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逃げることを許さない侵略者

一体何が起こったのだろうか……

次々に生存者と自衛隊員が矢に刺され火だるまになり息絶えるのを目の当たりにした僕は単純にそう思った。


~30分前~


自衛隊員と別れ言われた地点に行くとそこは地元でも有名な大きな公園に着いた。

普段ならばそこではゲートボールに勤しむ年寄りたちや赤ちゃんを連れた親子連れがいてのどかな光景を見ることが出来ただろう。


しかし今は多くの自衛隊員が慌ただしく動き回っており空いているスペースもトラックや装甲車などの乗り物が所狭しと置かれていた。

中には負傷者もいるようで公園の一角では医官や近くの病院から来たと思われる医者と看護師が常に治療に専念している。

彼らの顔には疲労感が強く表れていて人手不足ということを表していた。


周りを見渡してみても無傷な人は少なくどこか一か所は大抵、怪我をしていた。

また酷い人になると片腕が捥げて無くなっている人や腹部を鋭いもので引っ掻かれた跡が残っている人がいてそれほどまでにやつらの攻撃は恐ろしいものだったのだと気づかされる。


その中に生存者も多くいて中には同年代と思われる十台後半の女性もいた。

見たところツリ目で鋭い目の上、黒のセルフレームメガネをかけてたのでクールで知的な雰囲気を醸し出しており右目の下にある泣きぼくろが特徴的だった。

また髪は黒髪で短くシャギーでショートでクールな顔にピッタリだと思えた。

服装も上は灰色のカットソーの上に前を開けた黒のジャケットを下は灰色のチェックブリーツを足には黒のタイツを靴は黒のローファーを着ている。

全体的に黒を基調としておりこれもやはりクールな感じにマッチしているようだった。


しかし彼女は右足に大きな傷を負っており歩くときは怪我した足をかばうように引きずりながら歩いている。

一歩進むごとに顔が苦痛で歪み見ている僕も思わず目をそらさずをえなかった。


僕以外に生存者が大勢いて更に自衛隊が本格的に防衛を始めている現状を目の当たりにし心の底から安心したのと同時にこれは現実だと突きつけられた衝撃でその場に立ちすくんでいると自衛隊に呼ばれた。


「今からあなたたちを安全な場所に連れていくのでこのトラックに乗り込んでください。」


自衛隊員はゆっくりはっきりと遠くに良く響く声で言った。


僕は自衛隊員に案内され他の生存者と共に公園の出入り口に並んでいる5,6台ある73式大型トラックのうちの一つに乗り込んだ。

そして全員が乗ったのを確認すると何台ものトラックは一同に走り出す。


走っている車の隊列は次のようになっている。


まず先頭を走る軽装甲機動車は先導と防衛の担当だ。

車体上面ハッチからは5.56mm機関銃MINIMIを持った自衛隊員がスタンバイしており奇襲攻撃にも対応できるようにされている。また同様にトラックの右側にも一台、並走している。


更に10人の自衛隊員を乗せた高機動車(HMV)がトラックの左側と最後尾で走っておりもしあいつらが襲ってきても迅速に反撃を行えるよう乗員は出撃の準備を終えて待っている。


輸送する民間人に比べて護衛する装甲車が少ないと思うと知れないがこれしか出せないほど今の自衛隊は危機的状況に陥っていたのである。


走り出して20分が経っただろうか。住宅街の細い道は一台がギリギリ通れるほどの狭さだったため横を走っていた軽装甲機動車や高機動車は前か後ろに移動し一列となって移動していた。


生存者は出発して以来、誰一人として口を開くものは居なかった。得体の知れない謎の敵に怯え逃げまどい心身ともに疲労していたのであろう。

時折、同乗していた自衛隊員同士の声とトラックの走行音が静寂を打壊すぐらいであった。


その時、トラックが急ブレーキをかけた。

急だったため乗員はなすすべもなく壁に叩きつけられ一部の人はトラックから投げ出されていってしまう。

同乗していた自衛隊員も突然のブレーキに反応しきれず体勢を大きく崩し壁にぶつかっていたが直ぐに立ち直し瞬時に外に出ていった。


その僅か数秒後に外から悲鳴が鳴り響く。その直後、辺りから幾つもの銃声が鳴り響き自衛隊と奴らとの攻防が始まった。


僕は倒れながらもトラックの出入り口から外を見てみると上空から大量の矢が降り注ぎトラックから出た生存者や自衛隊員が無慈悲にも刺され血を流しながらその場に倒れていくのが見えた。


このままでは危険だと思った僕は取り敢えず矢の雨がやむのを待った後、覚悟を決めて外に出たのと同時に後方のトラックが火で覆われた。

乗員の一部の人は全身火だるまになり暴れまわりながら次第に息だえていく。

僕は運よく燃えずに済んだが何が起きたか分からずふと上を見上げてみるとそこには先ほどまで戦闘機との戦いを演じていたはずのドラゴンが飛んでいた。

ウソだろ……、と思いながらも立ちすくんでいる場合では無いと自分に言い聞かせ恐怖で震えている足を動かした。

いち早くここから離れないとあいつらに殺されると察した僕は一目散にトラックから出た。


辺りは見まわしてみると大量の死体がそこにはあった。

焼き焦げ灰となった死体や矢に刺された死体がそこらじゅうに寝そべっていた。


頼みの綱の自衛隊も一人また一人と殺されていき無残な死体を増やすだけであった。


僕は逃げる方法を何とか探し出そうと前を見た。

その時、初めて奴らを見たのであった……



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