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到着・南の街スザン

パチリと目が覚める、夜中に魔物が襲来する事はなくすやすやと眠れた。

というか若い私は寝ていろとリギル先輩が無理やり寝かせたって言うのが正解。

チュンチュンと囀る小鳥の音を耳にしながら起きようとして……重みが引っかかった。

そういえば寝相が悪いっていう人が居たなーと思い出す。

商人さんのお仲間、荷物持ちの人がすっごく寝相が悪いって言ってたっけ?

ちょうどお隣……うん、きっとそうなんだろう。足が乗っかってたりするかなー。

目をパッチリ開けて見下ろしてみて、まぁびっくり。


「いや、そうはならんでしょ」


ゆったりした寝巻きの私のお腹の上にお顔がドン。

片手はおっぱいの谷間にすっぽり。気持ちよさそうに寝てますこと。

割と意のままに操れるようになった水と氷の魔法。

羞恥とちょいと感じる怒りで乱れつつもイメージ通りに寝坊助さんのお顔に冷たい水が張り付く。

呼吸の穴は開けておいてあげているから窒息することはない。


「がっぼぉあ!?」

「おはよースケベさん、さっさと起きろー」


まぁ多分半分確信犯な事だろうから容赦しなくていいよね。

色々片付けてこの人数の睡眠スペースだったんだし、多少は仕方はないと思うけど。

ここまでどっかりは流石にね。


「さてと、御者さんは起きてるかな……」


御者さんはリギル先輩との交代交代で見張りしていたみたいだけど。

あんまり無理されても途中で居眠り運転とかになりそうで怖いんだよね。

慣れてるかもしれないけど、コンディションは良い方に持っていって欲しい。

小屋の窓から覗いてみればあぁうん、呑気に寝てる御者さんが見えた。

着替えて身支度したら出発するまでは私が見張りしようかな。

魔法でちょちょいと水を出して……顔をバシャバシャ洗ってっと。


「ひどっ、酷い目覚ましだねぇ!?お嬢ちゃん!」

「それ貴方の寝相にそのままお返しします、おっぱいに腕ずぼぉってどうなの?」

「うっ」


取り敢えず文句言ってきた寝坊助さんには言葉のビンタかましてっと。

お着替えして、出ましょう出ましょう。



早朝の小屋周辺は澄み切った空気で清々しい気分にしてくれる。

出てきた私の音に気づいて見張っていたお二人ともこっちを見る。

御者さんは物音に単純にビックリした感じだね。座って寝ていた所をずり落ちてる。

リギル先輩はあくびを噛み殺して席を立った。


「おはようございます、見張り代わりますよ」

「おう、頼む……」

「ふぁぁぁぁ……食事の準備します」


食事も豪華なものではないし匂いも極力抑えたものになる。

それはそうだよね、匂いバリバリ出したら魔物が寄ってくるし。

リギル先輩は眠そうに、御者さんはでっかいあくびをしながら小屋に入っていった。

リギル先輩、性格に難ありって言うけど……あれ酒癖で損してるよなぁ。


「さーってと、見張り見張り」


備え付けのイスに座りながら朝日を浴びて……魔力の流れっていうのに意識を傾ける。

魔物は魔素の塊で動けば当然のように魔力が流れていく。

生物型の魔物ならばどう頑張っても隠せない物。

ゴーストとかだとその辺も霧散させたりするらしいから探知が無理になるらしいけどね。

だから魔法使いのわたしは魔力の流れを見ていると全部分かると言ってもいい。


「うぇ、頭パンクしそう」


ただ神様の祝福のおかげか魔力を検知する数が多すぎて頭パンクしそう。

ちっちゃい米粒のようなのまで些細に感じるからダメ。

小屋の中の人たちの動きも手にとるように分かるから調節しないと。

大雑把に大雑把に……集中し過ぎたら一杯一杯になっちゃうなぁ。

変に意識を向けるからこうなるんだって事かなぁ、難しい。

慣れ親しんだらこの辺もさーっと調節できるのかもね。


「ん?突っ込んできてる?」


南西の方だな、こっちに突っ込んできている。

数は恐らく3、結構大きいな……ジャイアント系になるのかな。

他に検知出来ないしちょっと迎え撃つかな……

ダメそうならすぐに先輩が出てきてくれるでしょ。


「うぅ……なんかイヤな予感」


ゾワゾワとする感じ、イヤだなぁ。



おぉなんと出くわしたのは亜人種のゴブリン。

たった3匹な所を見るとどこかの集落が瓦解して散り散りに逃げてる感じだと思う。

ゴブリンは3大陸どこにでも居る亜人種。

同じ様に大陸関係なしに生息している魔物はそこそこ居る。

まぁそんな中の一つのゴブリン、集落を形成して生活を営んでいる。

たまーに農村から女の子が誘拐されて……とかって事件があったりするけど。

基本的には人間と関わりを持たないように生活している。

体長は小柄な私よりも小さく矮小というのがピッタリ。


「ギィギィうるさーい」


鳴き声はとても耳障りな金切り声。

棍棒を振り回しながら威嚇してくるけど威嚇したいのはこっちなんだよね。

