ほころび
幸せだった。
雅弘さんと子どもに囲まれて、まさに幸せな家族だった。
けど。
「これいや!」
「あー!」
「ははは。」
ごはんが気に入らなかったらしく床に落とす子ども。
それを笑いながら見ている夫。
片付けていると夫はお風呂に行った。
片付けが終わると夫は「おやすみ」と言って寝室へと行った。
「ねージュース飲みたい!」
夜に子どもがジュースをねだる声。
幸せだったはずだ。
家の家事などに加え、子どもの送り迎えなどやることはたくさんあった。
前の奥さんは専業主婦だったからこの量の仕事をこなしていけたんだろうけれど働いてる私には無理だ。
つらい。
ケアレスミスや早退が増え、仕事にも支障が出そうになっていた。
すると夫から仕事をやめてもいいと言われる。
わたしを気遣ってくれることが嬉しかった。
わたしの負担を考えてくれているんだと。
その時はそう思って素直に嬉しく感じた。
しかしやめると想像以上に家事のさらなる完成度がのしかかってくる。
そして、周囲からは「専業主婦なんだから」と保育園の活動や地域の活動も求められるようになった。
ああ。
あれも、これも。やらなくては。
どうしてできないのかと言われる。
やらなくては。
できていないのは甘えだ。
やらなくてはいけない。
ああ、どうして。
わたしは幸せになりたかっただけなのに。