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まさひこのパンケーキビルディングとその住人。打砕く者と守る者。  作者: TOYBOX_MARAUDER
海賊の秘宝と青い海、俗物共の仁義なき戦い
98/109

戦いの熱気から宴の熱気へ

えー…そうなるだろうなって思ってたんですけど、有力者間のお話は長くなったので分割いたします。

それでね…いろいろ考えたけど今までの書き方ではなく、適度に改行を挟んで書くやり方にすることに決めました。


 燦然と輝く星空と、眩しいほどの青白い月。流れ星は絶え間なく夜空に流れて1つ1つがほんの一瞬、夜の黒に一筋の光の軌跡を残す。

 地上よりは空に近い場所には翼竜やペガサスのシルエットが行き交い、波は白い砂浜に打ち寄せて、心地の良い潮風が吹く。


 30階層。塩パグの憤怒。

 まさひこに呼び出されて集められたプレイヤー達の大多数が真っ先に向かう先。その世界に足を踏み入れた時、先ず踏む場所であろう島…この世界の原住民達が始まりの島と呼ぶ島。

 その島に敷かれた道。メインストリートが交差する、燦然と輝く夜の街の中心地にて、戦いを勝利で飾ったゴルドニアの音楽隊とその協力者たちの姿があった。


 …勝利。時には後腐れを、禍根を残してしまうであろう結果。

 それから生じた残滓。新たな火種ともなりかねないスチームパンクの女性物の衣類に身を包んだそれに対して、各々の反応は様々なものであった。

 リックが負い目を感じたように目と顔を逸らし、マロンが面倒な物でも見たように不愛想に瞳を細める中で…目を見開いていた花子は口を開く。


 「者共ッ! 曲者じゃあ! であえ! であえーい!」

 

 いつもと変わらない様子のシルバーカリスのすぐ横で、騒ぎ始める花子。

 後ろめたさ。報復される理由を痛いほど理解しているがゆえに、拳を構える。赤い宝石の指輪が無くなった、微かに煤で汚れる白い手を握りしめて。

 その彼女の騒ぎ声はこの島の中心を行き交う人々の視線をほんの少しの間集め…微かな笑い声と共に逸らされる。騒がしさを齎しただけだと思えたが、話のネタの足しにはなったようだった。


 「まあ、そうなるのも解る。確かにお前が危惧するところについて言いたいことはあるし、ムカついてはいるが…その…先ず…」


 行く手を阻む錆色のドレスの姿の少年、セラアハト。

 裏切り者への報復の正当なる権利はその手にあるだろうが、彼はそうしようという素振りは見せない。

 ただ、冷静な、毅然とした態度から…何処か言い辛そうに。目を伏せ、左右に目をやった後、再び花子の方へ視線を向けて口の前に片手を立てるだけ。


 「…僕と一緒に服を取りに行け」


 消え入りそうな、意図の解らぬ一言は、何か魂胆があるのではと花子の眉間に訝し気な皺を作らせ、リックの口をポカンと開けさせて首を傾げさせる。

 ――ただ、シルバーカリス。彼女だけはその要求に納得したような顔をした。その腹の内。狙い。目的を看破したように。

 けれど、シルバーカリスが口を開く前に花子が口を開く。腹の前で腕を組み、右腕の肘を左腕に乗せて立て、前髪を人差し指に絡めながら。


 「あら、落としたものに気が付けないほど塩パグ学園島の観光って過酷な物だったかしら?」


 「その読みは見当違いと言って置こう」


 預けた荷物の引換券を無くしたのであろうと先読みし、塩パグ学園島でのセラアハトの活躍。それを揶揄した花子の皮肉。

 心を深々とえぐり取る様な激烈なそれにセラアハトは反抗の意思宿る態度で否定。極まりが悪そうな目つきではあるが、出掛った強い言葉を飲み込むように。活躍と言う意味で引け目を感じているゆえか、いつもの冴えはなく。

 彼は直ぐに握りこぶしを口元に持っていき、仕切り直すかのように咳払いを1つする。


 「兎に角…服を取りに行くんだろう? 僕も連れていけ」


 「はぁ? なんでアンタなんか連れて行かなきゃいけないのよ。私は自分の寝首掻きかねない奴を傍に置いておくほど――」


 花子の読みを否定も肯定もしなく、詳しく話そうともせず。勢いで論を畳み同行しようとするセラアハトに対し、懸念や潜在的な敵でも扱うかのように、花子は冷たく突き放そうとする。

