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人と魔族の戦い、あるいは恋

腱鞘炎で聖剣が抜けない勇者VS四十肩で腕が上がらない魔王

作者: 棚本いこま



 ついに魔王城の最上階、玉座の間に辿り着いた。

 長い旅を共にした三人の仲間は、もうここにはいない。

 それでも退くことはしない。

 聖剣に選ばれた勇者として、みんなの思いを胸に、私ひとりでも魔王を倒してみせるのだ。


「来たか」


 玉座に悠然と腰かけ、不敵な笑みでこちらを見下ろす魔王。魔王と言うから、もっと魔獣のボス的なアグレッシブな姿形を想像していたのだけれど、意外にも人間と変わらない姿、黒髪の青年だった。五百年くらい生きているらしいが、私より少し年上くらいにしか見えない。


 なんだか、この青年が本当に魔王なのか心配になってきた。間違えて一般人を聖剣で斬り殺してしまったら、業務上過失致死罪では済まされない。ネームプレートとか付けてないかなと期待して、じっと姿を凝視したら、暗色の玉座と同化して見えにくかったけれど、ちゃんと深い青色の角が生えていた。魔王の証である。よかった。


「我が名はメリレイン! 王様の命を受け、魔王討伐に来た勇者です!」


 胸を張って名乗りを上げたら、魔王は「はっ」と嘲笑を浮かべた。


「こんな小娘が勇者とは世も末だな」


 小娘であることは事実なので否定できないのが悲しい。本当は名乗りの段階で華麗に聖剣を構えるつもりだった。そうすれば幾分かは格好よく見えて、魔王も「何! 勇者だと! なんてことだ!」みたいなリアクションを返してくれたかもしれない。


 けれど、今の私には、聖剣を抜くことができない。

 なぜか。

 腱鞘炎(けんしょうえん)だからである。


 ここに来る前から、「なんか指痛いな」とは思っていたけれど、放置していたら本格的に剣を握れなくなってしまった。最後まで一緒に戦った弓使いのサキセくんには、「腱鞘炎じゃないですか」と診断された。「カレーの具のニンジンを星形に切るとか妙なことするからですよ」とも。


 聖剣なしでどうやって戦おうかな……やっぱ引き返した方がよかったかな……と、棒立ちのまま考えていると、魔王は玉座に腰掛けたまま、小首を傾げた。


「お前、ひとりで来たのか?」


「えっ!? あ、いえ、ちゃんと頼れる仲間たちと、四人で来ましたよ!」


 私ひとりの力で魔王城まで辿り着いたと思われては心外なので、慌てて答える。


「でも、その……」


 続きを言い淀む私に、魔王は再び嘲笑を浮かべた。


「はっ。途中で魔獣にでもやられたか」


「違います!」


 みんなが魔獣にやすやすと倒される程度だと見くびられては大変だ。魔王はなぜか着席のまま動く気もなさそうだし、すぐに戦闘が始まりそうな雰囲気でもないので、正直に話すことにしよう。


「仲間のひとりは……狼獣人の戦士なのですが、その……」


「なんだ。早く言え」


「昨晩、食べたカレーが原因で、寝込んでいます」


「……」


「私……っ、知らなかったんです……! イヌ科の方々が、チョコレートは駄目だって……!」


「入れたのか。カレーにチョコ入れたのか」


「チョコ入れたらコクが出るって聞いて……。イヌ科にネギ類は駄目なことは知っていたので、タマネギはちゃんと抜いたんです。これならガルフくんも食べれるねって、みんなでカレー作って食べたんです。魔王城に挑む前に、カレーで元気を付けようって、笑い合って……。まさか、私がよかれと思って入れた隠し味のチョコレートで、こんなことになるなんて……!」


 美味しい美味しいと三杯もおかわりしてくれたガルフくんの笑顔を思い出して胸が痛い。いざ魔王城に乗り込もうとした今朝、彼は倒れ、チョコレート中毒であることが判明した。泣いて謝る私に、ガルフくんは言った。「メリレインは悪くない。俺の弱さだ。俺を置いて先に行け……」と。


