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中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい  作者: 禎祥
第三章 俺様、王都へ行く
47/212

15

「なっ、何だ貴様は!」


 壊れた扉の向こうにいたのは、半裸になった教皇。

 その向こう側にある大きなベッドに横たえられていたのは、気を失ったルシアちゃんで。

 それを見た瞬間、俺の中の何かがプチっと音を立てて切れた。 


『貴様、聖女に何をした?!』


 夜だというのに、室内が眩い光に包まれる。が、そんなこと気にならないくらい、頭の中が沸騰している。

 後方から呻き声が聞こえた。俺の近くの床がジュッ、と音を立てて溶けるように穴が開いていく。


「落ち着いてください、聖竜様!」


 俺を諫めようと延ばされたエミーリオの指がジュッと溶けて骨が出る。

 溢れ出る血がどんどんと蒸発し赤い霧を生み出す。

 それを見て少し冷静になった。


『済まぬ、エミーリオ。下がっていろ。彼奴はここで殺す』


 エミーリオに怪我を負わせたのが俺の力だって言うなら、制御できるはずだ。

 前面に、あのゲスにだけ照射するように。飛ぶために力を込めていたからか、光が翼の先に収束する。


「わ、私を害そうというのか? やはり、汚らわしいモンスターだ」


 ヒヒ、と脂汗を垂らしながら引き笑いをする教皇。俺の光に当てられたせいか、肌にブツブツと気泡ができ、それが潰れ血が噴き出している。

 そして、思い立ったようにルシアちゃんを引き寄せ盾にしやがった。咄嗟に少し下がる。



『エミーリオ』

「はいっ!」


 力を制御できる程度には冷静になったからこそ、わかる。ルシアちゃんに着衣の乱れはない。まだ何もされていない。たぶん。

 エミーリオの名を短く呼ぶと、怪我をしているとは思えない動きで前に飛び出した。俺の光を浴びる位置だというのに、少しの躊躇もない。



「ひっ! ぎゃぁぁぁぁぁぁああああ!!」


 一瞬だった。

 エミーリオが腕を振り上げたと思ったら、ゲスの腕が消えていた。数瞬の後にポト、と床に落ち、同時に血が噴き出す。

 それらを認識する頃にはエミーリオは既にルシアちゃんを抱いて俺の後ろまで下がっていた。



『神職者でありながら、欲に溺れ聖女まで手にかけようとしたこと、地獄で後悔すると良い』


 前方に何の憂いもない。

 俺は翼の先に集まっていた熱源を全力でゲスに向かって飛ばした。



 ジュッ



 悲鳴すら聞こえなかった。

 光の球が近づいただけで、ゲスは溶けてしまったのだ。

 その後ろにあったベッドも、壁も。教会を半分ほど溶かし消し、光の球は消えた。



『――≪リージェ≫が経験値3750を獲得しました――』

『――≪リージェ≫がスキル≪メルトスラッシュ≫を獲得しました――』



 とうとう、人間を殺してしまった。

 いや、あんな奴死んで当然だったのだ。それに、俺は暗黒破壊神、人類の敵となるのだ。この程度で心を痛める必要はない。はず。


 自分にそう言い聞かせて振り返ると、蒼い顔をしたエミーリオと目があった。

 その後ろにいるシスター二人と違って怯えている様子ではない。

 その指からはまだ血が溢れている。血が足りないのだ。

 近寄ろうとすると、エミーリオの後ろの3人が小さく悲鳴を上げた。



『俺様が恐ろしいか?』

「いいえ、あれは天罰です。あなたは正しいことをなさいました」

『天罰……』



『――スキル≪メルトスラッシュ≫が≪天罰≫に改名されました――』



 ゲスだけじゃなく、エミーリオにも重傷を負わせているのに、それが正しかったとエミーリオは言う。

 スキルの判定になったし、次からは無関係な人を傷つけまいとエミーリオに回復魔法をかけながら誓った。



 エミーリオに何度目かの回復魔法をかけたとき、溶けるように開いた穴から住人たちが覗いているのに気付いた。

 必死になっていたから気づかなかったが、室内の惨状、特にエミーリオの怪我に顔を青褪めさせている。

 俺が顔を上げると、視線の先にいた人が後退りする。その中には救護院で助けた人もいて。ズキリ、と胸が痛んだ。



『エミーリオ、ウェルナー、聖女のことを頼む』

「え、何を……」

『聞くが良い、住民達よ。この教会は汚れに染まり、既に女神の威光はない。よってその原因たる教皇を処断した。あとはこの地を浄化するだけだ』



 俺は翼に光を集める。そして、それをエミーリオや住民に被弾しないよう天井や壁に向けて乱射する。

 技名を言わずに放ったが、それでも瓦礫が崩れることなく、光刃に触れた箇所は溶けるように消失した。



『これでこの地の汚れは去った。女神が戻るよう、次は厳格な者を教皇に据えることだ』



 エミーリオは何故かキラキラした瞳を向けてくるが、それ以外の住人は皆怯え顔だ。

 ここまでか。

 こんな大勢の人の前でこんなことをしたんじゃ、俺が聖竜ではなく暗黒破壊神だと気付く人もいるだろう。



 ルシアちゃん、ここでお別れだ。

 以前告白した時信じてもらえなかったけど、俺は聖竜なんかじゃない。暗黒破壊神なんだ。ただのモンスターなんだよ。

 早く本物の聖竜に出会えることを祈っているよ。


 俺はエミーリオが引き留めようと伸ばした手を振り払ってその場を後にした。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【ステータス】


名前   : リージェ    


レベル  : 13 

EXP  : 14015/ 89867


HP   : 1752/ 1752

MP   : 749/ 1349

Atk  : 2974

Def  : 966


スキル  : タリ―語 Lv.3

       我が劫火に焼かれよ Lv.4

       血飛沫と共に踊れ Lv.5

       全てを見通す神の眼 Lv.2

       念話 Lv.2

       我を害さんとする者よ、姿を現せ Lv.1

       反転せよ Lv.2

       天罰 Lv.1


称号   : 中二病(笑)

       害虫キラー

       農家

       ドM

       聖竜(仮)


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