 一時的ではあったが、同じ目的を共有した味方だったものに対して用心深くとも非情とも取られそうな姿勢を見せるそんな彼女の耳元に…そっと、シルバーカリスが手を当て、唇を寄せた。


 「花ちゃん、セラアハトさんはですね――」


 「――何よ?」


 最初は耳に当たる吐息にこそばゆそうにしていた花子であったが、こそこそと話すシルバーカリスの言葉を聞いているうちに何か思い出したようで、頬を紅潮させていく。

 花子の性格を知るガリとチビが驚いたように目を真ん丸くして見る、固まりはしないまでも花子が大人しく、生意気では無くなる様子は…リックにとっても印象的で、且つ既視感のあるもの。

 似たような反応が見て取れた記憶の一部が連鎖的に、塩パグ学園島突入前の、服選びの時に見た光景が思い浮かぶ。


 「あぁ…アイビーさんが怖いのか」


 リックが確信を突く。遠慮も、配慮もなく。

 歪む。セラアハトの口元が。視線は逸らされ、苦々し気に。それはリックの言葉に対する返答。肯定であった。


 「リックさん、デリカシーが無いですよ」


 すかさず口を挟むのは最初に全てを見透かしたシルバーカリス。セラアハトの心と尊厳を守るために。

 けれど…鈍感なリックはすっとぼけた顔をして目を丸くするだけだった。自覚がないから…悪意がないからこそ質が悪い。


 「そう? 地雷踏んだ?」


 「えぇ。思いっきり。早押しクイズの回答ボタン叩きに行く感じで、ピンポイントに」


 「うーん…うっそぉ」


 誰にでも好印象。八方美人だからこその観察眼を備え、本質を見抜くシルバーカリス。届けと願う気持ちとセラアハトを思う気持ち。共に乗せた言葉は…リックへと伝わる。

 しかし、現実は非情だ。言葉の本意は伝わらない事も多々ある。リックは明らかに面白がった風にシルバーカリスへと近寄り、口元に手を添える。要らぬ好奇心。年頃の少年らしい悪戯心。悪意。そうとでも形容できそうなものが浮かぶ、悪戯っぽい笑みを浮かべて。


 「…やっぱ更衣室でなんかあったんかね?」


 リックは楽しそうだった。学校と言う場では友人の弱みを見つけたらとりあえず揶揄う質なのだろう。水を得た魚のように活き活きとしている。

 対するシルバーカリスは…辟易。呆れ。微かにだが混ざる無念。顔に浮かぶのはそんな感じの…諸行無常を感じる表情。非難と共に、彼女はヘラヘラするリックを見据えていた。


 「もうやめましょう。人の隠したがる秘密を暴いて振り回すような真似は」


 セラアハトを気遣い、こそこそと話すリックとシルバーカリスの様子を目の前に、何かを察してセラアハトは気を揉んだ風にしていたが…いつの間にかシルバーカリスとリックの傍で聞き耳を立てていたマロンが薄い胸の前で組んでいた両腕を解く。

 彼女に取って3人の会話は本当にどうでもいいものだったのだろう。呆れたように鼻から息を吐き出した。


 「セラアハトの坊やがアイビーのオカマちゃんにしゃぶられたとか搾り取られたとか、んなもんどうだっていーんだよ。行くぞ」


 「ちがっ…! 僕はそんなことされていないッ!」


 芸能事務所フルブロッサムの実質的な支配人マロン。

 人から見て貰うことが前提の仕事を生業にするゆえか、ファッション、化粧品。美に関するものを取り扱うビューティーシーカーの内情に詳しいのであろう。極限定された情報から、彼女は踊る。セラアハトの心の上、地雷の埋まる場所を踏み鳴らす高速タップダンスを。顔色は少しも変わらない。何があったか理解した風に遠慮なく言い切って、自分の都合を優先。動かなくなった集まりを先導するかのように進み始めるだけ。背後からセラアハトがムキになって否定の言葉を発していたが…どこ吹く風か、気にした様子もなく。


