真実への糸口
言われた通りの場所に行くとそこには老若男女、様々な格好の生存者が大勢いた。
自分以外にもこんなに多くの生存者がいたことにホッとし身近なベンチに腰を下ろす。
ベンチやパイプいすが点々と置いてあるだけだったが身体を休めるには十分過ぎるほどで久し振りの休息を味わうことにした。
すると隣に座っていた作業服を着ている四,五十ぐらいのおじさんが話しかけてきた。
「おめえさん、どこから来たんだい?」
ゆっくり休みたかったが無視するのも野暮なので短く適当に返事を返す。
「向こうに見える高層マンション付近です」
「それだけじゃ良く分からんなぁ。まぁどこでもいいか。
それより奴らとはあったか?」
答えたくは無かったがしつこく絡まれても厄介なので素早く答える。
「えぇ、会いましたよ。少し前にもね。
すみませんが疲れてるので失礼します」
他の空いているベンチへ移ろうと腰を上げようとするとおじさんは慌てたように言った。
「ちょっと待て!
お前さんよ、奴らがどこから来たのか知りたくはないか?」
その言葉はこれ以上の対話をめんどくさがっていた僕の心を引き留めた。
上げようとしていた腰を再び下ろし座りなおすとおじさんの方を向き冷静に落ち着きながら言う。
「それは本当ですか?
冗談とかだったら本当に行きますからね」
「もちろん本当だ。疑うのも無理もない。
こう見えても俺はな、都会で働いてるんだ。工事でだけどな。
例外なく今日もいつもの工事現場で働いていた。
そうだなぁ……、あれは午前の八時ぐらいだっただろうか。
出社するサラリーマンが多くいたから恐らくそのぐらいだったと思う。
何の前触れも無く奴らが現れたのは。
それは本当に唐突だったよ。気が付くと同僚は殺されてるしリーマンたちも逃げ回っていた。
俺も仕事なんてそっちのけで逃げたもんよ。良く生き延びれたと今でも不思議でならない。
それはさておき本題に入ろう。
奴らがどこからやって来たということだがそれはな……」
そこまでおじさんが言うと学校中にサイレンが鳴り響いた。
「敵が攻めてきました。
一般人の方たちは自衛官の指示に従って裏口から逃げて下さい」
自衛官ははっきりそう言うと誘導し始めた。
「残念だがこの話はここまでだ。
今は生きて逃げ延びることだけに集中しよう。
なぁに、また続きを話してやるからよ。
話の落ちは直ぐ言っても面白くないしな」
おじさんはそう言うと他の誰よりも早く裏口に走って行った。
僕も遅れをとらないようすぐに着いていく。
奴らの真実に繋がる糸口を見つけたように思えた。
前話を投稿してから結構時間が経ってしまいました。すみません