多くの見返りを得るために
目的の為、人は心を鬼にしなくてはいけない時があったりなかったり。
遠ざかっていく。
腹立たしい存在で在ったはずの2つの影が遠のいて、慄く心には不安と心細さ。清々する気持ちなどはなく、ただ取り残された寂しさのような色を混ぜる。
明るい日差しの中、その姿は建物の影に消え、いよいよ彼、半目で額に汗をするポーク●ッツは取り残される。
人形のような仲間とも呼べそうにない複数の存在と…髪色に対応する女性物の下着だけをその身に纏う、5人の男…変態の中に。
ポーク●ッツの自宅前にて足を止めた覚悟の決めきれないそれらであったが、今のポーク●ッツにとって5人の変態の存在は拠り所にすら成りえていた。
――己の家に居つく何者か。その存在を示唆する止まる5人の変態と…そのリーダー各であろう青髪の発言があったから。
ポーク●ッツは緊張した面持ちで口をへの字に曲げ…今居る面々。5人の変態と視線を合わせ――口を開く。
「行こう…皆…!」
覚悟を決めたかのようなポーク●ッツの一声に、変態5人も頷く。
その有様は――何か強大な敵にでも挑まんとする勇者一行。世界を救うため、これから敵の本丸へと乗り込まんとするそれだった。
「――見てこい、ジャンヌ」
「なぜ私が…?」
「闇耐性とか狂気耐性ありそうだし…よくあるじゃん? 同属性に同属性で攻撃してもダメージの通り悪いみたいな。ワンチャン吸収して回復しそうだから大丈夫かなって」
だが、見てくれだけだった。すぐに掌は返される。いともたやすく。
メッキは早々に剥がれ落ち、なし崩し的に仲間になったのであろう姫騎士ジャンヌに青髪の言葉と、それを含めた他3人の視線は集中。
負い目がある故か、本当に耐性がある故か…姫騎士ジャンヌは割と余裕そうに肩を竦めると、立ち止まる者どもの中から先へ。崩れた扉の向こう側へと歩き出した。
「…ハァ、ついてきなさい。皆の者」
姫騎士ジャンヌは進む。己の仲間のだらしなさに呆れた風に。余りにも明るい外からでは暗く、見通せぬポーク●ッツの家の中へと。
その後ろから他がぞろぞろと続く。もぞもぞと動き、呻く3つの袋を担ぎながら。
ボロボロの朽ちかけた廃屋。黒に近いグレーのレンガ造りのまあ住もうと思えば住めるのであろうそこには――まだその姿は在った。
ポーク●ッツのベッドロールの上に寝転ぶ…何かを成し遂げたような顔をして寝息を立てるコック服の漢の姿が。
「うッ…!」
良く見ると彼の顔の横にはポーク●ッツの靴が転がっていて、それの持ち主であるポーク●ッツは小さく口の中で声を上げる。顔を自然と、思いっきり引き攣らせて。
姫騎士ジャンヌは大して気にした風にはしていなかったが…鏡砕きの四英傑。彼らもまた、険しい顔をし、ポーク●ッツと視線を同じくしていた。
「寝てる…さっきまで靴を手にパンツ一丁でフガフガ言いながら小躍りしてたのに…」
「どおしてああなるまで放っておいたんだ! どおして追い出さなかったんだよッ!」
「だって…だって…怖いっすもん! 明らかにヤベーんすよ!?」
「鏡見て見ろバーカ! 外見だけならお前らだって良い勝負だぁッ!」
己の家。テリトリー…それも最もデリケートな、己の居場。寝室。それを冒されたと感じてか、ふと呟いた赤髪に対し、ポーク●ッツは感情的になっていた。
今ベッドロールの上で眠っている男…コック服の変態が恐ろしいという感情を頭の中では解りつつ…無責任にも、外で待機するという選択に舵を切った変態5人組を糾弾する程度には。
けれど…拗れそうになる赤髪とポーク●ッツの間に姫騎士ジャンヌが割って入った。
なんだか…先を見据えたような妙に澄んだ瞳を携え、キリッとした凛々しい顔で。
「今は仲間割れをしている時ではありません…私たちには使命があります…!」
姫騎士ジャンヌは凛とした声で言うと、半身になり、後方を指し示すかのように腕を開き、振り返った。
その先には、煉瓦の合間から草の生した床。その上には荒布に包まれ蠢く3つの何か。青、黄、姫騎士ジャンヌとでこの中へと持ち込まれたのであろうそれは、ポーク●ッツに己がなぜこんな目に遭っているかを今一度思い出させ、彼の頭を冷やさせる。
――すべてはこの訳の分からない奴らと行く、艱難辛苦の道を超えた先に見える黄金の山の為なのだと。