 それは、当然今この場にいる仲間たちの心に様々な感情を芽生えさせる。

 下ネタに耐性のない花子の顔を真っ赤にさせて固まらせ、滅茶苦茶をするマロンに対する、悪ノリにも似た笑みをリック、チビ、ガリに。

 配慮、努力が無に帰したシルバーカリスは諸行無常に乾いた微笑みを。

 ロングヘアの少女はやや興奮気味に話を詳しく聞きたげにさせた。

 ゴリは…なんだか仲間に混ざりたさそうにしだした。…きっと今までしょんぼりしていたのは、構って欲しくてしていた演技だったのかもしれない。


 「おいおいスゲーな。現役アイドルの言葉とは思えねえ。そんなファンの幻想ぶっ壊すような言動してっからコアなファンしかついてこねぇんじゃねーの?」


 「うるせえなぁ。ホイップクリームマロンちゃんがウケるような客層は柘榴とか、夢見させてやることが得意な連中にどうにかさせりゃいいんだよ。今のあたしの芸風は普段よりつかねー層にウケるし、フルブロッサム全体からすりゃその方がいーの」


 下ネタから火の付く完全な悪ノリ。気心知れる同性の友達と話すようなノリで、リックはマロンに間に受ければキツイ言葉を掛けるが、対する彼女は口角を上げ、微塵も効いた風もなく笑い飛ばす。その開き直りにも等しい物言いは、ついガリとチビを噴出させた。


 「あーっはっはっはっ! 俺、アイドルとか興味ないですけど、マロンさんみたいなズバズバ言う人好きですよ!」


 「おら見ろリック。この鳥ガラみてえな奴はこのマロンちゃんの良さに気が付いてんぞ。やっぱウケる奴にはウケるんだよ。なぁ?」


 「ええまぁ…と言うかっ…ちょっと…ちっ…近ッ…!」


 「あん? なに真っ赤になってんだ?」

 

 絡みやすい男友達の様なある種の、ささやかなカリスマ。親しみやすさ。フルブロッサムをまとめ上げ得るそれは、慣れ親しんだリックにも…余り異性と喋った時のなさそうなガリですら直ぐに打ち解けさせるものだったらしく、自然体に近い形をガリから引き出す。けれどマロンに首後ろに腕を置かれるまでの話。塩パグ学園島では百戦錬磨であったガリは途端に浮足立つ。年齢の近く、見た目は麗しいマロンを意識したために。

 

 いつの間にか中心人物が花子とシルバーカリスからマロンへと変わり、一行がガリを解放した彼女に先導される形で人の込み合う街を行く。他愛のなく、くだらないネタで適当に話し、笑いながら。


 そんな彼ら彼女らが桟橋の並ぶ陸と海の境界線へと到達した時…各々は今日、初めて見る30階層の変化を目の当たりにした。


 「あーあ、こりゃ凄いわ。フェリー運航してたギルドは船を貨物船に変えちゃった方がいいかもな」


 30階層の移動手段に革命を齎すであろう光景を目前にして、先ず口を開いたのはリック。周囲には波の音の他に…聞き慣れない唸り声と、何かが羽ばたく音の他に…蹄鉄を装着された蹄が地面を叩く独特な音。目の前には――翼竜と翼の生えた、サラブレッドのように四肢が長く、細くしなやかでスタイリッシュな体系のペガサスが複数並び、騎手と共に羽ばたくそれらの背に乗り、各々次々と星の流れる夜空へと旅立つ客の姿。それらが織りなす光景だった。


 「青空タクシー…パンケーキビルディング畜産の天下が満を持して来ましたか。しかしもっとマシなネーミング考え付かなかったんですかね」


 翼竜とペガサスが並ぶ場所の直ぐ傍にある、潮風に強くたなびくのぼり旗。急ごしらえ感満載なそれには青空タクシーと言う文字と共に、一度のフライトで200ゴールドと書かれている。チビはそれをやや丸い顎に手を当てながら、まじまじと眺め、思ったことを口にした。己の友人であるガリを隣におきながら。


 「ワンフライト200ゴールドかぁ。強気過ぎじゃない? フェリーだったら50ゴールドで済むのに。チビさんどう思います?」


 「移動が不自由だからこそできる強気の価格設定。お金払ってでも遊べる場所に急ぎたいって人は一定数居ると思いますし、一過性では終わらずに新たな足として30階層に根付いていくのでは」


 「おぉ~、なんかそれっぽく聞こえるぅ」

 

 そんなガリとチビが会話をする傍らで、騎手と思しきプレイヤー9人を集めたリックは小切手を取り出した。

 己の名の入ったそれを…得意げに。瞳を閉じ、口元に笑みを浮かべつつ。


 「青空タクシー9人分…モグモグカンパニーアイランドまでよろしくぅ!」


 人差し指と中指の先で挟まれた小切手を前へと腕と共に突き出すと同時に目を見開き、ビシッとポーズを決めながらリックは歯切れよく言い放った。今までにない輝かしい笑顔で。

