上手くいかないタイミング。
霜三矢 夜新さんの作品「オカン」のキャラをお借りして書かせて頂きました^^
http://ncode.syosetu.com/n0001bh/
キャラをお貸し下さり、ありがとうございました≧▽≦
いやーもー、好きなんです。オカンとアツシくん☆
そして、2話目で突然出てくる、主人公の名前(笑
柊介くんと風ちゃんです^^
「柊ちゃん、そっちどう?」
「んー、もう終わるけどさー。こっちにも蔓伸びてきてるなー」
柊介は外壁の外側の落ち葉を掃いている風に声を掛けると、内側に伸びてきている蔓を軽く引っ張った。
柊介と風が小さい頃に植えた種から芽吹いた風船葛は、夏には神社の外壁を覆い尽くす。
さながら緑のカーテンだ。
引っ越してしまった風が戻ってきたのは昨年。
それから始まると思っていた柊介の青春……(照)は、全く始まっていません。
これっぽっちも一ミリも。
「表は掃き終わったよー。で、伸びた蔓ってどれ?」
「うおっ」
いきなり話しかけられて、柊介は飛び上がった。
そんな柊介を不思議そうに見ながら、風が隣にしゃがみ込む。
「あー、壁の隙間からこっちに来ちゃったんだね」
「……そうだな」
……この、なんの緊張感も警戒感もない間柄。
喜んでいいのか、悲しんでいいのかorz
「……」
その時、壁の向こうから微かに声がした。
それと共に、こっちに向かってくる足音も。
「すっかり観光名所だね」
風が面白そうに笑う。
そう。
風船葛の緑のカーテンもそうだけど、そこから取れる種を持っていると恋が叶うという噂が勝手に流れ出した。
とりあえず父親を〆てみたけど必死こいて俺じゃないと母親に対して叫んでいたから、違うと信じよう。
母親に頭の上がらない親父だからして。
そうしてその噂を聞いてやってくる人たちに欲しいと言われて、ご利益とか解りませんが……と言ってわけ始めたのが最初。
今ではもう勝手に持って行く人たちが増えて、あまり嬉しくない状況ではある。
でも禁止するには可哀想だからと、立て看板で注意を促すだけにした。
――でもさ。
自分の恋愛が全くと言っても良い程、芽が出ていない俺が植えた風船葛なもんで、ご利益あるようには思えないんだけど。
しかもこうやって、種を取りに来た恋人同士とか見なきゃいけない俺って、結構切ないと思うんだけど。
柊介は項垂れつつ蔓をつんつく引っ張っていたら、壁の向こうから”なぁ、アツシ”と落ち込んだような女の子の声が聞こえてきた。
「……」
思わず風と顔を見合わせて、どうしようかと首を傾げる。
話は聞かない方がいいのかもしれないけれど、すぐ後ろは砂利敷きの場所。
移動すると音でばれてしまうのだ。
それもまた、相手の人は恥ずかしいだろうし。
盗み聞きするとかなんとなく申し訳ない気持ちになりながら、柊介と風はその場にしゃがみこんだまま口を噤んだ。
+++++
柊介たちが息を潜めている壁の向こう側。
人がいるなんてそんな事思いもせず、やってきた二人連れは風船葛を前に溜息をついた。
「なぁ、アツシ……なぁ、なんでなん? なんでかーちゃん……」
壁ともいえるぐらい見事な風船葛の緑のカーテンの前で、アツシこと俺は立ち尽くしていた。
すぐ近くには、いじいじとのの字を地面に書いている女の子。
……あ、いや女の子ってか俺とタメの女の子。
のの字を書くのに疲れたのか飽きたのか、がばっと立ち上がると彼女は俺の胸ぐらをつかんでがくがくと揺さぶった。
「なんでオトンのいないとき狙って、かーちゃん縮むん? 若こうなるんは嬉しいけど、なんでオトンいないときなん? 見せたいんはアツシちゃうくてオトンなのにーーーーーーーーぃ!」
「俺が知るか、アホーーーーー!」
力任せに揺すぶられながら、俺は空を仰いだ。
目の前でギャーギャー言いながら泣いてもいないくせに泣き声出してるのは、うちのオカン。
……いや、俺狂ってへんよ? 暑さにやられてるわけちゃうからね? ちょ、スマホ取り出さんといて!!