鎮火する仲間割れの火。仲直りできない子供のようにポーク●ッツと赤髪は互いに顔を背け、バツが悪そうに唇を尖らせる最中…青髪は一歩仲間たちの方へと歩み寄った。
そして抜き取る。ポーク●ッツがその手に持っていたベウセットからの指令が掛かれた紙切れを。
開く。次なる指令の為に――仲間たちの中心で。
「――これは…」
青髪はそこに書かれていた文章に声を上げる。
「…側面からの騎馬突撃…荷車の牽引、奪取…撤収地点は北の森…」
手から計画書が抜かれたポーク●ッツは意識が自然にそっちに行っていたらしく、開かれた計画書に目を落とし…呟いた。
詳細は置いておくとして…文章から読み取れる自分たちがやるであろう大事。その概要を。
「馬泥棒か。西部開拓時代の米帝なら死刑だな!」
「と言うか馬とか乗った時ないですね」
「大丈夫、俺達なら…仲間の力があれば乗り越えられる!」
頭を突き合わせる6人。青髪の手にある計画書を見下すそれらの内、黄、緑は言葉を交わす。
だが…彼らの口元には不安よりかは作戦が成功しそうな事。自信から来る笑みが窺えた。各々の脳裏にある絵は寝る場所もなく彷徨った街の中の景色。仕掛けやすそうなポイント。
そう――彼らにとって、危惧する点は馬の扱いのみであった。
――なるほど。この3人を拉致させたのは人質と…素材の加工を目的としてか。
青髪は心の中でそう呟いて、計画書を取る手の対の手に握られた、まだまだぎっしり中身の詰まった布袋を横目で一瞥する。
その金の使い道、自分たちが何をすべきか…思いついたように。
「この金で馬をレンタルしよう。それで最低限の馬の扱いを覚える…付け焼き刃だけどそれしかない」
青髪の呟きに、6人は互いの顔を上目遣い見合わせ…静かに頷く。
確かにある勝算は鏡砕きの四英傑と姫騎士ジャンヌには在ったようだが…ポーク●ッツ。彼はその場の雰囲気に流された風であった。
「あのぉ…ちょっと聞きたいんですけどォ…ターゲットってどんな人達なの?」
けれど直ぐにポーク●ッツは不安に駆られ、尋ねた。まだ見ぬ敵。この仮初めの仲間たちの間で当然の様に共有されている敵への情報を得、安心を共有したいがために。
「昨日の夕方、広場で景気良さそうにしてた連中知らないっすか? そいつらっす」
「あぁ~…噂で聞いたなぁ。荷車引いてた人たち」
「この計画書にはそのどてっぱらに騎馬突撃をかまし、一番おいしい部分を積んでるであろう荷車を牽引、奪取…と。行けそうな気しないっすか?」
「…うん。計画は悪くないと思う――でも、正直なぁ、悪魔に唆されてる気がしてさぁ…」
共有される計画の全様。明確となるターゲット。敵。赤髪からの返答により、ポーク●ッツは欲していた情報を得る。
鏡砕きの四英傑と姫騎士ジャンヌの変態5人は油断こそしていないようだが、この計画は上手く行くと信じて疑った様子はなかった。
けれど…ポーク●ッツ。彼は、内に敵の影を見出しているようであった。
そんな身中の伺える呟きは――黙って計画書に視線を落としていた黄髪の視線を開かせた。
「険しい道を行く同士を…仲間を疑っちまえば上手く行く物も行かなくなる。信じようぜ…! 仲間を…!」
黄髪はなんだか熱いまなざしをポーク●ッツに送りつつ、親指を立てて見せた。口元から白い歯を輝かせ、なんだか少年漫画に居そうな住人風な…捻くれた見方をすれば安っぽく感じる綺麗な言葉をその口から吐いて。
しかし…今、自分達が計画し、やろうとしていることは純然たる略奪だ。その議論の余地のない悪事が綺麗な言葉飾り付けられたことがなんだか滑稽に思えて、コソ泥であるポーク●ッツにすら笑みを齎した。呆れ、嘲笑…そんな否定的で諦念の混じる様な笑みを。
だが、歯車は動き出している。時計の針は止まらない。この急ごしらえで結成された集まりには時間はなかった。
だからこそ、この集まりのリーダー的な存在である青髪。彼は閉じる。計画書を両手を合わせる形で音を立てて。
その時に立つ音は、周囲の視線、意識を彼へと向けさせる。
「――作戦がハッキリしたところでやるべきことが見えて来た。素材の加工…そのためには協力を仰がなければ」
青髪は視線を伏せたまま言って、振り返る。
もぞもぞと動く、荒布で包まれた3つの物体の方を。
「…これってさ、生き物?」
「うん。生き物」
