私はあなたたちの純愛の最後の敵
その日、私は夫から離婚を告げられた。
もっと正確に言うなら夫とその愛人、そして子供2人にだ。
目の前に出された離婚届。
そこには私の名前以外の全てが記入されていた。
それを見た時、私は全ての人がこの離婚に賛同しているんだという気持ちがした。
いい妻。
いい母。
それらをしてきたはずだ。
それでもこんなことになるのか。
そんなことを考えていたのだが、あちらは私が離婚届に名前を書くの渋っていると思ったらしい。
「すまない、君には悪いと思っている。」
「いいえ、雅弘さんは悪くありません!私がこの気持ちを抑えられなかったから...。」
「わたしまなちゃんといっしょにいる!!」
悪いと思っているなら他にやりようがあっただろうに。
子供の様子を見ていると大分周到に準備してきていたであろうことがわかる。
まなちゃん?そういえば、この女名乗ってもいなかったな、今名前知ったわ。
どうも冷めた感情しかない私だがあちらは感動の場面らしく、女は涙ぐんでいた。
それを慰める夫と子供。
はたから見れば仲良し家族だ。
そう、この話の邪魔者は私なのか。
自分でも驚くほどにすらすらと名前がかけた。
不思議と悲しいというより、解放されたという気持ちが強かった。
私はその後、別のマンションに引っ越した。
結婚していた時に住んでいた場所とは大分距離は離れている。
慰謝料だけで財産分与はしなかった。
そのかわり、ということではないが子どもふたりの親権と養育権はあちらにある。
たしかに自分の子どもであるが日々の言動や本人たちの父親と愛人の元で暮らしたいという意見を聞くと私が育てるべきではないな。とも思ったのだ。
あちらの申し立てで面会することもない。
キャリーケースと段ボールが一つしかないこの部屋で私は大の字に寝そべった。
私が好きにしていい空間、時間、お金。
私は自由だ。
これから何にだってできるんだ。
そう思うと心が踊った。