第3話 伝説のサボりスキル、発動!
——そして、俺は連れてこられた。
城の裏手に広がる訓練場。朝っぱらからモンスター相手の模擬戦が始まるらしい。
「さあ勇者様、こちらが訓練用スライムでございます」
「はいはい、お決まりの巨大スライムな。何体くらいですか?」
「軽めに50体です」
「軽めでそれは軽犯罪だわ!」
目の前のスライムは直径5メートル、ぷるっぷるというよりドロッドロの地獄スライムだった。
しかもよく見たら目が血走ってる。気のせいじゃない。
「無理。俺のレベル1。装備、ジャージ。武器、社畜根性だけなんだが」
「ご安心ください。我らが王から素晴らしい能力が授けられています!」
そう言われ、俺の脳内にドーン!とステータス画面が浮かび上がる。
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【職業】伝説のヒーロー(仮)
【レベル】1
【スキル】
✅無限サービス残業(パッシブ・自動発動)
✅絶対強制労働(デバフ・自分限定)
✅伝説のサボり術Lv.999(アクティブ・手動発動)←NEW!
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「……ん?」
目をこすってもう一度確認する。
【伝説のサボり術Lv.999(効果:周囲にバレずに仕事をサボれる。無限使用可)】
「これだ!!!!」
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「よし、俺行ってきますわ!」
俺は勢いよく訓練場に飛び出した。
「よくぞ参った!勇者よ!」
兵士たちは拍手喝采。スライムたちはドロドロと襲いかかってくる。
「伝説の必殺技、発動!」
俺は拳を突き上げ、堂々とスキル名を叫んだ。
「サボり術・影分身の術ぅぅぅ!!」
ポワン
次の瞬間、俺はバッチリと日陰の木陰にワープしていた。
フィールド中央では俺の影分身が「うぉぉぉぉ!!!」と叫びながらスライムに突撃している。
「……完璧。」
俺は芝生にゴロンと寝転び、持ってきた異世界フルーツをかじった。
初日の任務?知らん。戦闘?影分身に任せた。報告書?適当にでっちあげよう。
社畜の俺が辿り着いた真の理想——
“全自動サボり生活”
異世界最高すぎる!
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こうして俺は、世界で最も働かないヒーローとして伝説の第一歩を踏み出したのだった。
【続く】