、説教の一つもないと考えておられたのですか!!」
なぜ、説教をされるのかを理解していないニーニャの発言に対し、レフィアは今回の行方不明事件で迷惑を掛けた人たちの名前を挙げ、どれほどの人に迷惑を掛けたのかを切々と語った。
「ううう、でも、ちゃんとした理由があるの、それを聞いてからお説教をするかどうか考えてもいいんじゃないの?」
「なるほど、理由がおありなんですね。わかりました。では、その理由をお聞きしたのち、お説教をするかを考えさせていただきます」
ユグドで昔、レフィアの説教を受けたことのあるニーニャは、説教時のレフィアの恐ろしさを十分に理解している。そのため、説教だけはなんとか避けようと考えたニーニャは、自分がデパートから抜け出した理由を順序立てて説明し始める。
「明人たちと別れて、おもちゃフロアを回っていた時――」
■
「まずはここ、おもちゃフロア! ニーニャちゃんの好奇心を煽るものがいっぱいだと思うよ!」
「おおぉ!」
ニーニャは目をキラキラさせながらおもちゃフロアを外から眺める。
「すっごい! 見たことないものばっかり! ねぇねぇ、春奈、これは何をするおもちゃなの?」
壁にかかっている箱を手に取り、何をするおもちゃなのかを春奈に質問する。
「ん〜? あー、これはベイゴマのおもちゃね。複数の人数で限られたエリアの中に、その表紙に写っているコマを回転させて投入、最後まで回っていたコマの持ち主が勝者っていう遊びをするためのおもちゃよ」
「なるほど、ここに描かれているコマってのを回す遊びか~、やってみたい! 春奈、これ買って!」
ニーニャはベイゴマのおもちゃが欲しいと春奈に要求するが、その要求は却下された。
「駄目! 今日は見て回るだけだから購入はなしよ。それに、確かそんな感じのおもちゃを明人も持ってたから、家に帰ってから明人に聞いてみたら?」
「えー、やだ、これがいいの!」
ニーニャは手に取ったおもちゃの箱が潰れない程度の力で抱え込みながら、これが欲しいと駄々をこね始める。一方、春奈はおもちゃを諦めてもらうにはどうするべきかを思案する。
「あら、天城さん、こんなところで奇遇ね」
色々考えていた春奈が後ろを振り向くと、森川家から二つ隣の家の奥さんが子供を連れて立っていた。
「ん? あら、清水さんじゃないですか。子供さんのお買い物ですか?」
「ええ、そうなのよ。どうしても欲しいおもちゃがあるとかで」
「そうなんですね」
「そういえばお聞きになりました? 6区のあの人の話し」
ベイゴマのおもちゃを抱えるニーニャをほっぽり、春奈は近所に住まう清水と会話を始める。
その様子を見たニーニャは頬を膨らませ、持っていたベイゴマのおもちゃを壁に掛けて、おもちゃコーナーを出て行った。
「ふーんだ、なによ春奈、一緒に色々見て回ろうって言ってたのに、知らない人と話し始めちゃって」
ブツブツと不満を漏らしながら適当にフロアを歩いていたニーニャがハッと険しい顔つきで周りを見回す――
「これ、精霊の気配? うー、こっちの精霊はこんなに曖昧な感じなの!?」
ニーニャはかすかに感じた精霊の気配に似た何かをなんとか捉え、その気配がする方向へ走り出した。
「たぶんこっちね!」
階段を駆け下り、一階にあるデパートの出入り口の前で立ち止まる。
「うわぁ、これ外じゃない……うーん、どうしよう、外に出たら確実に明人や春奈に迷惑をかかるわね……でも精霊がいるかもしれない、このチャンスを逃したらこっちの世界で精霊を見つけられないかも……くぅぅ」
頭を抱えること30秒――
「仕方ない、今の私たちにとって精霊の力では必要、怒られてもいいから行くしかないわ!」
ニーニャは意を決してデパートの出入り口を駆け抜け、精霊らしき気配のする方向へと走り出した。
◼️
「とまあ、そんなこんなで精霊らしき気配を追いかけて走ったのはいいんだけど、この交番よりもう少し先の辺りで気配を感じることができなくなって、どこにいるかもわからず、途方に暮れていたところ緑に出会って、ここに連れてきてもらったの」
ひとしきり説明を終えたニーニャは自分勝手の都合で外に出たわけではないという顔をしながら、胸を張って明人とレフィアの座っている方を見る。
「なるほど、確かにニーニャ様のおっしゃった通り、今の我々にとって精霊の力は絶対的に必要なモノです」
「でしょ、だから、外に出たのには立派な理由があるのよ」
レフィアの同意を得られたニーニャは、説教が回避できたととり、気を緩めている。
「しかし、精霊らしきものの気配を感じる前に、ニーニャ様は春奈様に迷惑をかけ、あまつさえデパートで勝手な行動をとられております。なので、ハーフ説教ということに致しましょう」
「えっ……うそ、説教……なしじゃないの?」
ニーニャは、レフィアの口から発せられた『ハーフ説教』という言葉を受け、顔が引きつった。
「ハーフ説教ってなんですか?」
「ユグドでの説教とは、『ご飯抜き』と『おしり叩き20回』と『お叱り3時間』がセットになっているのですが、ハーフ説教ですと、『おしり叩き5回』と『お叱り2時間』になります」
聞きなれない「ハーフ説教」という単語の意味をレフィアに確認した明人は、ニーニャの方を見て手を合わせ――
「御愁傷様」
と一言言った。
「なぁんでよぉ~!」
「うわっ、ビックリした」
説教が確定したニーニャが大声で悔しさを叫ぶと同時に交番の入り口が開き、春奈が交番に入ってきた。
「えっ、えっ、なにがあったのよ」
そうして事情の知らない春奈は、交番の中をキョロキョロと見渡し、首を傾げるのであった。