「で、今は魔王城の前に張ったテントで寝込んでいます」


「人ん家の前にテント張るなや……」


「す、すみません。魔獣も来なくて近くに小川も流れてて日当たりも良くて、割とキャンプ向けのロケーションだったので……」


「後で撤去するからな」


「それは、はい、用が済んだら帰りますから、ちゃんと火の始末もしますので、はい」


「で。他の奴らは?」


「えと、魔法使いは、途中で生理痛が重くなったので早退しました」


「パーティメンバーの生理痛が重い日に魔王城への突入を決行するなよ。延期しろよ。お腹温めて安静にさせてやれよ」


「それが、彼女が今日でいい、むしろ今日じゃないといけないのだと。『生理痛の苦しみをそのまま相手に移す魔法』を開発したらしくて、『生理初日のクソみたいな痛みとダルさを魔王にぶつけてやんよ!』って意気込んでいたんですけど、いざ魔王城に入ってみたら、予想外に室温低くて……。底冷えして、途中で動けないくらいに悪化してしまって。一旦引き返して、今はテントで寝込んでいます。こんにゃく湿布と湯たんぽとナツメ茶を渡しておいたので、少しは痛みがマシになっているといいのですが……」


 我が身を犠牲にした魔法で戦おうとしてくれたマルカちゃんの健気さに胸が詰まる。テントの中、ガルフくんの尻尾を毛布代わりに横たわり、泣いて悔しがるマルカちゃんに、「魔王なんて聖剣でちょちょいのちょいだよ! こてんぱんにしてくるよ! 昨日のカレー温めて待ってて!」と言ったら、「うん。メリレインが帰ってくるの、待ってるから。二日目だから、カレーうどんにしようね……!」と弱々しいながらも微笑んで送り出してくれた。


「……で。四人で来たと言っていたな。最後の一人は? そいつも病欠か?」


「弓使いは、その、元気です。なんなら今日が人生で一番元気です」


「ならなぜいない」


「その……下の階にいた魔王軍幹部、『傀儡繰(くぐつく)りのナアコ』さんが、実は弓使いのサキセくんが幼い頃に生き別れた姉だと分かって。感動の再会を経て、今は歓談中です。ナアコさん、登場時は着ぐるみ着用だったので私は人間だと分からなかったのですが、サキセくんは一目見るなり『姉さんの気配がする。え。姉さんだよね?』と、すごい勢いで抱きついていって。ナアコさんも『え! サキセ! 大きくなったね!』って、着ぐるみの頭を脱いで感激していて。ふふ、すごいですね、姉弟の絆ですね……!」


「気配で着ぐるみ内の姉を察知した弓使いが怖い」


「というわけで、七年ぶりに久闊を叙す姉弟を急かすのも非情なので、そっとしているところです」


 お姉さんを探すために私たちに同行していたサキセくんの夢が叶った瞬間に立ち会えて胸が熱い。「昔、まだ姉さんと一緒に暮らしてた頃、森の魔女に頼んで、姉さんが死んだら俺も死ぬように呪術をかけてもらったんです。だから俺が生きている限り、この世界のどこかで姉さんは必ず生きているって分かる。姉さんがどこにいたって、絶対に見つけ出すんです」と、己の決意を語っていたサキセくん。お姉さんに会えてよかったね!


「そしてお前が残ったわけか」


「はい」


 ここまでの話に大人しく耳を傾けてくれた魔王。

 なんだろう、世界中で起きている魔獣災害の原因であり、人間を殺して楽しむ非道な心の持ち主だと聞いていたのだけれど、好戦的な性格というわけでもないのだろうか。


 腕の一振りで嵐を呼び、雷を自在に操ると言われているが、その腕は肘掛けに置かれたまま動かす気配もない。


 攻撃の意思がない?

