再び襲い掛かる脅威
僕たちはとにかく逃げた。
奴らがいつ来るか分からないこの状況では逃げるしか出来ることは残されていなかった。
走り始めてから十分近く過ぎただろうか、先頭を走っていた自衛官が突然立ち止まり言った。
「ここから二㎞いったところに救助活動を行っている高校がある。
俺たちは今からそこに向かう。
奴らに襲われている可能性もあるが今はそこに行くしかない。」
そう言い終えると女性に肩を貸していた自衛官も言う。
「奴らを見たら俺らに知らせろ。
どんな強敵が来ようとも命を呈して守ってやるからな」
彼らはとても頼もしく男らしかった。
そんな彼らを死なせないためにも奴らが出てこないことを心から願った。
しかしそんな願いもこの世界では叶わなかった。
走り出して更に五分近くが経過した頃、奴らが突然姿を表す。
そいつは先ほどまで戦っていた鎧を着た奴らとは似ても似つかない全く別の姿をしていた。
体長は三メートルほどで民家の二階辺りに頭がある。
また肉体もボディービルダーのような筋肉を持っていて時折、ピクピクと細かく動いていた。
両手には何も持っていなかったが自らの肉体が唯一の武器ということなのだろう。
始めてみた姿だったが全体的に巨体で強力な力を持っていることが安易に予想できた。
正面からただ単に攻撃するだけでは敵う相手では無いと誰もが思う姿だった。
僕たちはその姿を見かけるとすぐに横たわっていたトラックの陰に隠れた。
見えなくなるまで隠れようとしたのだがその巨体の敵はゆっくり一歩づつ僕たちに近づいてくる。
このままでは無残にも殺される。
僕はあまりにも唐突なことだったので混乱し体がその場から一歩も動かなくなった。
すると自衛官が力強く僕の腕を握りしめ冷静に言う。
「お前はあの女を引き連れて今すぐ逃げろ。
この怪物は俺らで止めといてやる。だから安心して逃げろ。
高校はこの道をまっすぐ行った先だ。女はお前が守ってやれよ」
横の細道を指さしながらそう言う自衛官の顔は真剣で反論も何も出来ず従うしかなかった。
しかし僕の顔は不安を隠し切れなかったのだろう。
女を背負っていた自衛官が女を下ろしながら太い低い声で言う。
「大丈夫だ。俺たちはあんな奴らに決して負けない。
しばらく引きとめたらお前らの後をすぐに追うしな。
お前はこの女を守ることだけを考えればいい。
出来るな?」
僕は震えながらも歯を食いしばり手を強く握りしめささやくような声ではいとだけ返事した。
「それでこそ男だ。
じゃあもう少ししたら一気に駆け抜けるぞ。
……三……二……一 よしっ、ゴー!」
僕たちは全力で道路を横切り細道に入った。
女性に肩を貸しながら走っているため遅かったがそれでも出来る限りのスピードを出して急いだ。
背後からは絶え間なく銃声が鳴り響いている。
その音を背中で聞きながら僕たちは高校へと向かった。