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まさひこのパンケーキビルディングとその住人。打砕く者と守る者。  作者: TOYBOX_MARAUDER
海賊の秘宝と青い海、俗物共の仁義なき戦い
62/109

新たな住処を探して


 燦々と照り付ける、この上なく眩しく感じる南国の陽射し。空は相変わらず突き抜けるように青く、それは大きな入道雲も伺えて、その空の下には陽射しをキラキラと反射させるアクアマリンの海に囲まれた小さな島。打ち寄せる波の音と一階層では聞くことのできない小鳥の囀り声がそこからは聞こえた。


 30階層転送先に存在する開発の手が行き届いた小さな島。モグモグカンパニーの島とは違い、適度な自然と屋上やバルコニーに木々や草花が生い茂るモダンな建物が一種の調和を織りなすそこは、他の島にはない独特な雰囲気を持っていて、その島の観光客の他に30階層の玄関口であるということもあり、たくさんの人で賑わっている。その島の停泊場前。そこに、花子一行と今日オフであるフルブロッサムのアイドルたちが集まっていた。


 「柘榴は来ないの?」


 マントの中で両腕を組み、片足に体重を掛ける形で立つ花子はフェリーが来るであろう水平線の向こうを見据えながら、問いかける。己の隣に同じようにして立っている白革と金色の線が入った白金の金属を使った、新調したと思われる軽装鎧身を包んだマロンに。


 「あいつは今売れっ子だからなぁ。引っ張りダコよ」


 「ふぅん…ホイップクリームマロンちゃんはどうしたのよ?」


 悪意のある花子の問いかけ。悪戯っぽい笑みを浮かべて彼女はマロンを見ていて、その悪意は確かにマロンに伝わったようで不機嫌そうに目じりを座らせて唇を尖らせた。視線は水平線の向こうにやったまま。


 「どっかの誰かのお陰でステージの上で取っ組み合う羽目になって以来人気激減。一部からはカルト的な人気が出たけど、全盛期と比べりゃ暇なもんだ」


 「悪い奴もいたもんね。でもそのおかげで芸能事務所フルブロッサムの支配人として活動しやすくなったんじゃないかしら? どうせあのバカは真面にこっちの仕事はしないんでしょう?」


 「物は言い様だよな。いけいけしゃあしゃあと…テメーはもっと反省しろよな。…んまぁ、吉田のおっちゃんは梅酒愛好会と最近ココナッツワイン作るとか言って走り回ってるし、結果的には良かったのかもなぁ」


 悪戯心から来る、悪意と皮肉たっぷりな言葉の応報。まあでも悪い気持ちはしない。むしろ楽しい。気心知れているからこそできる会話。それを楽しんでいると二人の見る水平線の向こうから、そこそこ大きなフェリーがやってきた。それを目視したところでマロンは振り返り、自分の後方で仲間たちと会話を楽しんだりしている20人ほどのフルブロッサムのアイドルたちへと向けて口を開く。


 「おっし、朝話した通りだ。ツーマンセルで動いて、各チームごとに割り当てられた範囲で物件情報の聞き込みな。使った金はメモッとけよ。あとでその分補填してやっから」


 マロンのその一声で、各々二人一組に分かれていく。丁度人数が偶数であったこともあって、余りなく組が出来上がったことを確認するとマロンは花子の頭に手を置く。


 「お前はあたしとな」


 フルブロッサムに居た時や一階層の家の中に居る時、基本的に一緒に行動していたマロン。彼女からの言葉は別に不思議に思うことではない。だけれどそれは花子にとって嬉しかった。照れくさくて面と向かっては言えないが。そんな気持ちとは打って変わって花子は頭に置かれた手を気に入らなそうに払う。…自分のキャラ、体裁を取り繕うための照れ隠しだ。


 「リックさんは僕とですね」


 「あぁ、よろしく頼む」


 シルバーカリスがリックの隣に立ち、各々短く言葉を交わして最後のペアが出来上がる。一緒に20階層から30階層まで来た仲。お互いの背中を預けられるほどには信頼関係があり、仲間としての意識もある。傍から見れば同じ背丈のスタイルの良い二人。少し癖はあるが男前な少年と中性的な見た目をした美少女の組み合わせ。少なくとも見る者を羨ましがらせるほどのものだ。


