ベイブ、都会に向かう
動かすべき存在が増えると文章量も自然と増える物です。その結果が1.4万と言う文字数。
その点考えると絵の表現幅は優秀な気がする。…まぁ、私の文章は心情描写より情景描写ばかりだから絵にしても問題なさそうってな感じですが。
…そうだよ。文章としての強みを活かせていないんだ。私は。まぁ…クヨクヨ考える様なキャラより好きでな! さっぱりした主人公! 守るよりも奪いに行く…そんな感じの奴がな!
水平線に沈みかけるドラマチックな夕日。響く海鳥の声、打ち寄せる波の音。視界はどこまでも広く、遮る物は何もなく…果てしなく。橙色の世界が広がる。空も空も海面も…その色一色に。
優しく暖かな色に包まれる海の上。一直線に走る終わりの見えない長い高架橋。学園エリアと塩パグ学園島の玄関、検問所がある島とを繋ぐそこにて、マリグリンは必死にペダルを漕いでいた。橋へ逃げ去るを得ない状況になってしまったこと…少し前に犯してしまった過ちを酷く後悔しながら、薄ぼんやり光っていたブローチの光が消滅するのを見届けて。
彼の後方には、蜃気楼で揺らめく背に人を乗せた四足歩行の何か。それは力強く橙色に染まるアスファルトを蹴り、マリグリンとの距離を縮め、蜃気楼の揺らめきを突破。姿をだんだんと鮮明な物としていく。弓から放たれた矢のように、失速することなく――真直ぐ、風を切り裂いて。
「ええいっ! しつこいな!」
顔を横に向け、迫りくる揺らめく影を一瞥したマリグリンは唸る。眉間に深い皺を寄せて。橋に逃げたことによって生まれた懸念が…形として現れた光景に。
けれど悪い事ばかりではない。2匹の豚のはるか後方には塩パグ学園島治安維持部隊のバイク部隊と、風紀委員が運転しているのであろう複数の軽トラックとで成る混成部隊…橋のサイドに掛かるレールには物凄いスピードで迫るモノレールの姿もある。マリグリンは追い詰められながらも笑みを浮かべる。まだ、勝利の女神は自分を見限ったのではないと…自分の強運は尽きていないと感じて。
2匹の豚はマリグリンに追いつく。その背に散々自転車で自分を追いかけまわしたシルバーカリスと…忘れもしない、忌々しい夜。大金を失うことになったテキサスホールデムのテーブルに居た黒頭巾の少女。花子を乗せて。彼女は目じりを攻撃的に吊り上げ、マリグリンはまさかの黒頭巾との再開に驚いたように目を見開き…互いに視線を交差させた。
花子はシルバーカリスにハンドサインを送り、2匹の豚でマリグリンを左右から挟む様な形となる。けれどマリグリンはどこかまだ余裕がある様な風だ。どうせ殺せはしない。仮に今捕らえたとしても後方のバイク部隊が追い付く。そんな考え、腹の底が窺えるかのような意地の悪い微笑を浮かべて。
「あぁ、いつ見てもムカつく顔してるわ。アンタ。さっさと降伏して5万ゴールドになりなさいよ」
「ハッ、いやだね。しかし見ないうちに落ちぶれたもんだ。黒頭巾。掛け金100万ゴールドからのハイリミットテーブルで遊んでいたお前が、5万ゴールドぽっちの小銭を拾うためにこんなヤバいヤマに首突っ込むなんてな! まったくいい気味だよ!」
花子の挨拶がてらの降伏勧告。それは、今の状況が己の有利に働いていることを理解しているマリグリンの心を折るには至らない。それどころか彼は煽ってくる始末だ。憎たらしさを感じずには居られない純粋な、真心篭った嘲笑に花子の目じりと片脚は上がった。
「言わせておけばッ…このッ…転べッ…! このッ…!」
「うッ…おいっ…あっ、やめッ…! 蹴るなーッ! 俺が死んだら5万ゴールドがパーだぞ! 冷静になれーッ!」
黒革の編み上げブーツの靴底で花子はマリグリンの太ももを押すように、何度も何度も執拗に蹴り、マリグリンは憎たらしい表情を焦ったようなものに一変させ、一生懸命転ばぬよう自転車のハンドルを操作。己の命を繋ぐため、花子の理性へと呼びかける。情けなく喚きつつ、己の命の価値を盾として。
その最中、シルバーカリスがマリグリンが操作する自転車のハンドルを片手で掴んだ。そうされたことによってマリグリンの自転車は安定。マリグリンの表情が少しばかり安心したものとなる。
「花ちゃん。今はプラクティカルとベイブの二馬力ならぬ二豚力で、なるべく距離を稼がないと。後ろのバイク部隊とやり合ってる間にゴルドニアファミリアの砲撃に巻き込まれたらたまった物じゃありませんし」
