記憶
私には記憶がない。
中学1年生の私には、生まれた病院や両親さえ知らない。
でも、こうやって施設で曲がりなりにも育った。
今はお姉さんとして小さい子と積み木などで遊んでいる。
「これどうする? 」「これ置くの、すごいねー」
などと遊んであげている。
「はーい、皆さんお昼ご飯の時間ですよ! 」
ここのお母さんでもある、奥山順子さん。
ハッキリしていて、でも子どもたちに愛情をたっぷり注ぐ人。
私もお母さんになったら、ああいう人になりたいな。
みんなで手を合わせてる。
赤ちゃんも負けじと真似する姿が可愛い。
みんな食事を終えると、また小さい子達が暴れまわる。
買い出しの手伝いでもしていこうか。
そう思い、相手してた達也に
「またね」
と手を振り玄関に行き、
「私も行きます」
と言って一緒に出る。
施設の職員の山田さん。
結構長く務めてる。
「ねぇ今日の晩ごはん何?」
と私が言っても、内緒なのか答えてくれない。
ふんっ。いいもん。買い出しで大抵予想はつくもん。
そっぽを向く私。
その時、ふと路地裏に入る山田さん。
スーパーとは逆方向なのにどうしたんだろう?
疑問に思いながらも、ついていく。
なんだろう。
嫌な気分になる。
路地裏を抜けると、大きな歩道があった。
まだ作りかけではあったが。
こんなところに出て山田さんはどこへ行くの?
不思議に思いながらもついていくことに。
数分もせず、大きな歩道の内側になぜだか標識が変な形に曲がっている。
その下には、きちんと包まれた花から雑草の花まで。
ここで何があったのだろう。
山田さんの顔がうつむいている。
必死に拝んでる。
私はいても立っても居られなくって、山田さんに問い詰めようとしたときだった。
「……良子ちゃん。辛かったね。ごめんね。」
と、ひしひしと心に染みるこれは何だろう。
その時、急に頭が痛くなった。
ひどい頭痛で膝をつく。
「山田さん、頭が痛っ……」
そう言って、私は目の前が真っ暗になり倒れ込んだ。
ーーーー
『ふふふ、今日は植木屋のおじさんからこんなにキャベツ頂いちゃった♪ みんな喜ぶぞ! 』
と言う同い年くらいの女の子。
真っ暗で顔が見えない。
後ろから2つの明かり。
女の子は、明かりの影になり余計見えなくなったが明かりの先はなんとなく見えた。
男の人がうつ伏せになってる。
寝ながら運転してるんだ!
女の子が危ない!
助けなきゃ!
『きゃーーーーーー!! 』
と言う甲高い悲鳴とともに、鈍い金属音。
あぁ、さっきの標識の柱だ。
挟まれたんだ。
可哀想に。
そう思った瞬間、突風が吹いたーーーー
葬式だった。
小さい子達まで泣きじゃくる光景。
痛々しい。
何故私には見れたんだろう?
そして、とんでもない光景を目にした!
「う、嘘!? だって今まで!! 」
私は、両手で口を覆いズルズルとしゃがみこんだ。
遺影写真が掲げられているその人物は……
そうあの同い年の女の子は『私』だったのだ。
確かに最近は声をかけても無視される、食事も取った覚えもない!?
でも、ありえない!
私はここに!?
足元を見る。
薄っすら消えている。
それを実感した際に、声に出ない声をあげ涙が止まらなかった。
どうして、どうして現実は残酷なの。
私……これからどうしたらーーーー
「……ちゃん、良子ちゃん、これ向こうでも食べてね。みんなあなたの事大好きなのは変わらないのよ」
山田さんの声に我に返る。
そして涙が止まらなかった。
だって、今日みんなと『食べた』と思ってた昼食置いてくれてるんだもん。
めげちゃだめだ!
涙を拭く。
……よし!
うん、思い出したよ、みんな。
私は里崎良子。
みーんな大好きで、みんなといることが大好きでいつもみんなのお姉さんになりたかったんだ。
でも、今日でお別れ。
知ってしまったら、まだまだ未練はあるけれどみんなに心配かけたくないしね。
みんなは元気でいてね。
ちゃーんとお姉ちゃん見てるからね。
みんなが幸せでありますようにって。
あぁ、身体が光を浴びてる。
もうそろそろ、時間みたい……なんにもできないお姉ちゃんでごめんね。
上から見てるからね。
私は光となり、空へと旅立った。




