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つかの間の安心

どの位走っただろうか

帰宅部の僕にはこの距離はきつくもう膝が悲鳴を上げている。

息も切れて肩で息をしているようだった。


しかしそれでも走るしかなかった。

僕たちの為に囮になってくれた自衛官たちのためにも生き延びなければならなかった。


いつの間にか背後から聞こえていた銃声が止んでいる。

どっちが勝ったのか分からないが自衛官が勝ったのだと思いたかった。

でも僕の脳の片隅にはきっと負けたんだろうという考えがある。

あんな敵を見た後ではそう思うのが仕方ないのかもしれないが命を呈してまで助けてくれた彼らを信じていない自分が情けなく思えてくる。

戻りたい気持ちもあったが奴らの脅威を知っている僕には戻る勇気など存在せずあるのは逃げ出したい気持ちと自分の無力を恨む感情だけであった。


「くそっ……」


気付くとそう言っていた。

何故かはわからないが油断すると今にも泣きだしてしまいそうでこらえるのに精一杯だった。


すると肩を貸していた女が囁く。


「あなたのせいではない。

 悪いのは全部奴らだ。奴らが大事な家族や友達を殺し思い出の詰まった家を破壊していった。

 頼りの綱の自衛隊も壊滅的被害を受けて危機的状況に陥っている。

 でもいつか必ず奴らに反撃が出来るときがくる。

 奴らに人類の強さを見せつけられる時がやって来るんだ。

 その時までしぶとくゴキブリの様に生き延びろ。

 そして自らの手で奴らに終止符を打ってやれ。

 それこそが今考えるべきことだ」


彼女の目は吸い込まれるような力があり遠くを見ているようだった。

まるでこれから先の未来を見ているように


そうだなとだけ返事すると空いてるほうの腕で涙を拭う。

そして逃げ出すことだけに集中した。


それからまた数分が経った頃、ようやく高校に到着する。

そこにはたくさんの生存者や自衛隊と色々な兵器が存在していて安心できた。

僕たちは正門前で周囲を警戒している自衛官に中に入れてもらい取り敢えず他の生存者が集まっているところに向かう。

すると向かっている途中で若い自衛官に話しかけられた。


「疲れているとは思うが聞きたいことがあるんだ。ちょっと良いかな?

 君たちはいったいどこから来たんだ?」


僕は呼吸を整えながら記憶を辿っていると女が強い口調で言う。


「なぜその様なことを言う必要があるんですか?

 それを知ったところで何か扱いが変わるんですか?」


それを聞いた自衛官はなだめるような優しい声で即座に答えた。

まるで何度も同じ質問をされていたようだった。


「敵のおかげで自由に動き回れることが出来ず私たち自衛隊には情報が圧倒的に不足しています。

 なので敵から逃れてきたあなた方生存者たちの情報を知りたいのです。

 お分かりいただけましたか?」


女はむすっとしていたが納得したようで思い出そうとしていたが足の怪我がばれると救護室に運ばれていった。

何度も私は大丈夫だからと言っていたが思っていたより傷は大きいらしく有無も言わせぬまま連れていかれた。


そういえば彼女の名前を聞いてなかったなと思いながらも記憶を辿っていると自衛官は言った。


「疲れているようなのでまた後にしましょう。

 向こうの野球グラウンド付近で待機していてください。

 いつでも逃げられるようにしといてくださいね」


自衛官はそういうと踵を返しテントの中に入っていく。


僕は素直に言われた場所に向かいながら今度彼女に会ったら名前をちゃんと聞こうと考えていた。



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