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はじめての外食

遅くなってしまいましたが、本日の更新です。

楽しんで頂けると幸いです。


明日から少しの期間書き溜め期間に入りたいと思いますので、

更新が止まります

宜しくお願いいたします。

洋服の買い物も終わり、明人の購入した生活用品とドライヤーのレシートを春奈が確認していると。

きゅ~

可愛らしい音が控えめに聞こえた。


お腹の音の主は――

「おなか……すいた」

ファッションショーを最後までやり切った立役者のニーニャが、お腹の辺りに手を当ててしょんぼりしている。


「えっ、もうこんな時間なの!?」

春奈が腕時計を見て驚いていたので、明人もスマートフォンを見ると、時間は14時になっていた。

「まぁ、ファッションショーを結構長い時間やってましたからね。とりあえず、レストランフロアに行って、何か食べましょう」

「レストランですって!?」


ビクッ


いきなりのレフィアの大声に春奈と明人は一瞬身をすくませた。

ニーニャも少し怪訝そうな顔をしてこちらを見ながら――

「明人、それ、本気で言ってるの?」

と明人に確認した。


「本気だけど……その反応、ユグドでもレストランって言葉があったんだね」

レフィアとニーニャの反応を見て、明人もユグドにレストランという言葉があったことを察した。ただし、こちらの世界で使われている言葉とは別の意味を持った言葉のようだ。


「うん、レストランって言葉はあるわ。ちなみに、日本でレストランって言うと『食事をする場所』って意味であってる?」

「それであってるよ」

「そう……ユグドではレストランは『食事をされる場所』を示すの」

「食事をされる場所?」


「そうよ、ユグドには多くの魔物が存在しているのだけど、その中でも厄介なのが、レストランという魔物なの」

その話を聞いて、明人はますます意味が分からなくなり、首をかしげている。

「レストランって名前の魔物がいるの? でも、食事をされる場所なんだよね?」


「レストランは実り豊かな森に擬態した魔物なの。レストランは実りを得ようと森に入り込んだ生物を、そのまま食べてしまうのよ。レフィアも昔、レストランに食べられそうになってね。あの時は大変だったのよ。」

ニーニャは淡々と語っている横で、レフィアはガタガタと震えていた。


「なるほどね、レフィアさんの過剰な反応の意味がやっと分かったよ」

「まぁ、森に食べられる経験をしたならあんな反応にもなるわね」

春奈と明人も、もしも自分がそんなことになったらと思うとゾッとする。


「でも、日本におけるレストランっていうのは食事をするお店のことなんだ。だから、大丈夫だよ」

明人は優しくレフィアに声をかける。


「は……はい、ユグドと日本においてレストランの意味合いが違うというのは分かったのですが……やはり身に付いた恐怖というものは中々薄れないもので……」

ガタガタガタガタ――

未だに震えが収まっていないものの、日本とユグドでのレストランの違いについての説明はしっかりと聞いていた。


震えるレフィアを横目に、明人と春奈が少し離れて小さな声でこそこそ話を始める。

「明人、レフィアちゃんの震えは尋常じゃないわよ」

「余程ひどい目にあったんでしょうね」


「うーん、となると、レストランって言葉は今後使わない方がいいわね」

「そうですね。お食事処って言えば大丈夫じゃないですかね?」

「そうね、それが良さそうね。気を使わせたと思わせちゃうけど、あんだけ震えられるとね」

「そうですね、では、とりあえずはお食事処で」


二人は認識を合わせて、ニーニャとレフィアの近くに戻り――

「それじゃあ、ニーニャ、レフィアさん、お食事処に行きましょう!」

明人がそう言い、レフィアの様子をうかがう。


「お気遣い頂いてありがとうございます。お食事処という言葉であれば、問題ありません」


明人と春奈はホッと一息つき、お食事処フロアへと――


「あっ、レフィアさん、震えが収まってすぐで申し訳ないんですが、ニーニャの拘束お願いします」

「えっ、ちょっ、なんで!?」

「承知しました」


ガシッ――


レフィアに抱きかかえられるようにニーニャは拘束される。一度拘束から逃げられなかったことと、空腹からジタバタと抵抗することはなかったが、せめてもの抵抗として、大声を上げる。

「うー、はーなーしーなーさーいーよー! 放してよおおお!」

ニーニャの悲痛な叫びは3階に響き渡った。


明人たちはエスカレータに乗り、4階へと足を運んだ。

お昼を過ぎているにも関わらず、4階には多くのお客がいる。おそらく、先ほどのファッションショーを見ていた人もちらほらいたのだろう。レフィアに拘束されたニーニャに「さっきは可愛かったよ」など声を掛ける人もいる。


「さて、何食べようか」

春奈がニーニャとレフィアの方を見ると――

「私たちは何が良いのかわかりませんので、普段あまり食べない食べ物でお願いします」

「私もなんでもいいわ、あと拘束を外してほしいわ」


「そうね、だったら、お好み焼きにしましょうか。これだったら箸が使い慣れていない二人でも大丈夫でしょ」

「そうですね、お好み焼きも久しぶりですし、いいんじゃないですか」

「それでは、そのお好み焼きという食べ物でお願いします」

レフィアの腕に抱えられたニーニャを見ると、うなずきを一つ返してきたので、満場一致でお昼ご飯はお好み焼きとなった。


店に入ったあたりで、ニーニャの拘束は解かれ、席に着いた後も不満そうに頬を膨らませていたが、お好み焼きのメニューを渡すと、直ぐにキラキラした瞳でメニューを見始める。