 「おう、お前ら。何かあったら無線――」


 「海の埋め立てはんたーい! 停泊場拡大はんたーい! イルカを、ジュゴンを守れーッ!」


 すべてのペアが決まったことを確認したマロンは、ガントレットの袖口に付けてある無色透明の宝石が付くブローチを己の前に立つ仲間たちに見せつつ何か言いかけたが、それは拡声器を使った耳を劈くような大きな声で掻き消された。それにより、マロン片眉を大きく吊り上げ、それはもう癇に障ったような顔をして、その声が聞こえてきた方へと視線を向ける。


 遠目に見えるさほど多くはない人だかり。鎧に身を包んだ者たちが手看板を手に声を張り上げている姿がある。現実にある面倒な問題。それらを想起させるような光景。彼らはこの世界の生物たちをただのデータではなく、生き物と、命として見ているのだろうか。マロンはそのライトアイボリーの瞳に奇異なものでも見るかのような顔をして、その連中を映す。


 「んだ、あいつ等」


 「環境保護団体グリーンビーンズよ。アレともう一つ…実力行使も辞さないエコテロリストのシーシルキーテリアって言うのが居て、それらのお陰で島の開発は面倒らしいの。何回かロリポップキャンディにボコられて吊るされてるのを見た時があるわ」


 うるさいその集まりに呆れ混じりな呟きを零すマロンに、花子が彼らの方を見据えながら丁寧に解説をする。通りで今自分たちが居る島の停泊場が拡張されないわけだとマロンは苦々しく納得しながら、彼らから視線を外し、停泊場へとやってきたフェリーを見上げる。


 「現実世界でもあんなの居たよな。海洋哺乳類を信仰する宗教の奴ら。…ったく、ゲームの中でまで何やってんだか…でもあたしらには関係ねぇか」


 「そうとも言い切れないわ。どこに土地を買うかは知らないけど、場合によっては絡んでくる可能性があるから注意しておいた方が良い。特に後者、海の狂犬と呼ばれるシーシルキーテリアの方は」


 「マジかよ。ンッどくせぇなぁ。まあいいや。そうなったらそうなったとき考えんぞ」


 花子とマロンが話しているうちにフェリーへと向かっていくフルブロッサムのメンバーたち。話がひと段落して、マロンがフェリーへ向かい進もうとしたとき、花子は彼女の肩を後ろから掴んだ。それによってマロンは花子の方へと半身になって振り返り、その行動の意味が分かっていないのか、どことなく間抜けな顔をして花子の顔を見つめて首を傾げる。


 「なんだ? 忘れもんか?」


 花子はチッチッチッと舌を鳴らし、ウインクして立てた人差し指を顔の横で左右に振る。その顔に生意気で深みのある、大人っぽくあろうと背伸びしたような雰囲気の笑みを浮かべて。


 「私たちはアレに乗らないわ。この階層に来てすぐに呼んでいたのがそろそろ来るのだから」


 そして間もなく、海の向こう側から颯爽とやってくる真っ白い白鳥のボート風のファンシーな水上バイク。その上には赤髪のウルフヘア、吊り目で頭にコック帽をかぶったエプロン姿の少年が乗っていて、その白鳥の水上バイクの後ろには黒い船体の花子の水上バイクが牽引されている。このゲームが始まって間もないころ、その時に見た時があるような気がした少年は慣れた様子で停泊場に水上バイクを止めて、自分の水上バイクと花子の水上バイクを繋いでいた牽引ロープを解くと停泊場へと上がった。そしてそこそこ人気のあるにも関わらず、花子の方へと真直ぐ、迷いない様子で進んでくる。まるで、花子の顔を最初から知っていたかのように。


