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動き出すハイエナの群れ

実際のところライオンよりハイエナの方が狩りが上手いし、横取りはライオンの方が多いのよ。可愛そうだなァ、ハイエナ。イメージが逆転してしまっている。


 眼下に広がる街。

 ホールケーキでも叩きつけたように円形に広がるそれは、中心には立派で背の高い建物が目立ち、中心から離れれば離れるだけ建物の数も、質も少なく、低くして行き…代わりに緑が栄えて行く。


 空気は澄み渡り、風はより強く…遠景すらも霞むことなく見渡せる時計塔の天辺に位置する展望台。短針が3を指さんとするときに風に長く艶やかな髪を強くなびかせる女が1人…短眼鏡を片手にそこに居た。


 「想定よりも大分早いが…上手く行かないこともまた一興か」


 円形に広がる街の東。その方に見える…軍隊の様に統率の取れた群れ。列を成して街へと向かってくるそれへと、その女、ベウセットは短眼鏡を向ける。


 丸く縁取られたガラスの越しにその列を捕らえ、短眼鏡を伸ばし…倍率を変えてより近くに。

 そして捉える。その先頭を行く者たちのリーダー。獅子の行進を先導する者…ベウセットにとって良く見覚えのある、女の姿を。ギリギリ認識できる大きさで。


 次に短眼鏡が映すのは、モグモグカンパニーのプレイヤー達が牽く荷車。ありとあらゆるものの死体が乗るそれらの中で…最も価値があるであろう素材を乗せたもの、狙うべき獲物を見定め始める。


 この街の外に広がるだだっ広い草原。その生態系のトップに立つであろう白い肌、腰に毛皮の腰巻をつけ、身体を疎らに覆う骨の装飾品を見に付ける巨人。

 4メートルほどの背丈で、棍棒を振り回すそれらの死体と…彼らの住処である巨大な獣の皮と巨大な骨のテントの建材。一番おいしい部分であろうそれらを積んだ、本来家畜に引かせるべきなのであろう幌の掛かった荷車をベウセットは間も無く発見し…口角を静かに上げた。


 「お利口だ。オルガ。良い子だ」


 ベウセットはそう呟いたところで短眼鏡を元のサイズに縮め、踵を返しつつ展望台内を一瞥。

 時間帯が時間帯だからであろう。人が一切いないそこを一瞥した後に小物入れに人差し指と中指を差し込み…バードアイマッチを一本取り出した。

 ツカツカと展望台出口へと向かいながらベウセットは適当な手すりにバードアイマッチの先端を擦り、火をつけて…それを良く燃えそうなゴミ箱の中へと爪弾くとそのまま展望台出口へ。地上へと向かい始める。


 「さて、忙しくなるな。ふふふ…」


 いつも冷静沈着で、淡々としていて、不愛想なベウセット。嘲笑ではないが、だが悪そうに楽しそうに…心を弾ませたように彼女は笑う。

 時計塔の歯車の見える螺旋階段を下りて行きながら。




 ◆◇◆◇◆◇




 まだ夕暮れ時には早い時間。暖かな空と人や草、木々の枝はを撫でる風。


 街の外れ。廃墟群と草原との境界線。 

 そこから街の中心へと向かい、走る1つの人影は周囲に広がる長閑な景色とはまた少し違った物であった。


 「本当に上手く行くんだろうなぁっ、もぉうっ!」


 黄色い瞳。切れ長の吊り目。黄味の強い橙色の髪が棘の様に纏まる髪質の男、ポーク●ッツは盛大に愚痴りながらも全力疾走していた。

 何やらてっぺんから煙の上がる時計塔へと向かって…真直ぐに。


 街の中心に進めば進むほど人の姿は多くなる。特にこの街の治安組織。それに属する衛兵たちの姿は濃さを増し、それらの誰もが時計塔の方へと走ってゆく。道の中央を行く馬車を止めるほどの濃度で。

 それらの向かっていく向かい側。人の波の間に、ふとポーク●ッツの探していた人物は姿を現した。悠々とこちら側に向かってくる、憎らしく思えるほど澄ました顔の、黒髪の女が。