 けれど、盛り上がってるのはリックと…その仲間たちだけ。

 たとえ仕事が楽しかろうと、今ここで客を待つ者たちはそうテンションの高いものではない。


 「ご利用あざます~。料金はこちらにおねがいしますぅ」


 リックに対応する背の低い騎手プレイヤーは、その顔に浮かべる笑みを微かに引き攣らせていた。ついて行けそうにないリックの様子に。

 だが、仕事だ。彼は内心リックを乗せる羽目にならない様に切実に祈りつつ、居並ぶペガサスの群れの中から箱を抱えて現れた亜麻色のチュニックワンピース姿の可もなく不可もない、どこかで見た時がある様な無難な容姿の典型的な女性NPCを手で指した。


 「1800ゴールドどぉん! 俺ってば太っ腹ぁ! フゥー!」


 「はは…テンション高いっすね…」


 「あたぼうよォ! 今夜は俺がッ…主人公なんだからな」

 

 今まで苦労して貯めて来た預金。なるべく使わない様に、何かあった時のために…節約に節約を重ねて一切の贅沢はせず、粗食をし、まさひこのパンケーキビルディングの修行僧と称されてもおかしくはないほどの生活スタイルの中で貯めた金。

 それを一夜でふっ飛ばそうと考え、今、金を支払ったことによって何かの糸が切れたのであろうリックは…若干テンションをおかしなものにして、女性NPCの持つ箱の上で小切手を振った。

 振られた小切手からは金貨がザラザラと音を立てて箱の中へと落ちて、小切手に記されていた額が28,000に書き換わるが…散財する心地よさだろうか。リックは何の惜しげも感じた風なく、内ポケットに小切手をしまった。


 当然…リックのその様子を気にして注目するのは彼を接客する騎手プレイヤーだけではない。セラアハト、チビ、ガリの主に男性陣。

 なお女性陣は見向きもせず、4人で固まって翼竜やペガサスについて喧々諤々に話し合っているだけ。

 けれど…その中に属さない人物であるゴリは…少し違った場所を見据えていた。

 目を…見開いて。


 「なっ…ナナちゃん…?」


 囁くゴリの視線の先には金貨の入った箱を今閉じようとする女性NPCの姿。

 その囁きはガリの戦慄の入り混じるドン引きしたような視線を。

 シルバーカリスの非情な…戦士の視線を地獄からの報復者に引き寄せる。


 だが…それはゴリの見る世界。認識で言えばの話だ。2人の目に映るは青空タクシーを運営するギルドに使われているのだろう、女性NPCの姿。顔は似てはいたが…決して今は亡きナナちゃんではありはしなかった。

 シルバーカリスは己の目で真実を確認すると、警戒を解いて面倒臭くなりそうなゴリを注視。

 ガリは…ゴリの方へと近寄り、肩を組んで耳元に手を当てた。


 「ゴリさん、マズいっすよ。変な事ばっかりしてたらこの集まりから追放されますよ」


 こそこそ声でガリは訴える。どうしようもない友人を想う半分、これから自分が楽しめるであろう輝かしい時間を、未来を守るために。

 けれど…感傷的になっているのだろう。ゴリは…キッとガリを睨んだ。


 「追放されたゴリラは実は最強でした。後から泣きついて来てもゴリさんは気にせず、ナナちゃんと幸せに無双します。ざまぁ!」


 「あー、めんどくさ。だーからナナちゃん死んだってば。もう塩パグ学園島も帰ってきません。何不貞腐れて開き直ってんだ。このままだと1人で晩飯食べる羽目になっちゃうよ? いいの!?」


 「やあだー!」


 今まで押さえていた喪失感。やり場のない怒りをゴリはここぞとばかりに爆発させる。半べそを掻き、感情を前面に不貞腐れる女が腐ったような、極めて面倒臭い様相を呈し、挙句の果てには大声で叫んで。

 ガリはゴリの迫真の叫びに耳を塞ぎ、その暑苦しい顔をする彼から離れる。面倒臭さに辟易しながらも、根気強く説得する姿勢を見せて。

 …なんだかんだ言っても、ガリにとってゴリは友達なのだろう。諦めるようなそぶりは微塵もない。


 無論、全員が全員そうと言う訳ではない。ゴリを気に掛けるのはほんの少数。ガリやチビぐらいの物で、今回この打ち上げを楽しむ女性陣達は早々とリックがチャーターしたペガサス、翼竜に騎手と共に乗っていく。

