芽吹くのは...2
ちょい短いので、本日2話投稿。
このあと、3を投稿します。
「え? お前気付かなかったの?」
昼休みに食堂で飯を食っていた俺は、初めて聞いた話に目をまん丸く開いた。
「知らなかった」
隣に座るクラスメイトは、少し苦笑気味に肩をすくめた。
「そばにいると分かんないのかもね。野々原さん可愛いから、結構人気あるよ。石黒も、ふざけてるけど本気」
「……マジでか」
だから今も肩を落としてるわけですかい。
風とのやり取り以降、石黒はずっと肩を落としたままだ。
ちゃらいこいつの事だから、てっきり女子全般が好きなのかと思っていた。
俺の不思議そうな表情に、隣に座る坂田が笑う。
「そうやって茶化さないと好きな子に話しかけられない奴っているじゃない、ね?」
「……ねって、まぁそうかもしれないけど。ちゃら過ぎて余計引かれてる気がするのは俺だけか?」
「……根付いたキャラ設定は、中々払しょくできないものだよねぇ」
二人で溜息をつきながら、石黒に視線を向ける。
「でもさ」
「んー?」
「好きなのみえみえなのに、何も出来ずに二年間経ってる奴も大概だと思うよ」
ラーメンをずるずる啜っていた俺は、坂田のその言葉で吹き出した。
「……!!?」
「うわ汚い、口から麺が出てるし何歳の子供だよ」
「いや、あの、その、……え?」
嫌そうに眉間に皺を寄せた坂田は、テーブルに置いてある台布巾を投げてよこす。
それを無意識に受け取りながら呆然と見返せば、何でもない様にラーメンをすすり始めた坂田は呆れたような新鮮を寄越した。
「石黒と同じだね。分かりやすすぎだってば、柊介も」
「え、だって、そんなの誰も……」
「気付いてないのは野々原さんだけでしょ。誰も何も言わないのは、そのスルーっぷりが面白くてなまぬるーく傍観者してるだけ」
……マジか……。
思わず両手を床についてしまいそうな衝撃の中、昼休みは過ぎた。
”クラスは石黒も柊介も応援してないよ、面白いから見てるだけー”
そして石黒も俺の事は気付いていると言われて、どんだけ自分が鈍いかを思い知った。