第1.5話 戦国時代の名前について
大田勇介と藤田吉郎の対話コーナーの第二弾です。
今回は、戦国時代の名前についてです。
ナレーション
さぁ、始まりました!親友ふたりによる、夢のひととき。今回のお題は・・・「戦国時代の名前について」です!!では、おふたり、お願いします。
藤田吉郎
なぁ、ひょっとして俺の出番って、このコーナーだけなんか?第1話からいきなりいなくなってんけど。
大田勇介
そやね。まぁ、そのうち出番はあるかもよ!?とりあえず、このコーナーのおかげで、俺の次にセリフは多いしさ。
ヨシロー
何か納得できへん・・・で、今回は戦国時代の名前についてか。何かぼんやりしたお題やけど、どういうこと?
マタスケ
うん。今回、架空人物として「太田和泉守達定」「太田新介」「安食伝兵衛定春」が出てきたけど、その中に含まれてる「受領名」、「仮名」、「諱」と「幼名」について説明しようと思う。
ヨシロー
何か難しそうやな・・・。
マタスケ
じゃあ、わかりやすく織田信長を例にとって説明してみよう。織田信長は、幼名が「吉法師」、元服後の諱が「信長」、仮名が「三郎」、受領名は「上総介」を名乗った。
ヨシロー
ごめん、すでによくわからん。。。
マタスケ
ひとつずつ説明していくわ。まず、「幼名」。これは結構簡単で、子供の時に呼ばれる名前やね。大人になることを「元服」と言うんやけど、それまではこの幼名で呼ばれることになる。
ヨシロー
それじゃあ、「諱」は?信長って名前が一番馴染みがあるんやけど。
マタスケ
「諱」はその人の本名のこと。現代の日本人の下の名前と同じ。だから、信長を本名で書くと「織田信長」で間違いないんやけど、ここでひとつ問題があるねん。
ヨシロー
問題ってなんや!?
マタスケ
「諱」は「忌み名」とも書く。その名で呼ぶことを「忌む」、つまりこの時代では本名で他人を呼んではいけないって決まりがあったんや。基本的に、親や主君、師匠といった目上の人だけが目下の者を本名で呼ぶことが許されていた。
ヨシロー
じゃあ、家臣が信長に向かって「信長様」と呼んだらアカンかったってことか?
マタスケ
そう。だから、実際の呼び名として「仮名」とか「受領名」が使われた。「仮名」は今でも少し残っているけど、「太郎」とか「次郎」とかの何番目の男の子かを示す名前やね。当然、「三郎」やと三男ってことをあらわすことになる。
ヨシロー
すると、信長は三男やったってこと?
マタスケ
その通り!と言いたいとこやけど、実は「仮名」を親から受け継ぐ場合があったりする。親が「三郎」やったから、子供は長男やのに「三郎」を名乗ったりすることがあった。信長の場合も親から「三郎」を受け継いだ。次男やから「次郎」、三男やから「三郎」とは限れへんわけ。さらに複雑なのになると、親が「次郎」で子が三男やと、合わせて「次郎三郎」と名乗る場合もあったりする。
ヨシロー
色々あるんやな。で、「受領名」って何?
マタスケ
元々は「官途名」という朝廷の官職、つまり中央政府の役職名が由来になってる。信長が名乗った「上総介」は上総国の国司、つまり現代に置き換えると千葉県中部の知事のことやね。現代でも役職で「○○課長」とか呼んだりするやろ?あれと一緒やと思ったらいい。ただ、信長の場合は勝手に名乗ってるから、「官途名」ではなく「受領名」と呼ぶことになる。
ヨシロー
ん?偽物なんかいな!?
マタスケ
まぁ、そうやね。元々は朝廷の偉い人に頼んで朝廷に推薦してもらい、実際に官職をもらってたんやけど、そのうちに偉い人たちが朝廷に相談もせず、部下たちに勝手に名乗らせるようになっていく。さらにはそれが親から子へ代々受け継がれていったりしたんや。
ヨシロー
親から子へっていうのは、仮名と一緒なんやな。
マタスケ
そやね。ただ、受領名はある程度地位が高かったり、力を持っている人じゃないと名乗れなかったりするから、仮名よりランクが高い名乗りになる。
ヨシロー
今回登場した人物でいくと、「達定」や「定春」が諱、「新介」が幼名、「和泉守」と「伝兵衛」が受領名ってことか?
マタスケ
大体合ってる。ただ、「伝兵衛」は受領名じゃなく、「百官名」というまた別の呼び名になる。受領名を名乗るほどの身分じゃない者が、それっぽい名前を名乗りたくて、官途名をもじって作った名前のことやねん。
ヨシロー
えぇっ!?偽物のさらに偽物かいな?そこまでいくと、もう何でもありやな。
マタスケ
すべては本名で呼べないっていう習慣のせいやな。コロコロ名前が変わる人も多いし、誰も諱で呼ばんもんやから、記録に本名が残らずに名字だけ載ってる人物もおったりする。戸籍で本名がしっかり管理されてる現代では考えられへんことが色々あったんや。
ヨシロー
本名わからんやつまでいんの!?そんなん、記録の意味ないな。
マタスケ
そやな。諱だけにな。
ナレーション
お後がよろしいようで。
関西人だからって笑いのスキルが高いとは限りません・・・。
書いてて、自分でも笑いのセンスのなさにガックリくる筆者です。