 「猫屋敷花子さんですね? モグモグカンパニーのライバックでーす。海送費100ゴールドになりま~す」


 目元がスッキリした顔つきの爽やかな印象を受ける赤毛赤目の少年、ライバック。そういえばゲームが始まった二日目の朝、オルガに石を投げつけていたのがこれだったかと今更ながら思い出した花子は小物入れに手を突っ込み、予め海送費分けて入れておいた布袋を取り出した。なぜかこちらの本名をさも当然のように口にする彼の顔を刺すような目で見据えながら。…まぁ、どうせオルガだろう。そう思っているために驚きも怒りもしないが。


 「…なんで私の本名知ってるのよ」


 「あれっ…てっきりハンドルネームなのかと…うちの社長の話に付き合っていたものでいつの間にか覚えてしまって…」


 だが情報の出所は気になる花子。それに凄まれる形となり、ライバックは視線を左右に泳がせてたじろぎながら自分がその名を知った経緯をただ話す。所謂身バレ。それを知らぬ間にしてしまったのではとどことなく申し訳なく思った様子で、焦った風に。


 「そんなことだろうと思ったわ。全く、困った奴ね。アレも。私の代わりにあいつの横っ面引っ叩いておいて」


 ライバックから帰ってきた返答はまあ想定通りのものだ。花子は双眸を閉じて金の入った袋を持つ左手を額にやり、ため息一つつくとライバックの方へ一歩距離を詰めて彼の手に左手に握った金貨の入った袋を握らせる。


 「はは…できたらやっておきます。ではまたのご利用お待ちしてま~す」


 その手に握らされた袋の中身を確認するとライバックはペコッと頭を軽く下げ、この海送自体ついでだったようで、島の内陸の方へと進んで行ってやがてその姿は見えなくなった。顔が割れているのだから今更個人情報がどうとか言うつもりはないが、オルガがまた何かやらかしたという事実には若干苛ついた風な顔をしつつ、花子はその後ろ姿を見送ってから水上バイクの方へと爪先を向けた。


 「猫屋敷。すんげー珍しい苗字だな。初めて聞いたわ。猫屋敷花子かァ。名前はスタンダードなのによ」

 

 「よく言われる。アンタは苗字か名前に栗って付きそうよね」


 「よくわかったな。あたし栗生栗子(くりゅうくりこ)ってんだよ。リアルネーム。だからマロン」


 「あら、冗談で言ったつもりだったけど合ってたのね」


 花子は腰の小物入れから水上バイクの鍵を取り出しつつ、停泊場に止められた己の水上バイクの方へと向かっていき、後ろからついてくるマロンと会話を交わす。もうフルブロッサムのアイドルたちとリックとシルバーカリスはフェリーの甲板にまで行きついていて、出発まで待機している状態だ。リックやシルバーカリスは花子が水上バイクを使うであろうことを理解しているので、これと言って反応は示さない。せいぜい花子たちに向かってシルバーカリスが手を振るぐらい。だが、フルブロッサムのアイドルたちはマロンがフェリーに乗ろうとしない事に対し、疑問に思ったようでその内の一人が口周りに手を両手を当て、口を開いた。


 「マロンー! 乗らないのー!?」


 「花子が水上バイクに乗せてくれるみたいなんでフェリーには乗らねえ! お前らは予定通りフェリーで各島に散ってくれ! いい知らせ期待してるぜ!」


 フルブロッサムの仲間の声に良く通る声で、溌剌とした微笑をその顔に浮かべてマロンは返答し、水上バイクへ跨った花子の後ろに座って両手を細い花子の腰へと回した。それを合図に花子は右手に持った盾を腰のベルトに掛け、右手側にあるスロットルレバーを操作して水上バイクを動かし、停泊場からアクアマリンの大海原へと進み始める。それはゆっくり。安全運転で。


