迷子の迷子の…
週一の更新分です。
週一で更新する場合は、この時間くらいになりそうです。
楽しんでいただけると幸いです。
よろしくおねがいします。
春奈と一旦合流しようという話をして、電話を切った明人は、レフィアと共にエレベーターに乗り、2階へと向かった。
「明人様、一つお聞きしたいことがあるのですが」
「なんですか? レフィアさん」
「行方不明……とはどういった意味なのでしょうか」
「え?」
驚きの言葉とともにレフィアの方を見ると、いつもと変わらぬ様子だった。
「えっ、レフィアさん、意味が分からずあんな絶望的な顔してたんですか!?」
「はい、明人様も深刻な表情をされていましたので、なにか深刻な問題が起こったのだと思い、私も深刻そうな表情をしたのですが、実際はあまり意味が分かっていませんでした。申し訳ありません」
『ピンポーン、2階です』
あんぐりと口を開ける明人をよそに、エレベーターの中に2階に着いたことを告げる機械音声が鳴り響く――
「レフィアさん、とりあえず春奈さんと合流してから話します」
そういいながら、エレベーターを降り、明人とレフィアは春奈が待っている家電コーナーへ急いだ。
「春奈さん!」
明人の声に気づいた春奈は、デパートの店員との話をやめ、声のした方を振り向き、明人とレフィアの姿を確認すると、2人の方にすぐさま駆け寄り――
「ごめん、レフィアちゃん、私がついていながら」
レフィアに向かって頭を下げる。
頭を下げられたレフィアは何が何だかわからず、慌てふためき――
「は、春奈様、頭をお上げになってください。そもそも一体何が起こったのでしょうか?」
なぜ春奈が唐突に頭を下げたのかを確認する。
レフィアの言葉を聞いた春奈は、下げていた頭をそのまま明人の方に向け、説明を要求するといった目で睨みつけた。
「レフィアさん、エレベーターで意味が分からないと言っていた、『行方不明』の言葉の意味ですが、『いなくなった』という意味です」
「えっ……じゃあ……つまり、ニーニャ様が行方不明というのは……」
「はい、ニーニャがいなくなったという意味です」
行方不明の意味を理解したレフィアは今度こそ本格的に血の気が引き、体が震え始めた。
「に、ニーニャ様がいなくなった……うそ、ですよね……」
嘘だと言ってほしそうに春奈と明人の方を見るレフィアに対し、明人は首を横に振り、嘘であることを否定する。
「ちょ、ちょっと待ってください、なんでニーニャ様がいなくなるんですか? 春奈様と一緒に買い物に行って……えっ……まさかユグドからの……いいえ、そんなことは、近くに道が開いたら私でも気づける……ということは、ニーニャ様少なくともまだこの世界に……」
慌てふためくレフィアに対し、春奈はもう一度頭を下げた。
「本当にごめん、私が目を離した隙に、いつの間にかいなくなってたの」
再度頭を下げる春奈を見て、レフィアも一度冷静になろうと深呼吸を始める。
「すぅ、はぁ、すぅ、はぁ、すぅーはぁー。すみません、取り乱しました」
何度かの深呼吸のあと、自分の中で状況を整理しできたのか、レフィアは冷静さを取り戻したようだが、それでも不安はぬぐい切れず、少しだけ手が震えている。
「春奈様、頭をお上げください。今回の件、春奈様にも非はあるかもしれませんが、見知らぬ土地で勝手な行動をしたニーニャ様にも問題があります。といいますか、常日頃からニーニャ様には見知らぬ土地で勝手な行動を慎むようにと何度も言っていたのですが……。これはまた、お叱りが必要ですね」
ゴクリッ――
レフィアの放つ殺気のようなものに、明人と春奈は体を震わせ、自分たちでも気づかぬうちに唾を飲み込んでいた。
そんなただならぬ雰囲気の中、勇気を出して明人が口を開く。
「あの、それで、春奈さんは店員さんと何を話していたんですか?」
「監視カメラにニーニャちゃんが映ってないかを確認してもらおうと思ってね」