シルバーカリスは橋の下に広がる海。はるか後方、商店街の島の側面から現れるゴルドニアファミリアの船団を一瞥後、花子へと視線を合わせた。
「それもそうね。情けないこいつの顔見て気が済んだし、このぐらいにしてあげるわ」
花子はマリグリンのプライドを逆なでするような言葉選びで言って、蹴るのを止め、シルバーカリスと同じようにマリグリンが乗る自転車のハンドルに手を置く。彼が花子たちの行動の意味に気が付いた時はすでに遅く、花子とシルバーカリスは豚の腹を踵で軽く蹴り、加速させた。
「…これで勝ったと思うなよーっ…黒頭巾」
「あら勇ましい。そんな感じでオールインしてたわよね。アンタ。今ここで勝負に出て負けたらアスファルトで摺り下される羽目になる事、理解しておくと良いわよ」
「お前も最後のゲームでリバー見るまではそんな顔をしていたぞ」
「ハンッ、だからなんだってのよ。最後に笑うのはこの私よ」
あの忌々しくも楽しかったハイリミットテーブルでのテキサスホールデム。いろんな意味で白熱した夜。あの晩、一番最初にオールインをしたマリグリン。その時の雰囲気とまるっきり同じような、ある種の覚悟が伝わる様な彼の表情、様子を見、花子は忠告。何か言い返す彼に適当に受け答えしながら、シルバーカリスの方へと視線をやったが、階層転移の本を手にする彼女は、顔を横に振った。
「そう都合よくは行かない…か…。まあいいわ。ここで終わったら退屈するでしょうし」
「さすが花ちゃん。言うことが違いますね。頼もしいです」
2匹の豚に挟まれ、牽引される自転車。背後からは砲撃音。砲弾が降り注ぐ先には軽トラックとバイクの混成部隊。それは砲弾の雨の中を切り抜け、こちらに追いつかんとする。数を着々と減らし、夥しい数の残骸を橋の上に残しながらも、速度を上げて。燦々と照り付ける夕焼けの光を浴びながら、必死に。自分たちの使命を全うすべく。
花子達と治安維持部隊との間は縮まってくる。前者の目の前には次第に急になる下り坂。その先には学園エリアで見ることの出来た島より遥かに大きな島が1つ。――塩パグ学園島の玄関。検問所のある島が眼下に広がる。検問所の先の桟橋には船は1隻もおらず、街のあちらこちらで煙が上がっている。軽トラックを分捕った時に残っていた秩序は、目に見えて崩壊し始めていた。
――だが、そんなとき…突如異変が起きる。花子たちが乗る…豚。プラクティカルとベイブに異変が。
「プッ…ぷぎぃ…」
「ぷごごっ…フゴッ」
急な坂道を目の前に、プラクティカルとベイブ…2匹のスピードが落ちる。――息遣いは確かに荒い。だが、走り疲れた感じでもない。いうなれば恐怖。躊躇い。2匹の豚からはそれらが感じられた。
「どうしたんだッ…ベイブッ、なぜ動かんッ…! ここまで来てとんかつになる運命を受け入れるというのかッ…!?」
「…熊は下り坂で遅くなるなんて話を聞きますが…豚も…?」
花子は狼狽え…己の乗る豚、ベイブの脇腹を2度ほど踵で蹴り、シルバーカリスは冷静に豚の身体的な構造から今の状況を分析。動かなくなった仲間たちを置き去りに…残骸を乗り越えて迫りくるバイク部隊を背にして。だが動かない。豚、ベイブとプラクティカルは。次第にその足を止めていく。そんなまさかの事態。焦りから来る精神的な隙。それを傍らで見ていたマリグリンの瞳がギラリと輝く。
「――ふぅんっ!」
不意に――マリグリンが振り下ろす左右の拳。それは、花子とシルバーカリスの小指へと目掛けて向かっていき――
「ぐあッ! ゆっ…指がァッ!」
「小指がッ!」
花子とシルバーカリス。2人の小指を強く叩く。そのダメージ、痛みは彼女たちの力を一瞬弱め、その一瞬の隙をついてマリグリンは2人の手を振り払った。
「ふははははー! お前たちはここで脱落だな! へーいへーい! ここまでおいでー! バーカバーカ! 勝ったのはこの俺だったなぁ!」
急な坂を自転車は下っていく。花子たちとの勝負…強いて言えばゴルドニアの音楽隊との勝負を勝ちで終えたと認識し、幼稚にすら思える言葉を並べ、これでもかと勝ち誇るマリグリンを乗せて。橙色に染まり、黒い煙が無数に立ち上る四角い建物が並ぶ島の方へと。
「クソッ…! 信じられない…こんなにかわいい女の子に手を上げるなんて!」
「ソレ自分で言っちゃうところが最高に花ちゃんらしいですね。ホント…じゃなくて! そんなこと言ってる場合じゃありませんよ! 見失ったらお終いです!」
「うっさい! 解ってんのよそんなこと!」
