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戦闘 危機転落

ゾワゾワとずっと肌が粟立ってしょうがない。

森に入ってからずっとこうだ、肌に感じるドロリとした魔力に身体が勝手に反応する。

常に気をピンと張っていないとどこから襲われたものかわからない。

活力があっても精神のほうが先にヤられてしまうのは明白。

どこかで息抜きなんかが出来ないと……

ガサガサと鳴る音にビクビクしながら一歩一歩……前へ、森の奥へと進んでいく。

害意ある魔力が渦巻く中……特に濃厚でドロッとした悪意のある魔力の方向へと向かう。

これだけはハッキリと見据えることができる……まるで私を招いているかのようだ。

罠の可能性もあるけれども……その時はまっすぐ背を向けて逃げれば良い。

それに、目印もつけては来ている。

通ってきた木の側面、私の視点の高さちょうどの場所を一部凍らせて来ている。

一定間隔でそれをやっているから凍っている木を目印に走れば脱出は出来る。

魔法で形成された氷はすぐには溶け出さない。

組成している魔力が解けてから自然な法則で溶けていく。

私が練り込んでいる魔力は解かなければ半日は持つ。水に浮かべた氷がそうだった。

環境が違うし氷の状態も違うから厳密に同じとは言えないだろうけど……十分だと思う。


「ッ!」


ガサッと大きな音が頭上から聞こえた。

危険だと直感が囁きバックステップを踏む。

視界の端で私の銀髪と胸が弾んでいるのが見える。結構激しく動いても平気……かな?

落ちてきたのはもちろんのこと魔物。

その全貌は正直生理的嫌悪を誘う……バカでかいワームだった。

ジャイアントワーム、この森にも生息はしていたとされるけれどもこんなにデカい物なの?

ざっと見ると私を余裕で押し倒してしまえそうなデカさ。

吟遊詩人や商人のおじさんが語っていたものの2倍近くはデカい。

これが成長すると……ジャイアントモスだったり別な魔物になる。

魔物の食物連鎖では最下位層にいる魔物で狼型の魔物、ハウンドや鳥型の魔物、ワイルドイーグルにとって食われるハズ。

……臆病で人間に対しても攻撃的だったという話は私が知る限りではない。


「草原のジャイアントマンティスとかは前座だったってわけね」


飛び出してきたんじゃない、あれは多分……逃げてきたんだろう。

この更に強い魔物が現れたから……同時に納得がいく。

魔物に襲われて素手の農民が命を落とさない訳が……多分、襲われたんだろう。

このワームや他のもっとデカい同種の魔物に食われかけたんだろう。

デカいとなると生命力は強く……そして体内に蓄える魔素も多い。

それは魔法に対する抵抗にもなって……半端な魔法では弾かれるなんてことも出るらしい。

私をしっかりと認識しているワームは大口を開いて威嚇している。

あの口に噛まれれば……私もタダでは済まなそう。

剣士であれば耐えるかもしれないけど、魔法使いの私は無理だと思う。


「動く前に……!!」


ただ大柄になっても同じワームは同じワーム……その動きは鈍重。

攻撃手段も変わらず噛みつき、体当たり……そして酸吐きの三つ。

もぞもぞと動き出す前に先手を取れば良い。

イメージは十分、後はどうする……鏃を放つ?いや、鈍重なら多分これでいい。


「その顔をカチンと……うわぁ、暴れる暴れる」


重要な器官が詰まっている頭をまるっと氷漬けにする。

どんなに屈強なヤツでも呼吸を封じられれば……って寸法。

全身氷漬けにするよりも魔力消費は少なく集中も少し楽になる。

ただ腕を持っていたりすると叩いて割られて脱出もされそうかなとは思う。

私が込めた魔力の濃度が高ければ高いほどに出来上がる氷は固く密度を増すんだけど……

うん、多分大丈夫かな……?様子を見るけどうん、大丈夫っぽい。


ビッタンビッタンと暴れるワームにつられてさらに音が近づいてくる。

あーこれはちょっとマズった、うん下手に節約して大損こくパターンだ。


「うっわぁ、でっか……嘘でしょ」


ずぅんと出てきたのは……私二人は縦に並んでみないと並ばなさそうなくらいデカいマンティスだった。

こんな熊みたいにでっかいのが居たらそりゃあんな程度のマンティスは逃げるよねー……

ワームと私を見比べて……あ、私を狙いにしたみたい。こっちに構えた。


「同じ戦法が通じるかっ……!」


まずは杖で、足元と設置している足を氷漬けにさせてみる。

これが抵抗されたらちょっと考えよう、魔力を込めるかそれとも……

あぁこれが抵抗される感じか、数本の足は凍らせられたけど全部は無理だった。

魔力が押し戻される感覚というのが伝わる、嫌な感じだ。

これで怖いのが許容オーバーなくらいの魔力を叩き込んで……抵抗されコッチに戻った場合。

そうなると実質反射したようにこっちにその魔法が現れる。

だから抵抗された場合も……すごく感覚的な事だけど放出してしまわないといけない。

まぁ無駄には出来ないから……その氷をそのまま……鏃に変換!