「確かに、それは確認してもらいたいですね。どこかのカメラに映っていたら手掛かりにもなりますし」
「明人様、春奈様、私はニーニャ様を探しに行ってもよろしいでしょうか」
レフィアの殺気は先ほどよりも抑えられているが、それでも纏っている空気はピリピリしている。
「もう少しだけ待ってもらっていいですか? もしかするとニーニャの居場所がわかるかもしれないです」
「本当ですか!」
「はい」
そのやり取りが終わり、数分後、春奈と話していた店員が戻ってきた。
「すみません、遅くなりました!」
「それで、どうでした」
「はい、こんな田舎で金髪の小学生くらいの女の子ですので、おそらくこの子で間違いないかと」
「映像の一部を印刷して持ってきました」
印刷された用紙には、デパートの入り口から外に向かって移動するニーニャの姿が映っていた。
「この写真ですが、今から15分ほど前のデパートの入口の写真ですね」
写真を見た明人と春奈は唖然とした。
「これはちょっとまずいわね……」
「春奈さん、僕とレフィアさんでデパートの周りを探してみます」
「わかったわ。私は近くの交番に向かって探すから、明人はデパートの周りを探しつつ少し遠い方の交番に向かってくれる? もしかすると迷子だと思って誰かが交番に連れて行ってくれてるかもしれないし」
「了解です! レフィアさんは僕と一緒に来てもらえますか?」
「承知しました」
「じゃあ、行きましょう」
春奈と明人は店員さんにお礼を言い、デパートの出口へと向かった。
■
デパートの出口を出てから10分後、明人とレフィアはデパートの周りをくまなく探している。
「明人さま、散り散りになって探した方が効率は良くないでしょうか?」
別行動で探している春奈からも連絡がなく、焦る気持ちが強くなっているレフィアは、できる限り効率の良い探し方をしたいと考え、明人の質問をするが――
「いえ、レフィアさんもニーニャと同じで、このあたりに詳しくありません。そんな中、散り散りになって探したとしても、効率が上がるとは思いません。それに、レフィアさんも行方不明になる可能性だってあります。そう考えると、ニーニャの行動をよく知っているレフィアさんと、デパートの周りについてよく知っている僕が一緒に探す方が効率がいいと思います」
「なるほど、確かにそうですね。私まで行方不明になってしまってはさらにご迷惑が掛かってしまいますし」
レフィアも二人で探すことの説明を聞き、今の動きが最も効率が良いという考えに至ったため、明人の指示に従いながら、小道やまばらにいる人ゴミの中にニーニャがいないかを探す。
デパートの周りを探し終えた時点でニーニャが見つからなかったため、遠目の交番を目指しながらニーニャを探し始める。
「レフィアさん、ニーニャが興味を持ちそうな建物とかあったらすぐに教えてください!」
「わかりました。と言いたいところなのですが、好奇心旺盛なニーニャ様です。こんな見知らぬ街並みや建物を見ると、どの建物に興味を示しても仕方ありませんので、あまり参考にならないかもしれません」
「それでも、今までニーニャを見てきたレフィアさんの情報が必要なんで、お願いします!」
そう言いながら交番に向かう道を人にぶつからないように駆けていく。
「明人様!」
もうすぐ交番というところで、レフィアが大声で明人の名前を呼んだ。
レフィアの声に駆け足を止め、レフィアが止まっている所まで戻る。
「どうしました、レフィアさん」
「明人様、このお店なのですが、もしかして」
「ここ? 本屋さん……はっ! ニーニャが最も興味を持つ建物!」
「はい、もしかすると、ここにニーニャ様がいるかもしれません」
「入ってみましょう!」
建物の中に入るとフロアはそこそこ広かったがとりあえず、明人とレフィアはまず、ノベルコーナーに向かったがニーニャはいなかった。
その後二人は一旦分かれて、フロア内を探すことにした。