失速し、尻を上方向に突き出しながらゆったりとした速度で坂を降り始める豚の上で感じかける敗北の味。坂の上を颯爽と走り去るマリグリンの背中を見る花子とシルバーカリスの心にじんわりと広がりゆく。けれどリックやセラアハトよりもずっと負けず嫌いで往生際の悪い花子は、何か手がないか周囲を見回す。敗北を…拒絶するかのように。そして後方を振り返った時、花子は1つのものに目を止めた。橋のサイドにある線路。レール。その下を走るモノレールに。その花子の隣ではシルバーカリスがキョロキョロしている。
「なにか手は……あれです! 花ちゃん、バイク分捕りましょう!」
「切り札があると言っても袋叩きにされる危険があるわ。それだけ数と言うのは強力な物なの。それに接触までに時間もかかり過ぎる。だからモノレールを使うわ」
「えっ…どうやって…!?」
シルバーカリスは自分たちの後方、そろそろこちらに追いつくであろうバイクと軽トラックの混成部隊の方を振り返って提案。しかし花子はその提案に乗ることなく、今すれ違いかけるモノレールへと指差す。その腕に赤い稲妻を纏わせ、花子が何を考えているか解らないシルバーカリスを差し置き、身構え――
「奥の手!」
掛け声と共にモノレールの方へと飛んだ。今居た高架橋とモノレールの走るレールの間は広く、下には目も眩むような高低差を経ての青い海。けれど、花子の身体はそこへと落ちていくことなく、片手から伸びる赤い稲妻はモノレールの側面と花子を繋ぎ、引き寄せていく。高架橋へ伸びる対の手に、2匹の豚とシルバーカリスを赤い稲妻で繋いで。
――花子とシルバーカリス、ベイブとプラクティカルは猛スピードでレールを走るモノレールの側面、窓枠へと張りついた。魔法の雷の力で。その力を操る花子はモノレールの窓に膝立つ形になり、それ以外は眼下に広がる光景に目を見開き、恐怖によって釘付ける。
「あわわわわ…!」
「ぷぎぎーっ!」
「ぶっぎぃー!」
モノレールの側面に張り付くシルバーカリスは眼下に広がる、遠目に見える橙色に染まる水面へ目をやって歯を浮かせ、同じ理由でベイブとプラクティカルは足をジタバタさせながら大絶叫。花子だけが落ち着いた様子で飛び降りるタイミングを見計らうかのように、勝利を確信して振り返りすらしないマリグリンが自転車で走る高架橋へと視線を落とす。モノレールの走る線路は真直ぐだが、マリグリンが走る高架橋は下り坂。2つの道は縦方向に別れ行く。
花子たちのアクロバティックな乗車方法、乗車位置にモノレールの中にいる風紀委員は驚いた様子でざわついていたが、すぐに大人しくなった。真剣な眼差し、神妙な表情になって。急に静かになったモノレールの中を花子が覗いてみれば、風で強くはためくスカート。その方に視線を、後方から釘付けにする風紀委員達の姿が在った。しかし、静かなのはほんの一瞬で――
「ッ…こっ…これはッ…!」
「どうした! 報告しろッ! 何を見た!」
「間違いないッ…黒ですッ! しかもガーターベルトも確認できるであります!」
「ええい、退けいっ! ズルいぞ! 貴様らばかりッ! むっ! 良く見れば…1階層であった幻のライブに出てた子では!?」
騒々しくなるモノレールの中にいる風紀委員達は花子が張りつくやや後方の窓に頬を張り付け…そこから花子のスカートの中を覗き込んで燥いでいる。その彼らの声は、強い風で聞き取り辛くはあるが花子の耳にも届き、その顔を真っ赤にさせて歯を食いしばらせ、目じりと眉尻を強く上がらせた。
「こいつらッ…! ホントバカね! 男って奴は皆こうなのかしら! 品性を疑うわ! 自分たちのホームが壊滅の危機だっていうのに何でこんな余裕あんのよ!」
「おぉ、諸君! 括目せよ! あの恥じらう様子を! この初々しさは紛い物…作り物などではないぞ! 決して!」
「くッ…うーっ…死ねッ!」
「ありがとうございますッ!」
花子は片手をモノレールに付けたまま、対の手で黒と紫のドレスのスカートに手をやる。羞恥に歯を食いしばり、口元から覗かせながら不機嫌そうに眉間に皺を寄せ、彼らの顔がその向こうに見える窓を靴底で蹴って。その恥じらいながらの攻撃的な反応は、彼らにとっては良い物らしく、モノレールの中から歓声が沸き上がる。
「花ちゃん、今は堪えましょう。それよりここからどうするつもりですか? 停車駅からマリグリンさんを追うとなると探すの苦労しそうですよね…ベイブとプラクティカルの鼻を当てにしているとか?」
