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異界のソラ  作者: ミケイト
第1章 少年時代
9/25

第09話 マナとルーン

新年バタバタしてました。


少し遅くなりましたが、次話投稿です。

まだ子どもたちも寝静まっている早朝。


俺は今、白魔の森の中にいる。

といっても、浅い場所なので魔物と遭遇することはあまりない。


腰には道具屋で買ったナイフ。刃渡り15センチほどの頑丈なモノだ。

履いているブーツは底に鉄板が入っているものである。



森の中にいるのは、前のように薬の材料を採取するためではない。


……ここで"魔術の訓練"をするためである。



森の中は白い光が濃く、回復が早い。


また、魔術は基本的に「貴族しか使えない」とされているため、俺が魔術を使えることがバレると少々マズい。


そういった諸々の事情で、人のあまり来ない白魔の森は訓練場として最適なのだ。



俺は肩に乗っている精霊のネスカを下ろす。



「ネスカ先生、今日もよろしくお願いします!」



ネスカは"そんな風にかしこまらなくてもよいよい"という仕草をしているが、こう言わないとやる気を出してくれなかったりする。


まったく気まぐれな精霊である。



さて、ネスカは俺に分かりやすいよう、ゆっくりと魔術を使ってくれる。


それを見ると、魔術の行使方法は、2つのステップに分けることが出来るようだ。



1. 文字を作る

  白い光を特定の文字の形にする。

  綺麗に作れると、金色に輝く。


2. 文字と白い光を融合する

  金色の文字を、白い光と融合。

  文字ごとに様々な効果を及ぼす。



複数の文字を順番に融合させることで、カエルが使っていたような「ウォーターボール」やその他いろいろな魔術を行使できる。



今ネスカが発動しているのは「ウィンドボール」だ。


3つの文字を取り込む毎に、白い光が黄色い光に変わり、黄色い光に風が集まり、球の形になる。

普通の人には透明に見えているんだろうな……俺には、風と黄色の光が混ざっているのが見えている。


最後の1文字を取り込んだ瞬間に前方に射出される。



――バシュッ



前方の木にウィンドボールがぶつかる。

木の表面は風で傷ついたようで、なかなかの威力だ。



ふとネスカを見ると……

あ、ヤバい、消えかけてる!


地面に倒れて肩で息をしているネスカに近づき、俺の白い光を流す。


ネスカが魔術を使った場合は彼女の体そのものが、使ったぶんだけ薄くなる。

この朝の訓練でも度々消えかけているのだ。



精霊とは「強力な魔術」を使用する存在だと思っていたが、ウィンドボール一発でこの様子では……

伝承もあてにならないな。


ネスカはドヤッと言いたげな顔をしているが、まだフラフラしているためキマらない。


さて、俺の番だ。



ネスカの魔術を思い出しながら、ひとつひとつ文字を作っていく。

孤児院などで魔術が使用できない状況でも、この文字を作る練習はいつでも出来るため、最近はずいぶんスムーズになってきたものだ。



ネスカがその都度文字の前でジェスチャーをする。

この文字のここが短い、この文字はもっと縦長に、などだ。


指摘通りに文字を直していくと、文字の色も輝くような金色に変わる。


……よし、うまく作れた。



順番に文字を融合させ、俺のウィンドボールは前方に射出される。



――メキメキメキッ……ズーン!



……っと、光を込めすぎた。

太くはない木だけど、中ほどから折れてる……


ネスカを見ると「テヘペロ☆」ってやってる。

いや、それをやるのは俺の役目だし、微妙にかわいい気がするのが逆に腹立たしい。




そんな事を思っていると、突然、強化していた俺の耳に遠くから声が聞こえてきた。



――ぅわぁぁ、やめ、あぁぁ――



男の人の声だ。

魔物か何かに襲われているのだろう。


俺はネスカを連れ、全速力で声のした方向に向かった。




※  ※  ※




木々の間をくぐり抜けながら、ナイフを抜く。


見えてきたのは、3匹の大ネズミに襲われる人……成人くらいの年齢の、小太りの青年だった。



「伏せて!!」



青年がパッと頭を下げる。


俺は足に光を集めて跳んだ。



バキッ



青年に襲いかかろうとしていた大ネズミを蹴り飛ばした。



――グチャッ



大ネズミが遠くの木にぶつかるのが見える。

……残り2匹。



俺は速度を落とさず、ナイフに光を込め、大ネズミの横に回り込む。


すれ違いざまに首をナイフで切り裂いた。



――ザンッ



大ネズミは、首から血が吹き出して倒れた。

これで、残り1匹。



見ると、最後のネズミは何か魔術を発動しようとしている。


が――



「ありがとな、ネスカ」



ネスカが魔術の邪魔をし、大ネズミの魔術は不発に終わった。


魔術の失敗に動揺する大ネズミを、鉄板入りのブーツで蹴りあげる。



ネズミは真上に向かって宙を舞い……



ズーン――



頭から落ちて、首の骨を折った。



……ふぅ、ネズミくらいならもう余裕だな。

魔術の訓練を始めてから、体内の白い光はさらに増えていたのだ。



まぁ、光の強弱が勝敗を決める訳じゃないことは、前のカエルとの戦いで実感したけどな。


それでも、強くなることは純粋に嬉しい。




※  ※  ※




ふぅ、と一息吐き出した。


後ろをみると、ポカーンとした顔をしている小太りの青年がいる。

少し驚かせてしまったか……?



