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第2話 始まりの地②

白銀(はくぎん)の世 実る難転(なんてん) 兎かな……誠一(せいいち)っと」


雪の降り積もる地面に、朝日が眩しいぐらいに反射した庭を前に、

僧侶のような袈裟(けさ)姿で、紙の束に筆を走らせ一句読む。

その手の甲には、三角が複数重なった紋が描かれている。


「駄作だな・・・」


渋い顔でそう呟き、筆を置いたとき、紋がうっすら黄色く光を帯びる。

その光が青色に変わると、

「はい、相良(さがら)です」

と紋に向かって声を発する。


「おはようございます。三島です」

と、紋から返ってくる青年の声に相良もおはよう、と返す。


「急で申し訳ないのですが、先日の結界強化案の件で、支部長より招集がかかりました。

 11時までにお越し頂けますでしょうか?」

相良は時計に目をやり、今日の仕事の予定を頭の中で調整すると、

了承する旨を伝える。


もちろん、招集されて断ることなどありえないのだが・・・


通話を終えて、出かける準備を始めた時、

トントンと庭とは反対側の扉が叩かれ、返事を返すと、

燕を連れて、兄の祐希が入ってくる。


質素だが、清潔な着物を動きやすく縛り上げ、毛皮を羽織り、肩に弓を掛けている。

綺麗に刈り上げた横以外の黒い髪は好き放題あっちこっちを向いている。


「相良さん、今から鹿狩りに行ってくるよ。

 遅くとも夕方には戻るから」

素っ気ない言い方で外出を告げる祐希の横で、

「行ってきます!」

と八重歯をのぞかせ、屈託ない笑顔で手を振る燕。


12歳を迎えた子供が受ける儀式、顕紋の儀を翌週に控えたは日は、毎年鹿を狩る。

義務では無いが、この地区の守人になってから、毎年行っている。

紋が顕れる際、初めての気の解放により、異常なほどの体力を消耗する為、

栄養価の高い、新鮮な鹿肉を用意するのだ。


とはいえ、都から遠いこの北東の地では、

紋が顕れる者は、1000人に1人も居れば良い方だが。


身寄りをなくした尾野寺兄弟を預かってから、12年、今年17になる祐希

は狩りの才能があった。そのため、去年からは祐希に任せている。


「気をつけてな」

相良 誠一はそう言って見送ると、再び支度を始める。


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