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中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい  作者: 禎祥
第五章 俺様、北方へ行く
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12

 俺は翼を広げて高く高く飛び上がる。空は青く澄み渡り、雲一つない。これなら遠くの方まで余裕で見えそうだ。

 高く高く飛び上がると、大体の地形が解る。オチデンとノルドを分断するかのように森が浸食している。

 王都で見た地図はちゃんと測量されてなかったようで、上から見るのと全然違う。きのこが測量した地図もまだまだ一部だとわかる。上から見ると、なんて言うのかな? トランプのクローバーマーク、あれが一番近いかもしれない。




「ふはははははは、見ろ、人が……人が……いないな……」


 某アニメの台詞を実際に相応しい光景で言ってみたかったのだが。高く上がりすぎたのか、人間は一人も見えなかった。俺達が乗ってきた幌馬車が辛うじてケシカスのように見える程度だ。

 さて、肝心の泉は……。


「お、あるな。割と近い」


 道を逸れてはいなかったのだ。進行方向の少し先に、ポツリと水たまりのようなものが見える。

 泉を中心に人が住んでいるという話だったが、草も木も建物らしきものも見えないのが気になるが。


「イナゴがここも通ってきたって事か」


 まぁ、行ってみればわかることだ。

 俺は馬車で待つ皆の所へ戻ると、方角を示した。

 それから半オーラ。



「これは……もう進めませんね……」

「こう前が見えなくちゃなぁ……」


 突然真っ黒な雲が空を覆い、空が割れたような大雨に足止めを食らった。思えば前が視えないほどの土砂降りというのは旅を始めてから初めての経験だ。

 エミーリオはずぶ濡れになりながら馬から装具を外して馬車に括り付けていた。屋根の下で休ませてやりたいが、さすがに5頭も馬車には入らない。ならばせめて軛を外して休ませようとしたのだ。どうせこの雨じゃ進めないしね。

 ドォォォォッとおよそ雨らしくない音が大地を叩き、幌馬車の屋根をへこませている。今にも破れそうでドキドキしながら見守っている。


「今日はここで野営ですね」


 簡単に濡れた体を拭きながらエミーリオが言う。

 目的地まではあとちょっとだというのに残念だが仕方ない。1寸先も見えないような雨粒の弾幕の中を進めるほどこの世界は安全ではないのだ。


『通り雨ではないのか?』

「仮にすぐ止んだとしても、馬たちを乾かしてやらねば病になってしまいます」

「馬車も手入れしないとな」


 すぐに替えが用意されている保証があれば使い潰すということもできるのだろうが、この旅においてはそんな保証はない。第一、ずっと共に旅してきたエヴァ達を物扱いして使い潰すなんてしたくはない。

 一瞬、俺とルシアちゃんで回復魔法をかけ続ければ……とも思ったが、そんな無理をしてまで急ぐ旅でもなかろうと思い、休める時に休むというアルベルトとエミーリオの意見に従った。


 しかし、こうなってくるとやることがない。

 アルベルト達も装備の手入れをやり尽くしてしまったようで、ただボーッとしているし、野営の見張り一番手のドナートとチェーザーレに至ってはいびきをかいて爆睡している。

 何でこれほど気を抜いているかというと、雨で視界が悪いから、とルシアちゃんが馬車の周りに結界を張っているのだ。これはルシアちゃんが寝ると消えてしまうから、今のうちに気を休めているのだ。


 御者をやっていたため濡れ鼠になっていたエミーリオとバルトヴィーノは生活魔法で体と服を乾かしていた。馬車の中では火を焚けないが、こういう時魔法は便利だなとつくづく思う。これで料理ができれば……と俺は固すぎる干し肉とパンをかじりながら残念に思うのだった。




「ふむ……しかし退屈だな。何か話でもしないか?」

『話すのは良いが……改まって言われると何を話すか……』


 寝ているメンバーを起こさないよう、1号が小声でそんなことを言い出した。

 いきなり話そうぜとか、コミュ障にハードルの高い難問を吹っかけてくるんじゃねぇよ。


「……そう、それはこんな雨の降る日のことだった……」


 話す事などない、という俺の言葉に、ならばこんな話はどうだと1号が突然語り出す。


「まだ夜ではないというのに真っ暗で、少しの物音くらいなら雨がかき消すほどの大雨。そう、今の俺達のように。それなのに、どこからか音が聞こえてくるんだよ……ベシャッ……ベシャッ……って」


 え? 何? 怪談? ややややや、やめようぜ?

 ベルナルド先生が出している灯り用の魔法の炎が、馬車の幌にきのこ型の黒い影を大きく映す。炎の揺らめきと共に、影のきのこもゆらゆら揺れる。


「……足音のようなその濡れた音は、どうやら家の中から聞こえるらしい……」


 ごくり、と誰かが唾を飲み込んだ。気づけば寝ていたはずの二人も目をパッチリ開けて話に聞き入っている。

 ルシアちゃんが俺を抱きしめる腕の力が強まった。怖がっているのか、可愛いなぁ。


「……振り返った先で見たものは……」


 ドオォオオンッ

 

「きゃぁぁあああああああ!!」

「うわぁぁぁああああああ!!」

「ぎゃあああああああああ!!」


 タイミング良く鳴った轟音に皆悲鳴を上げる。ちょ、苦しい。

 再び鳴った轟音と馬車が縦に飛び跳ねる。


「何だ?! 地震か!?」


 慌てて馬車の外の様子を窺うため御者台へと転がり出た俺は、結界越しにソイツと目が合った。

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