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第二話 始まりの草原Ⅱ

ぷるるん第二話です。


 日が沈み草原に夜がやって来た。ボクがスライムになって初めての夜だ。

 この身体は夜目が利くらしく空が昼間のように明るくみえる。

 太陽の光が当たらないから身体も乾きにくくなった気がするし夜の方が動きやすい。

 これってつまりアレかな… スライム的に昼間は洞窟とか暗所で生活するのがベストだった?

 だとしたらボクは相当迂闊者だったんじゃ…。

 よ、よーし…今日からは朝寝て夜遊ぶ。昼夜逆転生活だ!

 って遊んでもいられないんだよね。この世界は危険だという事を昼間に身を持って知ったじゃないか…。

 護身術の一つでも身に付けなきゃこの世界では到底生き残れそうにない。

 そうと決まればさっそく特訓に入ろう!

 …だけどその前に周りの草をお片付け。特訓場を作るんだ。じゅわわ〜。


『スキルが成長しました』


 おっ…?


『【酸LV0】→【酸LV1】』


 おぉ…?


『解放特技 【酸弾汁】』


 なんだなんだ? 頭の中でアナウンスと共にテロップが流れたよ?

 スキルが特技がどうとか書いてあるけど…。

 えーと…何て読むの?【さんだんじゅう】?


 ブシャア!


 軽く念じた途端、ボクの身体から汁が飛び散った。

 よくわからないけどボクは酸性の体液を噴射する特技を修得したらしい。

 自分で言うのもなんだけどこれは汚い。狡いじゃなくて普通の意味で汚い。きったない!

 小学生時代、友達のアキヒロ君に笑わされ給食の牛乳を噴き出した事件を思い出した。

 アキヒロ君、千の変顔を持つと自負するだけあってホントに多彩な顔芸を見せてくれたっけ…。

 夜空の月に彼の変顔を重ね少しだけしんみりした。

 アキヒロ君で一つ思い出した。そういえば彼の家で読んだ漫画にスライムが出てきたんだ。

 漫画の知識だけど上手く流用できたら今後の役に立つかもしれない。


 漫画で読んだスライムの特徴。


・流動する不定形の身体は打撃や斬撃が効きづらく斬られてもすぐにくっつく。

 【物理耐性】【自己再生】


・形状を変えて女性の部屋や服の中に忍びこむ。

 【変幻自在】


・身体にまとわりついて女性の服を溶かす。

 【溶解】


・溶かした物を体内に取り込む。

 【吸収】


・増える。

 【分裂】


 …こんなところだったかな? 漫画のスライムを我が身にどこまで流用できるかはわからないけど…。

 アキヒロ君、ボク…やってみるよ…。

 それにしても、スライムと前世のボクの父親のお腹回りの特徴が所々一致している点に驚いた。

 変幻自在の腹芸。会社のストレスで胃潰瘍になったり、沢山食べて体重が増えたり、ぷるぷるお腹のお父さんはスライムだったのかー…なんて。

 月夜に浮かぶ変顔の隣に父のお腹を浮かばせてまた少ししんみりするボクなのだった。



 げぷっ…。食べた食べた。周りの草を綺麗に片付け草原の中に直径三メートル程の円を作ってやった。

 空から見たら軽いミステリーサークルだ。べんとら〜。

 それにしてもボクの小さな身体によくもこれだけおさまるものだ。しかもまだ全然満たされないし…。


『スキルが成長しました』


『【酸LV1】→【酸LV2】』


『解放特性 【溶解力+】』


 おや? まただ。草を食べてるだけなのにスキルが成長した。

 努力は報われる。それがこの世界の法則なら俄然やる気が出てきたぞ。

 【酸弾汁】をアクティブ(任意)とするなら【溶解力+】はパッシブ(常時)で発動するらしい。

 文字通り吸収時や酸の攻撃時に相手を溶かしやすくなったのだろう。草がみるみる溶けていく。

 よし、これでボクも戦えるぞ! ブッシャアー!

 草原の空高くボクは汁を打ち上げた。

「シャー!」

 うん。出すぎた。

「シャー!!」

 うんうん。わかったから。

「シャー!!!」

 うん。う…ん? へ…び…?



 蛇がでた…よ。

 ボクがこしらえた特訓場に蛇がでた。

 細長い身体に黒い鱗、見る者を萎縮させる眼孔。鋭い二つの牙の中央で舌先をチロチロさせている。

 えっと、こんばんわ…。

「シャー!!」

 ガブリッ!

 う、うわーっ! 噛み付いてきた!

 どろりと後ずさり距離を取る。 噛まれた部分は液体なのでダメージは無かった。

 しかし中央のコア部分を破壊されたら死ぬ。死んでしまう。

 第一の生でマンホールに落ちて第二の生は蛇に噛まれて終わる…。

 そんなの嫌だ! コイツを殺るしかないっ!

 ボクは蛇の身体をめがけて酸弾汁を放った。

「シャッ…!」

 初撃はするりとかわされてしまう。

「シャ…!?」

 飛び散った汁で地面がただれるのを見た蛇が一瞬だけ怯んだ。

 今だ。酸弾汁! 酸弾汁!

「シャー…!シャー…!」

 くっ! うねりうねった蛇行。汁は悉くかわされる。

「シュロロロ…!」

 蛇は長い身体でボクに巻き付き締め上げた。

 しかし…。


 ぬるり…


「シャ!?」

 スライムの流れる体は掴めまい…!

「シャー! シャシャー!」

 ボクは拘束を抜け出し、蛇の顔を目掛けて酸弾汁を浴びせかけた。

「シャー… アズナブブッ…」

 ボクの汁を浴びた蛇の頭が一瞬にして骨へと変わった。

 上部の骨を剥き出しに極め細かい蛇鱗は崩れ、下部に僅かな肉を残し蛇は息絶えた。

 勝った…! ボクは勝ったぞー!


『スライムのレベルが上がった』


『【LV1】→【LV5】』


『スキル・特性が解放されました』


『獲得【触手LV0】【発声器官】【形態変化LV0】』


 不思議と力が沸いてくる。ボクは蛇さんとの戦いで大量の経験値を得てレベルアップしたようだ。

 スキルのレベルアップで技術が向上。

 自身のレベルアップで肉体が成長するというわけだね。

 …蛇さん、貴方は強敵でした。亡骸は残さず食べますね。

 この世は弱肉強食。これが勝った者の礼儀なのだから。


 じゅわっ!


 変顔とお腹と汁と蛇さんが草原の夜を彩っていた。

第二話でした。

スラスラ書きたいです。

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