 実は平和的な性格だったり……?


「なぜ棒立ちのまま動かない? その四肢は飾りか? ()ぐか?」


 うん、発言が全然平和じゃなかった。

 これはあれだ、こちらが聖剣を抜けないと知ったら即刻殺しにくるパターンだ。

 ここは、もちろん聖剣で戦えますけど今はあえて武器を構えていないのだよアピールをして乗り切らねば!


「わ、私がこの聖剣をひとたび抜けば、戦いは決まったも同然です」


「……へえ」


 魔王から笑みが消え、場の空気が一気に張り詰めた。しかし、魔王は未だ玉座に腰かけたままである。肘掛けに置いた腕を動かそうともしない。やっぱりこの魔王、人の話をちゃんと最後まで聞いてくれるタイプらしい。


「一振りで玉座の間は崩壊、魔王さんは木っ端みじんです。魔王城に築いた魔獣の死体の群れが聖剣の威力を語っています」


「……ふ、ふーん。なかなか吠えるではないか」


 本当は、魔王城に現れた魔獣のほとんどは、マルカちゃんのえげつない攻撃魔法とサキセくんの情け容赦ない弓でやっつけたのだけれど、そこは伏せておく。


「ですが、私はあえて。あえて、聖剣を抜きません」


「なぜだ」


「えっと、その、あ、争いは、私の望むところではありません」


「……争う気がないだと? なら何をしに来た」


「えー、あー、あれ、そう、あれだ……は、話し合い! 話し合いに来たのです!」


「話し合い?」


「はい。言葉を持たず問答無用で襲い掛かってくる魔獣と違い、魔王さんとはこうして、会話ができます。無駄に戦わずとも、話し合いで解決できるのではないか、と……!」


 相変わらず棒立ちのまま聖剣の柄に手をかけようともしない私を、魔王は射るような目でしばらく見つめてから、溜め息を吐いた。ものすごく安心したような溜め息だったけれど、最強と謳われる魔王が戦わずに済んで安心する理由も無いので、そう見えただけで単に呆れられただけなのだろう。


 そして、魔王はツンと澄ました顔で続けた。


「別にお前如き落雷で簡単に消し炭にしてやれるんだが別に今朝から四十肩で腕が上がらなくて雷雲を呼べないとかそんなんじゃないんだが別に俺は万全の体調で戦ってやってもいいんだがお前がそこまで戦いを忌避する姿勢を見せるのならばその愚鈍さに免じて仕方なく対話に応じてやってもいいけど」


 早口な上に息継ぎなしの長文だったので内容は分かりにくかったけれど、対話に応じてくれるということは分かって感激した。


「あ、ありがとうございます! では、改めまして、私はメリレインです。勇者やってます。魔王さんのお名前は?」


「……。……。ザフィール」


「なんだか名乗るまでにものすごい間がありましたね」


「誰かに名前聞かれたの久しぶり過ぎて自分の名前忘れてたんだよ……」


「えっ……。あっ、そうですよね、見た目はお若いですが、五百歳を超えてらっしゃるんですものね、もの忘れも激しくなりますよね。き、昨日の晩御飯、思い出せます……?」


「気遣うな。脳年齢の心配をするな。たまたまド忘れしただけだ。殺すぞ」


「ひぇっ、すみません……」


「で、小むす……メリレイン。お前は対話で何を望む。用件を言ってみろ」


「はい! あのですね、今、いろんな都市や村が魔獣に襲われて困っているんです。魔獣は魔王の命令で人を襲っているそうなので、魔王を倒せば平和になるだろうということで、私は国王の命を受けてここまでやってきました。ザフィールさんには、魔獣に人の住処を襲わせるのをやめさせてほしいんです。」