「解ってる…解ってるわよ。その点は心配しないで。考えてあるわ…。でなければモノレールに引っ付こうなんて思わなかったもの」
モノレールの行く先。線路は内陸にある、背の高い建物へと延びている。遥か下方には海面。その手前にはマリグリンが走る、低く成り行く高架橋。まだ縦方向にしか距離がない状況下…花子はモノレールの側面を蹴った。身体に纏う赤い稲妻を意のままに操作し、シルバーカリスと豚2匹を引き連れ、高架橋と検問所前の広場を繋ぐ地点へと向かって落ちて行きながら。
「ぷぎーっ!」
「ぎゅっ…ギュイーン!」
「信じてますよー! 花ちゃーん!」
かなりの高さからのダイブ。身体が落ちていく嫌な浮遊感にベイブとプラクティカルは悲痛な悲鳴を上げ、シルバーカリスはその両目を強く瞑って叫ぶ。2人と2匹が離れたモノレールからは、花子達へ向けて驚いたような視線が送られ――
その視線の先、アスファルトに接触する直前、眩いばかりの赤い稲妻がアスファルトや周辺のものに伸び、2人と2匹の身体は地面接触前に反発する磁石のように、ふわりと持ち上がった後――ベイブとプラクティカルはドテンと音を立てて横転し、シルバーカリスは臀部からアスファルトに接触…花子は豪快なハンドスプリングを決めて着地した。
「――雷魔法ってこんなことも出来るんですね…」
「私の実力よ。さぁ、マリグリンを追うわよ!」
「ふふっ、頼りにしてますよ」
アスファルトの上に着地した花子は流し目でシルバーカリスにウインクしながら、肩の高さまで上げた己の二の腕を対の手で軽く叩いて得意げに笑い、ベイブに。シルバーカリスはそんなお調子者な一面を見せる花子に柔らかい笑みを返しながら、プラクティカルへと再度跨り、各々脇腹を軽く蹴った。
島の内陸からは爆発音や、武器と武器とを打ち合わせるような音が聞こえていて、検問所前の広場には、混乱した様子の右往左往する風紀委員達の姿。豚は進む。その方へと、力強くアスファルトの地面を蹴って。その足音。人ならざるシルエット。存在感は…当然風紀委員達の注意を引き、彼らにも行動を起こさせた。
マリグリンの背が遠目に見える、都市エリアへ続く高架橋。その前に横並びで手を繋ぎ…行く手を阻むかのように立ちふさがる風紀委員達。神妙な顔をするそれらは、静かに…一斉に口を開いた。
「バーラムユー、バーラムユー、毛皮をッ――グフゥ!」
「バーラム――ぐはぁ!」
何か呪文の様な物を唱え始める彼らを、ベイブとプラクティカルは跳ね飛ばす。無慈悲に。力強く。
ボロ雑巾の如く石畳の上に叩きつけられたそれらの方を、通り過ぎ様に花子は振り返り目じりに捉えた。眉を寄せ、訝し気な…変な物でも見るかのような顔をして。
「…何? なんか唱えてた? 呪文? 怖ッ…」
花子は若干引き気味に呟く。未知なる物への恐怖を感じ、口を小さく開けて。けれどそれは彼女だけ。隣を並走するプラクティカルの上に居るシルバーカリスは、何か思い当たる物でもあったかのような顔をしている。
「たしか現実にありませんでしたっけ? 詠唱術とかいうの。この世界で使えるか知りませんけど」
どことなく確信めいた、自信の伺える笑みを浮かべるシルバーカリス。物知りな花子は詠唱術と言う物がどういう物か知っているがためにジト目になるが、一方で先ほどの風紀委員達の奇行の理由が理解できたような気がした。
「魔法として確認されているのは魔術と紋章術だけよ。詠唱術なんて大昔に生まれたプロパガンダ。ガセネタよ。今どき胡散臭い雑誌ぐらいしか取り上げないわ。アトランティスがどうとかムー大陸がどうとか言ってるような」
「なるほどー…でも、あの人たち本気っぽかったですね」
「さすがは人材豊富な塩パグ学園島と言ったところかしら。詠唱術を信じる半分妖精みたいなスピリチュアルサイドの住人まで住み着いているなんてね…」
疾走する豚を躱すべく、戸惑う人々は道を開ける。モーセを目の前にした海の如く。その一直線に開かれる道を花子を乗せたベイブが、シルバーカリスを乗せたプラクティカルが行く。都市エリアへと続く高架橋へ。マリグリンはもう上り坂を上り切ったらしく姿は見えない。だが、すぐに口を利ける距離まで追い詰められるだろう。今度は…すぐ後ろに迫ってきている軽トラックとバイクの混成部隊。塩パグ学園島の守護者たちを交えてになるだろうが。
