4、じゃがいもで儲けよう
翌日、クレアは街中の食堂に行った。
「じゃがいものフライを作りませんか?」
「へ? じゃがいもなんて、誰も食べないだろ?」
「それが、フライにすると美味しいのです」
クレアはそう言うと、屋敷から持ってきた試作品のフライを店主に味見してもらった。
「ほう、これは美味いな! これなら店で出しても良い!」
「でしたら、じゃがいもの仕入れ先はロールズ家にして頂けますか?」
「そのくらい、お安いご用だ」
クレアは確かな手応えを感じた。
「レシピとじゃがいも販売で、お金が入るにちがいありませんわ」
クレアは隣町でも同じように、じゃがいものフライを宣伝し契約を取ってきた。
「これで定期的にお金が入ってきますわ」
クレアの提案したジャガイモのフライは思った以上に人気が出て、取引先も広がった。
しばらく経って、じゃがいも販売が軌道に乗り出した頃、父親に呼び出された。
「クレア、よくやったね。じゃがいもの値段が上がっているよ」
「これまでじゃがいもは買いたたかれていましたから、小作人にも還元できますわ」
「そうだね、儲けは独り占めしてはいけないからね」
「はい、お父様」
クレアは家も潤ったし、小作人達も喜んでいたのでホッとしていた。
「もう、貧乏貴族ではありませんわね」
「そんな些末なことにまだこだわっていたのかい?」
父親はクレアの頭を撫で、手にキスをした。
「民衆の幸せを大事に出来なければ、富を得ても何にもならないよ」
「そうですわね、お父様」
少しの沈黙の後、父親はクレアに聞いた。
「クレアはコリー様と一緒になりたいのかい?」
「はい、お父様」
「クレアが良いなら、それでいい。コリー様はどう考えていらっしゃるのかな?」
「お手紙にはロールズ家の一員になりたいと書いてありましたわ」
「そうか」
父親は微笑んだ。
その頃、パーカー家ではコリーが両親に家を出る旨を伝えていた。
「パーカー家よりも、ロールズ家の方が貴族らしい心を持っています」
「だからって、家を出ることはないだろう? コリー?」
「家のことは兄上に任せれば安心でしょう」
コリーは続けて言った。
「民衆に高い税金を払わせて、豪華な生活をするのはもう嫌なんですよ」
「コリー!」
「民衆が苦しんでいるのに、ご馳走や晩餐会、舞踏会なんて楽しめません」
「そこまで言うのならば、出て行けば良い」
「父上、それでは今までお世話になりました」
コリーは家を出て、ロールズ家に向かった。