左手を突き出して……


「しゅーっと!!あ、ダメ?」


爆速で放たれた鏃はそのバカでかい鎌で弾かれ弾道が逸れた。

じゃあ戦い方をこうしようか……氷の弾丸がダメならば。


「高圧水の刃だよ、どうかな?」


私はこの世界とは全く別な世界のことを知っている。

それが魔法の行使に置いてもアドバンテージを齎す……そう、今から使うウォーターカッターなんてね。

これは杖を介しての大雑把な物では無理、左手の人差し指から……

大量の水を魔力で生み出して圧縮、そして射出。

潤沢にある魔力があるからその持続時間というのも……結構ある。


「あぁすっぱり切れ……うわー!?またハリガネムシ!!」


よりでっかいハリガネムシのシャワーに泣くことになったけれども……なんとか魔物を倒せるのはわかった。

胸にすっぽり入られた時は気絶しそうだった……これ運がいいのか悪いんだか……

ただ魔力で一掃しようとしていた所だったから……ボトボト落ちてたのと周囲の木々合わせて氷漬けにしてしまった。

ほぼ暴発みたいなものだから魔力はスッカスカでたぶんワームにも抵抗されると思うヤツ。

凍ってくれて助かった、あぁ精神面が結構ダメージ深い……




その後も遭遇したジャイアントな蟲達を魔法で凍らせたりレジストされたら氷の鏃とか水でスパッと。

そんな感じで危なげなく来たとは思う……この森に入ってから屠ってきた魔物はそれはそれは強い魔素を秘めていた。

これが原始的な魔物だから良い、別な所に生息しているらしい魔法を使ったりする魔物だったら……

おぉ怖い、だって向こうも魔法を撃ってきたりするって聞くんだもの。


少なからずハウンドなんかが居たとされるこの森は完全に蟲の楽園と化していた。

もうすっかり日は落ちて星々の光が照明代わり……なんては言えない。

魔法を使う際に光が放たれるが魔力を光にして進むのは敵を呼び寄せるだけなので論外。

じゃあなにを持って視界を確保するか……うーん実は分からないけどある程度の夜目が効いている。

冒険者としての加護なのかもしれない。この辺りは後々で冒険者の先輩方に聞いてみよう。

そんな訳で段々普通の人間から外れてきたと自覚しながら突き進む。

何時間過ぎたのかは定かではない……けれどもようやく見つけた。


「これは……なんだろう、門?」


どす黒く禍々しい魔力の渦がそこにはあった。

大樹にぴったりとくっつくように……大樹を通して地中の魔素を吸い上げているんだと思う。

これが、おそらくは魔物を生み出している元凶だと思う。

破壊もしくは止めるにはどうしたら良いんだろう?

とにかく魔法をぶつけてみるのが良いんだろうか?

考えながら杖をしっかり握りしめ……近づいていく。


「ッ!」


ザワザワと大樹が揺れる、この木……あぁもしかして!

何度目かになるバックステップを踏んで距離を取る。

すぐそこに触手が飛び出してきていた。


「トレント……なるほど、コイツを倒せば良いって訳ね」


ギョロッとした目玉が2つ、大きく開いた口……そして枝が変化した腕を持つ魔物。

それがトレント、もっと別な所に住んでいると聞いていたけど……

もしかしたら災厄が降ってきた時にこの大樹が変化してしまったのかも。

普通の木がトレントに変化しても結構たいへんだと言う。

根っこが変化した触手はよく撓りムチのようにもなるし捕まったら脱出は困難。

花粉は毒を含んでいたりして近寄るのは無謀とされる。

遠くても……根っこ触手で捕まえられてしまうと引き寄せられる。


あと、濁されていたけど……多分捕まったらエッチな事もされるとか。

吟遊詩人の作り話と思いたいけどなぁ。


「捕まるわけにはいかないよねぇ!!うひっ、かすった……!」


根っこは地中を蠢いているけれどもその存在は魔力を通じて探れる。

反応しきれるとは言っていないけれど!!

バックステップ、サイドステップ踏みながら出てきた根っこに対して凍結を試みる。

集中できてないし……当然レジストされる。

だけれども周りが凍っては……そこを避けていくようにはなる。

……なるほど、植物の特性は変わっていないと見たほうが良いかな?

火や冷気には弱くて毒にも弱い……ただ水や風には滅法強く土は逆に回復させてしまうとか。

直接はレジストされてしまうし……長いこと回避し続けるのは私も危ない。

足場が凍っていてはツルッと滑って転んで……おしまいになってしまう。

考えろ、考えて……あ、そうか……周りを凍らせてしまえば良いのかも!!

杖を振るって一定の範囲をまるっと凍らせてしまう。

地面に限定されるそれはある程度の深さまでは達すると思う。

トレント本体は当然の権利のようにレジストされてしまうが……地面はそうも行かない。


「手応えありぃっ!?」


よしっ……そうガッツポーズした私だったけれども……

複数の触手が飛び出てきて……私を思いっきり叩いてふっ飛ばした。

上下逆さまになる風景と悶え苦しむトレントの呻き……


「がはっ……!」


思いっきり背中から地面に叩きつけられて……意識が少し、混濁した。

肺から空気が出て苦しい……ちょっと、息が苦しい……!!

まだまだトレントは生きているしさっさと起きないと次の触手が出てきて今度は捕まる。


まだまだ、戦いは始まったばかり……ちょっとピンチかも。

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