 フェリーの上からその様子を心配そうに眺めていたシルバーカリスはそれに少しだけ安堵したように息を吐いたが――


 「だめっ…我慢できないわ…!」


 「あん? 何か言ったかァ?」


 「行くわよッ!」


 「は? …ちょっと…花子…? なんか早く…おいっ、ちょっとスピード上げ過ぎじゃ…!」


 「イヤッホォォォォォ!」


 「うおっ…うっ、うわわわわわ…!」


 花子が乗る水上バイクは停泊場からある程度まで離れたところで猛スピードで海の水面を滑走していった。人が変わったような花子の歓喜の声、マロンの揺れる断続的な悲鳴。それらをその場に残して。


 きっと途中までは理性で押さえていたのだろうが、乗っているうちに綻んだのだろう。自分の忠告はスピード狂花子の耳には届いていた。だが、ダメだった。シルバーカリスはどんどん遠のき小さくなる花子の水上バイクを遠い目で見据えながら、ただ二人の無事を心の中で祈っていた。そして間もなくフェリーが動き出す。汽笛と共に、アクアマリンの穏やかな大海原へと向かって。




 *




 オレンジ色の空。優しく暖かな夕日。黄昏。見る者に少しの郷愁と懐かしさを感じさせるそれを、フェリーの甲板の手すりにうつ伏せに寄りかかって眺める、白いハイドアーマーを着込んだ少年が一人。そろそろ終わりそうな一日。それを噛みしめながらぼんやりと。その短い白銅色の髪を潮風に靡かせ、一日を振り返るような遠い目をして。


 「――結局何の収穫もなかったな」


 夕日の色を反射させ、キラキラとオレンジ色に輝くどこまでも広がる海の水平線。それを橙色の瞳に映しつつ、リックは隣にいるのであろう連れに声を掛ける。


 「…本命はまだ残ってますけどね」


 リックの隣に立ち、リックと同じようにどこまでも広がる海を眺める黒鉄色の金属と鮮やかな青い布、スモールマントの装備に身を包んだ少女、シルバーカリスは小さく囁く。それを聞くリックは鼻から息を吐き出すと気乗りしない顔をした。


 「フルブロッサムには世話になってる身だ。筋を通すために聞くだけ聞いてみるけど…気乗りはしないな。買い取れたところで他のギルドの介入があるかもしれないし」


 手すりの上に組み、置いていた両腕を縦に伸ばし、姿勢を伸ばしつつリックは心境は語る。強く優しい潮風と眩しく感じる橙色の夕日の光に双眸を細めて。セラアハトの気持ちに気が付いたうえで、その弱みに付け込む形で交渉する。それが彼は気に入らないようだった。


 リックの視線は水平線の向こう側に向いたまま。その横顔に視線をやったシルバーカリスの口元にちょっぴりだけ意地悪な笑みが浮かぶ。


 「…データ相手なんだから遠慮する必要なんてない…ってマロンちゃんなら言いそうですよね」


 意地の悪い言葉。それはリックの耳へと向かい、彼の視線をシルバーカリスの方へと向けさせる。何処かリックの出方を伺うかのような、試すような灰色の瞳で見てくる優しげな微笑を口元に浮かべたシルバーカリスの顔へ。それにリックは不愛想な顔をし、しかしやや頬を染めて唇を尖らせると人差し指で頬を掻き、すぐに視線を逸らす。今己の中にある考えを言おうか言わないか、迷った風に。だが、それも一瞬で、躊躇った様子を見せながらもリックは口を開いた。


 「――笑うなよ? …データと条件分岐の塊みたいな従来のNPCみたいなやつはいいけど…セラアハトとか人間っぽい奴っつーか…そういう奴らの気持ち利用するってのはどうなのかなってさ…」

 

 優しくて思いやりがあり、誠実な性格のリックらしい意見。そういう考えに至ったのは一階層でホストをやっていて、NPCと接する機会が多かったせいだろうか。ただ、NPCに命を見出すような発言は言っている本人であるリック自身にも違和感を与えているようで、揶揄われないか心配している風だった。少なくとも花子やマロンに話せば小馬鹿にされること間違いなしなその発言に。


