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第16話 第一次世界大戦<2>

砲弾の消耗。

これは第一次世界大戦を語る上で外す事のできないキーワードである。

第一次世界大戦では今までのヨーロッパの戦争とは比べ物にならない規模で砲弾が使い果たされていった。


西部戦線で塹壕戦が始まり、終戦間際までそれが動かなかかったのは、お互い激しい銃撃と砲撃によって一進一退を繰り返していたせいであったし、東部戦線が流動的なものになったのはアルフレート-フォン-シュリーフェンの後任となった、ヘルムート-ヨハン-ルートヴィヒ-フォン-モルトケの迅速な兵力の東部への展開によってロシア軍の初撃が粉砕されたことも大きかったが一番の理由は、ロシアの鉄道輸送の貧弱さから、砲弾その他の補給物資が枯渇と補充を繰り返し、そのためにロシア軍が時には進撃を、時には撤退を選ばざるを得なかったからだ。


ドイツのクルップ、フランスのシュナイダーといった軍需企業は初めは次々と入る発注を大喜びで受けていたが、やがてその彼らですら顔を青くしはじめた。

要求された量が明らかに桁が間違っているとしか思えないからだった。そのためにこれまで独占的に弾薬生産を請け負ってきた企業のほか、それ以外の企業も砲弾製造に駆り出される事になる。


加えて、更に危機的だったのは砲弾、銃弾のいずれにも必須である火薬の原料、硝石だった。

硝石は主に南米原産であり、大戦勃発を受けて消費量が段違いに膨れ上がったことから価格が高騰していた。また、当然ヨーロッパへは船で送られるのだが、とくにドイツ商船はフランスによる通商破壊によって拿捕か、撃沈、それらを免れたものでも港に引きこもらざるを得なかった。


そのためドイツは未だ参戦していなかったイタリアを通しての買い付けや中立国であるアメリカ、イギリスの商船を雇い入れて、通商破壊から逃れようとしたのだが、このことはアメリカ、イギリス両国で政治的な問題を引き起こした。

アメリカでは大統領セオドア-ルーズベルトが戦争という不道徳な事態へアメリカを巻き込もうとする元凶として、当時対立していた企業合同(トラスト)への批判に積極的に利用し、更に国際平和への一歩として国際平和組織の創設構想を打ち出したが、後者はモンロー主義に反するとして敵対していた民主党のみならず、共和党内部からの反発も強いものがあった。

イギリスではフランスによる自国商船の撃沈について、自由貿易の阻害であるとして主に海運会社やそれをバックにした団体、議員などから抗議の声が上がっていたが、それに対してキャンベル=バナマン首相は本国のみならず自治領をも含めた一定程度の本国政府による規制実施を提案し、イギリスの国論は二分された。


この政府による貿易の統制という提案は、かつてキャンベル=バナマンを中心とした自由党の勝利に大きく寄与することとなった、保守党-自由統一党連立政権の分裂状態を招いたジョセフ-チェンバレンによる帝国特恵関税の提案を想起させるものであり、皮肉にも自由党と保守党の対立が立場を入れ替えて再現された。


第一次世界大戦は参戦国、非参戦国を問わず否応なしに変化をもたらしていったのだった。








第15話のタイトルを変更しました。


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