 「おぉい! なんか変態側でトラブったみたいよ!? 赤いのが指示くれって!」


 「あぁ、見ていたから知っている。ほら」


 息を切らせながら報告し、今やっと立ち止まったポーク●ッツの横へとベウセットは迫りつつ、その手にあった短眼鏡を彼の方へと放った。


 「えっ、何ッ」


 身体に当たるそれをポーク●ッツは咄嗟に受け止めた後、その両手で押えた物を見る。その後で己の横を今通り過ぎたベウセットの方へと振り返り…眉尻を上げ、歯を食いしばった。


 「また俺の物勝手に取ってったの? これ凄い価値ある物なんだから投げないでよね」


 「あぁ、すまんな。なかなか有意義に使わせて貰った。それで…赤は何と?」


 ――ちっとも反省しないなぁ…ムカつく!


 視線を前に向けたまま歩くベウセットの横へと並び、歩調を合わせたポーク●ッツは不満そうにベウセットの横顔を見ていたが、張り合ったところで意味はなく、歯向かったところで変態の餌食にされるのは目に見えるため、何とか己の中の怒りを抑え込むと、それでもぶーたれた態度のままに視線を前へと向けた。


 「変態の中で一番キモいのが馬に乗って行方不明。そのせいで馬泥棒を前倒しにしなきゃいけなくなったって」


 「なるほど。面白くなってきたな」


 「そんな余裕かましてて大丈夫? 正直おねーさんが勝負とやらに負けて泣きを見るのもアリなんじゃないかーって心情的には俺思ってるけどさ」


 「私は引き際は心得ているつもりだし、逃げ道はしっかり作っておくタイプだ。期待に沿えそうになくて残念だよ」


 不遜。そうとしか言いようのない態度。これから大事を起こそうとする同じ共犯として、リーダーとして見た時には心強くも思えるが…ベウセットを今一信用できていないポーク●ッツは彼女を不安視していた。

 裏切り。その文字がどうも頭の中を離れなくて。


 「それで、土地勘のあるお前に聞きたい。街の東側から件のターゲットが進行してきた時、仕掛けやすそうな場所は?」

 

 けれど、ベウセットはお構いなしだ。淡々と己の目的とする事柄を成功させるため、歩を止めることなく話を進めていく。淡々と。


 「おねーさん、それを確認するために時計塔まで行ったんじゃないの?」


 「情報は多いことに越したことはあるまいよ」


 ポーク●ッツの嫌味な言い回しにもこれと言った反応も示さず、間髪入れぬレスポンスでベウセットは返してくる。

 正直面白い反応ではない。少しぐらいムッとしてくれたのであれば、気も晴れるのだが…そうはならない。ポーク●ッツはしかめっ面に成りながらも会話を続ける。


 「俺はターゲットが広場に集まってくるならそこで仕掛けるのが一番いいと思ったけど。複数馬入れられるし、逃げ道はたくさんあるし」


 「結構賢いな。だがダメだ。その方法は一番の懸念材料との対決を意味する」

 

 「懸念材料?」


 「今回襲う集団のリーダーだ。真っ向勝負だけは避けたい」


 「ふーん…おねーさん勝てる自信ないんだ?」


 「悪いな。ロマンチストじゃなくて」


 背後に迫る車輪と蹄鉄が石畳を叩く音を耳に、顔を横に向けてベウセットは火の手が上がり始めた時計台の天辺を一瞥。

 それから視線をポーク●ッツの方へとやり、今自分たちの横を通り過ぎようとする、2頭の馬に牽かれた幌付きの荷馬車の方を顎でしゃくるとそれへと飛び乗り、その側面へと取り付いた。


 「あっ…ちょっと!」


 相変わらず面白くなさそうな顔をしていたポーク●ッツであったが、ベウセットの突然のアクションに驚き、声を上げ…走り、走る荷馬車へと飛ぶ。


 「ッ…あっぶない、落ちるとこだった…」

 