ポーク●ッツの問いかけに、青髪は答え…何も言われなくとも姫騎士ジャンヌが彼らの視線の先へ。
そして取り払われていく。彼の手によって…たぶん家畜の飼料を入れる袋でも広げて作ったのであろう、ガザガザの荒布が。
荒布に包まれていたもの。それを見下すポーク●ッツは固まった。口を開き、目を見開いて。
「オーイッ! これはちょっとどうかと思うよ!? 俺も人様に顔向けできないコソ泥だけどさぁ! 変態の所業だよ! これは!」
この集まりに属してしまった故に背負った業。今目の前に広がる光景を描いた者どもの同士として、今この場に立ってしまった運命への拒絶だろうか。
ポーク●ッツは強く、強く…拒絶の意をもって青髪を見、非難する。今さっきまで見ていた物、光景のある場を指差して。
そんな彼の指先の先に在ったのは…目隠しされ、布を猿轡として噛まされた上のかなり際どい縛られ方、布の衣服に身を包む緊縛された3人の少年の姿。
1人は赤髪、2人は緑髪の。紛れもない…今まさに唸り声を上げる、モグモグカンパニーのクラフト要員。ライバックとグリグラの姿であった。
「いや…その……ジャンヌに任せたら…こうなった。目的は達成してるし良いかなって…」
「仮にそうだとしても両脚開かせる意味は? 変な事してないよね?」
「するわけないっ…するわけないじゃないですか。攫ってきただけでぇ…誓って疚しい事なんてありませんよぉ。俺ノンケだし」
「鏡の前で同じこと言えるか試してみたいよ、俺は!」
青髪もこのやり方には負い目を感じているようで、冴えない顔をしながら視線を逸らし、気紛らわしに手と手の指先と指先を合わせながら釈明。
ゴミクズを見るような顔をして弁解する彼を見ていたポーク●ッツの視線は、次に姫騎士ジャンヌの方へと向く。
彼は彼なりの意見があるのだろう。それはとても…女性物の下着が装着された胸を誇らしげに胸を張り、毅然とした態度。顔をしてポーク●ッツの瞳を見返してきていた。
「何かあるのであれば私に言いなさい。これは目的の達成のため…これも同じく轡を並べる者たちの未来の為――私に後悔など在りませんッ」
落ち着いたポーク●ッツは遠い目をし、啖呵を切った姫騎士ジャンヌを見据える。その時には既に…彼に掛ける言葉など、ポーク●ッツには見当たらなかったが――そんな彼の肩に、ふと手が置かれる。
ポーク●ッツが振り返れば赤髪の姿。なんだか味わい深い顔をし、彼は目を伏せていた。
「金が欲しい…現状を変えたいッ…何が何でも、どういうやり方だったとしてもッ…手に入れたいッ…明日を…そう考えて腹を括ったんじゃないっすか…?」
彼は寂しそうに笑い、視線を上げて――見据える。ポーク●ッツの顔を。
さらに対の肩にさらに手が置かれ、その先には緑髪の姿。彼も同じように今、語り出す。
「私たちには使命があります。正義を為さねばならない使命が。しかし力なき正義は無力。今は悪と謗られようとも力を…無力を正義にするためにもここは心を鬼にせねば…!」
緑髪が語り終えた時、ポーク●ッツの前に黄髪が彼の前に立つ。腰に両手を当てて、ドンと胸を張って。
「俺たちは仲間…そうじゃねえのかァ! ポーク●ッツ!」
これほど仲間と言う言葉が嫌に思えた時があっただろうか。遠ざけたいと…自分をそこに含まないでくれと心の中で祈ったことは。
黄髪の言葉は相も変わらず今自分たちがしようとしていること、したことにはそぐわない熱血色のきれいごと。傍から見ていれば嘲笑交じりにポップコーンでも頬張って居られそうではある様ではあったが、ポーク●ッツは当事者だ。そうはなれない。
確かに金は欲しい。だが、参加した理由はベウセットの報復が怖かった。他とは違う立場であるそんなポーク●ッツに対し、エゴ丸だしな変態達の言葉は次々と投げかけられ行く。
――んだよこいつら…やっぱり見た目通りヤベー奴らだったよ…。
小さく、ポーク●ッツは後悔の言葉、懺悔の言葉を心の中で呟く。半笑いで、なんだかやるせない顔をして。
けれどそれと同時にこの状況を理由に、己のこれからの行いを肯定しようと考える自分が居るのにも気が付く。
――仕方ないじゃん。逆らえば今転がってる哀れな少年たちの横に並ぶ羽目になる可能性だってあるんだから…縄で縛られて、両脚を開いて…。そんなの嫌じゃん? お金も欲しいじゃん?
