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第六話 鳥の架け橋Ⅱ

第六話です。

戦闘描写は苦手です。

「何故殺したんです…?」

 少女ワサビ=オロシは肩を震わせる。

「あの子が何をしたっていうんです!?」

 彼女は激昂する。

「答えてくださいっ!!」

 激しい誤解によって。

「ワ、ワサビさん? あなたは何か勘違いをしていますよ…」

「…この世は弱肉強食、弱者は死ぬのが運命だとそう言いたいと?」

 それもまたこの世の摂理ですが。

「カラシくんはちゃんと生きてます」

「あなたの心の中で!」

 ちょっとアイちゃん黙っててほしい。

「そうですか…わかりました」

 ワサビさんは顔を俯かせる。

 どちらの意味でわかったなのか…?

 暫しの沈黙があった。

「風の精霊よ、我が導に従いて汝が力を此処に示さん…」

 あ、ダメな方だこれ!

 地面に光の円が描かれ、そこから浮き上がる文字がワサビさんを包んでいる。

「この子、魔導師だよ」

「というとアイちゃん?」

 精霊、悪魔、幻獣など上位次元の存在に力を借りて火を起こしたり、風を起こしたりと魔法を使う者達、彼らを魔導師と呼ぶと教えてくれた。

「魔法かぁ、ボクも覚えたいな」

「魔法は強力だけど基本的に型が決まってるの、スライム君は持ってるスキルを磨いた方がいいと思うよ」

「そうなの?」

 確かによく把握しきれてないしその方がいいのかも…。

「ねぇ、悠長に構えてていいの?」

 えっ?

「【風卵(ウィンド・オヴァル)】」

 ワサビさんの右の掌から十五センチ大の空気の塊が撃ち出された。

「おぶっ!」

 アイちゃんは綺麗にかわしたけどボクは見事に直撃だ。

「スライムくん! スライムくんっ!」

「…うん、大丈夫…」

 魔法は少し痛い。

「おねーさん。あのゴブリンは別に死んでないんだけど!?」

「うん…」

 アイちゃんが招いた事態なんだ。

「わかっています。でもカラシくんをいじめた事には変わりないのでしょう?」

 一応わかってはくれたんだ?

「先にカツアゲしてきたのはカラシくんですよ」

「私達、無一文なのに」

「「ねー?」」

 今度は上手くハモッたねアイちゃん。

「先に述べたように彼は私の恩人であり私の弟みたいな物です。彼の痛みを慰謝料と替えさせて頂きます」

「ボクらに金など無いと言うておろうが!」

「ならば身体で支払っていただきましょう」

 きらりと眼鏡が光る。

「スライムくん、女の子同士って…有りなのかな…?」

 アイちゃんは頬を赤らめる。

「止められない気持ちは仕方ないよ」

「あ、あたしは白馬の王子様を追い求めるノーマルな女の子です!」

 それはそれで夢見勝ちなような。

「…こほん!」

 と、ワサビさんはわざとらしく咳払い。そして…。

「改めまして私はマスタード一家第三席。風魔導師(ウィンド・マージ)のワサビ。推して参ります!」

 …今、戦いが始まる。



「【風卵】!」

 呪文と共に風魔導師の掌から風の塊が撃ち出される。

「アイちゃん!」

「うんっ!」

 スライムと妖精は左右二手に別れ魔法をかわした。

「…アイちゃん!」

「はいな!」

「下がって!」

 スライムは妖精に後ろに下がるようにと指示を出す。

「…ほえっ? なんで?」

「それ、ちょっと危ないから…」

 妖精が手にする針を触手で指す。

「あの子、敵だよ?」

「ボクは極力人間は殺したくないの」

「…はーい」

 アイゼルネさんが離脱しました。

「人は殺さない? 随分とお優しいんですね。スライムさん」

「ボクと君は同じ匂いがするから…」

「あたしはスライムじゃありませんよ!? ま、まあそこそこ自信はありますけど…?」

 照れながら胸を張る少女。

「………」

 サイズはCいやD…とスライムは静かに相手を分析をする。

 だが今は胸の話は重要ではなかった。

「ボクは命は取らない。君もそれでいい?」

「ふっ、互いに気が済むまでですか…。いいでしょう!」

 スライムから提案された不殺協約。

 端からみればそれは奇妙な光景かもしれない。

 しかし重要なのである。そのスライムにとって。

「ただし、死んでも恨まないでねっ!【風卵】!」

「その時は化けて出ますっ!【酸球(さんだま)】!!」

 風の球と酸の球が空中でぶつかり合い、相殺する。


『スライムは特技【酸球】を閃いた』


 特技【酸弾汁】を特性【粘着】により球状に固めて撃ち出すスライムの自作特技。

 これは風魔導師ワサビとの戦いの中で着想を得たものだ。

 スライムは戦いの中で成長している…!

「やりますね…!」

「君の方こそ…!」

「そして化けて出ないでください!」

「いいえ、出ます!毎晩!」

 スライムと少女の戦いは次第に激化する。

「天駆ける螺旋、受け継がれた雄姿、真竜は天を仰ぎ見る!【仔竜巻(クライン・タルナーダ)】!!」

「【酸弾汁】!!」

 スライムは急激に成長を遂げる。

 それは自らも気づかぬ程のスピードで…。



『スキルが成長しました』


『【触手LV1】→【触手LV2】』


『解放特技【絡身憑(からみつき)】』


『スライムは特技【粘々(ねばねばじゅう)】を閃いた!』


 激しい戦いだった。具体的に何がどうだったかとは言えないが激しい戦いだった。

 マウマ峡谷、三の橋での戦いはスライムの勝利によって決着した。



 こてんぱんにのした結果。

「ぐすんぐすん…」

 泣き出すワサビさん。

「あーあ、泣かしちゃった?」

 ジト目のアイちゃん。でもボクは悪くないもん。

「進んでいいですか?」

「はい…、どこへなりと行っちゃってください…」

 そうか、なら行くとしよう。

 ぼろぼろの風魔導師を背にボク達は先へと進む。


「スライムくんって以外とテクニシャンだよねぇ?」

「ううん、アイちゃんがあの子の弱点教えてくれたからだよ」

「あの子の竜巻かわす所超カッコよかったー…」

「距離を詰められた時はボクも…」


 …………。


(あーあ、あたし、負けちゃいました…)


(…精霊魔法には一定の法則があり軌道を読まれたら次弾はかわされる可能性がある)


(強力な魔法は詠唱も長く魔力の消耗が激しい。故に魔導師の戦いは一撃必殺がセオリーである)


(ふふっ、勉強になりました)


(あんなスライムがいるなんて…)


(“異世界”ってホント…、楽しい所だなぁ…)




『スライムはレベルが上がった』


『【LV6】→【LV7】』


『獲得特性【貯蔵】」

第六話でした。ご想像にお任せします。


次回予告


眼鏡少女ワサビを倒したスライム一行は宿屋に泊まる!

「ベッドふかふかー♪」

「ボクらを泊めるなんて物好きな主人だよね」

草木も眠る深夜二時、窓の外からすすりなく声が!

「レンズが一枚…レンズが二枚…」

「こんな夜中に…」

「一体、誰!?」

「九枚…レンズが足りなぁい!」


第七話 番町眼鏡屋敷


「二枚で充分でしょ?」


※次回は都合に関わらず変更となります

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