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5.──そして臀説(でんせつ)へ

2023年最終話です。


 さて、N先生とのお別れもそこそこに別診察に通されました。

 そこに居たのは先程、私の尻に内視鏡をぶち込んでいた先生。

 10月にあの「上手に検査受けてくれてますよ~」と言ってた先生だったのです。


「潰瘍性大腸炎専門のSと言います、宜しくお願いします~」

 日本人形みたいな髪型の可愛い声の女性の先生がそこに居た。声や髪型のお陰か年齢は分かりにくい。

「前回と今回と検査してくれてた先生ですよね、声で分かりました」

「あ、嬉しい~」

 暫しガールズトークが弾みます。内容は潰瘍性大腸炎ですが。

「うすらいさんね、画像見ても分かるように腸の炎症が前より酷くなってて、ところどころから血も滲んでるから中等症やね」

「はい…」

「安倍総理もなった病気やけど、安倍さんはもっとひどかったらしい。うすらいさんは、まだマシ。でも今は潰瘍性大腸炎が燃え盛ってる時期だから、前のアサコールより強いお薬を飲んでもらいます。リアルダってやつ。これは朝1回4錠。ちょっと大きいんだけど、大丈夫かな?」

「カロナール500mgなら飲み慣れてます」

 明らかにホッとするS先生。

「カロナール500よりちょっと大きいかな」

 明らかにいけると思ってるが、この翌日から毎朝酷い目に遭うカウントダウンが始まったとはまだ気付いてない私。

「後、お尻からノズルを使って泡のお薬を注入してもらいます。大丈夫かな」

「なにそれ、楽しそう」

 実際は楽しいどころか地獄だったのだが、この時はまたしても何も知らない大泉洋さん状態だった。

「あとね今は燃焼期と言って、病気が燃え盛ってる時期だから食事制限あるの。えーっとね、普段ならパンフレット用意してあるんだけど……今手元にないからこっそり私物のスマホで検索しちゃうね」

 S先生は「調子の悪い時に食べていいもの、いけないもの」というページを出して来て、私にコソッと見せてくれた。


 これが地獄その3でした。


 まず食べていい主食はご飯、おかゆ、もち、うどん、そうめん、ひやむぎ、食パン、フランスパンなど。


 食べてはいけない主食は玄米、五穀米、ラーメン、スパゲッティ、蕎麦、菓子パン、惣菜パン、デニッシュ、クロワッサンなど。


 主食の時点でほぼ詰んでる私の食生活。

 どっちかというとほぼ後者ばかり食べてたもんね。


 食べていいおかずは鶏肉(皮なし)、ヒレ肉、レバー、まぐろ(赤身)、カジキマグロ、タイ、キンメダイ、カレイ、タラ、プロセスチーズ、はんぺん、しらす干し、豆腐、豆乳、厚揚げ(油抜きしてから)、卵とじ、オムレツ、茶碗蒸し、玉子豆腐など。


 食べたらアカン食べ物は後述します。


 つまり、高タンパクで脂質が少ないおかずにしろって事ですね。

 逆に言えば脂質が多いとアウト!

 それだけじゃなく、料理に使う油や砂糖にも制限が!

 油は1日小さじ1程度、砂糖は大さじ1くらいにとどめろと。

 殺生な……!