夕日とその色に煌めく大海原。際限なく大きくなる騒ぎ。都市エリアの方角に見える、複数の不審な飛行船。ハードボイルドな雰囲気を醸す橙色の空の下、混沌を極める塩パグ学園島。秩序を破壊する混沌の一部として、豚を操り花子とシルバーカリスは進んで行く。海の上に連なる橙色に染め上げられた高架橋の上を。金銭と言う非常にわかりやすい目的のために。
*
高架橋からほんの少し離れたところに通る、線路とレール。交通止めと言う話はどこへやら。いつの間にか往来は復活し、昨日よりも活発に電車やモノレールが行き交う。耳には上空から聞こえる微かなエンジン音、時折遠くから響く爆発音。塩パグ学園島にもたらされる急速な変化は目でも耳でも感じ取れ、もはやその現場に居る者たち全てが認知するほどであった。
一方、高架橋の上では…この騒ぎに便乗して好き勝手する、反骨心溢れる一部の塩パグ学園島のユーザーたちや都市エリアから避難するプレイヤー達が、バイクや車を乗り回し、今さっきまで何らかの目的がある者しか存在しなかった高架橋の上に、いつもの様な賑やかさを齎していた。
花子たちがそれらを瞳に映したのは、高架橋の上り坂を上がり切ったころだった。トロピカルな色とりどりの花を咲かす灌木が植えられた、草木の生い茂る中央分離帯を隔てた対向車線。高架橋サイドにあるレールと線路。橙色に霞むムーディーな都市エリアの摩天楼たちをバックに、続々とやってくる乗り物たちを。――そのころには何か問題があったのか、ゴルドニアファミリアの船列は高架橋の下に見ることはできなかった。
穏やかな夕日の下、プラクティカルの上に居るシルバーカリスは目を細めて凝らし、はるか遠くに見える都市エリア。霞む摩天楼をバックに映る、飛行船のシルエットを注視していた。
「…なんか都市エリアの方爆発してません? 飛行船がなんか撃ってるっぽいんですけど」
「塩パグ学園島の戦力は都市エリアに集中してるって事ね。投降を呼びかければ折れそうなものだけど、そうしないってことは…新兵器のテストか…戦闘訓練を目的にしているのかもしれないわ。どうでもいいけど」
飛行船のシルエット。その下部に取り付けられた小さな船室の当たりから時折見える煙と炎の息吹。シルバーカリスと花子はプラクティカルとベイブの上でそれらを見、話していると彼女たちの後方、遥か上空から結構早いスピードで飛ぶ複数の大型の複葉機から成る、飛行隊が雲を切り裂き現れた。
剣の世界と言う体の世界、まさひこのパンケーキビルディング。その謳い文句から大きく乖離した光景に花子もシルバーカリスも。自然と視線を引き付けられる。…今更驚きはしないが。
「…モグモグカンパニーアイランドの上空を飛んでいるのを何度か見た時はあったけれど…うーん。よくよく考えてみればあんなものどうやって作ったのかしら。明らかに建築スキルだとか鍛冶スキルに対応する代物には見えないのよね」
「モグモグカンパニーの社長さんが花ちゃんの使い魔なんですよね? 聞いてみたらどうですか?」
「うーん…快く教えてくれるでしょうけど…そうしたら負けな気がするの。こう…ズルしているみたいで。強力な身内の力に頼るみたいな」
「相変わらず信念とプライドの塊と言いますか…意地っ張りですね。僕もその気持ち解りますけど」
束の間の静かな、穏やかな時間の中で花子とシルバーカリスは言葉を交わし、視線を正面の高架橋の上に見えるマリグリンの背に向けた。
こちらに気が付いた様子のない彼は、坂を上って疲れた様子であったが…自分を保護してくれるであろう塩パグ学園島の関係者を探すようなそぶりもなく、ただ直向きに…進んでいた。まるで、何か決められた目的地があるかのように。けれど落ち着いた様子も一瞬。背後から迫るバイクや軽トラックのエンジン音を耳にしたマリグリンは振り返り、2匹の豚とそれに乗る2人組を見た時、酷く驚いたように目を見開いて、自転車のペダルを一生懸命漕ぎ始めた。
「あら、気が付いたわよ。アイツ。どうしてやろうかしら」
「凄い顔してましたね」
ニヤ付く花子、淡々と呟くシルバーカリス。後者の言葉が途切れた時…花子の視界の前方上端に映るオレンジ色の空にて変化があった。霞むレベルの高さを飛んでいた大きな複葉機の飛行隊が落とす…黒く、縦に長い何かと横に長い何か。白いパラシュートを広げて降りてくるそれは、今花子たちの居る高架橋、車線に沿い、一定の間隔を開けて落ちてくる。
「空挺部隊?…あっ…」
何か口走りかけた花子は気が付く。パラシュート降下してくる縦に長い何かが人であることに。その頭部に夕日の優しい日差しが当たることによって反射する、重厚な金属の鈍い輝きと目の部分から来るガラス由来の鋭い反射光は…忘れもしない。鋼血騎士団の支部を強襲した正体不明の部隊員が身に付けていた鉄仮面を彷彿とさせる物だった。
