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中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい  作者: 禎祥
第九章 俺様、ダンジョンに潜る
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 ――ブルォオオオオオオオッ!!

 ――クケェェェェェエエエッ!!




 そこにいたのは、巨大な斧を持ったこれまた巨体の二足歩行の豚・オークキングと、対峙する巨大な漆黒の鶏だった。

 うん、鶏、だよな……?

 黒く輝く鶏型の宝石にしか見えない。もしかしてゴーレムとかガーゴイルの類なのかだろうか?

 それにしても。


『オークキングが、何でこんな浅い所に……?』

「例の階層ボスか」


 壁の影に隠れながら様子を窺う俺に、同じように身を伏せた分体達が声を潜めて聞いてきた。

 俺とルシアちゃんがこのダンジョンから出る時に戦った時に分体達はいなかったから、知らないんだな。

 ダンジョンの造りが変わったことで階層ボスの位置も変わったのだろうか。


『確か、前回戦った時は15階層にいたはずだ』

「ふむ、ボス部屋と言われる固定の場所はなくうろつくタイプか。一度戦ってるなら今回も勝てるってことだよな」

『あぁ、奴は美味い』


 食うのか、と呆れたように言う分体達。

 うむうむ、薄くスライスして鍋に敷き詰めて葉物野菜と分体達を一緒に煮込めばさぞ美味いだろうなぁ……いかん、ヨダレが……。

 問題は、鶏か。

 鑑定ちゃん、ちょっとあいつの事教えてー。




――――――――――――――――――


【ネーロ・ギャッチョ・ポーロ】


 氷の羽根を飛ばしたり、氷のブレスで獲物を狩る氷の体躯を持ったポーロ種。ポーロ種の中では比較的温和な性格ですが暗黒破壊神の欠片を取り込み凶暴化しています。

 大気中の水分を凍らせて敵の動きを鈍らせるなどの広範囲攻撃もあるので気を付けて。


――――――――――――――――――





 なるほど。光って見えたから鉱石系かと思ったが氷か。どうやって動いてるかは謎だが、岩でできた人形が動くくらいだし氷でできた鶏が動いたっておかしくはないな。

 寒いと動きが鈍る俺にとってある意味天敵みたいな奴だ。

 食えないし。経験値稼ぎしたい状況じゃなきゃ戦いたくない。


 対するオークキングは一度戦ったが雑魚も雑魚だ。

 飛んできた氷塊を巨大な斧で叩き落としたり砕いたりと善戦して見せているが、ジリ貧だな。

 と思いきや。




 ――ブルォオオオオオオオッ!!




 オークキングが咆哮し、大気がビリビリと震える。

 あんなに頑強だった壁にひびが入ってやがる。

 氷鶏の体にも亀裂が入り、右翼がゴトリと硬い音を立てて床に落ちる。

 あの雄叫びは俺の全力タックルと同じ威力か。やるな、豚。




 ――クケェェェェェエエエッ!!




 だが、このままやられる鶏ではないようだ。

 豚に対抗するかのように鶏が咆哮をした刹那、視界か白く煙る。

 一気に寒くなり、壁や床が霜で白くなった。こ、これはやべぇ。

 俺と分体達が隠れているギリギリまで凍り付きやがった。


「おい、これヤバくないか?」

『ここはギリギリ効果範囲外なのかもしれんが……』


 これは悠長に見学なんてしてられねぇな。

 戦闘に夢中で俺達の存在に気付いていない今のうちに仕掛ける!


「我が劫火に焼かれよ!」


 戦い続ける豚と鶏がいる部屋に飛び込むと、二頭に向けて全力でブレスを吐く。

 すると、何故か爆発のような風圧が来て吹き飛ばされた。

 え? 何で?


「説明しよう! 凍り付いた部屋を急激に加熱したことにより空気が膨張し、内側から外側へ逃げようとするエネルギーが発生した。つまり、空気砲みたいなもんだ」


 氷でできた鶏なら炎をぶつけて溶かしてやろうと考えたのに、予想外の現象が起きて壁に激突した体勢のまま唖然としている俺に分体が言う。

 眼鏡をクイ、と上げるような仕草が妙にイラっとくる。お前眼鏡なんかかけてないだろうが。

 全身打撲でズキズキする体に回復魔法をかける。自力回復できるってこういう時便利だよなぁ。


『さて、中はどうなったか……』


 先ほどの全力ブレスと回復魔法でMPはもうすっからかんだ。

 ピンピンしていないことを願いながら物音一つしない部屋を覗くと、巨大な水溜りの中に例の欠片と豚肉が落ちていた。

 部屋はサウナを軽く超す熱気が籠っているせいで、すっかり蒸し焼き状態だ。


「豚肉のスチーム、暗黒破壊神のエキス添え」


 ボソリと分体が呟く。やめろ、食欲失せるだろうが。

 ダンジョンモンスターを倒せばドロップアイテムになるのは変わりないようだ。解体の手間が省けて良いな。

 一方で鶏が水溜りになったのは体が氷でできていたからだろう。

 そして水溜りという形で残ったということは、外から来たモンスターや人間はダンジョンに吸収されないのか。そこはゲームや小説とはやっぱり違うな。


「「「水、水~」」」


 多少蒸されたのか、分体から美味そうな匂いが漂う。暑さに耐え切れなくなった分体達が水魔法を使用した。

 どれか一体が使えば良いものを、全個体で使いやがった。しかも、一つ一つがこの部屋を十分に冷やし得る水量だから、どうなったかはご明察。


『……貴様ら……歯を食いしばりやがれ……』

「「「は、歯なんて無いよ、きのこだもん」」」


 い~や~! とちょこまか逃げ回る分体達は、俺の攻撃を躱して12階層へと降りていった。

 幸い欠片は分体達が魔法を使う前に取り込めていたから良かったものの、豚肉は流されてどこかへ消えた。ぐすん。



『――≪リージェ≫が経験値7500を獲得しました――』


 いや、アナウンス遅いよ!?

 この世界の声も偽女神だとしたら、称号とかに悪意を感じたのも気のせいじゃないな。

 もしかしたらこのまま経験値を寄越さなくなる可能性もあることに気づき、ゾクリとした。

 取り合えず、ルシアちゃん達が来るのを待つか。


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