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第3話 始まりの地③

ザクッ、ザクッ、ザクッ


足首が埋まる程まで積もった雪を踏みしめる感触を楽しむように、

一定のリズムを刻む燕。


「あ~、あと4日か。緊張するな」

大して緊張して無さそうな表情で言う燕に、

鹿を乗せるソリを引く祐希が笑いながら返す。


「ただ水飲むだけだよ。まぁ、紋が顕れるかは、神様の気まぐれ?」


「水じゃなくて、霊水でしょ!それに、紋が顕れるかどうかは、霊気(れいき)を操る才能が

 あるかどうかだって、誠一さんから聞いたでしょ」


「まぁ、何だって一緒だろ。それ飲んで、才能あれば、紋が出るし、

 無けりゃ出ない。それだけだよ」

言いながら祐希は、無意識に何も描かれていな手の甲をさすっている。


「まぁ、僕はどっちでもいいけどね。

 紋が出たら、兄ちゃん達と別れなきゃいけないしさっ」

紋が顕れたら、魂紋師になるため、大抵の子供たちが魂紋(ソウルクレスト)学院の寮へ入る。

そのことを言っているのだろう。


本心半分、紋が出なかった兄への気遣い半分、そう言った燕は続ける。

「どっちにしても、鹿肉は食べられるからいいや!

 あっ、でも今年他に紋が出る人がいたら、あんまり食べられないね」


わざとらしく膨れっ面を作る燕と

「今年は、2匹捕まえてやるよ」

「2匹も持って帰れるかな?」

そんなことを言い合いながら、雪を踏み鳴らしつづける。



♢♢♢



久我(くが) 禅仁(ぜんじ)は、崖から見える雄大な景色を目の前に、

肩まで伸びた複雑に波打った髪を風になびかせ、左手で形の整った顎髭を撫でている。

右手にには細長いパイプを持ち、美味そうに煙を味わっている。


パイプを握るその手には、紋が描かれている。


久我が煙を吐き出したその時、多角形に囲まれた牙の様な紋がうっすら黄色く光を帯びる。


久我が自分の気を少し解放すると、黄色い光が緑へと変わり、

はい、久我です。と低いが、良く通る声で紋に向かい応答する。


そこへ、女性の落ち着いた声が返ってくる。

「こちら、東北支部。妖魔を、約20キロ北東に感知しました。

 ハヤブサを送りますので、出動お願いします」


方角と距離から察するに、大天狗が封印されている地区だな、

と頭の中に地図を思い浮かべる。


魂紋(ソウルクレスト)協会の東北支部が張っている感知結界内に、妖魔が発生したという事だ。

司令部は出動中の紋師の位置を把握できるようになっており、活動範囲にいた久我へ

討伐令が来たわけだ。


了解、と返した久我の紋から、ハヤブサと呼ばれる精霊が現れる。

その名の通り、隼の姿をした精霊は、久我を妖魔の元へ促すように、旋回している。


久我は霊気を全身に纏い、崖から飛び降り、

先行するハヤブサの後を猛スピードで後を追っていく。


ハヤブサを追いつつ、続けて来るであろう支部からの情報に耳を傾ける。


「厄災レベル1、最短距離の紋師は無星狩人(むしょうかりゅうど)が1名、2キロ圏内、次いで一星守人(いっしょうもりと)1名、

 10キロ圏内、既に発令済みです」


無駄を省くための必要最低限に集約された情報を聞くと、了解とだけ言い通話を切る。

当然、各地区に配属されている紋師が出動する。レベル1なら、大した問題は無いであろうが、現場では何が起こるかわからない。


今回はその念のための出動のようだ。


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