 幌の屋根を支える柱を掴み、片脚を荷馬車の側面。僅かに突き出た部分になんとか着地させたところでポーク●ッツは一息つく。振り返り、流れゆく景色から遠目に見える燃える展望台を頭に乗せた時計塔を見上げて。


 馬を動かす持ち主は気が付かなかったのであろう。荷馬車は進む。再びベウセットの方へと視線を向けたポーク●ッツとベウセットを乗せて。

 進路は街外れへ、真直ぐ進んで行きながら。


 「飛び乗るならそう言ってよね~」


 「合図はしたろう」


 「言葉足らないところとかリーダー失格じゃないですかァ?」

 

 「お前はここに居るだろう? 問題ない」


 戦いのときは近いけれど、ポーク●ッツは相変わらず。前を向いたままのベウセットへと絡み始める。交わされるのは自他共にどうでもいいような内容の…他愛ない物。

 大凡大事を成し遂げようとする雰囲気。纏まりの欠ける中で時は過ぎる。回る車輪と共に。




 ◆◇◆◇◆◇




 ぽかぽか日和。ただ長閑で…平和な空。昼寝時としては少々時間が経ち過ぎてしまった青空の下、それらは動いていた。


 駆ける馬は4頭。青髪の変態を乗せた内1頭に引かれる幌付きの荷馬車が1つ。それらを何とか操る、ほんの少し見て、習った付け焼き刃とそれから馬の乗り方を教わった者どもの行進。

 たどたどしくも、危なっかしくも稚拙であろうとも…前進を続けるそれらは行き着く。砕け散った木屑の積もった入り口の…廃墟の前へ。


 「どうどう! どーう!」


 「待てッ、どうッ!」


 「ステイッ!」


 「ダヴァイダヴァイ! ッうわーッ!」


 歩む馬の手綱を引き、聞きかじった知識をフル動員しての、花子、青、緑、黄の大合唱。それらの声に反応し、ポーク●ッツの家からはお留守番していたのだろう。赤が出てくる。

 花子、青、緑は正常に止まることが出来たが、妙な事を口走った黄を乗せた馬は道の向こうへと走っていき――暫くして他3人の方へと戻ってくる。2頭の馬が牽く、大きな荷馬車を後ろにつけて。


 「うぐっ…!」


 「どうどう」


 黄色が花子達の元へと合流を果たし、その後ろを行っていた2頭の馬に牽かれた荷馬車が花子たちの前を通りかけた時、聞き覚えがある声と共にその荷馬車を牽いていた2頭の馬は止まった。


 「ポーク●ッツ、お前のお友達に荷馬車の上に人質どもを運ばせろ」


 「あーあ…もう言い逃れできないね。俺もこれで共犯かぁ。…もう戻れないよぉ俺。大丈夫かぁ、俺。住み慣れた家もこれで見納めだぞぅ、俺よぅ…」


 止まった幌付きの荷馬車から降りてくるのは頭装備を外したチェーンメイル姿のベウセットと、ベウセットが絞めて気絶させたのであろう。なんだか幸せそうな顔をしたバーコードヘアーの小太りのおっさんを担ぎ、なんだか冴えない顔をして遠い目をするポーク●ッツ。

 それらの姿は行方不明となった姫騎士ジャンヌ以外が再集結したことを意味し、故に集まる。バーコードヘアーのおっさんを己の住まいの中に担ぎ込むポーク●ッツを除いて。

 この集まり。獅子の群れに挑み、それらが獲った獲物の美味しい部分を掻っ攫わんとするハイエナの女王へと、ハイエナたちの視線が。


 「状況を説明するぞ。現在目標は街の東側から――」


 「ボス、その前に。ジャンヌが裏切ったっぽいわよ」


 作戦の概要を話し始めたベウセットの言葉を遮り、結論を決めつけたように花子は言った。

 どういう経緯があって姫騎士ジャンヌを仲間と認識し始めたのかは聞きもしなかったが、相応に彼の事を思っていたのだろう。寝耳に水といった風に、驚いたように目を見開き…鏡砕きの四英傑は花子に注目した。


