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中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい  作者: 禎祥
第九章 俺様、ダンジョンに潜る
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12

『弱い! 弱すぎるぞ!』


 出てきた敵は全身岩でできた人型のモンスター。いわゆるゴーレムだった。

 俺よりは若干小さいとはいえ、騎士達の2倍はあろうかという体躯。

 それが3体。初っ端から頑強そうなのが来た、と俺は張り切りぶん殴った。


 だが、さすが1階層、とでも言うのか。

 岩でできている見た目に違わず動作は鈍く、俺の放った拳は吸い込まれるようにゴーレムの胴体へ。

 すると重力を感じさせない勢いで飛んでいき、少し離れた壁に激突。

 凄まじい音を立てて壁もろとも崩壊した。

 他の2体も同様で。ワンパンで終わり。


『――≪リージェ≫が経験値996を獲得しました――』


 湧き上がる歓声。

 一方俺は、あまりの手応えの無さにテンション駄々下がり。

 あまりにも見掛け倒しすぎる!

 それとも、俺が強すぎるのか?


「さすがです、聖竜様!」

「強そうなモンスターを一撃で……!」

「しかし、1階層からあれほど強そうなモンスターが出るとは……さすがは最凶ダンジョンということか」


 俺を褒め称える者。これからどんどん強くなるはずのモンスターを想像し不安がる者。反応は様々だが、あの程度で騒ぐの本当やめて欲しい。

 得られた経験値もショボいし、はぁ、やる気無くすわー。


『この程度で騒ぐとは、先が思いやられるな。ついてくるならば、この程度貴様らで処理して見せよ』

「はいっ!」


 もう、返事だけは立派なんだからこの人達。

 でも気合入ったっぽいから良いか。

 先頭に戻ると、アルベルト達も戦闘を終えていた。

 こちらも襲撃してきたのはゴーレムだったらしい。俺が倒したのとは違い、関節部分で切り落とされたらしい岩の塊があちこちに落ちている。


「リージェ様、お疲れ様です」

『うむ、ルシアも無事で何より』


 俺がこの階層で後れを取るとは思ってもいないらしく、ルシアちゃんが笑顔で声をかけて来た。

 俺もルシアちゃんに労いの言葉を言うと、笑顔が輝かんばかりになる。

 最近のルシアちゃんは、可愛いだけじゃなくて、こう、たまに凄く大人っぽく見える時があってドキッとしてしまう。


「うんうん、ルシアちゃん綺麗になったもんなー」

『心を読むな1号』

「まさか、香月じゃあるまいし。そんな能力持ってないよ。お前がわかりやすすぎるの」


 ベルナルド先生の鞄に隠れていたらしい1号が、俺の頭の上に飛び乗って来てオヤジくさいことを言ってくる。

 サイズに反して跳躍力が異常なのは、何らかのスキルだろうか。

 いつもなら俺をからかう言葉が更に続くのだが、一応は状況を配慮しているらしい。そんなことより、と1号が話題を変えた。


「刮目して見よ! じゃじゃーん!」

「何だ?」

「紙?」


 1号が持っていた枝状の物を広げて見せる。

 それは枝ではなく、A4サイズの紙だった。

 そこには、図面のようなものが書かれている。


「フフン、お前ら、俺のスキルが何だったかお忘れでないか?!」

『1号の、スキル……?』

「あっ!」


 ベルナルド先生がそういうことか、と嬉しそうに笑う。え、何?

 すぐに思いついたのはベルナルド先生くらいで、他のメンバーは全員キョトンとしている。


「全く、せっかくステータス明かしたってのにマジで忘れてんのか。製図と測定。ついでに増殖と索敵。この組み合わせで、俺の分身体を先行させてルート探ってたの。はい、これマップ!」

「なるほど。これなら、最短ルートで進めるな!」

「ありがとうございます、1号様!」


 ガックリと項垂れて説明しながら紙をアルベルトに渡す1号。

 ルシアちゃんのありがとうで鼻が文字通り伸びていた。ピノキオか、貴様は。


「ただ、まだ2階層までは終わってないから、この階層だけだけどな」

「それでも十分だ。これで、消耗が少なく進める。この調子で先行してくれ」

「任せろ。あぁ、だが、俺は戦闘ができるわけじゃないからな。個体数が減れば補充ができんからどうしても偵察速度は落ちる。行けて精々中層辺りまでだと思ってくれ」


 アルベルトの言葉に、任せろ、と胸を叩く1号。

 しかし、ずっと静かだと思ったらマッピングをしていたとは。

 因みに、1号が地図を作ったのだから輜重部隊の二人が作っている地図は要らないんじゃ、と思ったらそうでもないらしい。

 正確性を高めるために、複数人でマッピングをしてそれを照合するのが基本らしい。

 特に、ここ【女神の寝所】では未踏破区域が多いため、新しい地図は需要が高いのだそうだ。専門の地図屋が存在するくらいなんだとか。


「うん、先行している分体達がいつ全滅するかもわからないし、マッピングは続けた方が良いと俺も思う」


 俺の疑問を読んだように、1号が言う。

 うーん、やっぱり俺ってそんなにわかりやすいのか……。


「ん? これは……」

「どうした?」


 1号の作成した地図と、ジルベルタの持ってきた地図を見比べていたアルベルトが声を上げる。


「皆、これを見てくれ。次の階に降りる階段。位置が一緒だろ?」

「本当ですね!」

「あぁ、どうやら変わったのはルートだけのようだ。これはありがたい」


 アルベルトの説明に、同じように地図を見比べて喜ぶ一同。

 アルベルト達は一度ルシアちゃんを迎えに深層まで降りてきているわけだから、方角を確認しつつ進めばそれほど時間を取られなくて済む。


「ふむ、それなら隅々まで階段を探す必要はないな。先行している分体達も、方角に気を付けながら進めるぞ」

『一応、黒モンスターがいるかどうかだけ索敵で確認してくれ』

「了解~」


 今回殲滅していくのは暗黒破壊神支配下の特殊個体である黒モンスターだけ。

 通常のダンジョンモンスターは倒した所で復活してしまうから、遭遇すれば戦うがわざわざ探してまでは戦わない。浅層ではたいした経験値にもならないしな。

 1号が先行して道を探してくれているのはかなり時間の短縮になるだろう。

 先行している暗黒破壊神にも早く追いつきたいものだ。


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