耳を抑えながらあっち行けあっち行けと手でジェスチャー。

しかし相手に意味が通じなければ意味がなーい。

やんのか!と言わんばかりにこっちを睨んでくる。


「……もしかして獲物として見られてる?」


視線が徐々に下に移って……なんか雰囲気が変わった。

威嚇するための棍棒振り回しではなく……捕まえるような動きに変わってきている。

コレには私、苦笑い。

捕まったらどうなる?いやぁそれはもちろんの事繁殖のために使われると聞いてます。

前世でよく語られるゴブリンとその習性とかは同じだったりする。

ゾワゾワする悪寒はこれが原因かぁー


「うーん、引く感じじゃなさそうだし……ごめんね」


殺す必要性は無いと思うけれども……被害が出そうではある。

さらに言えば小屋を荒らされかねないから処さなくちゃ。

まぁすぱっとぱぱっと、氷漬けにして……それから鏃でグサリ。

血も何もかも凍りつかせてから砕いてしまう。

痛みも何もなくすぱっと終わらせてあげるのがせめてもの慈悲と思ってる。


「……うん、お肉とか無いといいなぁ」


砕いた後も結局は肉を見ちゃうから慣れない間はお肉極力避けたほうがいいよね。

下手すりゃリバースしちゃう……朝ごはんの用意ができるのはもう少しありそうだけど……




その後暫くして朝ごはんを食べ、無事にスザンにたどり着いた。

スザンの街はちょっと熱帯、暑い。

生い茂る木々もそういう感じだし全体的に南国なイメージを受ける。

世界地図とかは無いけど多分星の赤道近くなんだろうな。


「おう、小娘先に宿を取っておきな」

「あ、はい!アドバイスありがとうございます♪」


街について右も左も分からない状態だったけれども先輩がおすすめの宿を教えてくれた。

セリューで寝泊まりしていたのは一時避難民の為のものだったしね。

たぶんこのスザンに避難してきた農村の人たちで一杯だと思う。

女の子一人、ボロ屋に行けばまぁ色々と歓迎されそうだけど……行くのは無し。

おすすめされた中でも割りと小綺麗な感じの宿にした。

しっかりと中から施錠出来てセキュリティばっちり、お風呂は共有だから気をつけないといけない。

食事はついてない、食事は1階部分にある酒場で食べるシステムだね。


「ただ重要な荷物は常に持っていけってか……ふむ」


内鍵しかない以上重要な荷物に関しては持ち歩かなければならない。

治安が悪いとは思わないけど能天気にしていたら痛い目に遭いそうだしね。


「さて、じゃあ冒険者ギルドに顔出しに行こう」


現在のスザンの状況の説明、張り出されているクエスト内容等を見てこないと。

あぁあと星を1個貰いに行かないと……




ギルドに入れば怪我を負った冒険者達が歯がゆそうにしている姿を目にする。

それぞれ一応星持ちで素人ではないのが伺える。

私と同じ魔法使いの人も居るけどどこか顔を赤くしたりしていて……うん、何かあったな。

受付は結構強面のお兄さんだなぁ、声掛けづらいかも……


「こんにちは、セリューより来ましたアルエットと申します」

「ん?セリューから?紹介状はあんだろうな?」

「こちらを」


するりと紹介状を引っ張り出す。

いくらか折りたたまれてポーションポーチに入れていた。

保護の魔法がかけられていて防水仕様になっているから安心。

折り目なんかもついていないので魔法の便利さがよーく分かる。

取り出した紹介状は当然ながらセリューのギルドの捺印がある。

偽装が難しい魔法調印がされていて信用度はかなり高いはず。


「間違いないな、こっちだ」


一応星の授与というのはギルドの長から直接される。

最後の星は国王からなんだけど……まぁそれはそれ。

奥の応接間に通されて簡単に祝辞を受け星を頂戴した。

首に一つぶら下がる星は私の冒険者としての格が上がった証。

出てみると私の外見年齢から驚く人が多い、ふふん。胸を張ってみる。


「さてと、依頼を見てみよう……」


ギルドの中に入って真っ先に目に留まるボード。

クエストボードに張り出されている紙を見ていく。

重要度の高い物はドクロマークが書かれていて一発でわかる。

上の方に張り出されていて……私だと見づらい。


どれもこれも強力な魔物が出てきていてその討伐、撃退、封じ込めになっている。

朝より出発して夜に撤収する組と夜に出発し朝に撤収する組に分かれている。

私は明日の朝に出発する組に入ろう。

今日は今日でスザンの祠とか装備品とか見てみたい。


「このクエストですけど……」

「ん?明日の組に入るのか?」

「はい、その為にセリューから来たんです」

「おう、メンバーに入れておく……明日の明朝にはギルドに来ておけよ」


よし、登録は完了……あとはスザンの探索だー!

ちょっと楽しんでいこう。

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