「とりあえず18日に来てもらって、採血して様子見るんで治療頑張れるかな? あと、うすらいさんは中等症になったから難病指定受けられるかも」

「そうなんですか? 軽症の方は…?」

「軽症の人はゴロゴロ居るけど、中等症になるとグッと数が減るのね。だから難病指定されるの。先生も調べておくね。多分市役所で手続きだけど」

「(うーん、ただでさえ精神障害者手帳持ちなのに、更に身体障害者手帳持ちになるのかな。そんなに手帳あったらどっちか無くしそう。家計の事考えたら有り難いけどね)」

「何か他に質問ある~?」

「あのっ、重症の人の腸はどんな色ですか?」

「うん、もっと酷い人はね、ボコボコに穴空いてたりして、表面もっと荒れててボロボロだよ」

「ぴぇっ!(怯え鳴き) そうならないように治療します。これからよろしくお願いします」

「まずはお薬と食事制限頑張って」

「お金ないんですよ…」

「大丈夫! お腹に優しいご飯はお財布にも優しいから!」



 確かに魚と鶏肉中心の食生活になり、お財布には優しくなったんですが。



 心はかなり荒んだ(°⊿°)ケッ



 何せ、油物は全面禁止(フライ系、天ぷら、唐揚げ、バター、マーガリン、油。あと私は嫌いだから問題ないがマヨネーズもダメ)。

 刺激物(ニンニク、唐辛子、チョコレート、スパイスなど)禁止。

 高脂肪のソフトクリーム、アイスクリーム、ケーキ、生クリーム禁止。

 お菓子からはポテトチップとポップコーンがダメ。

 鶏肉からは皮を剥げ。バラ肉?勿論駄目ですよ。霜降り?死にたいのか?

 豆もトウモロコシもキノコ類も、タケノコとモヤシすらダメ。

 不溶性食物繊維は避けろ。

 大好きなのにこんにゃくもさようなら。

 ハム・ベーコン・ソーセージの加工肉御三家さようなら。

 海老もイカもタコもトロも鰻もサンマもサバもダメ。

 納豆や漬物もダメだが、もとから嫌いなのでここは問題ない。

 柿・パイナップル・梨さようなら。

 コーヒーさよなら、炭酸飲料さよなら、アルコール?それは元から飲まないよ。



 何食えっていうんじゃあああ!!!!!



 そんなこんなでここ2週間、皮なしの鶏肉料理(シチュー、グラタン、鶏肉だけの炊き込みご飯)や、好き嫌いを克服した焼きホッケ、タラの照り焼き、カレイの煮付け、卵焼き、食パンや、具無しのインスタントコーンスープ、鮭だし茶漬け、豆腐だけの味噌汁、茶碗蒸し、海老水ギョーザ(食べても海老が見当たらない安いやつ)などを食べていました。



 2週間だぞ? 耐えられるか?


 ラーメン主食の人なら3日で死ぬぞ。


 現に同じ様なもの食べてたパートナーは、3日前に発狂して【私が作った】ニンニクたっぷり鶏皮付き若鶏ももソテーを【1人で】食べました。

 無理もない。よく付き合ってくれたよ。

 鶏皮唐揚げだけは【私が揚げて】食べさせてたけど。



 そして私を苦しめたのは、薬もです。

 飲み薬リアルダ1200mg×4錠。

 1錠の大きさ、縦5mm、横2cm、厚さ4mm。アーモンド大の大きさでした。

 朝食の後に飲みますが、アーモンドを噛まずに丸呑みするようなものなので、1回に1錠しか飲めず、お腹がタプタプになります。

 これはまだ耐えられる。


 耐え難いのは──

 ──尻から入れる注腸フォーム「レクタブル2mg」。

 何が辛いって尻に筒を突き刺して泡を注入するセルフプレイを朝晩1回ずつ2週間!!(ようやく事態を悟った)


 ではここで、レクタブルの使い方を説明しまぁす。


 まず、レクタブルは泡を入れる薬なので、缶を脇の下や手などで温めてから、振ってバシャバシャ音がするのを確認してから15秒振り続けます。

 ノズルの蓋を外し、アプリケーター(シリコンみたいな筒)を付け、安全装置解除。

 アプリケーターにワセリン等の潤滑剤を塗ります。

 本体を逆さまに持ち、人差し指をヘッドに掛け、お好きな体位♡で(立ったまま片足を椅子に上げるのがオススメ)後ろ手でアプリケーターを尻に挿入。

 缶本体のヘッドを押して2秒待つ。

 指を離して15秒待つ(この時に薬が注入される)。

 お疲れ様でした。アプリケーターを廃棄用袋に入れてノズルから離して廃棄。

 ノズルに蓋を付けて、液漏れ防止安全装置を閉めます。

(説明おわり)


 私はおデブですので手が尻まで届かないわ、ノズルにワセリン塗っても痛くて血が出るわ、【BL漫画は尻の痛みが思い返されて純粋に楽しめないわ】で、たいっへんでした。


 それでも寛解(かんかい)という、完治ではないけど、治ったような状態を目指して頑張りました。


 でも飲み薬とは一生のお付き合いですし、なんならレクタブルともお付き合いです。


 それでも18日までの辛抱です。

 指折り数えて、その日を待ちました。


 そして!18日(月曜日)の診察が来ました!