 「会話している感じ普通の人と何ら変わりないですから、そう思えても仕方ないですよ」


 だが、シルバーカリスはそれを茶化したりはしない。彼女もまた、約一ヶ月間、人間としか思えぬこの世界の原住民である眼帯の衛兵と接していたのだ。むしろリックよりも彼らを人として見ているかもしれない。そういう自覚がある故にシルバーカリスはただ彼の言葉に同意を示す。それにリックは安心したように一息つくとその態度をいつも通りの愛想のないものへと戻し、フェリーの進行方向に小さく見えるゴルドニア島の方へと視線をやった。


 「ほんとのところあいつ等ってなんなんだろうな? ゲームの部品には思えないよな?」


 「実はここは僕たちが暮らしていた世界とはまた異なる世界で、彼らはその原住民…とか」


 リックの何気ない一言に、シルバーカリスは急に神妙な面持ちになって言葉を紡ぐ。そのふざけた様子が一切ない声色、雰囲気。それに影響されて、リックの表情も真面目なものとなる。


 「つまり…まさひこはゲームクリエイターじゃなくて転移魔術の権威だった…?」


 核心に迫るかのような語り口調で、神妙な顔をしてリックは呟く。そして間もなく聞こえるシルバーカリスの吹き出し笑い。リックが顔をそちらへと向けてみれば、くすくすと笑い声を立てながら口元を押さえているシルバーカリス。…揶揄われた。リックはそう認識し、その顔を小恥ずかしく、決まりが悪そうなものにする。やんややんやと騒ぎ立てる花子やマロンとは違う切れ味の鋭いそれは、その二人にある程度鍛えられたリックの鋼の心をやすやすと傷付けるには十分すぎるものだった。


 「やだなぁ、冗談ですよ。本気にしないでくださいよ。…でも他の世界から人だとか動物だとか召喚する魔法あるぐらいだし、頑張れば出来そうな感じはしますよね」


 「…でもそう出来たらエネルギー問題とか資源問題とかまるっと解決できるな。やっぱその説ないわ」


 目元に浮かべた涙を親指で拭いながら笑うシルバーカリスの言葉に対し、揶揄われたことによって立つ瀬が無くなったリックは、目に見えてつっけんどんな態度でシルバーカリスに言い返すと顔を背け、再びフェリーの進行方向へと目を向けた。その視界の先には間近に見えるゴルドニア島。レンガと木材でできた停泊場には沢山の木造の帆船が目に付く。


 それらを暫く見ているとリックの脳裏に閃きが走った。最もリックが懸念していた買い取った物件への他のギルドの介入。それを防ぐことが出来、かつ安く土地が手に入れられる方法…可能性を。


 「シルバーカリス…NPCが拠点持ってる島っていくつある?」


 「? …細かいの合わせると20とか行くんじゃないですかね? 僕の知る限りですけど」


 雰囲気が変わったリックの様子にシルバーカリスは小首を傾げつつ、きょとんとした顔をしながら答えた。その直後にフェリーは停泊場へと止まり、疎らに乗っていた乗客たちが船から降りるべく動き始めた。


 「よし、十分だ」


 リックは多くは語らぬまま、珍しく自信の伺える笑みを口元に浮かべて下船口へと爪先を向ける。その彼の考えが聞けないシルバーカリスは眉を八の字にして、スッキリしない、不満そうな表情をしながらついて行く。


 「何かいい案でも思いついたんですか?」


 「まぁな。でもまだ可能性でしかない。まずはセラアハト、その次に30階層での大型組織の動向。そこをチェックして初めて使えるものになる」


 「勿体ぶりますね」


 「揶揄った仕返しとでも思ってくれ」


 自信満々なリックと不満げなシルバーカリス。停泊場から青い石材と白い石材でできた、海に面し、斜面に立てられたゴルドニアファミリアの街へ向かいながら会話を交わす。まだ空は夕焼け色ではあるが、もうじき日は落ちる。そうなれば、たくさんのプレイヤーでごった返すことになるであろうそこへ。静かに打ち寄せる波の音、吹き寄せる潮風。それらを耳で楽しみながら。 

書いているうちにいろいろ思いついてしまって話がずれそうになる…律しろ、己を…!

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