第2話 異世界の朝礼が地獄すぎて草
「……おい、どこ連れてくんだコラ!」
俺は両脇を鎧の騎士に抱えられ、ズルズルと城の奥へと運ばれていた。
逃げようとした瞬間、速攻で確保された。異世界、スピード逮捕完備かよ。
「ヒーロー様、これより王の御前会議に出席していただきます」
「いやいやいや、初日から会議って何!?俺まだ転生したばっかだぞ!?」
「静粛に。ヒーローは初日からフル稼働です」
そんなブラック対応アリなのかこの異世界。
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案内された先は黄金ピカピカの謁見の間。
玉座には明らかに悪役みたいな笑い方の王様が鎮座していた。
「フォッフォッフォ!勇者よ、よくぞ来た!」
「いや、まだ“勇者”って呼ばれることに心の準備できてないんすけど」
「さぁ、我が国の危機を救うため、ヒーロー業務の初仕事を命ずる!」
王様は豪快に指を鳴らし、重々しい巻物が開かれる。
【本日の業務】
・魔王軍の偵察部隊の壊滅
・村のモンスター駆除(対象:巨大スライム50体)
・子供たちの剣術指導(午前の部・午後の部)
・王宮の倉庫整理(ボーナス対象外)
「……は?」
俺の口がぽかーんと開く。
「ちょっと待て。これ本日の業務量じゃないでしょ?月間スケジュールの間違いでしょ?」
「いいえ、今日一日です」
「労働基準法は!?過労死ラインは!?休憩は!?」
「この国ではヒーローが過労死しても魂が蘇生されるからノープロブレムだ!」
「ソウルブラックすぎんだろこの国!!」
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そんな俺の叫びも虚しく、鎧騎士がニヤリと笑う。
「ヒーロー様、今から朝礼を行います。
全職員起立!」
バサッ!と兵士全員が立ち上がる。仕方なく俺も立つ。
「本日の目標を唱和!」
全員:
「笑顔で元気に、魔王軍ぶっ飛ばすぞーー!!!」
俺:
「……この国、絶対ヤバい。」
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こうして俺の異世界初日、始業チャイムとともに地獄の社畜ライフ【異世界ブラック編】がスタートしたのだった。
【続く】