葛藤しつつも何かと理由をつけ、悪側…金稼ぎの方、欲望の方へとポーク●ッツの心が傾く。きっとそれは人の性。本質。否定しえない人の心であったろう。
揺れるポーク●ッツと流れゆく時間の中で、姫騎士ジャンヌは視線をポーク●ッツから3人の犠牲者の方へ。目隠しはそのままに…噛ませた布の猿轡を解き始める。
「ぷはぁっ、ちくしょー! 俺が誰だか解ってんのかー! こんなことしてタダで済むと思うなよー!」
「おやぶーん! 助けてーッ! 変態になんかされるー!」
「はぁっ…縄を解いてくださいよぅっ…」
猿轡を取ったところで始まるのはグラ、ライバック、グリによる力いっぱいの大合唱。
その各々の反応は性格の伺えるものであり、この3人を攫ってきた鏡砕きの四英傑と姫騎士ジャンヌには解っていた。誰を従わせるべきなのかを。
「グリ…協力しなさい。そうすれば貴方の仲間は無事で済みます」
姫騎士ジャンヌが動く。半べそをかく緑髪の少年の方の傍に座り…囁いて。
その一言にギャーギャーと騒いでいたグラとライバックは静かになり…その場は静まり返る。
「僕はモグモグカンパニーを裏切らないッ…!」
「そうだー! いいぞグリ!」
「俺たちはお前らみたいな変態には屈しないぞ!」
だが、帰ってくるグリの言葉は強く揺るがぬ意志が宿るもので、その後に、グラとライバックの囃し立てる。…縛られ、寝転んだままに。
想定しなかったわけではない状況。見通せた結果。集まる複数の変態と縛られた少年たち。何ともシュールな絵柄の中、ポーク●ッツ達は迫られる。――協力を仰ぐ手を。
ふと、その時…ポーク●ッツの目には映る。己の寝床。ベッドロールの上にて小さなおっさんの影がゆらりと立ち上がるのを。
未だに葛藤を抱えていた彼であったが…ふと、彼の心の中に巣食う欲望。もう1人の己が…ふっと囁いた。その小さなおっさんの姿を見て。
――これも輝かしい未来の為…。
渇望。欲する心。満たしたい気持ち。
人が人であるゆえに否定しきれぬ性。それはポーク●ッツの背中を今、押した。
「グリ君って言ったね。俺からの最後の警告だよ。ここで協力的になって置かないと後悔するぞ!」
今までにない直向きな、協力的な態度を示すポーク●ッツ。
その迷いのない顔は鏡砕きの四英傑と姫騎士ジャンヌの視線を集める。
「くっ…くっころ!」
変わる空気を感じつつ…グリは気高く抗う。恐怖に。
その返答は静かにポーク●ッツの瞳を閉じさせ、一息つかせた。何処か残念そうに。気の毒に思った風に。
次の瞬間、意志の宿る目はカッと見開かれ、彼の黄色い瞳が縛られたグリを映した。
「――おっしゃいい度胸だ! もう容赦しないかんな! 後悔すんなよ!」
「くっころ!」
勝率の良さそうな博打。勝てば入ってくるであろう大きな見返り。その挑戦権を得るために――ポーク●ッツは売る決心を固めた。心、魂を悪魔に。今だに強情なグリを眼下に置いて。
覚悟の決まった彼の眼差しは、澄んだ眼差しでこちらを一点に見つめて来ているコック服の変態に向き…指差す。彼に見えるように、今にも騒ぎ出しそうなグラへと。
「――エサだぞ」
夢うつつの中で聞こえた悪夢の始まり。それを告げる彼の脳裏に残っていた一言。ベウセットがそうしたように、ポーク●ッツは告げた。コック服の変態へ――食事時の合図を。
目覚めたばかりのコック服の変態は動く。戦慄する鏡砕きの四英傑の視線を浴びながら、指差された獲物をその瞳に映して。