正真正銘、俺とタメ歳のオカンだ。
見てくれだけな。
本来のオカンの歳は……、あ、殺気。
胸ぐら掴みながら殺気を漂わせるオカンに、本来の歳は口を噤もう。
戻った時も怖いけど、この状況で遊ばれたら辛いから。
少し前に、初めてオカンが若返った。
びっくりした。
寝てる俺のとこ普通に起こしに乱入してきたオカンは、すでに十歳の見てくれになってた。
どーしようと悩んだりもしたけれど、パワフルオカンの勢いに押されたまんま日々を過ごし、その内一日ずつ成長していることにオカンが気づき、たまに青少年を誘惑するかの如く保健体育をかまそうとするアホなオカンから脱走し、いつの間にかに一か月半。
――オカンはオカンに戻った。
そして海外出張中だったオトンが、帰ってきた。
俺が意図的に証拠を残さなかったせいで、若返ったと電話で訴えられていたオカンの言葉に少しは期待していたかもしれないオトンは、まったくその欠片も見ることが出来なかったわけだ。
なので、いまだに信じていない。
はいはいと流されてしまう。
あれから何度もオカンは若返ろうと試していたみたいだけど願いはかなわず、オカンをただのかまってチャン認定したオトンは先週、「かまってほしいからって、あんまアホな事言うなや」と念を押して再びの海外出張へと旅立ってしまったのだ。
で、拗ねたオカンの望みは叶った。
遅かったけど。
「なんでオトンが出張でいない時に限って、かーちゃん若返るん? オトンまた信じてくれへんやんかドアホーーーーーーーーーーーーっ!」
……なんでオトンがいない時に限って縮むんやドアホ……。
脱力したのは、言うまでもない。
そんなこんなで四日間。
十四歳になったオカンが言い出したのは、「青春の一ページを作るで、アツシーーーー!」。
orz
なぁ、頼むわ。
何で一番慌てなアカン奴が、一番楽しんでんだ?
近所の人達、俺とオカンが連れ立って出てきたのみて、めっちゃおかしな目で見てたからな。
親の居ぬまになんとやら状態で見てたからな。
オカンやねんて! これオカンなんやーーーーーー!!
どんなけ叫んで否定したかったか。
なのにオカンは、
「なぁなぁアツシ、今の子はルーソーとかはかへんの? かーちゃん、一度履いてみたかったんやけど」
違うこと考えてるし。
そんなこんなで連れてこられたのは、最近有名になりつつある、とある神社だった。
夏になると生い茂る風船葛が、恋を成就させるというなんともリリカルな噂付きの神社。
神社の壁一面を緑に変えている風船葛からは、ハートの柄が付いた種が取れる。
その種を貰うと恋が叶うという噂が、まことしやかに囁かれているのだ。
神社は特に何を言うでもなく、来た人に種をわけているらしい。
っていうか、生えてるの外壁だから勝手に持って行ってる人が多いと思う。
……お守りで売ればええに。
暑い昼日中に来てしまったからか、俺達以外誰もいない。
そんな中、風船葛の実をつんつくつついているオカンと俺、どーみても……
「カップルやな」
「ちゃうわ!」
にやりと笑うオカンに叫び倒して、俺はぎりぎりと歯を食いしばる。
なんでオトンの居ない時に、こんな事になる!
帰ってこいオトン!
「大体さぁ、オカン、なんでこんなとこ来たかったわけ? もう結婚しとるやん。オトンよりいい男見つけるんか?」
「何言うとんねんアツシ! おとーちゃんよりいい男なんかおらへんやろ!!!」
「ならなんで恋愛成就のお守りとか取りに来るんだよ!」
ぴたり。
オカンの動きが止まった。
「……オカン?」
あまりの固まりっぷりにちょっぴり心配になってオカンを覗き込むと……
「きまっとるやないか、恋愛成就やで! 持ってればきっとオトンのおる時に若返れる! もー、この姿オトンに見せたいんや!」
「は?」
「ぴっちぴちのかーちゃんみせたいやんかーーーーーーーーーーーーー!!! らぶらぶしたいやんかーーーーーーーーー!!!」
……誰か助けてください。
+++++
息を潜めたまま、二人のやり取りを聞いていた柊介と風。
「……ねぇ、どんな関係なんだと思う?」
ぽつり、柊介の隣で風が呟く。
まだそこにいるだろう二人を気にしながらこそこそと囁かれる声に、鼓動がばくばくいってるんだけどこれ聞こえてない?
大丈夫?
柊介は風に見えない所で太ももと抓りつつ、なんとか表面上平静を保ちながら首を傾げる。
「聞いてるだけなら恋人同士だけど、……会話の内容で行けば親子? でも、まさか若返るとかなぁ」
風はそうだよねぇと頷きながら、演技の練習とか……? と首を傾げてる。
……俺にとっては、そんなことどうでもいいです。
風が、もう少し俺を意識してくれないかと、そればかり考えています!
二人がいる風船葛の壁の向こう側では、神社の神主の息子とその幼馴染が青い春を満喫しておりました(一方通行でw)
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一か月半後のオカン、その種の成果は。
「なんでやぁぁぁぁっ!」
「またお前はしょうもない嘘を」
察してください(byアツシ
むかーし滋賀に住んでた頃の関西弁を掘り出し思い出しながら書いてみましたが、本とかテレビとかの情報がごっちゃになってる気がします……^^;
関西圏の方で、「これおかしーよ」って突っ込んで下さる方募集中≧▽≦
直しますので教えてください、お願いしますm--m