「……え。そっち?」


「え?」


「なんだ。てっきり女神の泉を枯らした件で討伐に来たのかと……」


「……?」


 ザフィールさんは俯いて「はあああ……」と深い溜め息を吐いた後、何事も無かったかのようにすっと顔を上げ、キリリとした表情で言った。


「いいかよく聞け。魔獣を送り込んで都市や村を荒らしているのは俺じゃない。南の魔王だ」


「えっ。魔王って他にもいるんですか!?」


「お前ら人間だって世界中に王がいるだろうが。俺は北の魔王だ。人間狩りをして楽しんでるのは南の魔王だろう。魔獣だってそいつの配下の魔獣のはずだ。魔獣の角の色を確認しろ。緑のはずだ」


「えっ、え、そうだったんですか!?」


「そうだ。あいつの居住はここから遥か南にある、なんかリゾート感満載の城だ。討伐するならそこ行け」


 なんてことだ。北にある魔王城に諸悪の根源である魔王がいるという王命で、ここまでやって来たのに、魔王違いだったなんて。もしも腱鞘炎じゃなかったら、聖剣を抜いて戦って業務上過失致死罪を犯すところだった。


「ごめんなさい……! 魔王違いでした……! 危うく無実のザフィールさんを細切れにするところでした……!」


「うーんまあ泉の件もあるし無実ってほどではっていうか細切れてお前」


「本当に、もう、なんという失礼を……。お城を荒らして警備の魔獣も倒しまくって、なんとお詫びをすればよいのか……!」


 ぺこぺこと平謝りしていると、ザフィールさんは「ああもう。いいってもう」と、私を制した。


「いや、まあ、お前らが正門の呼び鈴鳴らした時に、有無を言わさず魔獣の大群を送りつけたのは俺だしな。俺もその時点でちゃんとお前らの用件を聞いときゃよかったんだよ。うん。お互いさまだ」


「ザフィールさん……!」


 なんて心の広い魔王なんだろう。さすが王様である。


「ありがとうございます……! 王国に帰ったらきちんと事情を話して、ザフィールさんへの誤解を解いてきます!」


「ああ。そうしてくれ。もう攻めてくんなよ」


「はい! 後日、お詫びに菓子折りを届けますから!」


 ああ、本当に対話で解決できてしまった。

 こんなにいい魔王なザフィールさんに斬りかからなくてよかった。

 腱鞘炎、万歳!


「あ、そうだ。撮影魔法道具を持ってきたので、一緒に映っていただけませんか? ザフィールさんが悪くない魔王である証拠として、王国に提出します!」


「まあ、いいけど……」


 鞄を漁って撮影魔法道具を取り出していると、ザフィールさんが玉座を立って(一生動かないのかと思っていた)、こちらにやって来た。物珍しそうに手元を覗き込んでくる。


「これが撮影魔法道具? ずいぶん小型化したんだな」


「これはマルカちゃんが作った特製品です。携帯に便利で画質もよくて最高です。旅の思い出もたくさん撮りました。ほら」


「え、この場で撮った画像見れんの。すげえ。え、何この可愛い食べ物」


「マリトッツォです。今、流行りの可愛い美味しいスイーツです」


「お詫びの品これがいいんだけど……」


「承知です!」


 幸い利き手じゃない方は腱鞘炎ではないので、撮影魔法道具のスイッチを押すくらいのことはできる。タイマーをセットして、いい感じの高さに浮かべて、後はポーズを取るだけだ。


「ポーズはどうしましょう。仲良しな感じがいいですよね! 肩組んでもいいですか?」


「肩……。……。断固拒否する」


 ツンとした表情で突っぱねられてしまった。王様だから気高いのだ。気軽に肩組もうなんて言ってしまったことを反省する。というか身長差がだいぶあるので(ザフィールさんの方がずっと背が高い)、そもそも肩を組めない。