「僕は豚玉ですね」

「私は期間限定の、春キャベツと山菜のお好み焼きにするわ」

ニーニャとレフィアがメニューを眺めている傍らで明人と春奈はすでにメニューを決め終えていた。


「明人、明人、これってどんな料理なの?」

ニーニャがメニューのミックスモダン焼きを指さしながら明人に尋ねる。

「うーん、とりあえず、美味しいから食べてみたらいいと思うよ」

お好み焼きを見たことも食べたこのもないニーニャに対して、モダン焼きを説明するのは非常に困難だと思った明人は、注文することを勧める。


「わかったわ、じゃあ私は、このミックスモダンってやつにする!」

「それでは、私は、すじコンネギ焼きというやつにします」

全員のメニューが決まったところで、店員さんを呼び、注文を通した。


「すじコンネギ焼きってなんか簡単な呪文みたいね」

ニーニャが出された水を飲みながらそういうので――

「そんな呪文があるの?」

と明人が尋ねると――

「えっと、確か『スージ コン ネ―ギ』って呪文があったはずよ」


「まさに、すじコンネギだね。どういった効果があるの?」

「うーん、確か、確かよ、何かを収穫するときに使われてたわ。細長い野菜だったと思うけど」

「結構曖昧な感じだね、マイナーな呪文なの?」

「うーん、そこそこメジャーな呪文よ。魔術師にとって収穫の呪文は基礎なのよ。だから、魔術師であれば、必ず一度は使ったことがあるはずよ」

と明人の質問に回答したニーニャは、ただと付け加え言葉を続ける。


「ただ、エルフは精霊術が使えるから、あまり呪文を必要としなかったのよね。呪文っていうのは、精霊術を使えないエルフ以外の種族が開発したものらしいから。私もよく知らないのよね」

「なるほどね、それだったら仕方ないよね」


そんな話をしている間に、男の店員さんがテーブルの中央にある黒い鉄板の上に豚玉を乗せてくれた。

「豚玉お待ち! 順々に他のメニューも持ってくるから。あと、この黒い鉄板はすごく暑いから触っちゃダメだよ」

身を乗り出すように豚玉を眺めるニーニャに店員さんが軽く注意をするが、そんなことお構いなしと豚玉に視線を落としている。


「おにーさん、妹さんがケガしないように気を付けてみてあげてね」

「ありがとうございます。注意してみてます」

明人がそう応えると、店員さんはニコッと笑い、厨房へと戻っていった。


「明人、お腹すいた、私、お腹がすいたわ」

「注文したメニューが全部届いたら食べよう」

「明人、先にちょっと食べてもいい?」

「いや、だからさ、注文が届いたら……」

「お腹すいた……」


鉄板の上で焼ける音。鉄板の上で焼ける香しい香り。そして豚玉の上で踊る鰹節。

聴覚、嗅覚、視覚からこれがおいしいものであると判断したニーニャの体は、本人の意思に関係なく、自然と口から涎が垂らし、獲物を狙うトンビのように眼光を光らせながら、豚玉を見ている。


「そんなにお腹がすいてるなら、先に一口食べ……」

「へい、お待ち! 残りのメニューを持ってきたよ! 順々に持ってくるって言ったのに、遅くなってごめんね」

各人が頼んだメニューが鉄板の上に並んだ。


「それじゃ、食べよっか! いただきまーす」

春奈も全員分のお好み焼きがそろったのを見て、お好み焼きをヘラで分割し始めた。

「「「いただきます」」」


明人も春奈と同じように、お好み焼きを分割していく。

ニーニャとレフィアも見よう見まねでお好み焼きを分割していく。


「ふぅー、ふぅー、はぐ、あふあふあふ」

ニーニャは小さく切ったお好み焼きを小皿に乗せ、冷ますように息を吹きかけ、口に入れる。まだ熱かったのか口の中で、はふはふと外の空気を口の中に取り入れながら食べている。


「んー、おいしい! 生地と麺にしみこんだ野菜の甘味と、お肉のうまみ、それにこの甘辛い味! 最高ね!」

一口目を食べ終えたニーニャは笑顔でそう言いながら、二口目を小皿に取っていた。


「春奈さん、豚玉一口と春奈さんの頼んだお好み焼きの一口交換して貰えませんか?」

「ん? いいわよ。これ結構おいしいわ」

鉄板の上で一口大に切られたお好み焼きを交換し、明人は貰ったお好み焼きを口へ運ぶ。


「ほんとですね。おいしいです!」

「でしょ!」

その姿をうらやましそうに眺めるニーニャは――

「レフィア、私の一口とあなたの一口交換しない?」

とレフィアに持ちかける。


「ニーニャ様、交換なんて滅相もございません。一口差し上げます」

「いやだ! 交換がいいの!」

一口大のお好み焼きを差し出すつもりだったが、ニーニャが頑なに交換がいいというので、レフィアも根負けし、ニーニャから一口大のお好み焼きを貰う。


「この、すじコンネギっていうのもミックスモダンと全然違っておいしい! お好み焼きって種類によって全然違う触感や味を楽しめるのね!」

「そうですね、ミックスモダンも非常に美味しいです」

レフィアとニーニャは互いに交換した一口を食べ、幸せそうな顔をしていた。


「明人、春奈、私のと一口交換しない?」

「まっ、そう来ると思ってたよ。レフィアさんも一口交換どうですか?」

「はい、ニーニャちゃん、レフィアちゃん、私の頼んだお好み焼き」


お好み焼き大交換会が行われ、各人が頼んだメニューを一口ずつ食べることができ、みんな大満足の昼食となった。


「それじゃあ、お会計して、お店を出たら、生鮮食品フロアでご飯の材料を買って、少しだけデパートを見て回ったら帰りましょうか」

明人がこの後の予定を全員に話し終えたので、通りかかった男の店員さんにお会計をお願いした。

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