 先頭はマロン。

 続いて花子。

 その後ろにシルバーカリス。

 最後にロングヘアの少女。

 いつの間にか打ち解けた4人は仲良さげに話しながら離陸していく。青い月と星々で彩られ、明るく輝く星降る夜空へ向かって。

 その間、男性陣を気にした素振りを見せていたのはシルバーカリスぐらいだ。


 「スンマセン、そろそろ出発したいな~って思ってるんすけどぉ…?」


 待っている時間と言うのは長いものだ。待たせている人間が思うよりも。その時間はリックと話していた背の低い騎手に控えめな催促の言葉を述べさせる。


 「あっ…すいません。今乗るんで…」


 今夜は自分が主人公とまで言い、ノリノリだったリックであったが急に腰が低くなり、ペコペコと頭を下げて謝るとその背の低い騎手の後ろへと乗り、その腰に手を回す。

 

 「おい、行くぞ。こういうのは構うと付け上がるから。ホラ」


 にらみ合うガリとゴリに向かいリックは小さな声で言った後、彼と騎手を乗せたペガサスは羽ばたいて満点の星空へと飛び立ち、それに追随する形でセラアハトが乗った翼竜が飛び立つ。ゴリへ冷ややかな視線を残しながら。

 そこからは行動は早かった。早々にチビはペガサスに跨る騎手の後ろに乗り、ガリはゴリから顔を背け…爪先を翼竜の方へと向けた。


 「ゴリのバカッ! もう知らないッ!」


 「行こうよ、ガリ」


 ガリは吐き捨て、チビに促されて苦笑いを浮かべる騎手の後ろにつく形で翼竜の上に。

 ガリとチビを乗せたところで2人の翼竜とペガサスは羽ばたき、夜空へと向かっていく。


 「うわぁーん! ガリのバカぁー!」


 地上から聞こえてくるゴリの雄たけびは、地上から遠ざかるガリの背中へ。そして彼の堪忍袋の緒を深く切りつける。

 

 「はぁー…あんゴリラ野郎…キレそう。マジキレそう。本当に追放してやろっかな。どうやっても上がり目のない、放物線の頂点からのスタートみたいなキッツいキッツい現実見せつけてやろっかな」

 

 「悲しい男よ。誰よりも愛深きが故に。…まぁ、明日辺り謝ってくると思うんで昼飯奢らせましょう」


 楽しい楽しい打ち上げの始まりは、なんとも言えない形に始まった。

 女性陣達にとってはこれと言って問題のない滑り出しであったろうが、男性陣。彼らは心に懸念を胸に夜空を飛ぶ。今は亡き塩パグ学園島に心を取らわれた男の叫びを耳にして。


 けれどそれはほんの小さなもの。戦いに勝利した者たちの気持ちは2日間の忘れられない激闘。燦然と輝く刺激的な記憶に向く。酔いにも似た熱を胸の奥底に感じさせて。

 心地よい風と眼下に広がる穏やかな夜の海、頭上に広がる輝く星空。この世のものとは思えぬ青く美しい景色の中に。

 今回描かれた現象はアレですね。修学旅行のグループ行動なんかで見られる現象です。

イケてない女子の集まりがスクールカースト上位の男子集まりとグループを組んだとき、ほぼほぼシカトされ、常に主導権を握らせてもらえない。またはその逆パターン。今回の事例は後者に当たりますね。

 と言っても今回のお話の例では、女性陣側が男性陣側に一切興味がないだけであって、そこに負の感情が混ざらないので珍しい事例なのかもしれません。

 現実のそれは辛辣な物です。言うなれば嫌悪。明らかな不満…不服。諦念も雑ざるかもしれません。「あっ、俺or私の修学旅行終わったわ…」みたいなそんな負のオーラが見ただけで解る。カースト順位の高いほうの集まりから。

 こういうグループなのさ。グループ行動中に空中分解して足止め食らい、結局ほとんど観光できずに終わるグループはな。ふふふ…。

 お前はそれを見てソフトクリームでも頬張っていたのだろう? その哀れで無様な者どもを肴に…! 満面の笑みでッ!


 と言うことでですね、次のお話ですけども…ぶん今から一週間以内に上がると思います。

 今回のお話より文字数多いんで、読み応えあると思います。楽しみにしていてくださいな。

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