「わぁ、なんか圧倒的にヤバそうな雰囲気の人達が空から…敵ですかね?」
「私の読みだとアレはモグモグカンパニーの関係者…つまり私たちの目的とは競合しない筈。でも、敵対するようだったら逃げるわよ。アレと戦うのは自殺行為だもの」
「? 知り合いですか?」
「PTの支部にカチコミ掛けた時に助けてくれたのがアレ。戦闘能力はまさひこのパンケーキビルディングトップクラスと見て間違いないわ」
シルバーカリスは花子からの言葉を聞き、マリグリンの背中を注視する彼女の横顔を見つめつつ頷いて、再び視線を空へ。より近くに見えるようになってくるが、まだシルエットに域を出ないモーニングスターとマインゴーシュを腰に取り付けた鉄仮面のそれと、彼らと共に投下された横長の物体。前輪以外履帯になっているバイクの様な乗り物を見上げた。
「…バイクですかね?」
「ケッテンクラートね。第二次世界大戦でナチスドイツが降下猟兵のために開発した乗り物よ。塩パグ学園島に反旗を翻す技能実習生が多くいる自然エリアでも使えるように、あんなものをチョイスしたんでしょうね」
「へぇ~…花ちゃんは本当に物知りですね」
「映画で見たの。…さっ、そろそろのんびりしてられなくなるわ。今度こそ捕まえるわよ」
「えぇ、次こそは逃がしませんとも!」
すぐ後ろに迫る軽トラックとバイクのエンジン音。あと少しで追いつくマリグリンの背中。花子はベイブを、シルバーカリスはプラクティカルの様子を一瞥。まだ彼らが走れると判断すると花子は右手でレイピアを抜き、左手でスカートを腿まで捲って投げナイフを1本持ち、シルバーカリスは腰に取り付けられた鞘から、もう何人もの風紀委員達を斬り捨てた、手に馴染むサーベルを抜き放った。
「そこの豚に乗っている2人組ー! 止まりなさーい! その豚を持ち逃げされたらとんかつ屋の店主の吉沢さんが破産してしまう! 良心があるなら今すぐ豚を解放しなさーい!」
間も無く花子達と並走し始めるバイク部隊。その中のノッポな体格の風紀委員がメガホンを片手に呼びかけ、大音量で頭にキンキン響く声に花子とシルバーカリスは目を思いっきり閉じ、思わず手を耳元に持っていき…その後で花子の攻撃的な目が、そのノッポの風紀委員の方へと向いた。まるで刺すかのように。
「うっさい! こんな至近距離でメガホンなんて使って! ベイブとプラクティカルがパニックになってアンタたちに轢かれてもおかしくなかったわ。ほら、謝んなさいよ! 謝るの! ベイブとプラクティカルに!」
塩パグ学園島の法を守るべく働く風紀委員への、理不尽にも思える謎の花子の謝罪要求。一抹の迷いも、罪悪感もない毅然とした発言は、もともと自己肯定感が低いのであろう風紀委員の男を怯ませ、その視線を泳がせつつ、メガホンを下させた。――一方、ダシに使われるベイブとプラクティカルは涼しい顔だ。
「えぇ…おっ、俺が悪いんすか? でもぉ…豚盗んだ貴女達がぁ…俺が悪い…の?」
「それとこれとは別。今吉沢さんの資産であるベイブとプラクティカルの命を危険に晒した…。論点はそこなの。こんな近くで大音量で呼びかけられたら…豚の耳にどれ程のダメージが行くか解る?」
しどろもどろに言いながら、花子の物言いに流されそうになる風紀委員は他のバイク部隊の仲間たちに助けを求めるような視線を送るが、道理などないところから雰囲気だけで説教っぽく語り始める花子へと視線は自然と戻る。明らかに花子のペースに呑まれた風に。だが、そんなバカバカしい雰囲気も長くは続かなかった。
花子たちに並びそうなマリグリンの向こう側。高架橋の上に降り立った鉄仮面の男たちがケッテンクラートに乗り込み、花子たちの方へと進路を取り――向かってきた。右手にかっこよさなど微塵もない、いわば殺意の塊の様な…物々しいデザインのモーニングスターを持ち、逆光で暗く見える鉄仮面にある、目の辺りに嵌められたガラスのレンズだけを光らせて。
「花ちゃん…?」
「大丈夫。私の今回の読みは外れないわ」
シルバーカリスは指示を仰ぐように花子の横顔を見、呼びかけるが、花子は視線を前へと向けて囁くだけ。不思議と安心感を感じるような、確かな自信が窺える様子で。一方で、塩パグ学園島の風紀委員たちはそれどころではなかった。