「じゃあ、せめてピースしてもらっていいですか……?」


 仲良しポーズを断られて悲しい気持ちと涙を堪えてお願いしたら、ザフィールさんは「分かったよもう……」と嘆息しつつ応じてくれた。優しい。


「じゃ、タイマー動かしますよー。さん、に、いち、はい!」


 かしゃん、と音が鳴って、勇者と魔王のツーショット撮影終了。

 撮れた画像を見ると、私は笑顔でピース(本当はダブルピースしたかったけれど片手は腱鞘炎なので断念)、ザフィールさんはツンとした表情で腕を下げたまま手首だけ上げてピースしていた。嫌々ながらもピースしてくれる優しい魔王である。


「ありがとうございました! では、私は仲間と共に帰りますね!」


「テントはちゃんと撤去しろよ」


「もちろんです!」


 ザフィールさんに手を振ってお別れをして、魔王城を後にした。




***




 今朝。急に肩が上がらなくなった。


 住み込み清掃スタッフとして雇っている人間・ナアコに相談したら、「四十肩ではないでしょうか」と言われた。原因を訊ねたら、「主に加齢です!」と笑顔で言われた。辛い。まだ五百年そこそこしか生きていないのに。何かの間違いだと思いたい。首を寝違えたやつの肩バージョンだと思いたい。


 しかし腕を自由に使えないのは困った。椅子に座って肘掛けに腕を安置して安静にするほかない。これでは頭も掻けないし、高い所の本も取れないし、雷も使えない。こんなときに勇者が攻めてきたらどうしよう。三百年くらい前、女神の泉を枯らした件で討伐隊が組まれて城に攻め込んできたことがあった。その時は腕の一振りで落雷の雨を降らせ、勇者もその他大勢も全滅させたが、今日はそうもいかない。


 まあ、大丈夫か。ここのところ、この城に攻め込んでくる者もいないし。

 とか思っていたら、こんな日に限って勇者がやってきた。


 どうしよう。四十肩で腕が上がらない魔王とバレたら瞬殺されるんじゃなかろうか。

 自宅警備に配置した魔獣を次々に倒して、勇者一行が迫ってくる。


 よし。


 ここは、もちろん何の問題もなく戦えますけどお前如き小物に全力で構える必要もないから余裕を見せているのだよ感を出して、どうにか乗り切るしかない。



***



 その後、私たち勇者一行は王国に戻り、北の魔王は魔獣災害に関係が無いことを報告した。そしてザフィールさんがくれた地図を手に再び旅に出て、南の魔王の討伐を無事に成し遂げた。


 魔獣災害が収まり、世界に平和が戻ったあと、お詫び(魔王違いの襲撃)とお礼(南の魔王情報)のため、再び北の魔王城を訪れた。


「お久しぶりですザフィールさん!」


「来たか。お茶出してやるから座れ」


 ザフィールさんはお詫びのマリトッツォとお礼のマカロンを大変喜んでくれた。


 その後も、私はちょいちょい魔王城に招待されるようになった。手紙を持った小鳥型魔獣が家に飛んでくるのだ。手紙にはいつも「来い」の一文と魔王城への転送魔法陣しか書いておらず、行ったら行ったで特に用件はないようで、美味しい紅茶でおもてなしをされて帰ってくるのが常だ。


 今日も招待状が来たので、魔王城を訪れる。

 魔王と楽しいお茶をしに、手には聖剣の代わりに菓子折りを提げて。



~登場人物紹介~


メリレイン

 勇者。平和な村でのんびりと暮らす少女だったが、聖剣に選ばれたことで勇者となった。彼女がひとたび聖剣を抜けば、相手の攻撃はほぼ無効化、こちらの攻撃は悉く致命傷というチート性能を発揮する。疑うことを知らないお人好しであり、道中では人助けの寄り道が激しく、あれこれ事件に巻き込まれるも、仲間の三人がしっかり者なので大丈夫だった。お詫びとお礼の来訪以降も、何かに付けてザフィールに魔王城に呼びつけられるので、その度にお菓子を持って訪れている(流行のスイーツを持っていくと喜ばれる)。南の魔王討伐後は聖剣を返納したので、非力な少女に戻ったのだが、ザフィールに彼女を害する気はないようで、いつもツンツンした態度で甲斐甲斐しくお茶を淹れてくれるらしい。