明人はまずマンガコーナーに向かうが、そこにもニーニャの姿はなく、次に参考書コーナーに向かう。
「あれ、森川君?」
「え?」
聞き覚えのある女性の声で苗字が呼ばれたことに気づき、明人が振り返ると――
「森山先生」
明人の担任である森山緑が明人の方を見ていた。
「もしかして、春休みに勉強するため、参考書買いに来たのかな~、えらいぞー」
「あっ、いえ、その、ははは」
「あれ、その反応は違ったのかな~。まぁ、春休みとかは、やっぱり漫画読んだり、ライトノベル読んだり、アニメ見たり、ゲームしたりしたいよね~。夏休みや冬休みと違って課題もないしね~」
「そうですね。そういう先生は春休み中に読む本を買いに来たんですか?」
緑の手荷物買い物籠の中にはマンガとライトノベルが大量に入っていた。
「まぁね~。やっぱり長期休暇は趣味に捧げないとね~。で、そういえば森川君は買わない参考書コーナーに何の用だったの~?」
「そうだ、ニーニャ! すみません、先生ちょっと人を探していて」
「ん~、どんな容姿の人を探してるの~? 結構前からこの書店回ってたから、もしかしたら見てるかもしれないよ~」
持っていた買い物かごを通路に置き、緑は明人に質問する。
「えっと、金髪の小学生くらいの女の子なんですけど」
「あ~、あの子ね~」
「どこかで見かけたんですか!」
「うん、この本屋に来る前に、金髪の小学生くらいの女の子が悲壮感漂わせながら歩いていたから、あそこの交番に連れて行ってあげたんだよね~」
緑は交番の方を指さした。
「本当ですか!」
「うん。たぶんその子じゃないかな~。ちょっと待ってて、この買い物かご店員さんに預けて、私も一緒に行ってあげるよ~」
「ありがとうございます! お願いします。僕は知り合いを読んできますので、入口で合流でいいですか?」
「おっけ~」
そう言うと緑は買い物かごを手に持ち、レジの方に向かった。
明人はフロア内でニーニャを探しているレフィアと合流し、入口へ向かう。
「むむむ、知り合いはメイドさんか~。…………握手してもらってもいいですか?」
「先生、何やってるんですか」
レフィアに向かって右手を差し出す緑に突っ込みを入れる明人の横で、何が何だかわからないレフィアはどのように反応していいのか困っている。
「レフィアさん、先生がもしかするとニーニャを交番に連れて行ってくれたかもしれないんです」
「本当ですか!」
「はい、だから、今から先生と一緒に交番に向かおうと思います。僕だけだともしかするとニーニャを引き取れないかもしれないから」
「わかりました。よろしくお願いいたします」
レフィアは緑に向かってお辞儀をする。
「おぉ、これが本物のメイドさんのお辞儀」
「先生、そんなのは後で見れますから、今は交番へ急ぎましょう」
目をキラキラとさせてお辞儀を見ている緑を明人は急かす。
「そんなに急かさないでよ~。それじゃあ行きましょうか~」
緑がニーニャを連れて行った交番は明人たちが向かおうとしていた交番からさらに先の交番だった。
「ここの交番だよ~。こんにちわ~」
「あれ、森山さん、どうしたんですか? さっき女の子連れてきたときに忘れ物でもしました?」
「違いますよ~、その女の子の保護者かもしれない人たちを連れてきたんですよ~」
緑に紹介され、明人とレフィアは交番の中に入り、常駐の警察官に挨拶をする。
「森川明人といいます。先ほど森山先生が連れてきた女の子がもしかすると家で預かっている女の子かもしれないとのことで、森山先生と一緒にこちらに伺いました」
「なるほどね。ちょっと待ってて、今連れてくるから」
そう言うと、常駐の警察官は扉から奥に入り、しばらくして戻ってきた。
「明人ー!」
警察官の脇から金色の弾丸が明人の腹部に突き刺さる。
「ごふっ!」
勢いに負けて尻もちをついた明人は腹部に突き刺さるニーニャの頭をなでながら――
「やっとみつかったよニーニャ」