 ウキウキしながらいつもに比べたらがらんどうも同然の総合病院へ。

 今日寛解してたら、少しはマシな食生活になるだろう!

 ガラガラの採血ブースで手の甲から血を取ってもらい、上機嫌で看護師さんと話します。

 私「おっ!流石 ちょ…(調査兵団と言いかけた。あっぶねー) 採血部隊!凄い、一発で血が出ましたねー♪」

 看護師「痛くないですか?」

 私「大丈夫です!」


 早く採血の結果出てくれ!

 あれだけ食事制限して。我慢して尻に薬を入れて。頑張ったんだ!寛解してるだろう!

 寛解したら大好物の唐揚げだって2~3粒くらいなら食べられるかも!

 早く順番来い~!


 電光掲示板が私の番号を映し出す。

 来た!


「おはようございます!」

「おはようございます、お待たせしてすみません、うすらいさん。どんな感じですか?」

 S先生はにこやかだたった。

 つられて私もニコニコする。

「リアルダとレクタブルのお陰で翌日から普通のお通じです!」

「良かった! お薬飲めた?」

「1錠ずつなら余裕です!」

「良かった~」

 先生は笑顔。看護師さんも笑顔。

 私も満面の笑顔になる。

「レクタブルは?」

「血は出ましたけど、ワセリン塗って欠かさず入れました!」

「痛かったね。軟膏出すね」

 ん?

「じゃあ血液検査の結果ね。炎症反応が0.03とほぼありません」

「おお!」

 目が輝く私。これは寛解!?

血沈(けっちん)と言って、血が試験管の中で沈む速度が高いほど悪いのね。前は60くらいだったんだけど、今回は39と【基準値をギリギリ9超えてる】けど大分治ってるね」

「はい!」

 ん……? なんか雲行きが………。


「ん~~~、寛解目指したいから、レクタブルは1日1回お風呂の後に。食事制限は次回の診察まで頑張ってくれるかな?」

 あ、あああ(泣)

 心の涙を堪えて問う。


「はい。次の診察はいつですか?」


 S先生は初めて申し訳なさそうな顔でキッパリと告げた。


「1月15日ね!」




 私はにこやかに今年の〆の挨拶をし、そしてコンビニで買ったエビグラタンをヤケ食いした。チキンを買う度胸はなかった。


 そして、帰りに業務スーパーでパートナーの為だけに大根と豚バラ肉とみかんとチョコレートを買った。



 パートナー曰く、豚バラ大根は美味しかったそうです!!!

(私はどれも食べてない)



 ~ひとまず完!~

来年までネタが無いので、ひとまず完結とさせて頂きます。


潰瘍性大腸炎(UC)とは、燃焼期(悪い)と寛解期(治ったような体調になる)を交互に繰り返す病気です。

今はストイックな食生活ですが、寛解期にはガラリと違う食生活を送れるはずですので、

「クリスマスにチキンもケーキも無し」「正月食えるの蒲鉾だけ」な筆者に少しでも何か感じることがありましたら、評価、いいね、感想等いただけましたら幸いです。

また何か進展ありましたら掌編でも書きますね。


ここまでお読み頂き、どうもありがとうございました!!!

THANK YOU Very much! -2023/12/19

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― 新着の感想 ―
[良い点] 義弟が同じ病気らしくて、今は月一の検査とお薬で経過してるんですけど、結構大変な病気なんですね。 大変なんですけど、要所要所にコメディ要素があって悲嘆にくれてる感じにならない所がいいです。 …
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