ガルフ

 狼族の獣人。大剣を軽々扱う怪力、全属性の魔法攻撃に対する耐性、シベリアンハスキー的毛並みを誇る戦士。国主催の闘技大会で優勝したことで、勇者一行のメンバーに選ばれる。魔法使いのマルカとは幼馴染。幼少期よりマルカの魔法の実験に付き合い、吹っ飛ばされたり吹っ飛ばされたり吹っ飛ばされたりした結果、驚異の魔法耐性を獲得した。チョコレートへの耐性はない。酷い目に遇ってもカレーは好き。



マルカ

 魔法使い。最年少で国立魔法学校の入試突破、飛び級で卒業を果たした天才。ガルフの推薦と実績を買われ、勇者一行のメンバーに選ばれる。空間魔法が得意であり、旅ではグランピング的テント、薪ストーブ、ふかふかのベッド、キッチンセット、バスタブとシャワーブースを持ち歩いたため、勇者一行の旅は快適だったと思われる。ガルフにはツンを、初めてできた同年代の女の子の友達であるメリレインにはデレを発揮する。魔法以外は不器用なため、マルカの三つ編みはメリレイン、ガルフ、サキセが交代制で毎朝セットしてくれている。



サキセ

 弓使い。赤子の時に教会に拾われる。ナアコと血のつながりは無いが、同じ日に教会に捨てられていた彼女と仲良く育ち、「姉さん」と呼んで姉同然に慕う。弓の腕は貧しい食生活の中で、ナアコに少しでもいいものを食べさせるためにと磨かれた。行方不明になったナアコを探すため、勇者一行のメンバーに加わる。行動原理は全てナアコ。狩猟に加え料理スキルも高く、マルカ持参のキッチンセットをフル活用し、勇者一行の胃袋を支えた。得意料理は鶏の唐揚げ。再会したナアコと念願の二人暮らしが叶って幸せ。



ナアコ

 幼い頃に人買いに攫われ、見世物として猛獣の檻に放り込まれたところを、通りすがりのザフィールに気まぐれで助けられ、魔王城の住み込み清掃スタッフとして働いていた。彼女の『手作りのぬいぐるみを自在に操る魔法』によって放たれた100体のクマさんにより、魔王城はいつも清潔ピカピカである。魔王城の室温が低いので防寒対策にクマの着ぐるみを着用していた。再会したサキセが24時間年中無休で傍を離れないことについては、「長い間離れてて寂しかったんだなー」くらいの気持ちで受け入れている。



ザフィール

 北の魔王。腕の一振りで嵐を呼び、落雷を自在に操る。「女神の泉事件」以外では、特に目立った悪事は働いていないが、彼本人の強さと魔王城の魔王魔王した威容から、悪の総本山みたいに思われていた。ナアコが住み込み清掃スタッフを辞めて以降(今も週3で清掃に来てくれるが)、話し相手がおらず寂しいので、メリレインをちょいちょい呼び付けては茶飲み話に付き合わせている。役目を終えて聖剣を返納し非力な少女に戻ったメリレインが、南の魔王討伐の功績を恐れた西の魔王から刺客を差し向けられたと知って、仕方がないのでメリレインの家に押しかけて護衛を始めるのだが、それはもう少し先のお話である。





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― 新着の感想 ―
読んでいると体のあちこちが痛くなるような作品でした(笑) メリレインと魔王を始め、キャラがみな愛らしく楽しく読めました。
他の魔王もこんなんなのかなあ………。あ、いや、ひとり倒されたのか。
今更この話がファンタジーでランクイン?!まだ入ってなかったんだっけ?! てか3位もピッキング勇者?!これもまだだったっけ?! と、衝撃を受けました。 祭りですね、先生。
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