 だが、その花子の意図が問いただされる前に言葉を制すように開いて見せられたベウセットの白い手により、周囲の視線は再び彼女の方へ。再度、彼女は口を開いた。


 「奴の裏切りは想定の範囲だ。構わん。だが、裏切ったとなれば奴は間違いなく我々をモグモグカンパニーに売る。今東から街へと向かって来ているモグモグカンパニーと奴が接触する前に仕掛けねば勝ち目はないだろう」


 一度そこでベウセットは言葉を切ると面々の顔一つ一つを見、戻ってきたポーク●ッツの顔を最後に見た後、視線を前へと向け、続ける。

 また無断で借りたのであろう、ポーク●ッツの物と思われるペンを持つ手に、それを使って描かれたのであろう図が書かれた紙を広げて。


 「この街の東部に道幅の広い十字路がある。我々はここでモグモグカンパニーを強襲する。道のサイドに荷馬車を牽いた馬に走らせ、十字路を行く奴らにそのまま突撃。前後を分断されたお宝を積んだ荷馬車を手早く牽引。そのまま北へと走り去るという流れだ」


 図はシンプルな物で雑に書かれた十字路が描かれているだけの物だったが、ベウセットは口頭で説明しながら、図に書き足していく。サイドに荷馬車を牽引する馬。中央にそうではない馬を示す丸を描き、矢印を十字路へと伸ばして。

 正に強襲。シンプルでとても解りやすい作戦。説明を聞いた面々は直ぐに内容を理解するが…少し不安要素があるようで、青が手を上げた。


 「ロープで縛って牽引するとなると時間が掛かりますよね。それに大荷物の場合速度が落ちる。追いつかれる可能性が出て来てしまいません?」


 「そこで攫ってきた素材屋とグリの出番だ。素のままの素材を加工済みの物に変えさせるなり、金にするなり、装備にするなりして小さくしてな。荷馬車を牽引するまでの時間は私と花子で稼いでやるから気にするな」


 「えっ、私がッ!?」

 

 「そうだ。遊撃に徹して露払いしろ」


 真剣な顔の青にベウセットは揺るぎない自信と余裕のまま答え、その青への返答に花子が自分自身を指差し驚愕。

 けれどベウセットは取り付く島も与えない返事を返し、ペンと図の書かれた紙をポーク●ッツへと放って今さっき自分たちが乗っていた荷馬車。幌の被ったそれへの後ろへ進み…その中から取り出す。薄いガラスの瓶に入った…手ごろなサイズのなんか良さそうな酒を。


 酒の入った瓶を右手に。今腰の小物入れから取り出した一本のバードアイマッチを左手の指先にベウセットは取る。

 艶やかで深みのある、油断ならないような静かな妖笑を浮かべる彼女は右手にある酒瓶を適当な地面の上に放り、砕け散らせると腰にある革製の小物入れの上にバードアイマッチを擦り、火をつけて酒で濡れたそこへマッチを人差し指で爪弾いた。


 「おぉ…」


 「これさすがに街の外ではプレイヤーには使えないっすよね」


 静かに燃える酒。薄く青い目立たぬ炎はベウセットが何を言わんとしているのかを面々に伝え…その火に青と赤は呟いた。


 「マッチを幾つか分ける。持てるだけ酒を持っていけ。残った酒はもう一つの荷馬車にもある程度積んでおけ」


 バードアイマッチの敷詰まった小さなブリキの四角い缶をベウセットは小物入れから取り出し、幾つかの束にして…荷馬車に群がり酒を取った仲間たちにそれを渡していく。音量を落とした声で囁きながら。

 傍では、相変わらずロボットの様に動くポーク●ッツの仲間が何か言ったりすることもなく、黙々と攫ってきた人々を荷馬車に乗せていき、ロボットの様に従順な目の丸い素材屋のおっさんと、なぜか我物顔で続くコック服の変態も続く。


 「んんーっ!」


 「んがーっ!」


 「おいっ、なんだッ…離せッ、離してくれぇッ!」


 「んふぅ…」

 

