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四日目

姫貝ひめかい 理斗りと

小柄で運動が苦手ないじめられっ子。名前に遜色なく、男子にしては愛らしい外見、強く言い返せない性格故に、男女からいじめの標的になっている。

座学はそこそこに優秀で、特に音楽、経済学の才能に恵まれている。


―――――――――――――――

――視点変更――

幸徳井 ヨシュア → 姫貝 理斗

―――――――――――――――




 どうしてこんなところに僕は居るんだろう?


「おい、おいよせ! 開けるな!」


 安西くんが、僕らの逃げ込んだ民家のドアを開けて外に出ようとして、大路くんに止められてる。その二人が争うのを、我関せずで滝根くんがただ眺めてる。

 かく言う僕は、疲れ切って状態が呑み込めずにいた。


「ここに居ればいいだろうが! なんでわざわざあんな怪物に居る外に出なきゃならないんだよ!」


 安西くんにそういうのは、大路おおじ 陽太ようたくん。いつも僕に足をかけて転ばせて遊んでた人だ。


「その意見には賛成だけど……俺なら開けないな。死にたくはないし」


 離れた位置から眺めている長髪の人が滝根たきね じゅうくん。いつも僕の教科書を奪ったり、僕のお金で勾配のパンを買ってこさせてた人だ。


「うるせぇ! こんなとこで餓死なんぞ出来るかってんだ! 拳で殴れんならあんな怪物ども殺せる!」


 大路くんにそう口で言いながらドアを開けようとするのが、安西あんざい 獅子れおくん。いつも僕を殴ったり、ジュースをかけたり、お金を奪ったり……僕をいじめてた人だ。

 なんで、僕はこの人たちと一緒に居るんだろう?

 二人が入口付近で争う中、滝根くんが僕を見る。いつもの、あのにやけた、おもちゃを見るような、汚い物を見るような……虫を見るような目で、僕を見て言う。


「なあ、じゃあ姫貝をまず出そうぜ。いい囮になるだろ?」


 滝根くんが争う二人に僕を指さしながら言った。

 僕は外に出される恐怖で身がすくんだ。この10畳ほどの平屋の外には、あの怪物たちが居るかもしれない。そんなの皆解ってる。分かった上で、飢えて死ぬか、食い殺されて死ぬかの選択を迫られてる。

 そして僕は、矢面に投げ出されそうになってる。面白半分で……僕も、首を噛まれて死ぬんだろうか? 僕も、すりつぶされて生きたまま食われるんだろうか?

 僕は自然と震えだしていた。きっとこの連中ならする。それでわざと小屋から騒いで注目を集めるんだ。いつか僕の服を奪って、女子更衣室に投げ込んだ時みたいに……


「あ? そんなことするわけねぇだろ!」


 安西くんが言った。僕は自分の耳を疑った。


「こいつは俺の恩人だ。だからそんな扱いはしねぇ」

「は? 恩人って……姫貝のやつだぞ?」


 大路くんもこの言葉に驚いているようだった。安西くんが続ける。


「ああ、俺、姫貝の奴をいじめてたのによ……こいつ、この間の時俺を庇ったんだ。だから、その恩を俺は忘れねぇ」

「い、いや……だけどよう……」


 動揺する他の二人を他所に、安西くんが扉から離れて僕の元へ来る。そして、震える僕の肩に手を置いて、何時になく優しい……気味の悪い声で言う。


「その……俺、おまえに恩感じてんだよ。だからよ、一緒に行こうぜ、な?」


 僕に、選択の余地はなかった。大路くんも滝根くんも、相変わらず僕を汚い物のような目で見ているのが、僕の視界には入る。

 でも僕は、一刻も早く逃げ出したかった。この世界から。この場所から。この人たちから……





 結局、あの民家に籠ったのは一日半の間だけだった。僕はその間眠れずにいた。いじめっこ達の声が聞こえるたびに目が覚めて、寝付けなかった……


 僕らは、止まることなく大きな建物を目指した。元の広場に戻るのは怖かった。他のクラスメイトの死体を見かけるかもしれなかったし、あの広場を出る時……入り口に、散乱していたから……正直、戻りたくなかった。

