出逢い
「ふぅ。」
自宅に着き、エレベーターの中。
7階までのこのエレベーターの中の待ち時間わたしは結構好きだ。
0時を過ぎ、日を跨いだこの時間は、本当に静か。
表示が、1、2、3、と変わっていく。オレンジ色の文字。ただただ ぼぅっと眺めていた。
急に止まったエレベーター。
…あれ、この時間に誰か乗る、なんて珍しいなぁ。
そんなことを思いながら開く扉の先を見た。
「こんばんは。」
開いた扉から、乗り込んできた男性。笑顔での挨拶。
…なんか、すごく綺麗な人。見たことない、知らない人だ。
「こ、こんばんは。」
ここに住んでる方じゃなさそう。
少したどたどしくなりながら、挨拶を返す。
「何階ですか?」
「えぇっと… 」
何故か苦笑いを浮かべる男性。
「…実はここに住んでる彼女の家に来てたんですけど、喧嘩して、追い出されちゃって」
あはは、と言いながら言葉を続ける。
「ちょっと屋上で煙草でも吸って落ち着こうかなって。なんか怪しいですよね、こんな時間に屋上って。すみません、変な者じゃないんで。」
「あ、あぁ… そうなんですね」
イレギュラーな返答に、微妙な相槌を返す私。
へぇ、彼女さんと喧嘩かぁ。4階には誰が住んでたっけ。なんて、野次馬根性かな。
そういやこのマンション屋上に上がれるんだったなぁ。今度休みの日にでも那月呼んで、日光浴でもしようかな。
しかし、なんだろう。この人、雰囲気が独特で、しかも本当に綺麗な人だなぁ。つい、見てしまう。
そんなことを考えているうちに、自分の階に着く。
「あ、じゃあ失礼します」
もう少しこの人を見ていたいなあ、なんて自分でもよく分からない感情に包まれながら、エレベーターを降りた。