 ライバックとグラ、いつの間にか意識を取り戻したのだろう花子のチェーンヘルムを顔に被せられたままのエプロンのおっさん。なんだかシュンとし悲しそうに、成すがままのグリ。

 積まれゆく人質兼ね作業員たちは酒が乗っていた大きな荷馬車へ、後に続く素材屋のおっさんとコック服の変態共に乗り込んだ。


 「ちょっと、なんでアンタが乗るのよ」


 当然、この計画の途中に協力を仰いだとはいえ…今や用済みのそれ。異物であるコック服の変態へ周囲の視線は向き――その視線を成す1つ。花子は荷馬車に乗ったコック服の変態へと声を掛けるが――


 「送って行ってくれてもいいと思う!」


 「ッ…」


 迷いなど一切のない、はきはきとした声での返答を返される。

 相変わらずキレイで真直ぐな彼の瞳に見据えられる花子は、少しばかり怯んだように口元を引き攣らせつつ、今鏡砕きの四英傑にマッチの束を配り終え、花子の分のマッチの束を手に歩み寄ってきたベウセットの方へ向ける。


 「いい。まだ使い道はある」


 長く細く白い人差し指。ベウセットはそれを己の顔の前へと持っていき、立て、対の手を花子の肩へ。その碧い瞳を近くで見据えつつ、静かに囁いて視線を荷馬車の方へ。

 つられ、向けられた花子の視線の先に在ったのは…荷馬車の中、なんだか自分たちの耳を疑った風にして己の居るあたりに顔を向ける、目隠しされたままのライバックとグラの姿。

 ベウセットが何を言わんとしているのか理解したところで花子は頷き、その様子を見ていたベウセットは花子の肩から手を離すと、人質たちが乗る荷馬車と馬を繋ぐ…御者席へ。

 花子も気を引き締め、己が今さっきまで乗っていた馬の元へともどり、それへと跨った。


 「行けるか、皆」


 ベウセットの乗った荷馬車。それとは逆方向から聞こえてきた声に視線を向けてみれば、仲間たちに語り掛ける青髪と相席するポーク●ッツ、彼の仲間である…2100年の日本において普及するアンドロイド。NPCと言えばそれらしい仲間たちを乗せた荷馬車が奥に。

 その手前には馬に跨った黄と緑の姿と…ベウセットの荷馬車へと向かって小走りする赤の姿が見えた。

 マッチを配られたときに詳細な説明は去れたのであろう、ほとんどが迷いのない様子…瞳と面構え携え、そこに居た。

 

 「おう! 俺たちの絆があれば誰にだって負けねェ!」


 今から行う事。前準備として行ってきた所業の数々。法と倫理への挑戦者たる者どもの一員である雰囲気を一切感じさせない、それは綺麗な言葉で黄は呼びかけた青に返し、笑い掛け――


 「えぇ、行きましょう」


 緑は静かに口元に微笑を浮かべる。これまたずれた、正しいことを成さんとする…これから世界でも救いに行くかのような雰囲気で。


 「ハイハイ、もう野となれ山となれだよ。もぉう。煮るなり焼くなり好きにすればいいでしょぉ」


 「お待たせしてスンマセンっす。問題なければ出しちゃって良っすよ。ボス」


 その後に聞こえてくるのは…この中のメンツの中で最も善良であり、真面に近いであろうポーク●ッツの嘆きの声と…そもそも青の呼びかけを聞いていなかった風な赤がベウセットに掛ける言葉だけ。

 何とも締まらず、青が渋い顔をして唇を歪めている時、ベウセットが荷馬車に繋がれた馬の尻を鞭で軽く打ったことをきっかけに、ハイエナの群れは前進を始め、その一員である花子も歩調を合わせる。


 ほんの一日も掛からずに練り上げた計画。ちょっとびっくりなサプライズ。即興劇を…獅子の群れに披露するべく。ゆっくり…ゆっくりと。揺れる馬の上で…長閑な廃墟群の中で。

オルガさんを獅子と形容しているが、個人的なイメージでは彼女は獅子と言うよりシロクマに近い。どうでもいい話だがな!

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