 安西くんを先頭に、大路くんが怯えながら続き、僕を挟むようになぜか余裕を見せている滝根くんが最後を歩いた。

 背後から滝根くんが僕に肩を組みながら言う。


「おい姫貝。良かったなぁ……ご機嫌とれてよ。でも俺、おまえが嫌いだからさ……わかんだろ?」


 僕は震えながら聞いていた。この人は、こういう雰囲気の時、笑いながら僕を殴るんだ。殴る最中は、僕が何もしてなくても怒ったような顔で……


「お前が妙な動きしたら……あの怪物どもじゃねぇ……俺がお前を殺してやるからな」


 そう言い残して、僕を追い抜き安西くんたちの元へ滝根くんが行く。僕は仕方なく、彼らの後を追った。


 彼らの姿から目を逸らしながら歩いた。そしてこの世界の姿を改めて見た。

 ほとんど赤色の世界だった。血の色に似た……錆色の世界だ。海の水も錆がほとんどだ。こんな水、真水でも飲めないと思う。それから気になってることだけど、遠くの空がおかしな気がする……気のせいじゃなければ、あれは……壁なんじゃないかな。空の絵が錆びた物が、この世界の端に有る気がする。その壁に四方と空がおおわれて、常に昼間の世界。そしてなにより……


「おい、隠れろ!」


 安西くんの指示で僕らは咄嗟に近くの瓦礫に隠れる。

 聞こえる足音、何かを引きずるような音、吐息、僕の心臓の音……。それらを聞きながら、僕は自分の汗が噴き出るのを感じた。


「居やがった……怪物共だ」


 安西くんはどこか嬉しそうな声色だった。僕はひたすら、自分の足元を見ることしかできなかった。


 すると突然、安西くんが立ち上がった。あっけにとられる僕らを他所に、どこから取り出したのか拳銃のようなものを構える。

 銀の角ばったフォルムのそれが蒼い光を放ちながら、耳鳴りに似た甲高い音と共に光を放つ。と同時に、何かがのたうち回り苦しむ音が聞こえる。


「はは、やったぞ! これまだ使えんじゃねぇか!」

「獅子、おまえ、それなんだ?」


 あっけにとられながら滝根くんが、無邪気な笑みを浮かべる安西くんに聞く。安西くんはその拳銃のような物を滝根くんに向けて言う。


「銃だよ、銃。さっきの民家で見つけてたんだよ。だから試したかったんだよ……」


 更に滝根くんに拳銃を撃つ真似をして、ひるんだ滝根くんを笑った。滝根くんは安西くんに向きなおって言った。


「なんだよ、そう言うことかよ。お前早く言えよ」

「わりぃわりぃ、撃てる保障とか無かったしよ」


 その様子に大路くんが舌打ちしたのを、僕は聞いてしまった。もしかすると、この三人、一枚岩じゃないのかもしれない。

 大路くんが先陣切って歩きはじめる。


「じゃあいいだろ。安西の銃があれば、すぐにあの建物まで行けるって」


 一人歩きはじめた大路くんを、妙な自信を持った二人がゆっくりと追う。

 僕はその人たちについていくしかない。僕一人じゃ、食い殺される未来しか見えない。でも、早くこの人たちからも離れなきゃ。この人たちと一緒じゃ、殺される未来しか見えない。

相沢「おい!」

作者「お、おうどうしたのだ? 相沢くん」

相沢「なんでメインヒロイン(瀬折さん)のセリフがまだねぇんだよ! ってか主役は俺ら三人のはずだろうが!」


作者、無言で目を逸らし、無表情を決め込む


相沢「おいいいい!」

作者「だって仕方ないじゃないか! 62日なんて長丁場をいちいち追っていけるか!」

相沢「本音だだ漏れじゃねぇか! オブラートに包め!」

作者「オブラートは溶ける物です!」

相沢「そうじゃねぇ!」


両者、肩で息をしながらにらみ合う


相沢「作者、一ついいか?」

作者「なんだい?」

相沢「ぶっちゃけ思ったんだが、今のとこ瀬折さんが『愛らしい』とか『かわいらしい』とかそういう表現したか?」

作者「……あ、そういえば」

相沢「メインヒロインより先に男を『愛らしい』って、前書き説明とはいえ書くってどうなんだよ!」


作者、片目をつぶりながら微笑み、わざとらしく舌を出す


どこからともなく現れた○斗神拳伝承者セオリ、作者を世紀末覇者のマッチョな拳で粉砕する


世紀末覇者セオリ「メインヒロインより、男の子の方が可愛いと言うのかぁぁぁあ!」


作者の断末魔が木霊する中、世紀末コンボを繰り広げる世紀末覇者系ヒロイン


相沢「あ、ごめん、その光景だと否定できない……」

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