「うおっ! 何だッ…!? なんか脚触られてんだけどッ! うおぅ!」
「うぅん…これは……言うなれば蕾。まだ花開く以前のもの…だが、無粋だね。縄など…押さえつけてどうしようというのか、傷付けてしまったら…」
透かさず獲物に襲い掛かるコック服の変態。対するは脚に感じる感覚に戸惑いを見せる獲物…グラの声。その声はライバックとグリ。2人の心を揺さぶり始める。
しかし、我が道を行く変態。見ようによっては先駆者なのであろうそれは、誰かの束縛や常識に囚われる存在ではない。ただ…征く。己の中の道を。脚を拘束していた縄を解くという形で。
「あっ、おいっ!」
ポーク●ッツが声を荒げた時には既に遅く、縄は緩み、片足が伸ばされ…自由となりつつある。しかし――グラ。気の強い彼はその時、大人しくしては居なかった。
「おっらぁッ!」
視界が塞がれたまま、力いっぱい突き出されたグラの足。向かう先にはなんだか神聖な儀式でもしているかのような、直向きで澄んだ瞳のコック服の変態の顔。
間も無くそれらは接触――激突する。
「ッしゃあッ! 今のは効いたろ!」
「ッ――あはぁっ…元気の良いっ…ショタキックだぁっ…!」
「オメーはマジで自重しろよ」
コック服の変態は顔面に踵を貰い、突き倒されるように仰向けにひっくり返っていく。グラの声を耳にしながら、譫言の様に言い、頬を染め…瞳を煌めかせながら。真顔のポーク●ッツの辛辣でトーンの低い突っ込みなど物ともせず。
そして彼は倒れる。瞳を閉じ、草がところどころ生えたレンガの床の上に。何かをやり遂げたような顔をして。
その後に訪れるは静けさ。片脚が自由になっても動けぬグラとそれ以上に動きが制限されているライバックとグリを目の前に…沈黙は流れる。
けれど…もう十分であった。ポーク●ッツには解っていた。脅迫を成立させる条件がそろったと。何せそうされた被害者の1人なのだから。
「この部屋にはポーションがある。飲めば忽ち傷を癒し、意識を取り戻すポーションが。グリ、友達を大切に思うなら、君が取りえる選択肢は1つじゃないのか? 言って置くが俺は本気だぞ!」
「うぐぐっ…!」
縛りつけられ身動きの子供に対し、強く派手に啖呵を切る大人。ポーク●ッツ。
大人げないそれの声よりかは、その言葉に含まれる内容にグリは怯み、奥歯を噛みしめていた。最善手を探し巡る思考を頭の中に巡らせながら。
ただ、彼の仲間は…グラもライバックも解っているようだった。これ以上の抵抗は危険であると。
「解った…解ったよ、もぅ」
「裏切ればさっきの変態を君の仲間に解き放つから、忘れないでよ!」
「解ったってばぁ…」
グラとライバックより少しばかりトロいグリも同じ結論に行き着き…屈する。仲間の身の安全を考え、変態共に、念押ししてくる声の主、ポーク●ッツに。
なんだか途端に犯罪の匂いが強まる一幕。何とか勝ち取った協力。これで良かったと迷いなく思えないながらも…ポーク●ッツと変態達は達成する。与えられていた使命を。
時は過ぎる。刻々と。首謀者帰らぬポーク●ッツの住まいの中、微妙な空気になる中で――戦いの時間へと向かって。
最初の登場キャラクターは女ばっかり。この話では…男しか出ん。比率的には男のキャラの方が多いんじゃないですかね。我が作品は。男女比率を同じぐらいにしようと考えるのですが…どうもね。男が増えるのさ。なんでだろうな!?