「隊長! なんかバイクっぽい乗り物に乗った鉄仮面の奴らがこっち向かってきます!」
「えぇッ…あッ…敵かな? 敵だと思う?」
花子と話していたノッポの男はバイク部隊の隊長だったらしいが、塩パグ学園島全体を取り巻く前代未聞の非常事態に完全にテンパり、委縮してしまっているようで、もはや隊長としての体を為せていない。中肉中背の毒にも薬にもならないような顔、姿の部下の指示を仰ぐ声にすらまともに応えられぬほどに。その有様は…正に借りて来た猫だった。
「俺に聞かんといてください! ガッチガチに防具固めてる時点で不法入国者! となれば我々が執るべき行動は1つでしょうが!」
「執るべき行動って…?」
「いつも威張ってるくせに非常事態になるとポンコツっすね! ああもうしょうがないなぁ! 全隊に告ぐ! 軽トラ部隊は吉沢さんの豚2匹の奪還と豚泥棒の確保! バイク部隊は不法入国者の制圧に掛かる! さぁ、行くぞぉッ!」
キレる部下。委縮し続ける隊長。前者は勇ましい物で、隊長代行として全体にメガホンを使って指示を出し、他バイク部隊の隊員を引き連れて花子やシルバーカリス、マリグリンを追い抜いて向かってくる数える程度の鉄仮面の男たちの方へと、勇ましく向かっていく。その手に各々武器を持ち、最後尾に隊長を連れて。
バイク部隊が通り過ぎた後、周囲は見渡しやすくなり、花子たちはマリグリンに追いついた。彼はもう自転車を漕ぎ疲れたようで、何か言ったりすることは無く、滝の様な汗をかきながら呼吸を荒くし、具合の悪そうな顔をして己を見る花子に視線を送り返してくるだけ。その気の毒にすら思える、満身創痍なマリグリンの在り様は…花子の顔を笑顔にした。加虐心と悪意に満ちた…それはもう良い笑顔に。
「ククッ…ふふふっ…あっはっはっはっ! あっはっはっはっはっ!」
息を切らして必死に自転車を漕ぐマリグリンを…花子は指を指して笑う。混じりけのない、純度100パーセントの嘲笑で。特に何か言うことは無く、ただ苦しむマリグリンの様子を見て。自分たちを捕らえんと背後に迫る、複数の軽トラックなどまるでいないかのように。傍からそれを見ているシルバーカリスの顔に浮かぶは…混じりけのない苦笑い。自分の仲間、友である花子らしい一面への。
そんな己を追ってきた2人組の様子…特に己を笑いものにする花子をマリグリンは強く睨んだ。敵対するものとしての矜持だろうか。そんな意地の様な物が見え隠れする表情で。
「…うるざいッ…笑うなッ…!」
「プークスクスクス、はっはっはっはっ!」
「わっ…笑うなッ!」
変に言葉で伝えるよりもダイレクトに伝わる悪意は、満身創痍のマリグリンに伝わり、意地から彼の口を開かせたが、悔し気に歪む口から出る言葉は、ただ花子を楽しませるだけで何の意味もなかった。
しかし、花子が笑っていられたのも一瞬。彼女の乗る豚、ベイブの尻目掛けてスピードを上げる軽トラックが1台。余裕をこれでもかと振り撒き、ただマリグリンを煽ることを楽しむ花子を背に乗せるベイブは、己の背後に迫りくるその気配を察知。黒くつぶらな瞳を鋭く閃かせ、横っ飛び…間一髪のところでその軽トラックを躱した。
「ッ…!?」
突然の…ベイブの短い脚による、力強く切れの良いサイドステップ。それに身体を横に揺らされ、今さっき自分達が居たところに急に現れた軽トラックを花子は驚いたように見、その後で抗議の声を上げるべく左手を振り上げた。
「危ないじゃないッ! 今のアンタの行動はベイブの命を…言うなれば吉沢さんの資産を踏みつぶそうとした反逆行為! 塩パグ学園島の治安維持部隊として恥ずべき行為よ!」
相手側の立場を想定し、それを盾に取る調子のいい花子の抗議の声に軽トラックの窓ガラスが下がり、そこから…見覚えのある地味なファッションの、丸メガネの女が顔を出した。――ラズ子だ。運転席には周囲治安維持部隊だらけの状況を切り抜けてきたのか、かたゆでたまごマンの姿もある。
「私的には吉沢さんが破産しても知らないっていうか…塩パグ学園島の治安維持部隊でもないし。というか吉沢さんって誰だし」
「と言うかアンタが誰よ。そこの愉快な顔した冴えない金髪のファン?」
「うーん、私的には生意気そうで…自分より少し背が低くて…クールな子が好きかなぁ。あの金髪は仕事でしょうがなく」
お互いの腹の内、素性を探り合うようなちょっとした会話がラズ子と花子の間で交わされる。そして2人は相手が敵であることを確認…目つきを鋭いものにすると、花子は左手の投げナイフを人差し指の上で爪弾き、半回転させ、刃側を持って投げナイフを投げる体勢に。口元に微笑を浮かべた。
