第6話 魔王軍、ホワイト企業すぎて感動した件
夜、俺はボロ雑巾のように魔王軍の領土にたどり着いた。
偵察任務、つまりスパイ。命懸け任務のはずなのに……。
「うわ……なんか……めっちゃ明るい……」
魔王城は黒いトゲトゲ城かと思いきや、
イルミネーションでピカピカ、門番は笑顔で「お疲れ様です!」と挨拶。
「おい、ここ本当に魔王軍の拠点か……?」
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恐る恐る近づくと、受付嬢の美人サキュバスがにっこり笑った。
「いらっしゃいませ〜♪ 本日はどのようなご用件で?」
「えっと……新規偵察……じゃなくて、初めて来たんですが」
「それはようこそ!見学ですか?今ちょうど社内ツアー開催中ですよ♪」
「見学ツアー!?」
「はい♪ 魔王様のご意向で、オープンカンパニーを目指してまして♡」
「企業理念あるの魔王軍!?」
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俺はそのまま流されるまま社内ツアーに参加。
ガイドの小悪魔くんが元気に説明してくれる。
「こちらが【フレックス制勤務フロア】でーす。出勤・退勤は自己管理でOK。テレワークも可能!」
「マジかよ!?リモートワーク完備!?!?」
「続いて【社員食堂】は無料三食付きで、メニューは毎日魔王様が厳選!スイーツ食べ放題つき!」
「こんな天国ある!?」
「もちろん【有給消化率100%】、【副業推奨】、【メンタルケアの専門部署】も完備ですよ!」
「完全に俺の理想郷じゃねーか!!」
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そして最後に現れたのが魔王軍のトップ、魔王ルシファーネ。
黒髪ストレート、スーツ姿の美人秘書風。圧倒的カリスマオーラ。
「異世界からようこそ。もし良ければ……弊社に転職、いかがでしょうか?」
俺の心は即答していた。
「はい!!!」
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だがこの時の俺は知らなかった。
このホワイト企業魔王軍にも、恐るべき落とし穴が存在していたのだ……!
【続く】