侵略者からの脱出
生存者が逃げる時間稼ぎの為に撃ち続ける自衛官。
しかし時間稼ぎのためとはいえ銃弾を通さない奴らの前では無駄な抵抗でしか無く奴らとの距離は縮まっていった。
自衛官は次々に剣で斬られ矢に刺され無残な死体を増やしていく。
だが恐怖に震えその場でうずくまっていた生存者たちは自分の身を犠牲にしてまで私たちの為に奴らとの戦闘に身を投じる自衛官により勇気づけられ次々に自分の足で逃げ出し始めた。
そして時間にして四、五分だろうか。遂に最後の一人が逃げ出した。
これ以上の戦闘は意味が無く犠牲者を増やすだけだと判断した自衛官は生存者たちの後を追い始める。
その場には輸送車両と民間人や自衛官の死体、そしてピンの抜かれた手りゅう弾が残されていた。
多大な犠牲を払ったが全滅という最悪な事態を見事防ぎ切ったのである。
その頃、僕は女性と一緒にいた。
敵襲にあった道路に隣接する民家にいるため今すぐにでもここから出なければ命の保証は無い。
しかし女性の片足が怪我しているため速やかな移動が出来ないのだ。
今も肩を貸しながら裏口に向かっているのだが廊下にものが散乱しており足場を一歩一歩探しながら進むという何ともじれったい移動方法をとっている。
後少しで裏口に辿り着くというときに女性は激痛に顔を歪ませながらぼそっと言う。
「早く逃げないと……奴らが来る……
それまでに……絶対、絶対逃げてやる!」
さきほど僕を呼んだ時の威勢や覇気は無かったが生きることへの強い執着心が感じられた。
「そうだな、絶対生きて逃げ切ってやろうな!」
僕は無理やり作った笑顔とともに明るい声でそう言う。
正直、これから生きれる自信はなかったが怪我をしながらも諦めようとしない彼女の前で弱音など吐けなかった。
裏口に辿り着き外に出た僕たちは向かいの民家に入るため急いで塀を乗り越えようとする。
しかし片足を怪我している彼女は乗り越えることが出来なかった。
このままでは奴らがやって来ると思うと焦燥感にかられ余計上手くいかなくなる。
僕だけでも逃げてしまおうかという考えが脳裏を横切った時、救世主が現れた。
それは生存者を守るためにやってきた二人の自衛官だ。
自衛官は颯爽と現れるといきなり彼女を軽々しく持ち上げ塀を乗り越えた。
呆然としている僕にもう一人の自衛官は
「ほら!ぼーっとしてる暇なんかないぞ!」
と背中を叩きながら言う。
力強い味方を手に入れて無事に逃げ切れる自信が出てきた僕だったがその自信はそう長く続かなかった……