「へぇ、そう。競合相手ってわけね。理解したわ。解ってたけど」
「やっぱ敵だよね~、かたゆでたまごマン!」
花子とラズ子は同時に言葉を発した。ラズ子の呼びかけにかたゆでたまごマンは花子の方へとハンドルを切り、彼女とベイブを高架橋の柵の向こう側へと追いやり始め、花子の手によって投げられた投げナイフは軽トラックの中を通り、対面の窓を貫通して、その先に居たシルバーカリスがギリギリのところで躱した。
――外した。
花子は次に、右手に握ったレイピアを軽トラックの車輪へと向け、突き出す。しかし――
響く金切り音。手に掛かる強い力。タイヤを狙うつもりであったが、縦に揺れるベイブの動きによって剣先は逸れ、安物のレイピアは車輪のスポークへと突き入れられ、根元から圧し折れた。花子は驚愕、絶句。プルプルと震えながら根元から折れたレイピアを己の顔の前に持ってきて、それを信じがたい物でも見るような目で見ていたが…高架橋の端が迫っている。花子はすぐに我を取り戻し、次なる手を考え始めたところで――プラクティカルに乗るシルバーカリスが軽トラックの荷台の向こう側に見えた。当然、その接近にかたゆでたまごマンも気が付いたようで、運転席で何やら慌ただしく片手を動かし、何かを漁っている。
「こっちくんなッ! シッシ! あっち行けッ! めっ!」
「えいっ」
かたゆでたまごマンによって車内にあるゴミを投げ付けられつつも、サーベルの剣先でシルバーカリスは軽トラックの後輪のタイヤを横に切り裂く。深く、スポークに届くほどに。だが、軽トラックはすぐには止まらない。失速しない。――あと少しで花子が追い詰められる。そう思われたとき…花子たちの正面から響く、大きなものが硬いものに激突するような音。悲鳴。自然と軽トラックを運転していたかたゆでたまごマンの視線はそちらの方へと向いた。
「ちょっ…うそーん! 冗談キツいわー!」
かたゆでたまごマンは目を見開き、声を上げる。その瞳に映る、複数の吹っ飛んでくるバイク。白目を剥く風紀委員の姿、その向こう側でケッテンクラートに乗る鉄仮面の部隊に蹴散らされる風紀委員達の有様に。それらを躱すため、彼は急にハンドルを――切ってしまった。そして怪しくなる。軽トラックの軌道が。
「あっ…あぁッ…アカーン!」
「あばばばっ…! 目が回るぅ!」
かたゆでたまごマンとラズ子が乗る軽トラックはシルバーカリスが斬りつけた後輪を軸にスピンし始めた。もはやハンドル操作ではどうにもならない滅茶苦茶な動きで。運転席から、彼らの叫びを響かせて。そんな彼らの姿を後目にガッツポーズを決めるのは――攻撃的に笑う花子。彼女の目の前で、軽トラックは中央分離帯の向こう側へと飛び出した後、対向車線を走っていたコンパクトカーに側面から追突され、横転した。
「ハッ! ざまあないわね! ありがと、シルバーカリス」
「間一髪でしたね。イェイ」
口角を上げて、白く輝く歯を覗かせながら花子は自分の隣に並ぶ、爽やかな笑みを浮かべるシルバーカリスと軽くグータッチ。直後に前方から数える程度の鉄仮面たちにボコられて勢いよく転がってくるバイク、道に転がるその残骸と…風紀委員達を躱すために集中。躱していくが…誰しもが彼女たちのように躱せるわけでもなかった。
花子とシルバーカリス。2人を追う軽トラック部隊は無力化された仲間の身体と、彼らが乗っていたバイクによって盛大に事故を起こす。立て続けに。バイクか人か、壁か車両かに接触し、車体が砕ける音とスキール音を盛大に立てて。道路の上に横たわるバイクを避けようとして軽トラック同士でぶつかる者、中央分離帯に乗り上げる者…倒れた仲間の身体に乗り上げ、高くはない柵の向こう、夕焼け空と大海原が広がる世界へと飛び立つ者。それは様々だった。
激しさを増す塩パグ学園島を焼く混沌。続々と現れる勢力、振るわれる力。吹けば飛んでしまうほどの弱小勢力でしかない花子とシルバーカリスは、大きな力が動く混沌の中心地で口角を上げる。終わりの見えない戦いを…楽しんだ風に、心躍らせた風に。その炯眼を夕日色に輝かせて。
電気の力で壁に張りつく。某ラノベのキャラを彷彿とさせるものですが…本当に可能なのだろうか。アニメしか見てないのだがな! 突っ込まれて大丈夫なように魔法の雷と言う表現を取ったぞ! ブ男の炎は普通の炎とは違う…そういう理屈だ!