第7話 ホワイト企業(表面だけ)と知らされた件
「弊社への入社、ご検討ありがとうございます♡」
魔王ルシファーネ様が満面の笑顔で俺の手を握る。
隣では小悪魔くんとサキュバスちゃんがクラッカーを鳴らしている。
「ヒーロー様、ようこそ弊社へ♡」
「おぉぉ……社畜人生に終止符、異世界でホワイト入社!サイコー!!」
——と、思ったその時だった。
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「待て、そこのクズ勇者!!!」
バァン!!!!
城の窓ガラスが爆音とともに吹き飛び、
真紅の鎧を纏ったレオナが空から登場した。
「貴様!魔王軍に魂売ったな!!」
「ちが、ちがうんです上司様!!これは見学です!!会社説明会なんですぅ!!」
「見学で内定通知もらうやつがどこにいる!!!」
完全に修羅場案件。隣のサキュバスちゃんがコソッと囁く。
「……実はこの人、ヒーロー引き抜き阻止数ランキング3期連続1位です♡」
「超ブラックな人材管理かよ!!!」
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魔王ルシファーネ様がレオナに優雅に笑いかける。
「あなたこそ、お疲れ様です。無駄な労働で部下を壊す時代は終わりましたのよ?」
「こちとら根性と気合の国なんだよォ!!!」
「古いわ♡時代は福利厚生とキャリアアップ♡」
「異世界で何争ってんだよ!!?」
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だがその時、俺はふと気づく。
サキュバスちゃんの手元、求人票の裏面に小さく書かれた文字が目に入る。
※ただし、3ヶ月の試用期間終了後は【全職員強制無期限労働契約】に切り替えとなります。
「……おいこれ」
※転職希望者は“魔王直属ブラック特殊任務”へ即配属の可能性あり。
「いやいやいやいや!!!ホワイトじゃねぇじゃん!!」
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魔王ルシファーネが完璧な営業スマイルで言い放つ。
「弊社は試用期間まではホワイトです♡その後は……まぁ、覚悟してね♡」
「だまし討ちかぁぁぁぁぁ!!!」
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こうして俺は悟った。異世界に真のホワイトなど存在しない。
でも——
「やっぱり美人上司って最高だよな……」
\ダメだこいつ早く何とかしないと/
【続く】