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一日目(前編)

第四の世界線。

それは絶望の物語。

救いの無い物語をここに……

 今日も一日、何気ない一日が過ぎていく。当たり前だ。近くの国にミサイルが落ちようと、結果戦争が起きようと、僕らの生活は変わらない。それが『退屈な日常』ってやつだと僕は思う。

 目の前で現国の先生が黒板に白線を引き、次のテストに出すという問題を予め教えてくれていた。皆一応にノートを取る。その後の勉強とかその他は放っておいて……。かく言う僕はノートは取らない。ノートを取らないと後々大変だと分かっているが、気分じゃない日だってある。今日はそんな日だ。

 ふと教室の窓から遠くを見た。日差しが平和にグラウンドで体育をする一年生たちを照らしている。季節は夏。今は二学期の7月中旬。もう少し涼しいと外にも出たいのだけど、こんな暑さじゃ外での体育は拷問だろう。とはいえ、夏休みまであと二週間もない。こうして日々を過ごせば、それだけで夏休みになる……。理由は無くても、夏休みは楽しみな物だ。セミが必死に鳴き続ける中、陽炎に揺れる外を見て、僕は授業そっちのけでそんなことを考えていた。


 思えば、ここまでが僕らが“まとも”だった時だったのかもしれない。


 チャイムが鳴って、現国の先生が次回の授業内容を話し去っていく。廊下からは話声、早々に席を立とうとする音、兎に角友人と話す者。皆一様に教室に居た。共通条件は、それだけだった。

「何考えてんだ? 次物理で教室移動だぞ、ヨシュア」

 そう話しかけてきたのは、僕の幼馴染の友人、相沢剣あいざわけんだ。お調子者で基本は不真面目だが、この現国の授業は別だ。ノートも取れば背筋を伸ばして頑張る。理由は……

「ってか、さっさと移動しようぜ。瀬折さんが行っちまう」

 瀬折香せおりかおり。剣がオネツな女子だ。短い髪に細身の体。それでいて大きな胸。色白で肌が綺麗。なんて素敵な女性! とは剣の言いぐさだ。確かにかわいい人だが、彼女は恋人が居たはずだ。

「ねぇ、『略奪してみせる』と息巻くのは勝手だけど、ならまず声をかけて友人になってみれば?」

 思わず僕が言った言葉に、剣は首を振る。

「む、むむ無茶言え! 無理だから! ……あーでも、声かけねぇとなぁ」

「まぁ、頑張んなよ。剣は気が利くんだし、きっと良く思ってくれるさ」

 と剣に発破を掛けながら僕は席を立った。

 その時、教室のドアが開いて、人が投げ込まれた。教室を出ようとしていた生徒たちが足を止めた。投げ込まれたのは姫貝ひかい 理斗りと。投げ込んだのは彼をよくいじめていた不良の安西あんざい 獅子れおだ。姫貝が肩を抑えながら立ち上がろうとするのを、安西が足で抑える。その状況を何事かと見る生徒、野次る生徒、そのすべてを含めて事態は急変した。




 窓がかすかに揺れ、わずかに自分の体が上下に揺れている気がする。

「何? 地震?」

 誰かが言った。

「おい! 教室のドア空かねぇぞ!」

 誰かが教室のドアに体当たりしている。

「窓の外……なに、何何? 何なの!?」

 誰かが窓の外を示唆してパニックになる。窓の外は……赤い空。

 その時、確かに傍で誰かが何かを囁いた。揺れる音とパニックに声で聞き取れない。

「あなた……殺……必ず」


 一面赤い、見知らぬ場所になっていた。教室はそこだけ綺麗にくりぬかれ、赤い世界に鎮座させられていた。僕ら25人の生徒を入れたまま、教室そのものが移動したんだと、異世界に来たのだと知るのはもう少し後になる。

「お、おい、なんだ? こいついつから居たんだ?」

 一人の男子生徒が窓の外から覗く、作業着の男のような存在に近づきながら言う。そう発言したクラスのお調子者は、次の瞬間首から赤い噴水を迸らせながら、悲鳴も上げずにその場で手足をバタつかせ、そしてほとんど動かなくなった。その首筋に噛みつく人影、その口に咥えた肉人形の首から骨の砕ける音がする。上がる悲鳴、誰もが教室のドアに走り出す。茫然とする一部の人を置いて。

 僕は何が起きたのか考えようとしていた。状況を理解することで目の前の人の形をしながら、口に今なお時折跳ねる人型の人形を加えた存在が消えるわけでもないのに。

 なにが起きたんだどうして死んだんだ? 死んだのは権堂ごんどうって名前のたしか生徒で色々ばかやってる人ではあったけどなにも死ぬことはなかったんじゃないだろうかいやそもそもどうして死んだんだ? 噛みついてるあれはなんだ? 人のようだけど人なのか? 口に権堂を加えてぶら下げてまるで犬のように首を振るあれはいったいなんだなにがおきてぼくはどうすればどうなっていてどうなってどうなってなにがなんでなにもわからない


「何してんだよ! 早く逃げるぞ!」

「……剣。そうだ、逃げなきゃ」

 剣が僕の肩を揺さぶり起こした。ありがとう、と剣に言いながら、教室のドアの方を見る。ドアは破られ、生徒は皆散り散りに教室の外へ出ようとしている。

「あぶねぇぞ!」

「早く出ろ!」

「やめて! 踏まないで!」

「どけよ邪魔だな!」

 パニックの中、僕は確かに聞いた。

「誰か倒れてる! 助けなきゃ!」

 背中で剣が止める声を聞き流し、僕は人ごみの中に入りその声の主を探した。他の生徒の足が左右から行く手を阻み、何度も蹴られる。遂には僕自身も踏まれ教室の地面に突っ伏した。なんとか声の主の元へたどり着いたが、そのころには生徒のほぼ全員が教室の外に出た後だった。

 教室に残って居たのは、僕と、僕の元へ駆け寄ってきた剣、踏まれて気を失っている瀬折、そして……


 静かになった教室に響く、粘着質な液体をばら撒く音。何かを砕きながらむしり取る音。それを発しているのは、人の姿をしながら人を貪る、まさに『ゾンビ』そのものだった。

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

夜行 千尋でございます。


今回はご要望に有った『Night Walker World』の第四世界線

ドキっ☆ゾンビだらけのサバイバル! マミるまで5秒前のマジやば死亡遊戯!! エロもあるよ★彡

を書いていくこととしました。

内容自体がかなり絶望系なので、後書きは極力茶化していこうと思いますが……いかがでしょう? 不評ならやめますね(感想稼ぎなう)

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