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プロローグ



「お前を産み落としたのは、お前を育てたのは俺の我儘だ………済まない、華燐(かりん)


そのように布団に眠る()、いや。私に慟哭したのは、少し前に死した父親であった。

ならばこれはきっと夢なのだろう。現実の私は、今はまだ眠っている筈だ。いや、そもそも………目が覚めたとて、あの世界が現実であるだなんて、確証はないのだが。

―――私は、前世の記憶を持っている。死して、記憶を失わないままに、私は少女の身体へと転生を果たした。だからと言って、その記憶を利用して成り上がるとか、そんなことは出来ない。


「お前はかつて、死んだのだ。けれど、奇跡のように息を吹き返した。そこから俺は、お前に憑りつかれている。妻の残り香たるお前を………国を統べる主としては失格だろう。俺は、民よりもお前を取ったのだ。お前が病に倒れれば、持ちうるすべてを賭けてお前を助けた」


前世の私は決して特別な存在ではなかったから。そして、今世の私は身体が弱く、知識を生かせるような状況ではなかったから。生まれてからずっと病弱だった私が何とか元気になったのは、ごく最近の事だ。

喉を震わせて、夢の中の父親に声をかける。


「父様………私は、どうすればいいのですか」

「華燐、お前の好きなように生きてくれ。どうか、幸せになってくれ。国を、捨てたっていい。お前は本来、この国を背負う必要なんてなかったんだから」


それは私の願望なのだろうか。それとも、本当に父が望んでいたことなのだろうか。今は亡き父様が心の底で、本当はどう思っていたのか。それを知る術はもはや存在しない。

分かっているのは、もうこの夢が醒めるという事。また、地獄のような現実と向き合わなければならないという事。

朧げな父様の顔が揺らいで、暗闇から意識が浮上する。そして、片目を開いた。


―――目覚める前に、少しだけ追憶に浸ることにする。





思い付きシリーズです、気が向けば続けます

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