「あの、大丈夫ですか?」


「デュフフ、大丈夫でござるよ」



……どこかで頭でも打ったのだろうか。



「いやぁ、拙者びっくりしたでござるよ~。 魔具がマナ切れになった途端に3匹の大ネズミに襲われるとはもうこの世の終わりかと思ったでござるよぉ、フシュー…… 突然助けが現れたかと思うと、まだ年端も行かぬショタ――デュフフフ失礼、少年でござるからなぁ」


「その、大丈夫ですか? ……いろいろと」


「手遅れでござる」


「自覚はあるんだな」



はぁ、なんかこの人と話してるとすごく疲れる……。

なんだろう、この感じ。



「その感情が"萌え"でござるよ」


「いやそれはない」



それはともかく、さっき気になることを言っていたな。

マナ切れがなんとか……



「申し遅れました、拙者の名は"ヘンティ"――」


「ヘンタイ?」


「ヘンティでござる。 今年の春に学院を卒業したばかりの15歳、魔具師をしているでござるよ」


「どうも。 俺は――」


「ソラくんでござろう?」


「……なぜそれを?」


「デュフフ、この街でソラくんの名を知らぬ者などいないでござるよ」



どういう事だろう。

そんな目立ったことをした記憶は――



「複雑な計算を駆使して商人を泣かせ、大岩を持ち上げるほどの怪力を持ち、風のように街を駆け抜ける6歳児がいると」



うわぁ、俺かなり目立ってたわ。


……まぁいいや、それより気になってた事があるんだ。



「魔具がマナ切れ……とは?」


「デュフフ、拙者が腕にはめている魔具があるでござろう? これがほら、この通り、マナ切れを起こしてしまったでござるよ」


「ごめんなさい、魔具もマナもよく知らないんですが……」


「クポー、これは失礼したでござる! デュフフ、拙者が丁寧に説明するでござるよ。 そもそも最初の魔具が開発されたのが約500年前――」



なんだか長い語りが始まった。

止めるに止められず、30分はマシンガンのようなトークを聞くことに……


……どうしてこうなった。


まぁ、少しだけ面白いと思ったけどね。



「魔具の発動についてであるが……おや、ちょうど少しマナが溜まってきたでござるな」



ヘンティさんは俺に魔具を手渡す。

俺は手に取ったそれをまじまじと観察した。



黒い石がはまっている腕輪だ。

見てみると、空気中の白い光がこの黒い石に集まってきている。

そして、集まってきた光が黒い石の表面に"白い塊"になってこびり付いている……?


これは――



「黒い石は"集魔石"、白く積もっているのがマナ結晶……ちなみに、空気中や体内にある命のエネルギーが"マナ"でござるよ」


「マナ……これが?」


「そうでござるよ、デュフフ」



マナ……マナか。


ヘンティさんの話と俺の見ているものは、完全に一致する。


まさかこんなところで、俺が見ている"白い光"の正体が分かるとは思わなかった……。



俺の目は、「マナ」を視認できる。

そういうことなのだろう。



「……マナって、結晶になってない状態で目で見ることは出来るんですか……?」


「そういう英雄がいたという伝承はあるでござるよ。 その研究をしている貴族もいるのでござるが――デュフ、上手くは行っていないのが現状でござるよクポー」



なるほどな。

やはり、俺がマナを視認できることは隠しておいた方がいいだろう。


俺はさらに、腕輪の装飾部分を見た。

黒い石――集魔石から、腕輪をぐるっと回るように、銀?か何かの金属で装飾がなされている。


その装飾が、見覚えのある文字にそっくりなのだ。



「この文字って……」


「気付いたでござるか? これは"ルーン"と呼ばれる古代文字でござる」



そういうと、彼は腕輪をつけ、黒い石をポンと叩いた。


石から白い光が出てきて、装飾を通過する。

腕輪から文字――ルーンが飛び出した。

少し字はヘタかもしれないが……さっき練習していたものと同じだ。



「ウィンドボール!」



彼がそう言うと、集魔石から白い光――マナが出てきて、ウィンドボールが射出された。



――バシュッ



目の前の木が、ほんの少しだけ傷つく。



「威力は固定でござるし、強い魔術はマナ不足で発動できないでござる。 でも、マナの強くない者でも魔術を使用できる素晴らしい道具が魔具なのでござるよ。 面白いでござろう?」



ほう、確かに面白い。

前世では電気・電子回路とか大好きな分野だったけど、似たようなモノを感じるな。



「魔具の材料を取りに来たのでござるが……昔より、このあたりの魔物が多くなっているでござるよ。 一旦戻って準備をし直すでござる。 デュフフ……」


「じゃあ、一緒に戻りますか?」


「本当でござるか? 本当でござるか?」


「なんで二回言うんですか……」


「拙者、初めて友達ができたようでござる」


「え、えぇぇ……」


「ソラくんはいい奴でござるな。 さて行くでござるよ!」



俺はヘンティさんと連れ立って戻っていった。



「デュフフ…… 拙者、学院を卒業した後はジェラード魔具店に就職したでござるよ。 来てくれればサービスするでござる」



なるほど、そのうち行ってみようかな。


にしても、"マナ"と"ルーン"か……これからはそう呼ぶことにしよう。




※  ※  ※




「魔具店をクビになったでござる」



ヘンティさんが「薔薇の香り亭」に現れたのは、その日の午後のことだった。


ついに、「白い光」の呼称を出してみました。

賛否あるかもしれませんが、この作品ではそういうものと思ってください^^


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