ばれてなるものか
なんだってんだ…。
おれは久しぶりに外を歩いていて気づく。
男がいなく女性のみしかいないのだ。
しかも、全員おれを見て妙な顔をしている。
おれが不思議に感じていると一人の中年女性が近づいてきた。
「何を考えているんですか。男の格好などをして」
「えっ、どういうことです?」
「僕だって我慢して女装しているというのに」
「えっ、あんた男なんですか!?」
「しっ、そんな大声を出さないで」
女装した男は慌てておれの口を塞いだ。
「男は戦争で女に負けてしまい、どんどん殺されていってるんですよ」
「えっ、そうなんですか?」
「そうですよ。だから生き残った我々は女装して女に化けなければならないんです」
そんなことはまったく知らなかったおれは混乱する。
何せ、昨日まで長い引きこもりをしていたのだからわかるはずもない。
「私の予備の服を差しあげます。トイレで着替えてきなさい」
おれは男の指示に従い道具を受け取り、トイレで着替えることにした。
女性用のトイレしかなかったので抵抗はあったがそこに入ることにする。
個室の中でおれは女性用の服を着てみた。
スカートにブラウスと変な感じがする。
個室を出て鏡に向き直って髪型も女性風に変えた。
元々が女顔であったおれはその姿に違和感がなかった。
…これは喜ぶべきなのだろうか。
おれがトイレからでてくると先の男に変な薬を飲まされる。
どこか甘酸っぱいような味だ。
「どうですか?」
「これで男と思われることはありません」
「いろいろ、すみません」
「早く、ここから離れたほうがいいですよ」
「何故です?」
「あなたの姿を見た誰かが警察に通報したかもしれませんから」
おれはまだこの事態をよくは飲み込めてはいない。
ただひとつわかっていることは男だとばれてはいけないということだ。
おれは気を配りながら歩く。
ばれることはない。ばれることはない…。
おれは自らの気を静めるように言う。
しかし、途中で婦警に呼び止められてしまう。
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