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第1話 転生

<登場人物紹介> ※年齢等は本文中の内容です。

太田又介・・・4歳。今作の主人公。太田家の次男。後の太田牛一。大田勇介の転生後の姿。本人はまだ何が何だかよく分かっていない。


太田和泉守・・・31歳。太田家当主。架空の人物。新介、又介の父。尾張国春日井郡山田荘安食村の土豪。尾張国守護斯波義統に仕える。一見厳しそうな父親だが、息子たちには意外と甘い一面も。


太田新介・・・12歳。太田家長男。架空の人物。又介の兄。やんちゃな性格だが、弟のことが大好きで仕方がない。


安食りつ・・・13歳。太田家に仕える下女。架空の人物。安食村の名主の次女で、太田家の分家筋にあたる。いつも微笑みを絶やさず、ほんわかとした雰囲気を持ち、働き者。


 ……………………………………………………………


現代の大阪から戦国時代の尾張国へ大きく舞台が変わった第1話です。


しばらくは架空の展開が続きます。。。

 目が覚めると、見たこともない板張りの天井が視界に飛び込んできた。

 吉郎と飲んだ記憶を思い出し、久しぶりに酔いつぶれてしまったかと思わずため息をついた。

 多分、吉郎が近くに宿でもとってくれたのだろう。そう思いつつ、体を起こしてみて異変に気づく。


(体がすごく軽い・・・それに、なんか頭の位置がかなり低くなったような。)


 まだ酔ってんのかな、とぼんやり考える。

 それとも夢だろうか。


 ふと自分の頬に手を当ててみる。

 つるんとした感触で、否が応でも夢ではないことを実感させられる。

 ただ、いつもよりスベスベとした感覚に違和感を覚え、何となく自分の両手を見つめた。

 見覚えのない小さな手がそこにあった。


(夢じゃない!しかも、どういうわけか体が縮んでるし!)


 その瞬間、言いしれぬ恐怖に包まれる。

 何か手がかりになるものはないかと周囲を見渡す。


 殺風景な部屋だった。


 純和風の一室で、三方が障子に囲まれ、天井や壁、床は板張り。

 体が縮んだ影響で広く感じるが、実際は六畳くらいの広さだろう。

 室内にこれといった家具はなく、やたらと高い枕とペタンとしたせんべい布団のような上下の布団が二枚、それだけだった。

 障子を通して淡く差し込む日光が、かろうじて外とのつながりをもたらしてくれる。


(いったい何があった!?それに、ここはどこなんや!)


 突然、障子の外に人影が差した。


 つと障子が開かれ、たらいのようなものを持った若い女性が入ってくる。

 女性は簡素な和装で、頭には手ぬぐいのような布が巻かれている。

 たまに街で見かける着物姿とは違い、動きやすそうな装いだ。


「若様。お目覚めになられましたか。」


 若様、と女性は間違いなく自分に向かって言った。


(ひょっとしてドッキリみたいなもんやろか。しかし、ドッキリやと体が縮むのは無理があるしな。そもそも、庶民の俺にドッキリ仕掛ける意味もないやろうし。)


「お身を拭いますね。」


 そう言って、女性は俺の服を脱がせ、上半身を絞った布で手早く拭き始めた。

 何が何だか分からない俺は、その時初めて、自分も着物のような和装をしているのに気がついた。

 そのまま体を黙って拭かれていたが、ふと思いついて傍らのたらいに目を移してみた。

 水面には見たこともない顔をした、2,3歳くらいの幼児が映っている。


(これは・・・いよいよドッキリなんかと違うな。恐らくやけど・・・別の人間に「転生」してしまったんだろう・・・。)


 今までにいくつか転生物の歴史小説を読んでいたことが役に立った。

 俺が達した仮説は、普段ならばバカバカしいと笑い飛ばすところだ。

 だが、こうも現実を突きつけられると、否が応でも認めざるをえない。


 女性は俺の全身をくまなく拭き清めると、静かに部屋を出ていった。


(さて・・・。まずは自分が誰に生まれ変わり、今がいつの時代なのか。ここがいったいどこなのか。情報を集めないとな。)


 そんなことを考えていると、遠くからドタドタという足音が聞こえてきた。

 部屋の前で止まったと思う間もなく、障子が荒々しく開かれる。


「又介。目覚めたか。」


 入ってきた10歳くらいの子供が声をかけてくる。

 服装はやはり和装だが、頭の様子が目を引いた。

 頭頂部を剃り、前から見れば前髪だけが残っているような髪型である。

 よく見ると、後で側頭部や後頭部の髪を束ね、ちょんまげのようになっている。


 突然のことに反応できずにいると、


「何じゃ。兄が会いに来たというのに。仏頂面をしおって。」


 と少年はふくれっ面をした。


「こりゃ、新介。又介は病み上がりぞ。そう騒がしくするでない。」


 少年に続いて入ってきた中年の男が少年を叱りつけた。

 男も和装をし、後頭部にちょんまげが見える。

 新介と呼ばれた少年との違いは、前髪のある無しだけである。


「すみませぬ、父上。」


 新介がしゅんとした様子で頭を下げる。

 二人は親子のようである。

 会話の内容からすると、俺の父親と兄に当たるらしい。


「熱は下がったとのことだが、まだ顔色が良くないの。りつ、薬を飲ませてやってくれ。」


 父親らしき人が部屋の外に声をかけ、先ほどの女性が茶碗や粉が乗った器を載せた盆を持って入ってくる。

 どうやら、りつさんという女性らしい。会話の内容や服装で察するに、下働きの女性のようだ。


 りつさんは粉薬を器用に俺の口に含ませ、茶碗の白湯と一緒に飲ませてくれた。

 薬草をすりつぶしたものだろうか。漢方薬のような苦味に顔をしかめながら、おとなしく飲み込む。


「もうしばらく寝かせておこう。りつ、又介の世話を頼む。」


「かしこまりました。」


 りつさんを残し、父と兄は部屋を出ていった。俺はりつさんに言われるまま、布団に身を横たえた。


「おやすみなさいませ。」


 りつさんの柔らかい声に自然とまぶたを閉じる。まもなく、睡魔が襲ってきて、心地よい眠りに落ちていった。

大きく舞台が変わったと言いながら、今回も短めです。


成人後の牛一に転生すると色々と慣れるのに大変だろうとの親心(?)で、かぞえ4歳に転生させましたが・・・信長に仕えるようになるまであと20年以上あるんだよなぁ・・・。


引き続き、筆者の奮闘にエールを贈りつつ、先をお楽しみください。

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